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距離延長・短縮

まずみるのは、過去の実績から距離短縮(延長)のときにパフォーマンスをあげているか、下げているか
これが最もわかりやすい。

先行馬の距離延長→買い・追込馬の距離短縮→買い
 先行馬の距離延長はペースが落ちる分、順ショックになる。
 揉まれずに先行出来れば精神的に楽になる。
 ただし、延長分を乗り切る体力がある裏付けが必要。

追込馬の距離延長→消し・先行馬の距離短縮→消し
 追込馬の距離延長はペースが落ちる中を、前走より長い距離を追走しなければならないので、逆ショックになる。

■ 距離短縮

馬は基本的に競馬を走るのが好きではない。
無理矢理走らされているわけだから、それは当たり前の話だろう。
このマイナスの思考をプラスに持っていくのが、ショック療法の数々になる。
その中でも、短縮ショックが際だって有効なのは、馬が嫌いな走ることの物理的な距離と時間を、単純に短くすることによる部分が大きい。
それ以外にも、精神コントロールの難しい馬を、前走より速い流れで走らせて、道中で余計なことを考える暇を奪ってしまうという効果もある。
何が何だか分からないカーニバルの最中で、ゴール板を迎えさせようというわけだ。
それ以外にも、様々な効果があるのだが、無論ショック療法なので副作用もある。

また短縮ショックが効きやすい馬もいれば、嫌がる馬もいる。
それは馬のタイプにもよるし、そのときの臨戦過程(それによる心身状態)によっても、同じ馬でも嫌がったり喜んだりする。

例として、記憶に新しいレースを見てみよう。2010年5月1日新潟3Rだ。


ここで私が本命にしたのが、7番人気のアンティフリーズ
デビュー以来、全て5着以下に凡走しているので、人気薄なのは当然だろう。
その中で一番惨敗したのが、2走前の2000m。1800mからの延長ショックだった。
そして前走が、200mの短縮で5着と前進。
集中力が持続しないタイプで、少なくとも現状は短縮の方が精神的に向いていることを示唆する内容だ。

ただ前走は初出走の馬が4着に好走していて、それほどレベルは高くなかった。
同馬が一番良い走りをしたのは、デビュー2戦目の未勝利戦の1400mの方だ。
このときは6着だったのだが、メンバーは揃っていた。つまり適性が比較的高い距離は1400mになる。
「短縮適性があって、かつ適性の高い距離への短縮」というのが、一番馬にとって気分良く走れて、短縮ショックが効きやすいのは想像に難くないだろう。

しかし、これだけの材料では、この短縮で突如凡走続きの馬が勝ちきるというイメージはなかなか湧いてこない。

実はこの馬には、今回の短縮に対する精神的な支援材料が、特別にいくつか用意されていたのだ。


短縮を決めたアンティフリーズの精神的支援材料とは何か?

まず、2,3走前を見て欲しい。

この2走はともに1角2番手と先行。先行させることで馬は前向きになり、闘う意欲(S質)を持つことができる。
しかもこの2走は、小回り中京の多頭数と、阪神内回りの多頭数だ。
忙しい流れになりやすい小回りの多頭数で先行させたことで、馬はより活性化の度合いが高まる。

そして前走は一転、4角10番手と後方の競馬。2走前は2000mで前走が1800m。
つまり、距離短縮で流れが速くなるところを、前走先行から差しに回るという位置取りショックだったのだ。
短縮で流れ激化を自然に差しに回させるショックは精神的な効果が高い。
前走先行していた活性化に加え、流れが速くなることで無理なく自然に位置取りを後方に下げられ、
前走より距離が短いので体力的に楽に差せるという構造がそこにはある(この構造を使ったのが「短縮ショッカー」なのだが、それについては後で触れよう)。

