第571回 芝→ダート替わりについて考える
2012/2/13(月)
今週は今年最初のG1・フェブラリーSが行われる。登録馬を見渡すと、マイルG1・2勝のグランプリボス、芝の重賞で3勝を挙げているスマイルジャック、10年京都金杯勝ち馬ライブコンサートと芝のマイル路線で活躍してきた馬たちの名前がある。ライブコンサートは昨年のフェブラリーSに参戦しているが(勝ち馬トランセンドから0.9秒差の7着)、グランプリボスとスマイルジャックは今回が初ダート。2頭がダートのマイルG1でどのような走りをするかに注目しているファンも多いだろう。そこで今回は今年のフェブラリーSを見据えながら、芝→ダート替わりについて分析してみたい。集計期間は09年から12年2月5日まで。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 芝→ダート、ダート→芝替わりの成績
芝⇔ダート |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
芝→ダ |
628- 581- 582- 9760/11551 | 5.4% |
10.5% |
15.5% |
74% |
80% |
ダ→芝 |
326- 327- 373- 8932/ 9958 | 3.3% |
6.6% |
10.3% |
70% |
72% |
始めに表1では芝→ダート、ダート→芝替わりの成績をまとめてみた。単純に比較すると、芝→ダート替わりのほうが優秀。回収率では大きな差がないものの、勝率、連対率、複勝率は1.5倍ほどの開きがある。以下では種牡馬、クラス別成績から、芝→ダート替わりの狙い目を探っていきたい。
■表2 芝→ダート替わりの種牡馬別成績
順位 |
種牡馬 |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
1 |
ファスリエフ | 4- 2- 1- 13/ 20 | 20.0% |
30.0% |
35.0% |
75% |
106% |
2 |
ウォーエンブレム | 4- 2- 0- 14/ 20 | 20.0% |
30.0% |
30.0% |
80% |
62% |
3 |
キングカメハメハ | 33- 32- 29-261/355 | 9.3% |
18.3% |
26.5% |
127% |
108% |
4 |
アグネスタキオン | 28- 21- 18-189/256 | 10.9% |
19.1% |
26.2% |
106% |
98% |
5 |
ディープインパクト | 9- 3- 5- 48/ 65 | 13.8% |
18.5% |
26.2% |
79% |
60% |
6 |
ゴールドアリュール | 15- 8- 13-109/145 | 10.3% |
15.9% |
24.8% |
84% |
76% |
7 |
ワイルドラッシュ | 12- 5- 6- 77/100 | 12.0% |
17.0% |
23.0% |
94% |
88% |
8 |
コロナドズクエスト | 2- 9- 3- 48/ 62 | 3.2% |
17.7% |
22.6% |
27% |
78% |
9 |
ネオユニヴァース | 32- 23- 20-259/334 | 9.6% |
16.5% |
22.5% |
107% |
120% |
10 |
ブライアンズタイム | 14- 9- 11-118/152 | 9.2% |
15.1% |
22.4% |
53% |
105% |
11 |
プリサイスエンド | 6- 5- 6- 59/ 76 | 7.9% |
14.5% |
22.4% |
70% |
105% |
12 |
ゼンノロブロイ | 14- 10- 12-125/161 | 8.7% |
14.9% |
22.4% |
114% |
94% |
13 |
フレンチデピュティ | 10- 12- 9-110/141 | 7.1% |
15.6% |
22.0% |
219% |
149% |
14 |
マンハッタンカフェ | 22- 19- 20-218/279 | 7.9% |
14.7% |
21.9% |
57% |
65% |
15 |
ストラヴィンスキー | 6- 6- 5- 61/ 78 | 7.7% |
15.4% |
21.8% |
79% |
67% |
16 |
ダイワメジャー | 4- 2- 2- 29/ 37 | 10.8% |
16.2% |
21.6% |
49% |
45% |
17 |
サウスヴィグラス | 2- 4- 6- 45/ 57 | 3.5% |
10.5% |
21.1% |
498% |
197% |
18 |
クロフネ | 31- 21- 19-267/338 | 9.2% |
15.4% |
21.0% |
100% |
91% |
19 |
トワイニング | 8- 3- 4- 59/ 74 | 10.8% |
14.9% |
20.3% |
151% |
92% |
20 |
アッミラーレ | 2- 3- 1- 24/ 30 | 6.7% |
16.7% |
20.0% |
152% |
90% |
29 |
タニノギムレット | 12- 11- 17-183/223 | 5.4% |
10.3% |
17.9% |
29% |
84% |
57 |
サクラバクシンオー | 14- 13- 9-233/269 | 5.2% |
10.0% |
13.4% |
101% |
46% |
- |
Singspiel | 1- 2- 0- 13/ 16 | 6.3% |
18.8% |
18.8% |
300% |
80% |
表2は芝→ダート替わりの種牡馬別成績ベスト20。1位は08年から日本で繋養されているファスリエフ。出走回数は最低ラインの20回だが、1着4回2着2回は優秀な成績といえる。今後、同産駒は増えるはずで、今から注目しておいてもいいだろう。3位のキングカメハメハは出走回数が355回にも達しながら、単・複回収率は100%オーバー。キングカメハメハの代表産駒といえば、ローズキングダム、アパパネ、トゥザグローリー、ルーラーシップなど。パワー溢れる走りをするタイプが多く、芝→ダート替わりでも力を発揮しているようだ。
