■ 解説
2003年勝ち鞍数2位のサクラバクシンオー。北海道シリーズは本当に当たり年だった。
特に母父グリーンフォレストの2頭、ナムラビッグタイムとタイセイブレーヴが活躍。
これまで、多くは母父ニジンスキー系の活躍が目立っていただけに、このダンチヒ系との相性の良さは今後にも通じるものだろう。
ただ大物感を感じる産駒が1頭もいないという欠点もあるが・・・。
ナスルーラ系のプリンスリーギフトのラインは、かつてはテスコボーイを筆頭に、ファバージ、バーバーなどによって隆盛を誇り、
昭和50年代の日本競馬を牽引してきました。しかし今では見る影も無い有り様。
テスコボーイ-トウショウボーイのラインも、ミスターシービーで終わりそうだ。(トウショウボーイは母父としてはいまだ大きな影響力を持つが)
そのプリンスリーギフト一族の中で、唯一気を吐いているのが、テスコボーイ-サクラユタカオー-サクラバクシンオーのライン。
バクシンオー産駒には実にハズレが少なく、堅実。POGでも1頭は取っている人も多いはず。しかも、仕上がりも早い。
仕上がりの早さの他に、馬券戦略的に押さえておくべき特徴としては、
〔1〕 産駒にはタイプのバラツキが少なく、距離適性その他はほぼ共通すること。
つまりバクシンオー産駒は大体どれも同じタイプで、強力な遺伝力を持つ。
〔2〕 1000mから1400mまでなら芝ダート関係なし。
直線1000m競馬には特に強く、芝のマイルもかなり好走率が高い。
〔3〕 得意な条件では強いが、そうでないと実にあっさり負ける。だから来る時は一緒に来ることが多い。
(上位着順に複数入りやすい)苦手とするのは力の要る馬場=芝の道悪、砂の深いダート。
〔4〕 勘違いしている人が多いが、実はスタートダッシュは良くない馬がほとんど。
二の脚から徐々に加速していき、勝負所でトップスピードに入る。
典型的なスピード持続力タイプ。とにかくワンペースで走れる展開に強い。
しかし、バクシンオーの血もおそらく残らないのでは・・・という不安が。
それは、勝ち鞍の割には出世馬が極端に少ないからだ。
ショウナンカンプが引退した今、現役古馬の牡馬のオープン在籍は、もはや盛りを過ぎたトウショウリープ1頭。
準オープンもメジロマイヤーを始め数えるほどで、そのほとんどは旬を過ぎた馬。
500万、1000万クラスに産駒数がダブついているのが現実。
逆に言えば、1000万クラスから1600万へ昇級する境目くらいまでくると、人気で消える産駒も目立ってくる、ということになる。
これまでバクシンオーは母父ニジンスキー系(ショウナンカンプ、ブルーショットガン、ナムラマイカ)と相性が良かったが、
バクシンオー×母父ミスプロのニックス(=血統の融和性)が確立していけば、種牡馬としてのバクシンオーももうひと花咲かせられる。
産駒の傾向としては、勝ち上がり率の高さや、2002年の高松宮記念優勝馬のショウナンカンプを筆頭に、ダート、芝を問わず短距離を得意とする産駒が多い。短距離競走が充実している現在の中央競馬に傾向が合っており、毎年リーディングサイアーランクの上位に名を連ねている一方、勝ち上がった後に頭打ちになる産駒も多く、G1クラスの大物はあまり出てきていない。平地ではほぼ短距離専門であるが、2004年の中山大障害、中山グランドジャンプ優勝馬のブランディスのような長距離の障害競走で活躍する産駒も輩出している。
なお、後継種牡馬としてショウナンカンプ、サブミーカーがいる。
■ バクシンオー産駒の中山芝1200との相性は?
真剣に競馬の予想を続けていると、嫌な予感はよく当たるようになる。(いい予感はまず裏切られるが)
ボクの場合、特に血統について原稿を書いていると、文字を打った瞬間に「ゾクッ」とするような寒気を感じることがある。特に名種牡馬についての弱点を書くときに、その予感はよく当たる。
単行本「血統ビームEX」では、「サクラバクシンオー産駒は中山の芝1200mで07年以降勝ち星がない」ことを指摘した。このフレーズを書いた瞬間に、たしかに寒気を感じた。(だから、次以降の文章では予め言い訳を書いた。)
そして迎えた9月の中山開幕週。土曜の1レースに組まれた芝1200mでサクラバクシンオー産駒はいきなり勝利。翌日の初風特別でも同じくバクシンオー産駒のメイビリーヴが勝利した。2着は母父バクシンオーのレッドハイヒールだ。
初風特別はホームページでも勝負レースに選んだのも、この2頭をカモるつもりもあったのだが、逆にこちらがムシり取られる惨敗であった。
(フォローしておくと、先週もホームページで公開した血統ビームEXの単勝回収率は196%、複勝回収率は141%。初風特別は惨敗だったが、トータルでは3週連続で140%以上の回収率となっている)
サクラバクシンオー産駒は、軽快なスピードで先行してそのままなだれ込める馬場、レースが得意な馬が多い。
バクシンオー産駒が中山芝1200mで07年から先々週まで勝ち星がなかったのは、その間の中山芝1200mは軽快なスピードで押し切れない馬場の影響もあったわけだ。
ところが、先週はバクシンオーの血を持った馬がまとめて激走したわけだから、軽快なスピードがいつも以上に活きる馬場といえる。
先週、中山では芝のレースが12レース行われたが、「前走芝のレースで3コーナー5番手以内の先行競馬」を経験していた馬が14頭連対した。
先週は新馬戦が2レース行われたので、連対馬の70%は前走で3コーナー5番手以内の競馬を経験していたことになる。
ちなみに、バクシンオーの血を持つ馬が1、2着となった初風特別も、「前走で3コーナー3番手以内」の競馬を経験していた馬は4頭のみだったが、そのうち3頭が1〜3着を独占した。
先週は土曜に雨が降ってもこれだけの傾向だったのだから、今週もスピード優先の馬場になるだろう。
もちろん騎手もその点は考えて先週よりもペースが速くなることも考えられるが、先週の馬場では、少々ペースが速くとも、後ろからの馬、特にコーナーで外を回る差し馬はまず届かない。
先週も、前走で3コーナー6番手以下の競馬で連対した6頭のうち、5頭は7番より内のゲートの馬だった。
また、先週の中山芝コースは母父レッドゴッド系が5頭出走して4頭連対した。京成杯AH・2着のアップドラフトも母父レッドゴッド系である。
レッドゴッド系はサクラバクシンオーと同じくナスルーラ系で芝1000mにも強い血統だ。血統を見ても、今の中山芝はスピードが活きる馬場といえる。
■ 代表産駒