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逃げ馬の買い・消しタイミング

いかに気分良く逃げるかが重要

逃げられなかった逃げ馬(1)

前回はマイネルファルケを見ながら、前走逃げずに、今回逃げるという、Mで「逃げられなかった逃げ馬」と呼んでいる、位置取りショックの一種について書いた。
この位置取りショックの意味について考えてみたい。

逃げるというのは、前に馬がいないので、気分がよい。
したがって、前走逃げないで馬群の中で嫌な思いをした馬にとって、逃げるのは余計に楽しいのだ。
普通馬は走ることにストレスを感じるのに、走ることに喜びを感じているのだから、これほど手に負えないものは他にないだろう。

例えば、この半年間の重賞(2009年10月から2010年4月11日まで)を逃げて連対した馬は、延べ18頭いる。
その中で、なんと、前走も逃げていた馬は僅か3頭しかいないのだ!つまり5/6が前走逃げなかった逃げ馬ということだ。

前走も逃げていると、気持ち的なプラス要因がないのである。

特にこれ以上は上がない、オープン、その中でも重賞においては、条件戦より走ることにストレスが溜まりやすいので、余計にこの傾向は強まりやすい。

前走逃げて、今回も逃げて連対した、その僅か3頭の内訳を見れば、それはより明白になってくる。

1頭目は'09年スプリンターズSのローレルゲレイロ。その前走は14着惨敗だった。
2頭目は'09年JCDのエスポワールシチー。前走は地方で逃げて0.6秒差圧勝だった。
3頭目は'10年小倉大賞典のオースミスパーク。前走は条件戦を逃げて0.2秒差勝ちだった。

これらの3頭に共通することは何か?


逃げられなかった逃げ馬(2)

ローレルゲレイロの場合は前走惨敗でストレスが少ない。
エスポワールシチーは0.7秒差千切っているのでやはりストレスは少なく、前走は地方でリフレッシュもしている。
オースミスパークの場合は今回が格上げ戦で鮮度抜群。

つまり、同じようなメンバーや舞台で逃げて好走していたという、普通に見られるような逃げ馬は1頭もいないのだ。
同じようなメンバー、条件で逃げて接戦勝ちや、惜しい2〜4着ぐらいの馬というのは普通は狙いたくなるが、Mの答えは、もちろんノーだ。

逃げるという行為は気分が良すぎるために、次走で少しでも摩擦があると嫌がってしまうというわけである。

これは人間でも同じだ。
例えば今週の私の予想は、土曜には本命が全レースで連対して、マイラーズCや、万馬券などが当たり、あまり頭を使わなくても儲かる楽勝だった。
その祭りの後に精神状態を保つのは大変なところに、日曜は運悪く面白いレースが少なかったことが重なり、
儲けの3割近くを持って行かれてしまった(そのぶんは、月曜の福島で取り返したが)。
野球で大量点を取った次の日に、大した投手でなくても、リズムの合わない投手と対戦したら全く点が取れないのも同じだ。
あまりに楽逃げした後に、運悪く面白くないレースなどの状況に出会ってしまうと、心身リズムが澱んでしまいやすい。

皐月賞に出ていたアリゼオもそんなパターンだ。前走を逃げの位置取りショックで気分良く快勝。
その次走に相手強化では精神的にアンバランスになってしまう。
しかも今回は逃げないで馬込みに入ってしまったわけだから、精神的に耐えられなかった。

馬も人も、いやリズムが携わる現象の全てで、過去との落差の中でどう折り合いを付けるのか?ということが、結果を決めるのである。
それがまさに世界の成り立ちそのものなのだ。
だからそこには、否が応でも、Mの法則が存在してしまうのである。


逃げられなかった逃げ馬(3)

先週まで、逃げ馬の精神的な特性を書いてきた。
その中心的なテーマは、特に重賞などのトップクラスのレースにおいて、
前走、逃げている馬は精神的に嫌がる可能性が高く、危ないということだった。

ところが先週のフローラSでアグネスワルツが逃げて4番人気で2着に粘った。

これはどういうことだろう?

