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AJCC(G2)

AJCC・男の解の公式
4角インに付けられる先行馬を狙え!

■ 経緯

日米の親善と友好を目的として、ニューヨーク・ジョッキークラブから優勝杯の贈呈を受け、昭和35年に創設された重賞競走。
第1回は芝2000mのハンデ戦で施行されたが、第2回からは2600mの別定戦に変更され、
その後、幾度かの距離や施行競馬場の変遷を経て、
昭和59年に距離が2200m(ただし、この年は降雪のためダート1800mに変更)となって現在に至っている。

年度 1着
2着
3着
タイム ラップ 3連複 3連単 メモ 勝負
結果
2012年 ルーラーシップ 1 ナカヤマナイト 2 ゲシュタルト 4 2.17.3 560 1270 不良 ×
2011年 トーセンジョーダン 1 ミヤビランベリ 6 ネヴァブション 3 2.14.2 13.0 11.9 13.0 12.8 12.7 12.5 11.8 11.4 11.5 11.3 12.3 4040 18300
2010年 ネヴァブション 5 シャドウゲイト 9 トウショウシロッコ 3 2.12.6 12.3 11.3 12.7 12.2 12.0 12.4 12.4 12.2 11.9 11.2 12.0 14110 111460
2009年 ネヴァブション 4 エアシェイディ 2 トウショウシロッコ 7 2.13.9 12.3 11.8 12.5 12.2 12.7 12.4 12.0 12.1 11.6 11.7 12.6 5340 27530
2008年 エアシェイディ 2 トウショウナイト 9 ブラックアルタイル 6 2.13.6 12.7 11.3 12.7 12.3 12.2 12.1 12.1 12.2 11.8 11.9 12.3 24420 142190 ×
2007年 マツリダゴッホ 2 インティレット 5 シルクネクサス 6 2.12.8 13.0 11.3 12.3 11.9 11.7 11.7 11.8 12.1 12.0 12.0 13.0 7210 28670 ×
2006年 シルクフェイマス 5 フサイチアウステル 2 ハイアーゲーム 4 2.13.2 13.0 11.6 12.5 12.0 12.2 12.0 11.9 12.1 12.0 11.6 12.3 3860 28100 やや重
2005年 クラフトワーク 1 エアシェイディ 3 ユキノサンロイヤル 5 2.11.4 12.7 11.3 11.9 11.6 11.7 11.9 11.8 12.1 12.0 12.2 12.2 1990 4100
2004年 ダンツジャッジ 2 ウインジェネラーレ 3 ユキノサンロイヤル 8 2.15.5 12.1 11.7 12.9 13.0 13.2 12.9 12.8 12.2 11.7 11.3 11.7 5080
2003年 マグナーテン 1 グラスエイコウオー 3 アグネススペシャル 2 2.12.5 12.7 11.4 12.1 12.0 12.3 12.0 11.9 11.9 11.8 12.0 12.4 1660

■ 傾向

4角急カーブと直線急坂があるため4角インを回れる先行馬が有利。

よく調教された、体力満々の先行馬がワンペースにレース運びをするとき、
後ろの馬は、よほど一瞬フットワークのピッチが上がる馬でない限り苦しい、というのがAJCCの大まかな傾向。

過去、中山で行われた10回分を集計すると、4角で5番手以内にいた馬が連対した数は、14頭。
20頭中14頭ですから、7割。勝ち馬も7頭で、ちょうどこちらも7割。

勝ち馬の通過順を見てみると…(2001年の東京開催を除く) 

勝ち馬 通過順 勝ち馬 通過順
2006年 シルクフェイマス 1-1-1 2000年 マチカネキンノホシ 6-4-4
2005年 クラフトワーク 5-6-8 1999年 スペシャルウィーク 4-3-3
2004年 ダンツジャッジ 5-6-4 1998年 メジロブライト 11-10-8
2003年 マグナーテン 1-1-1 1997年 ローゼンカバリー 2-2-2
2001年 アメリカンボス 5-5-3 1995年 サクラチトセオー 6-6-6

やはり前有利。先手必勝。


前走勝利の勢いは重要

1番人気は6勝となかなかの好成績なのだが、
3着以内でみると、どの人気からもまんべんなく好走馬が出ている。
多少人気のない馬にもチャンスがあるといえるだろう。
ちなみに過去10年で8番人気以下の馬が3着以内に入った年は6回を数える。

関西所属騎手が活躍

2000年から同じ中距離のG2戦である日経新春杯が1週前に移動したが、
同じ日に関西で重賞が組まれているのは以前と同じ。
このレースに乗るためにわざわざ関西から遠征してきた騎手には注目する必要があるのかもしれない。

前走より負担重量が増えたほうが良い?

