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スペシャルウィーク

■ 特徴


■ 解説

 初年度はズブくて鈍重なステイヤーが中心だったが、2年目はシーザリオやスムースバリトンが出て大躍進。
 新馬を次々と勝ち上がり、2004年2歳ランクは3位。
 シーザリオとインティライミが種付けされた'03年産駒がすばらしいが、
 ブエナビスタやリーチザクラウンを輩出した'06年産駒も劣らず良い。
 '07年産駒も2歳戦ですでにタガノエリザベート、ステラリードなど重賞勝ち馬を輩出しており、今後も繁殖牝馬の質の向上が見込める。

 マイルのスピード競馬にも適応し、ダンスインザダーク産駒に近い軌道を描いている。
 基本形は「前半ゆっくり追走してロングスパート」が得意戦法。
 大跳びのフットワークで瞬時の反応は物足りないが点火すれば長い脚を使う。
 好走したレースの前半のラップに注目して取捨を決めたい。

 エンジンの掛かりが遅いとという持久力血統に共通の悩みを抱え、2400m向きの本格的ステイヤーは少数。
 2歳マイルと古馬のローカル芝2000重賞が見せ場となっている。
 弱点は忙しい流れや緩急のある展開にモロ弱いところで、逆にこれを克服できる馬は上のクラスにいける。
 スローの決め手勝負は不発も多く、扱いの難儀さではダンス産駒と双璧をなす。

 リーチザクラウンの全姉クラウンプリンセスは使い込まれると馬体細化していくので、馬体重プラスで買い。


スペシャルウィーク編 Part1

 今週から連載(前2作)でまだ詳しく見ていなかったスペシャルウィーク産駒を分析していこうと思う。
 
 スペシャルウィーク産駒は体力が豊富で、闘争心が強く、それなりの集中力も持っている。そう聞くとかなり頑強なタイプだと思われる読者も多いだろう。
 
 実際にブエナビスタ、シーザリオという最強クラスの牝馬2頭を始め、何頭かのGI連対馬を出している。
 
 ただ、精神的なバランスの崩れやすいタイプでもある。その為に「大穴血統辞典(白夜書房)」では、波マークは「ギザギザ」、つまり激しい好凡走があるパターンとされている。こういうタイプは母父からの体力供給が望ましいと書いたが、ブエナビスタの母父は量と体力を供給するカーリアン。シーザリオの母父も体力と量を潤沢に供給するサドラーズウェルズとなっている。
 
 それでも、量の安定供給に成功する例は少なく、潜在的な力を安定して出せるタイプは少ない。
 
 そういう不安定な精神をコントロールするには短縮や特殊な馬場がベターだ。逆に延長は前走より長い距離を我慢しなければならないため、精神的なアンバランスさを出す可能性が高まる。体力があり、スタミナもあるので長い距離が向くのに、延長適性はそれほどでもない。これがスペシャルウィーク産駒を難しくさせる原因になっている。
 
 例えば、ちょうど今週、3番人気で阪神JFに出走したタガノエリザベート。しかし、私はこの馬を人気でも前日予想で無印とした。危なくてこんなスペシャルウィーク産駒は買えない。
 
 どうしてか?

スペシャルウィーク編 Part2

 タガノエリザベートは前走ファンタジーSが、次位を0.7秒も上回る上がり33.5秒という圧倒的な数字で、前残りの流れなのに最後方から差し切り勝ちを決めた。それがいけない。

 前走は1400m→1600m→1400mのバウンド短縮。短縮で気分よく追い込みを決めた、Mでいう「差し馬の距離短縮」である。その後の延長。ペースも緩む。200mの延長を気分良く追い込みを決めた後に、気分良くまた走れと言うのが、特に精神的にコントロールが難しいスペシャルウィーク産駒にとっては厳しい注文だ。

 実際、スペシャルウィーク産駒の延長は『大穴血統辞典(白夜書房)』のオプションでは「D」評価で、1600mへの延長は複勝回収率40円台と低い。データ的にも合わない条件になる。結局阪神JFは、ファンタジーSで負かしたベストクルーズにも及ばず、6着凡走に終わった。

 もちろん、延長が「D」だからといって、延長で走れないわけではない。むしろ体力面、スタミナ面では延長向きであり、要は気分良く競馬をさせられるかどうかに懸かっている。