サンデーサイレンスの後継種牡馬では、アグネスタキオン、ネオユニヴァース、ゼンノロブロイがオススメ。いずれも現役時代にダート経験はなかったものの、産駒はダートでも活躍している。ダートを主戦場としていたゴールドアリュールは6位にランクインも、前述の3頭と比べると回収率でいまひとつ。08年の「第221回 自身の特徴をそのまま伝えるゴールドアリュール」で、同産駒は芝→ダート替わりが狙い目とお伝えしたが、近年の成績を見ると平均的な数字に落ち着いている。そのほかではフレンチデピュティとその子・クロフネの成績がいい。両産駒とも芝、ダートどちらでも走れるタイプが多く、芝→ダート替わりでも凡走することは少ないのだろう。
ベスト20位には入らなかったが、今年のフェブラリーSに登録しているグランプリボス(父サクラバクシンオー)、スマイルジャック(父タニノギムレット)、ライブコンサート(父Singspiel)の父についても調べてみた。タニノギムレットは29位、サクラバクシンオーは57位で、強調材料はなさそう。Singspielは出走回数が16回のため、順位は出なかったが、好走率はタニノギムレット、サクラバクシンオーより上。3頭の中では一番、芝→ダート替わりで買える種牡馬かもしれない。
■表3 芝→ダート替わりのクラス別成績
クラス |
着別度数 |
勝率 |
連対率 |
複勝率 |
単回収率 |
複回収率 |
新馬 |
1- 0- 0- 5/ 6 | 16.7% |
16.7% |
16.7% |
108% |
40% |
未勝利 |
399- 383- 377- 5871/ 7030 | 5.7% |
11.1% |
16.5% |
80% |
84% |
500万下 |
171- 158- 156- 2832/ 3317 | 5.2% |
9.9% |
14.6% |
64% |
75% |
1000万下 |
39- 30- 26- 607/ 702 | 5.6% |
9.8% |
13.5% |
89% |
84% |
1600万下 |
9- 8- 11- 228/ 256 | 3.5% |
6.6% |
10.9% |
27% |
64% |
OPEN特別 |
8- 2- 10- 169/ 189 | 4.2% |
5.3% |
10.6% |
24% |
36% |
G3 |
1- 0- 2- 39/ 42 | 2.4% |
2.4% |
7.1% |
25% |
34% |
G2 |
0- 0- 0- 0/ 0 | 0.0% |
0.0% |
0.0% |
0% |
0% |
G1 |
0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% |
0.0% |
0.0% |
0% |
0% |
表3は芝→ダート替わりのクラス別成績で、未勝利戦の好走率、回収率が最もいい。クラスは上がるにつれて好走率はダウンし、重賞組は【1.0.2.48】。勝ち馬は昨年のシリウスSを勝利したヤマニンキングリー(初ダート)のみである。3着2回は、09年シリウスS3着ゴールデンチケット、10年武蔵野S3着ブラボーデイジー。2頭は過去にダートグレードを勝利しており、初ダートで通用するケースはほとんどない。
■表4 前走芝のレースに出走していたフェブラリーS好走馬(97年以降)
年 |
着順 |
人気 |
馬名 |
前走 |
ダート実績 |
03年 | 3 |
4 |
イーグルカフェ | 有馬記念14着 | ジャパンCダート1着 |
02年 | 1 |
1 |
アグネスデジタル | 香港C1着 | 南部杯1着 |
01年 | 3 |
4 |
トゥザヴィクトリー | 阪神牝馬S1着 | 初ダート、のちにドバイワールドC2着 |
98年 | 1 |
6 |
グルメフロンティア | 中山金杯1着 | ながつきS1着 |
フェブラリーSがG1に昇格した97年以降、同レースの芝→ダート替わりは【2.0.2.32】。勝率・連対率5.6%、複勝率11.1%で、単・複回収率は50%未満。凡走することのほうが圧倒的に多い。00年にはキングヘイローが初ダートで1番人気に支持されたが、13着に惨敗した。10年には芝の重賞勝ち馬が5頭も出走。3番人気レッドスパーダは12着、4番人気リーチザクラウンは10着に敗退。最高着順はスプリントG1で2勝を挙げていたローレルゲレイロの7着だった。
それでも好走馬4頭の特徴を見ていくと(表4参照)、03年3着イーグルカフェ、02年1着アグネスデジタルは前年にダートのG1を優勝。芝・ダートどちらでも走れるタイプで、前走が芝でも全く問題はなかった。98年1着グルメフロンティアはフェブラリーSがダート重賞初出走だったが、前年のながつきSでダート重賞勝ち馬エムアイブランを下して勝利。ダートの重賞でも十分に通用する力を証明していた。このように好走馬4頭中3頭は過去にダートのオープンクラスを勝利。01年3着トゥザヴィクトリーは初ダートだったが、次走ドバイワールドCで2着に好走。ダートでも相当のポテンシャルを秘めていた馬で、例外と見てよさそうだ。
今年のフェブラリーSに登録しているグランプリボス、スマイルジャック、ライブコンサート。グランプリボスとスマイルジャックは初ダートで、表2の種牡馬でも大きなアドバンテージはなく、軽視したほうがよさそう。ライブコンサートは昨年のフェブラリーSでまずまずの内容を見せたが、勢いは昨年のほうが上。すでに8歳で、さすがに上位争いは厳しいだろう。今年のフェブラリーSは例年通り、ダート路線を歩んできた馬を中心に考えたい。
ライタープロフィール
フランキー森山(ふらんきー もりやま)
1984年1月、神奈川県生まれ。重賞レースにおいては、毎年同じようなステップで出走してくる馬が多いことから、データ競馬の有効性に着目。データde出〜たでは主に過去の好走馬の実績を重視し、予想を展開している。馬券を買うのはもちろん、競馬場へ行くことも好きなタイプ。好きなレースは平安S。05年に中央競馬の全場踏破達成。その後は、地方、海外の競馬場へもたびたび訪れている。