このレースは別定戦。
前走との負担重量差別に成績をみてみると、前走より負担重量が増えた馬が良績を残していることがわかる。
特に前走より1〜1.5キロ重くなった馬の3着内率は37.0%と高率だ。
なお、このレースでの負担重量が前走より減って3着以内に入った3頭はすべて、前走が重賞で、5着以内に入っていた。

小頭数で流れは落ち着きやすい

展開では、小頭数になりやすい影響もあり、ペースは落ち着く傾向が強い。
後方待機組から狙うとしたら、早めに動けて息の長い末脚がないと厳しい。

汗が出にくく絞りにくい冬場なので、
休養馬は大きく割引き

金杯組を含めて中8週以内でのぞんで来る馬が多く、休養明けの馬は大幅な割引きが必要。

平穏な決着が多く地力勝負傾向

コース形態を見てもわかるが、
4コーナーの急カーブからマクってさらに最後の急坂を超えなければならないので、
長距離ということもあり、内枠を回る先行馬を外から捲くるのはよほどの脚がないと至難の業。
メンバーも揃わない重賞なので、そこまで脚を使える馬もおらず、だいたい順当な決着になる。
実績面のハードルは低いが、最低条件として芝1800m以上の連対実績が欲しいところ。

近年は高齢馬の活躍が目立つ

年齢別で見ると、4、5歳が中心となりほぼ互角の成績を残していたが、近年は高齢馬旋風。
AJCCは、ここ最近のトレンドの1つである「高齢馬」が席巻する結果になりました。
1・2番人気に推された4・5歳馬が掲示板にも載れないのを尻目に、7・8歳馬が上位1〜4着を独占。
特に1・2着は「GIIを2勝しているネヴァブション」「国際G1勝ちがあるシャドウゲイト」と、
実績は上位ながら近走は不振に陥っていた馬で、まさに“古豪”の復活でした。

中山金杯組が中心

ステップ別では、例年、中山金杯組が中心になる。

■ ステップレース

有馬記念(G1) AJCC(G2) 阪神大賞典(G2)
中日新聞杯(G3) 日経賞(G2)
中山金杯(G3) ダイヤモンドS(OP)
ディセンバーS(OP)

■ 2011年回顧

1週前の「日経新春杯」に注目の4歳陣がそろって出走してしまったため、別定のGIIとするとかなり手薄な組み合わせ。
有馬記念を小差5着のトーセンジョーダン(父ジャングルポケット)にとって、春のビッグレースを展望するには負けられない1戦だった。

レースの流れは予測された通りのスロー。
というより超スローの流れで展開し、レース全体は「63秒4-(12秒5)-58秒3」=2分14秒2。
先手を取った8歳ミヤビランベリに、途中からマルカボルト、サンライズベガが早めに動いて出たものの、
さして盛り上がりのない攻防に終始し、トーセンジョーダンが順当に抜け出してみせた。

2歳時に2000mで3連勝。うち2回が2分00秒台の好タイム。
文句なしのクラシック候補だったが脚元(裂蹄)の不安に悩まされ、3歳時と4歳の前半は休み休みで復調に時間がかかった。
しかし、もう完全復活だろう。
初めての58s、負けられない立場とあって大事に、慎重に安全策をとった印象が濃いから、
レース全体の盛り上がりの少なさも重なって、インパクトの薄い勝利になってしまったが、ここは順当に勝ち切ることが最大のテーマ。