 例えばリーチザクラウン。同馬は延長のダービーで5番人気で2着に激走した。このときは重馬場で、前走好位から、今回2番手へと、前に行く位置取りショック。馬場が渋ると精神的にキレやすいタイプが走りに集中しやすいのは、ダンスインザダーク産駒のときに解説した通りだ。しかも体力自体は豊富だから重は苦にしない。前走の皐月賞13着惨敗から激変したように、気分さえ乗れば激変できるわけだ。

 これと同じパターンはインティライミの08年宝塚記念11番人気3着のとき。重馬場の延長で、前走3角7番手から、3番手先行という前に行く位置取りショックを掛けた。重と位置取りショック。全く同じである。

 しかし、同じ延長でも、リーチザクラウンが1番人気になった菊花賞はちょっと危ない。前走休み明けを気持ち良く逃げて連対した後だ。延長で同じように長時間、前走同様に気分良く走り続けられる保証はない。したがって、私は1番人気の同馬を4番手評価とした。


スペシャルウィーク編 Part3

 スペシャルウィークの菊花賞と言えば、フローテーションの15番人気で2着激走という激走があった。これも延長になる。

 このときは、前走の神戸新聞杯を12着惨敗後。ストレスはもちろん無いし、神戸新聞杯はスローペース。延長の菊花賞の方が、1000m通過が2秒近く速い。延長なんだけど、前走より忙しくなって、しかも1番枠では飽きる暇がない。そこでスペシャルウィーク産駒の精神コントロールの難しさより、スタミナという長所だけが活かされるわけだ。この辺りはやはりダンスインザダーク産駒の激走パターンに似ている。

 もちろん、普通、激走後の600m延長になるステイヤーズSの1番人気は、気持ちが持つ保証がないので危ない。が、1番人気2着と人気を裏切る形にはなったが、連対は果たした。その最大の要因は、ステイヤーズSで逃げに出る位置取りショックを仕掛けたからだ。前走4角最後方という追い込みから、一転、逃げるという極端なショック療法に出ることで精神状態をコントロール出来たわけである。

 そして2走後、同じような長距離のダイヤモンドSに、再び1番人気で出てくるが、12着惨敗。今回はステイヤーズSのような極端な位置取りショックが掛けられないのだから、飽きるのは致し方ないというわけである。

 この3600mと3400mという似たような距離での2着と12着という正反対の決着が、決して能力や適性で結果が決まっているのではなく、ショックを中心とした極めてM的な精神状態という要素で決まっているのだということを端的に示している。まさにスペシャルウィーク産駒の精神コントロールの難しさを具現した結末と言えるだろう。


スペシャルウィーク編 Part4

 これまでスペシャルウィーク産駒のダンスインザダーク産駒に類似する精神的キレやすさについて書いてきたが、S要素とC要素のバランスはダンスインザダーク産駒より強い。したがって量が安定供給されれば、ブエナビスタやシーザリオのような強固な要素の結合をみることは出来る。

 またダンスインザダーク産駒より、C的要素、ないしS的要素のバランスが強い産駒も多く、そういうタイプはダンスインザダーク産駒とは違う動きをする。

 例えばC要素の比較的強いのがトライアンフマーチ。未勝利勝ち後に、強い相手に怯まない特性で若葉Sも4番人気2着と連対。さらに相手強化の皐月賞でも8番人気2着と激走。

 鮮度もあったが、例えばダンスインザダーク産駒の場合、若葉Sを鮮度で連対するパターンはあるが、トライアル好走後、もう一度同じ距離の本番で連続で頑張るということはあまりしない。飽きやすさのスピードは遙かにダンスインザダーク産駒の方が早い(暮れに970倍を1点目で当てた江坂特別もダンスインザダーク産駒の飽きやすさを利用していた。この連載の読者なら、すぐに分かったはずだ。このレースに関してはダンスインザダーク産駒の飽きやすさは何度もここで触れたので、「Mの法則」の連載の方で書いておいた。そちらを参考にして欲しい)。

 というか、ダンスインザダーク産駒は「飽きやすさ」が分裂気味の走りを呼ぶわけだが、スペシャルウィーク産駒の場合はまさに精神分裂気味なM3要素のアンバランスによって、結果的に分裂気味な走りを生むわけだ。
 