実は私はこのレースは3連複を2点目で当てている。
そこには、アグネスワルツが「精神的な問題を抱えていない逃げ馬」だという認識があったからに他ならない。その根拠は3つだ。

1つめは休み明けであること。
馬は前走との記憶の落差で走る。
したがって、その記憶が遠い休み明けは、前走の位置取りを「連続性のあるショック」の類と考える必要はほとんどない
(しかもMには、「休み明けは走る喜びを素直に表現できる逃げ、先行馬の方が有利」という理論もある)。

2つめは格上げ戦であるということ。前回、例に挙げたオースミスパークと同じだ。
競走ステージが変わるのだから、精神的には極めてフレッシュ。
前走の精神的なわだかまりを考慮する必要はほとんどない。

3つめは400mの大幅延長であること。
これはMでは「逃げ馬の延長」と呼んで、評価されている。
距離が延びればペースが緩みやすい。
したがって、前走より精神的に楽に逃げられるのだ。

以上のうち、1つめは9割方、2つめは8割方、3つめは5割方、前走逃げていたことを精神的に消す材料になりうるものであり、
それが3つも揃っていたら、むしろ精神的なプラス材料の方が多い。


逃げられなかった逃げ馬(4)

前回まで、前走逃げた馬は精神コントロールが難しいという話をしてきた。

特に前走逃げて同じような条件を好走した馬はストレスで動きが鈍る。
それを抑えるには、休み明けなどのリフレッシュ、格上げなどの鮮度などが必要なのだった。

でも、そういうものがなくても、比較的好走しやすいタイプがいる。

それは、あまり物事を考えずに、気分よくラップを踏むタイプだ。
もちろん、そういうタイプでもストレスの影響は出るが、比較的軽微で済む。

例えば、前走逃げて、また今回も逃げてGIを連対した経歴を2回も持つ希有の馬ローレルゲレイロ。
彼の場合は、他馬と関係なく、ほとんど自分の世界でひたすら逃げるタイプなので、相手との精神的な関係性が希薄になりやすい。


逃げられなかった逃げ馬(5)

先週は前走逃げた馬について書いた。
すると早速、前走逃げた馬が、日曜の京都で2連勝したので、そのパターンについて見てみう。

まず、矢車賞。
このレースには、前走逃げていたエリモクイーンという馬が出ていた。
2走前は1200mを後方のまま惨敗。
前走は600m延長で逃げに出るという、順ショックになる位置取りショックを掛け、4番人気で勝った馬だ。
M的には、狙うなら延長で前に行く位置取りショックを仕掛けてきた前走の方だろう。
今回は、逃げの位置取りショック激走後で、むしろ消すタイミングになる。

ただ私は本命に予想した。その理由は2つ。

1つめは、今回が格上げ戦だということ。
以前話したステージの変更で、位置取りショック好走のストレスを相殺する鮮度がある。

2つめは、小回りの福島から、京都外回りになる点だ。
逃げ馬は小回りの方が有利という考えもあるが、そんなことはない。
精神的には、絡まれずに気分良く逃げられる可能性の高い外回りの方が逃げやすい。
精神論はそこまでで、あとは純粋にどちらがそのとき逃げ切りやすい馬場状態になっているか、それだけのことだ。
直線の長さはほとんど関係ない。

前走の福島は前後半ラップで、1.5秒前半の方が速かった。
つまり、先週書いた「自分の世界」で逃げた後だ。
今回も気分良く、自分の世界で逃げられるので、逃げ馬に最もマイナスになる他馬との関係性が存在しない。

あとは絡む馬がいないからといって、矯め逃げしないことだ。
そうすると関係性が出てくる。
離して気分良く平均ラップで逃げる方が良い。

ところが、レースはスローで矯めて逃げたのでかなり冷や冷やして見ていた。
結果クビ差勝ち。
馬単の50倍を辛くも当てたが、実に危なかった。
離して逃げていたら、前のレースの都大路S同様に圧勝していただろう。
逃げ馬はスローの方がよいという考えも、M的には必ずしも正解ではないのだ。
如何に他馬との関係性を断ち切って、気分良く逃げられるかの方が重要になる。
そして、今回どんな逃げ方が良いかは、タイプとローテーションによって異なる。
同馬の場合は、これまでS質[注 1]な競馬をしていたので、
離した方が良かったのだ(タイプ的にはL要素[注 2]の血統なので矯めてもぎりぎり逃げ切れたが)。