ただ今回の場合、そう簡単にはいかないポイントがあった。
前走は外回りの京都だったのだ。外回りの京都は広い上に直線が長く、レースは極めて単調になりやすい。
そのため、我慢比べの上がり勝負になる。
これはMでは淡泊さ(L質)と表現されるものだ。
前走S質な先行をした馬が、単調なL的流れを後方で我慢させるというのは、精神的にはかなり厳しい。
単調な流れを我慢することがフラストレーションになるのだ。実に嫌な体験である。

そして迎えたのが今回の短縮だ。前走で溜まったフラストレーションが、一気に全開できる。
今度は折り合いを気にして無理に抑えられることはないのだ。

2,3走前で溜まったマグマのような闘う意欲(S質)は前走で解き放たれることなく、
むしろそれにより増幅され、今回それが一気に解き放たれるのだ。
これはまさに生命の絶頂である。
しかも、走る距離は400m短くなるから、体力は直線を迎えても有り余っている。
喜び勇んでゴール板に駆け込む姿が目に浮かぶようだ。
しかも、この1400mは4走前に良い競馬をしたように、比較的得意な距離で、忙しさを感じることもない。
否が応でも、気分は高まる。

さらにポイントは今回が新潟の外枠だったことだ。短縮の最大の欠点は、前走より揉まれて競馬が嫌になる可能性だ。
C要素の薄い馬には特にこの傾向が強い。
またそれまでの3走が全て1800m以上だったので、激流に対する心の準備が少ないため、余計に揉まれることはリスク要因になりうる。
そのリスクを取り除くには、ペースが上がっても単調な競馬になりやすい新潟、しかも揉まれない外目の枠は理想なのだ。

そういうこともあり揉まれることなく気分良く直線を迎え、解き放たれた精神エネルギーを全開にしゴール板を駆け抜けて、
7番人気で1着に激走出来たわけである。

今回の場合は近4走の記憶を利用したショックだった。
このようにショックは、何走も前からの「走りの記憶」がプラスに作用するとき、より大きな力となって炸裂するのである。


先週は4走前からの周到な短縮ショックについて書いた。

このような形はもちろん毎週のように行われている。
今週もいくつかそのような短縮が行われたが、先週の解説と似たパターンだった6/6(日)東京8Rを見てみよう。

勝ったのは9番人気ブラッシュアップ。1800mから1300mへの500m短縮ショックだった。

この馬の仕掛けは5走前から始まった。4走前は1400m。
5走前の1900mからは今回と同じ500mの短縮ショックだった。

このときの位置取りが3角5番手。ペースは前半34.8秒のハイペース。
速い流れを前に行ったのだ。これは逆位置取りショックだ。
前走1900mで3角9番手と追い込んで好走しているのに、前走より流れ激化の短縮で無理に前に付けるというのは、馬にはかなり心身に辛く感じる。
したがって5着と着順を落としたのは仕方がない。
これをして、「短縮適性がない」とするのは、早計である。

ポイントは、ハイペースの流れでも前に行けたということだ。
つまり、短い距離に対するスピードの対応力は充分あるということになる。

く3走前は同距離の1400m。重の高速馬場を差して3着に好走した。
このぐらいの距離への適性を感じさせる内容であり、また差して3着ということも重要である。
無理に急がせないで、ペースなりに差せると好走出来るタイプということを証明できたのだ。

2走前は新潟1800m。400mの延長ショックになる。
ここでは延長のペースダウンを利用して自然に前走より前に行く位置取りショック。
これは馬の気持ちに逆らわない「順ショック」だ。ということで1着。

前走は格上げ戦の同距離で10着に惨敗。

15頭立ての15番枠で外々を回らせられたのが直接の敗因だが、距離変更付きの位置取りショックで勝った後だから、そのストレスで凡走するのは致し方ない。

ポイントはむしろ、その位置取りだ。


前走の先行から、今度は3角7番手と差しに回っている。
広くて直線が長いために単調な流れになりやすい新潟で、外々回っての差しで我慢するのは、相当のフラストレーションだ。
前回のアンティフリーズの前走と、これは酷似している。
1400mでも好位に行ける馬が1800mの単調な流れで、外々の後方を回るのだから、かなりの我慢である。