 なお、若葉S、皐月賞共に多頭数の内枠だった。その後凡走を続けた後、速い流れの短縮多頭数マイルで1着と集中力を発揮したのだった。


スペシャルウィーク編 Part5

 今週は以前途中まで解説していたスペシャルウィーク産駒の続きを書こう。

 サンバレンティンの場合も、重賞で2度連対したのだが、その2回がともに16頭立ての福島2000mで内枠。小回りの内枠の厳しい流れで集中力を引き出した形になる。ちなみに、その2走とも、前走は東京、広いコースの単調な流れで集中力を引き出せなかった後のレースになる。

 クラウンプリンセスの過去3走で馬券に絡んだときは、阪神2000m→阪神1600mの短縮で多頭数だった米子Sで7番人気1着と、やはり阪神2000m→阪神1600mの短縮で多頭数だったポートアイランドSの4番人気1着。全く同じ集中力の引き出し方だ。逆に小倉記念の9番人気3着は1600m→2000mの延長だが、阪神→小倉で延長に関わらずペースアップしていた。

 トーホウシャインの単勝万馬券で勝ったマーメイドSは、重馬場で、前走が1000万条件だった。相手強化でも怯まないのと、重で集中力を引き出し、精神的アンバランスさを相殺させてしまうというパターンになる。

 ただスペシャルウィーク産駒の場合は、一度精神的にキレるとトンネルが長い性質があるので、よいショックがあって精神的集中が保たれそうなとき以外は、特に過去の実績で人気になっている場合は、あまり買わない方が良い。


スペシャルウィーク編 Part6

 以前、スペシャルウィーク産駒の飽きやすさについて書いた。それと同時にSやC要素がダンスインザダーク産駒より強く、集中力を使う場面で好走することもあるという話も書いた。その復習をするのに良いレースが揃ってきたので見てみよう。

 前回、例として挙げた一頭がトライアンフマーチだった。キャピタルSを短縮マイルという、SとC要素を要求する条件になって1着になったという話をした。

 次の東京新聞杯はM的には短縮激走後だから怪しい。しかし2着に好走。これが若葉S、皐月賞と連続好走したのと同じパターンになる。相手がOP特別から重賞と強化されても、集中力を活かせる条件で連続好走出来るわけだ。

東京新聞杯 レース結果


 ただそれでも私は予想では4番手評価とした。というのも、いくらそういうタイプとは言え、短縮激走後のストレス時に1番人気では単勝期待値は低いからだ。他の馬の単勝を買うべきレースではある。

 次は阪急杯。初距離1400mへの短縮ということで3番人気に人気を落とした。しかし、私は前走と同じ4番手評価と評価は変えなかった。初距離でリフレッシュするのと、厳しい流れの方がスペシャルウィーク産駒のアンバランスなS質が活きるからだ。ただ前走2着のストレスを考えると4番手が妥当と考えた。

阪急杯 レース結果


 結果、私が本命に予想したエーシンフォワードが勝って、馬単45倍を的中。

 トライアンフマーチは、1番人気のビービーガルダンが7着に敗れたように、好位差しに有利で、先行馬には厳しめの流れを前に行って4着に粘った。内容としては優秀なものだった。

 そして、その内容が評価されてダービー卿CTでは1番人気に支持される。適距離のマイルに戻ったのもプラス評価とされた。

 ところが、私はここでも4番手と評価を上げずに、マイネルファルケから入って馬連を当てることが出来た。

ダービー卿CT レース結果


 理由は以前書いたスペシャルウィーク産駒の延長という問題。前走より流れ鈍化で、果たして集中力が持続できるのか?

 もう1つは陣営が差しに回ると表明していたので、「差し馬の距離延長」という逆ショックである点。

 ただそれ以上に、実はもう1つ、私には引っ掛かっていたことがあったのだ。


スペシャルウィーク編 Part7

 それは「飽き」という問題だ。私が一貫してここ3走、人気より下の評価にしていたのは、この問題が実は大きかった。スペシャルウィーク産駒としては飽きにくいタイプとは言え、やはり短距離ばかりを続けて、そこそこ好走していたら飽きるのでは?という疑念である。

 もしこれが強い相手などで人気を下げているようなら、逆に混戦向きのSないしC要素の出現が怖いし、あるいは位置取りショックなどの気分転換材料など、いろいろ穴的な怖さが出てくる。ただ同じような低調なメンバーで人気では、飽きの確率の方が怖いのでは?ということだ。