また想定オッズより人気になって、単勝が5.1倍まで落ちてしまったのも計算外だった。
オッズが落ちた主な理由は、まさにその前のレースの都大路Sにあったのである。

[注 1]S(闘争心)
M3タイプの一つで、闘争心を持つ馬を表す。他馬との関係性を絶ち、自分勝手に一本調子に走りきろうという性質。Sの由来は闘争を表す"Struggle(英)"の頭文字から。

[注 2]L(淡泊さ)
M3タイプの一つで、淡泊さを持つ馬を表す。自分のリズムで淡々と走ろうとするタイプの馬で、延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効的。Lの由来は軽さを表す"Light(英)"の頭文字から。


逃げられなかった逃げ馬(6)

都大路Sでは5番人気のシルポートが逃げ切ったのだった。
その為に、逃げ有利の馬場ということで、次のレースの矢車賞のエリモクイーンも人気になってしまったのである(私が勝負レースで取りあげて本命にしたこともあるかもしれないが)。

さて、そのシルポートだが、前走のマイラーズCも逃げていた。
つまり、前走逃げていた逃げ馬だった。

逃げた馬がまた逃げるのに重要な要因として、この間、「自分の世界で逃げる馬」という話を書いた。
そういうタイプは、前走逃げのストレスがそれほど影響しないのだった。
同馬の場合も、他馬は関係なく、自分のペースで、ペースを落とさずに逃げた方がよいタイプだ。

したがって、2走前の難波Sで逃げ切ったときは、私は勝負レースに選んで、本命にした。
このときも、前走逃げていたのだ。
本命にした理由に、この馬のタイプ以外にも、ステップの質があった。
前走は中山の1600mで、今回は阪神外回りの1800m。
延長で広いコースになる。
逃げ馬が気持ち良く、自分の世界で逃げるには良いステップだ。

実は今回の都大路Sも、前走が1600mの多頭数で厳しい流れで、今回は延長1800mの外回りと、気持ち良く逃げられるショックが掛かっていた。
ただ、同型のホクトスルタンがいたので、競り合って、自分の世界にならずに、関係性を結んでしまうのが怖くて、
今回はあまり評価しなかった(あるいは逆にスローで引きつけて逃げてしまうのも怖かったが)。

しかし、レースはシルポートの得意な離した逃げ。
しかも平均ペース。こういう自分の世界の逃げ馬は、
変にペースを落として引きつけずに、平均ペースでの離した逃げというのが、世界に入り込めて一番合う。
この形になれば、まず負けられないところだろう。

もちろん、前走逃げた馬は基本的には危ない。
例えば今週の日曜東京7Rのシリコンフォレスト。
前走は同一条件で逃げて2着接戦と好走。
しかもこれまで7戦して、4着になったのが一回きりで、あとは全て3着以内という超安定馬。
前走と同一条件では、崩れる要素はないということで、単勝2倍の断然人気に支持された。

しかし、これはあまりに危ない。
まず前走が同一条件を逃げて接戦好走という点だ。
今まで書いたように、接戦ではストレスが溜まってしまうし、世間一般ではプラスと考えられている同一条件の好走も、この場合は震えが来るほど危ない。
今回は逃げ馬のナイーブな気持ちを支えるショックがない上に、飽きも加わるのだ。

挙げ句に、前走は1400mにしては遅い流れ。
つまり自分の世界で逃げている馬でもないのだ。
ただ、今回も他に逃げ馬がいないので、スローで離して逃げられたら、さすがに逃げ馬というのはもともと精神的には「揉まれない優位性」を持っているので、ストレスがあっても逃げ切れることはある。
そこでこの断然人気を7番手評価にはしたが、結局ペースが1400mらしい普通の締まったペースになったので、9着に惨敗したのだった。

生まれて初めて崩れたわけだが、Mからすれば全く持って当たり前の話である。
この断然人気馬が危ないので、私はわざわざ勝負レースにこのマイナーな7Rを選び、馬単35倍を1点目で当てることが出来たのだった。