その我慢のエネルギーがマグマのように蓄積されて迎えたのが、今回の1300mだ。

高速馬場だった重の1400mで3着したようにスピードはある。また短縮の1400mで好位から競馬したように、S質な要素も充分ある。

ならば、短縮の1300mで戸惑うリスクは少ない。

また今回は外枠。これもアンティフリーズのときと同じだ。
激流になって揉まれて流れに戸惑うというリスクは少ない。しかも広い東京だから余計にそのリスクは減る。
したがって、私はこの馬の馬柱を見たときに、「おお! これを本命にしよう」と小躍りして喜んだのだった。

が、よく見てみると気になる点が2つ出てきて、俄に私の表情は曇っていった。

1つめはハイペースが確実そうなメンバーだった点。
もし4走前のときのように、短縮なのに仕掛けて好位で競馬したら逆位置取りになって、馬は苦しがって凡走してしまう。

逆にハイペースを馬の気のままに後ろよりで競馬させたら、
前が自然に止まって、前走溜めたマグマと、3,4走前に使ったスピードを、短縮で溜まっている体力と同時に、後半に爆発できる。
ハイペースなら外枠というのも、より有利になる。

どちらの位置取りを取るのかは騎手次第だ。だが、それで前に行って凡走することを恐れる必要はない。

何故なら彼は9番人気だからだ。
人気との期待値で、逆位置取りを騎手が取ってしまう可能性に怯えているようでは勝負は出来ない(もちろん、人気馬なら、このリスクはかなり重いものになるが)。

したがって、騎手の位置取り問題は少しは気になったが、それで彼を本命にしない決定的な理由にはならなかった。

一番私を恐れさせた問題は馬体重だった。
2走前に新潟への輸送でマイナス8kg。大幅な馬体減りだった。今回も東京への遠征。
しかも3走前よりレース間隔も短い。またしても大幅馬体減りになる可能性が比較的高い。
パワーレースを得意とするタイプに、大幅馬体減りは致命傷になる(馬体重に関してはまた他の機会で詳しく書くが、競馬では極めて重要な要素になる)。

私はそのリスクを考慮して本命にステイドリームを取って、4点目の相手とした。

そして当日の馬体重は、…増減なし。そこで私はゴーサインを出し、対抗の馬と同額の金額をブラッシュアップにも賭け勝負した。
結果は1着。馬連40倍を当ててかなり儲けることが出来たのである。


'10年関東オークスの結果からみる、距離延長の影響。

単純なタイム評価ならショウリダバンザイ軸で文句ないところ。

前走の東京プリンセス賞のレース結果をみたら危ない人気馬だった。

東京プリンセス賞の1〜3着馬は例年並みで、関東オークスでも十分圏内と考えていた。

しかし、激戦の内容からすると、交流重賞で凡走する危険はかなり高い。

まず、出遅れての差し決着だったという点。
そして今回は2100mと差し馬がストレスを感じやすい距離延長。
そして同じコース。牝馬ならデリケートだから余計そうなる。

同じ川崎コースで、長い距離をペースが落ちる中を追走しなければならないので、
当然馬にとってはキツイレースになることは想定出来た。

逆に逃げ馬には楽になる。
ギンガセブンが馬券になったが、これも馬の力をフルに発揮出来ればJRA勢にも引けはとらないだろう。

2100ではペースも落ち着くので距離延長での逃げはかなり楽になる。

シンメイフジは馬の格が違うので、ダート適性さえあれば勝って当然。
1番人気も当然、だから嫌った。
これは来る来ないの賭けなので仕方ないところ。

■ 先行馬の延長=買い 追込み馬の延長=消し

では、緩い流れで揉まれなかった馬を、条件戦からの格上げ戦でも狙えるパターンとは、どのようなものがあるのだろうか?