ねじ伏せるような迫力には欠けたものの、「なにもムキになるような相手ではなかった。目標は次、さらにその次にある」。
活力のロスを避けた結果であると考えたい。爪の状態は安定してきた。
陣営は、日経賞か阪神大賞典をステップに、5月1日の天皇賞(春)に挑戦したいとしている。
全体の勢力図の中で、4歳世代の陰に隠れそうな駒不足の5歳牡馬陣に、遅れて台頭の「エース級」が加わったと考えたい。
きわめてタフで、豊かな成長力を身上とするクラフテイワイフ(父クラフティプロスペクターは、アグネスデジタルの父でもある)から広がるファミリーで、
ほとんど同血にも近い「いとこに」にカンパニーがいる。これからいよいよ真価発揮はありえる。次走に注目したい。

粘った8歳ミヤビランベリは渋い。
他が情けなさすぎたというより、苦しくなってバテそうになってからもう一回盛り返そうとするのがこのベテランの真価。
実質、後半の1000mだけのレースに近いような流れだったから、
並びかけていって止まったマルカボルト、サンライズベガは、勝ち負けうんぬん以前にミヤビランベリとの比較で大きく見劣ったことになる。

引き続き好調キープと思えたコスモファントムは、期待馬、注目馬揃いの4歳世代のトップグループに加われるかと思えたが、
理想の流れの好位キープで、かつ1番楽な56sで、着差以上の完敗。
この一戦だけで評価が下がるものではないが、本当の試金石がこのGIIだったから、陣営の落胆は大きい。
あまり強気になれなくなってしまった。

3連覇のかかっていた8歳ネヴァブションは、気難しさを出してもたれるのを防ぐ目的で右側だけブリンカー。
しかし、前半から行き脚がつかず、この流れで最後方に置かれた時点で勝負あり。
最後は底力で「形作り」はできたが、中間に心配された「走る気がなくなっているように思える……」が、実際の敗因となってしまった。
返し馬の迫力や全体のムードは決して陰りをみせた8歳馬のそれではなく、
この厩舎だからまた立て直しに成功するはずだが、前半の行き脚が鈍っているのは、もともとが「差しタイプ」ではないだけに心配である。

■ 2010年回顧

この日だけで5勝もした絶好調=横山典弘騎手の大きなサポートもあり、7歳ネヴァブション(父マーベラスサンデー)が鮮やかに、またまた復活してみせた。
骨折の長期ブランクが2回。捻挫による長期休養が1回。
4歳の秋以降は再三の休みをはさむ形になり、復活なったかと思えばまた休養を余儀なくされる苦しいローテーションだったが、
今回のAJC杯は着差は別に、昨年のAJC杯より強かった印象がある。

途中まではすぐ前にいた人気のキャプテントゥーレをマークしていたが、3コーナー過ぎからはあまり手ごたえの良くないキャプテントゥーレから、
さらに前を行くシャドウゲイトに目標を切り替えたようにインから進出開始。
競り落とした着差は「クビ」でも、シャドウゲイトの田中勝春騎手が「惜しかったけど、最後はノリちゃん(ネヴァブション)に遊ばれちゃった」という完勝だった。

軽く鋭い体つきやストライドではなく、この日のフットワークもやや硬い印象を与えてしまうほどだから、
理想は2分13秒9の勝ち時計に持ち込まれた昨年のような(良馬場発表とはいえ少し渋っていた)、もっと全体に時計のかかるコンディションなのだろう。

陣営はこの春シーズンの最大目標は、4歳時に挑戦して結果の出なかった天皇賞・春ではなく、宝塚記念に置く予定という。
宝塚記念のシーズンはだいたい堅い高速の芝状態ではないことが多い。
また、ステイヤーというよりはパワーの中距離型の色合いの濃い体つきとフットワークだから、この展望に賛成したい。
9歳馬エアシェイディの伊藤正徳厩舎は、種牡馬になったローエングリンを管理した厩舎でもあり、7歳ネヴァブションなどまだまだ成長途上の若手扱い。
本物になるのはこれからである。

ベテランホース大活躍の流れに乗るように、2着に粘ったのは8歳シャドウゲイト(父ホワイトマズル)。
3着トウショウシロッコも、4着マイネルキッツも7歳馬だった。

8歳シャドウゲイトのスランプは長かったが、有馬記念でトップグループ相手に道中進出してみせたあたり、確実に体調が戻りつつあったのだろう。
頭角を現したのがもう3年も前になる07年の中山金杯だから、こういうシーズンは合っているのかもしれない。
ベルモントルパンの逃げを途中から交わして主導権を握り、シャドウゲイト自身のレース内容は「60.5-(12.4)-59.7秒」=2分12秒6。
勝ったネヴァブションとともに自分たちの2200mの記録を更新してみせた。
最後は競り落とされたものの、シャドウゲイトもまた復活したのである。
距離の適性や望ましい馬場コンディションはネヴァブションとほぼ同じようなタイプ。
条件さえ揃えばもうひと花も夢ではない。