 同じことは例えばステラリードの紅梅S、フィリーズレビューにも言える。特に紅梅SはGIからの相手弱化の短縮。条件は揃っているかに見えたが2番人気で惨敗。私はこのとき、短縮がピッタリ合うので対抗にはしたが、オープンの予想では珍しく1番人気のワイルドラズベリーを本命にして単勝を当てた。それはステラリードの精神的な飽きの可能性を少なからず感じたからだ。

紅梅S レース結果


 1600m以下のスペシャルウィーク産駒は、最初はその忙しさに面白味を感じて走るが、次第に走るのがバカらしく感じるパターンがむしろ多いのだ。

 そして8着。トライアンフマーチのダービー卿CTも10着だった。能力や展開などが理由だったのなら、これほど負ける必要はない。むしろ能力だけなら上位の筈だ。この4、5着ではなく、思い切った「惨敗」という結末。これこそが能力や展開ではなく、馬が走ることを投げ出してしまったことの証左に他ならないだろう。

 と、ここまでは先週の段階でほぼ書いていた原稿だった。そして、偶然というべきか、なんと、マイラーズCに2頭のスペシャルウィーク産駒が出てきたのだ。しかも1頭は今話しているトライアンフマーチではないかっ!

 そこで私が取った行動とはなんだったのか?

 次週は、その辺りを中心に見ていこう。


スペシャルウィーク編 Part8

 そう、マイラーズCには期せずして2頭のスペシャルウィーク産駒が出てきた。

マイラーズC レース結果


 リーチザクラウンとトライアンフマーチである。

 私は迷わずリーチザクラウンを上位に取った。前走が生まれて初めてのダート。そして芝の1600m以下は10戦ぶり。なんと1年半近くの空白があった。これなら飽きの問題もない。忙しい流れに、リーチザクラウンの持つアンバランスなS的要素が爆発する可能性が高い。

 そこで私は本命にした。この馬を重賞で本命にしたのは、重賞を走った10回の中で今回が初めてである。実際、それまでの中で勝ったのは単勝1.5倍のきさらぎ賞だけで、あとはみんな5番人気以内に支持されながら勝つことはなかった。精神コントロールの難しいスペシャルウィーク産駒の人気馬を敢えて本命にする理由など何もなかったのだ。

 しかし、今回はその精神コントロールが出来る材料が揃って、単勝6.6倍。これなら精神的にキレないで走りきれる可能性に賭けても良いオッズだ。

 トライアンフマーチの方は微妙だ。GIIIのハンデ戦からGIIへの相手強化で人気を落としている。しかし、再三書くように、相手強化はマイナスではなく、むしろプラスに働きやすいタイプだ。

 問題は「飽き」だ。短距離を連続している飽きである。ただ、前走は初めてマイルで惨敗した。精神的なリセットが効いている。むしろ心配は使い詰めの肉体疲労の方だった。そこで私は押さえの1頭に指名し、結局5点目で馬単62倍を当てることが出来た。

 ダートからのショックで久しぶりの勝利を手にしたリーチザクラウン、GIIへの相手強化で10着から激変したトライアンフマーチ。精神が如何に重要かを改めて示した結果に終わった。


スペシャルウィーク編 Part9

 スペシャルウィーク産駒では、忘れな草賞で単勝1.8倍の断然人気に支持されたラフォルジュルネも、今まで書いたパターンに嵌ってしまった。

忘れな草賞 レース結果


 前走は距離不足の1600mに出走して、最速上がりも5着。「距離が延びれば」という内容で、今回は2走前に0.8秒差で圧勝した2200mに近い2000m。しかも重賞から格落ちのOP特別の少頭数だ。断然人気にならない方がおかしいだろう。しかし、この連載の読者なら、その怪しさに気付くはずだ。

 短縮で強引に激走した後の大幅延長。果たして精神コントロールが付くのか?

 人気では怖い。

 そしてレースは、もともとスタートの速くない馬で出遅れたのは仕方ないが、その後は掛かってコントロールが効かなくなってしまって、弱メンバー相手に5着凡走。全く良いところなく、断然人気を裏切ってしまったのだった。

 また馬体重にも注意だ。彼女はデビューから馬体が少しずつ減って、今回も2kg減。精神的に消耗しやすい血統なので、特に入れ込んでの馬体減りには注意したい。

 このようにスペシャルウィーク産駒は、その能力がどうであるかというのはそれほど意味がなく、アンバランスなS質とC質に対して、如何に上手い働きかけがあるか?が好凡走のポイントになるのである。


■ 代表産駒