例えば'09年アルゼンチン共和国杯。
このレースには、鮮度馬の意味が詰まっていた。
そこで、ちょうど良いサンプルになるので見ていこう。

私が本命にしたのは前走が準OPだったアーネストリーだった。

同馬は前走が前半35.1秒−後半34.9秒という平均ペースの単調な先行。
揉まれずにスムーズな競馬だった。
今回は一気にGII。
タフなレースになって前走から違和感は感じないだろうか?

実はその心配はあまり要らない。
前走は京都の内回り2000m。今回は東京の2500m。
前走より前半は緩く流れるのが普通で、スムーズに気分良く先行出来る。
これを「先行馬の延長」と呼んで、「順ショック」になるのだ。

ただ、東京の2500mは体力的にはかなりタフだ。その落差を苦痛に感じる場合がある。

そこへのケアは4、5走前にあった。
東京より急坂があってタフな阪神2400mを凌いで勝っているので体力は豊富なのである。
これなら体力的な落差への精神的危険性は少ない。
さらにはその次走の日経賞の内容。
このときは同じ準OPからの挑戦だったのだが、前半が前走よりかなり速くなってしまったことで辛く感じて4着。
この凡走でこのときと同じシチュエーションのアルゼンチン共和国杯はさほど人気にならなかったわけだが、
先行馬の少ない今回のメンバーの東京戦で、中山の日経賞より流れが速くなることはまず考えられない。
したがって日経賞のときより楽に感じるので、4着より上の着順はほぼ確実と考えて良いだろう。

ところで、このレースには同じ準OPから出走の鮮度馬トウショウウェイヴの方が3番人気と人気になっていた。
しかしこちらの方が危ない。前走は東京の準OPでスローを追い込み勝ち。
しかし、スローを追い込んだからと言って評価を上げる必要はない。
今回は距離が延びてしかもGII。前走よりタフな競馬になる。
そうなると追走することに疲れてしまって、前走のように気分良く速い上がりを繰り出せないのだ。

これを「追い込み馬の延長」と呼んで「逆ショック」になる。
(もちろん追い込み馬の延長でも、延長を好むタイプで追い込み競馬になれば好走することもある。
その場合は、だいたいバウンドショックなどの、M的な仕掛けが含まれていることが多いのだが、このケースについてはまた後の機会に触れたいと思う)

最後に2番人気のスマートギアも見て欲しい。


'09年アルゼンチン共和国杯、最後に2番人気のスマートギアを見よう。

前走が京都の2400mを33.8秒という異常に速い上がりを駆使して追い込んで2着。
これも危ない。
距離延長で、しかも京都より坂のある東京の方がレース質がタフなのだ。
タフさが増す分だけ、トウショウウェイヴ以上に、「追い込み馬の延長」という「逆ショック」の影響は強くなる。

さらには2走前を見て欲しい。2走前が準OP。
つまり前走の京都大賞典が格上げ戦で鮮度が高かったのだ。
今回は鮮度の高さで喜んで追い込んで激走した後なので、鮮度ではなく、ストレスだけが重くのし掛かる。
そのために、結局惨敗に終わることになったのだ。

同馬の場合は、前走が別定GIIで57kg。それで2着なのに、今回がハンデGIIで1kg減の56kg。物理的には圧倒的に有利なはずだった。

それでも12着に凡走した。流れが向かなかったとはいえ、流れだけが理由なら、追い込み馬でも3〜6着を独占した競馬なのだ。
普通は展開が理由だったのなら4着前後になるはずだ。何も惨敗する理由はない。
この12着という惨敗の意味こそ、ストレスそのものなのである。
4、5着ではなく12着という必要以上の惨敗は、能力や展開などが理由ではなく、
走ることに嫌気が差してレースを投げ出してしまったことを端的に表しているわけだ。

このように、馬は「鮮度とストレス」、「前走との落差」の中で、大きく着順を変えてしまう生き物なのである。
だからこそ、前走好走した馬を切って、今回のように万馬券を当てることが出来るわけだ。

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