崩れないトウショウシロッコはまたまた善戦止まり。
今回はちょっと動きが悪く、あまり惜しい3着ではなかったが、この馬、3勝馬なのにこれで2〜3着が計「16回」。
不思議な記録をまた伸ばしてしまった。陣営は歯がゆい。
ファンにとっては買い方が難しい。そういう典型的な馬主孝行タイプは、しかし、ますますタフである。

マイネルキッツは本来が中距離型のはずで、もう少し流れにのれるかと思えたが、また今回も前半は置かれてしまった。
一段とズブくなった印象がある。
だから、目標とするのは3200mの天皇賞・春なのだ、といわれるが、行きっぷりの悪さはまた別問題で、昨年の春はもっとスピード感があった。
そのため3200mでは距離が長すぎると思われ人気薄だったのだが…。
一段と難しいベテランホースに変化した。

人気の5歳キャプテントゥーレは、ひと息入れた後の今回、当日輸送なしの冬場なのにマイナス12sの馬体重。
ふつう、だいたいが細くは見えない芦毛馬にしては、明らかに力強さに欠けていた。
敗因は距離というより、予想外の馬体重減だろう。

上昇の期待された4歳デルフォイ(父スペシャルウィーク)は、あまり見どころのない6着止まり。
休み明けになった中山金杯のレースぶりは悪くなかったが、あれは勝ったアクシオンもあまり体調はいい時ではなく、レース全体のレベルは高くなかった。
今回はほとんどがベテランホースばかりの中にあってただ1頭、これからに注目の若い4歳馬とあって、ちょっと期待を集め過ぎたかもしれない。

■ 2009年回顧

 途中から良馬場に変更された芝コースは、直前の1600m(古馬1000万下)の勝ち時計が1分36秒0にとどまったようにかなりパワーを求められるタフなコンディションだった。

 軽い芝でスピード、切れ味を発揮したいグループにとっては、予測された以上に苦しいコースだったろう。明暗は大きく分かれた。

 勝ったのは、2度の骨折休養があって長く勝ち星から遠ざかっていた6歳ネヴァブション(父マーベラスサンデー)。4歳の春、3連勝して天皇賞・春に挑戦して以来の久しぶりの勝利だった。

 追い込みの決まりそうもない芝コンディションを考慮して先行策を取った横山典騎手の好判断も大きいが、2度も骨折して長期休養を余儀なくされた馬を、無理することなく復活に向けて調整を続けてきた陣営の快心の1勝でもある。

 8歳エアシェイディもそうだが、伊藤正徳調教師の悠久さえ思わせる気の長い展望はつとに知られる。ネヴァブションは見事に、鮮やかに復活した。

 典型的な中〜長距離タイプで、こういう少し時計のかかる芝コンディションがぴったり合っていたのは確かだが、この春の天皇賞3200mにはとくに強気になれる有力馬はいない。4歳時の天皇賞・春ではメイショウサムソンの13着に終わっているが、このまま順調にいって時計のかかる馬場状態に恵まれるようだと、4歳時以上のレースも可能かもしれない。

 その同じ伊藤正厩舎のエアシェイディが好位の外から差を詰めて2着。一連の内容からさすがと思わせる連対確保だった。この8歳馬は「この秋の天皇賞を最大の目標にしている」という、あくなき長期展望がある。

 たしかにまだ衰えなど感じさせない。8歳馬がAJC杯で2着したのも史上初の快挙である。差のないレースに持ち込んだとはいえ、昨秋の天皇賞はああいう位置取りになった伏兵の善戦はありえることで、あれ以上は…とは思えるが、だからといってベテランの挑戦の姿勢に水を差したりするのは失礼というもので、このあともタフに丈夫に活躍し続けるのだろう。体つきは十分に若い。

 伏兵トウショウシロッコはうまく好位の内にもぐりこみ、外に出さずにインから早めのスパート。一旦は2番手に上がりかけたあたり、確実にこういう馬場は合っていた。また、ここへきての充実が本物であることも示したが、残念ながらパンチあと一歩だった。このあとのもう一段の地力強化に期待したい。

 人気のドリームジャーニーは、鋭さが身上の小柄馬とあって、この日の馬場ではまったく動けなかった。ふっくら見せてバネを感じさせる素晴らしい状態だったが、ステイゴールドの代表産駒。あまり体つきを良く見せるときは案外…?

 この点では父の特徴を受け継いでいるのかもしれない。父はこういう馬場はむしろ得意だったが、こちらは明らかにスピード系に近い。良馬場で見直したい。

 武豊騎手に乗り替わってきたアルナスラインは、冬場とあって見栄えはひと息でも全体のムードは決して悪くなかった。4コーナーにさしかかるまでは手ごたえもさして悪くないように見えたが、追って案外。もどかしいレースが続いている。

 大型馬のわりにあまりパワフルではないのだろうが、人馬ともにちょっと覇気に乏しかった印象もある。

■ 2008年回顧

 4歳馬がたった1頭しか出走せずベテランホースの多い組み合わせだったが、勝ったエアシェイディが7歳馬なら、2着トウショウナイトも7歳馬。長い歴史の中、さすがに7歳馬同士の1〜2着独占は初めてのことだった。エアシェイディがここまで重賞2着6回という奇妙な成績を残してきたことは知られるが、もう重賞300勝を突破するサンデーサイレンス産駒の中で、母の父ノーザンテースト。そういう組み合わせの産駒が2000mを超える距離の重賞を制したのも、たしかローゼンカバリーがいた程度できわめて珍しいケースなのである。

 エアシェイディの勝ち味の遅さは速い脚が続かないところにあるが、今回はスパートしようとする4角を回った地点で、前にあまり手応えの良くない人気のドリームパスポートなど4頭が並び、コンビの後藤騎手は仕掛けをワンテンポ遅らすことができた。エアシェイディの初重賞制覇には、その長所も泣きどころも知り尽くしている後藤騎手のファインプレーが重なっている。エアシェイディがAJCCを2分11秒台で2着したのはもう遠く3年も前の4歳春のこと。やっと重賞に手が届いたのは素晴らしいが、しかし、当時より強くなったかというとそれは疑問で、今回は相手が……だった。

 注目のドリームパスポートは転厩初戦。もうほぼ完成された5歳馬でもあり、また仕上がった状態でのトレード。環境の変化や、直前の追い切り手法の微妙な変更など応えないと見られていたが、冬場とはいえプラス10kg。太くもないが、研ぎ澄まされた印象には欠けた。ステイゴールド一族であることを考えると、もっとシャープな線が前面に出たほうがいいのかもしれない。突然のトレードで新しい陣営には手探りの部分があったのはたしかだが、実は、この次のほうがもっと仕上げに神経を使うことになる。

 どこの民間トレセンとの連係で、どういう仕上げの手法を取り入れるのか、意外に大きなテーマになる。松岡騎手とのコンビはしばらく続けたほうが絶対にプラス大と思える。というのはこの日、関西の「平安S」を8歳クワイエットデイ(父サンデーサイレンス)が快勝したが、角田騎手の勝利のコメントはきわめて示唆的で「先生はいつも好きなように乗れ」といってくれる、というものだった。エアシェイディの後藤騎手の今回の快勝にも似たトーンがあった。ドリームパスポートの転厩の理由にはオーナーサイドと調教師との起用騎手についての意見の違いもあったと思われ、それだけに新しいコンビの松岡騎手に、また外からの強い指示がでたりするのではないかと、ちょっと心配なのである。

 7歳トウショウナイトは好不調の波の大きい馬で、また好調期が訪れてきた。今回は坂上で前が狭くなるシーンもあり、まだまだ衰えなど少しもないことを示したが、勝ったエアシェイディと同様、かつてのピーク時より強くなったとか、さらに良くなったというわけではないから、この次の評価が難しい。

 ドリームパスポートと同じ5歳アドマイヤメインの復調気配も残念なくらい乏しかった。冬場で体調を整えるのが難しい大型馬とはいえ、また増えて514kg。ダッシュも鈍く、1000m通過61.2秒の楽な流れなのに3角過ぎでもうかわされてしまうようでは、まだまだ時間がかかるのだろうか? 史上初めて16頭の多頭数で行われたAJCCは、3歳馬の路線と同じく今年の古馬の中距離路線の混戦ぶりをそのまま予感させるフルゲート。そのうえ、この次に結びつけるのが非常に難しい結果でもあった。

■ 2007年回顧

 順調に来ている馬が少なく、多くの馬がここをステップに春に向けて手ごたえをつかみたい一戦だった。頭数も少なく、また、速いペースでレースを引っ張る馬もいなさそうに思え、後半の切れ味勝負になるだろうと考えていたが、実際には厳しいレースに持ち込まれいきなり大きく明暗の分かれる結果となった。

 人気の中心インティライミは自分でレースを作れる自在の先行型。他馬が行かなければハナを切るのはこのメンバーだけに当然の出方で、スタンド前ではすんなり先手を奪うことが出来た。ところが、最初の1角を回ったあたりで急にムキになって、ペースダウンするどころか明らかに力んで走り始めている。前半の1000m通過60.2秒はそう極端に速いペースでもないが、向正面でもさらにムキになってペースダウンできずに11.7-11.8-12.1秒。1600m通過は1分35秒8の息の入らないハイペースになってしまった。

 完全に、情けない自滅。以前から多少なりともスパートのタイミングの難しい馬ではあったが、ディープインパクトのダービー2着馬は、今年、古馬の中〜長距離路線のエース格になるどころか、いきなり自分自身が戦いの相手になってしまった。気分良くハナを切りながら、ムキになり通しでペースダウンできないのは苦しい。鞍上とのリズムの違いもあるのだろうが、次走に選ぶ距離が難しくなった。

 勝ったマツリダゴッホは縦長になった展開の中団から、3角手前で早くも前のインティライミだけを目標にスパート開始。たまたま隣でレースを見守っていた国枝調教師が、4角手前でもう『勝った』と声を上げたほどの圧勝だった。距離にわずかながら心配があったが、自分からロングスパートをかける形で上がり35.3秒。休み休みだった3歳時より明らかにパワーアップしている。ナリタトップロード一族らしい成長力を見せてくれそうだ。

 マツリダゴッホに5馬身もの差をつけられた2番手以下では、インテレットは出負けのロスもあっただけに、無理に動かない利はあったにしても上がりは34.6秒で鋭く伸びてきたのは立派。休み明けで今後のメドをつけたい一戦とすれば上々の始動だったろう。

 ジャリスコライト、フサイチアウステルなど、成長の手ごたえをつかみたかったグループは、休み明けの不利を考慮してもかなり物足りない内容で、馬体にも期待ほどの成長のあとがなかった。

 京都の『平安S』は、超スローにも近い流れを、ほとんど最後方にいたメイショウトウコンが大外を回って上がり35.1秒。通ったコースを考えれば34秒台にも相当するかもしれない。ウッドの調教では動かないとはいえ、直前の追い切りが43.8―15.4秒でバタバタ。難しい馬だが、素晴らしい能力を秘めていた。フェブラリーSの1600mの方がもっと合うだろう。

■ 2005年回顧

 5歳クラフトワーク(父ペンタイア)が、重賞3連勝を達成し、いよいよG1を展望する視界が開けた。今回は、インを突いた函館記念や中山金杯と異なり、最後は外に出して他馬をねじ伏せるように力強く伸びた。期待通りの能力全開だった。

 ただ、間隔が詰まっていたためか、ちょっとテンションが高く、やや落ち着きを欠いていた。また、道中は「内にもたれて…」横山典騎手、右回りは決して得意ではないところを見せている。それでも直線は外に出し力強く伸び、2分11秒4のレースレコードで圧勝だから文句なしなのだが、相手はエアシェイディ、8歳ユキノサンロイヤル級だけに、たちまちG1というほどの迫力はなかった、ともいえる。次はどこに出走するかが未定だが、真価を問われるのはこの次の一戦だろう。

 伏兵が引っ張り、好時計が記録されたように、紛れは生じず底力が問われた一戦。人気の一頭グラスポジションは流れに乗れず、見せ場を作れなかった。残念ながらOP特別級だろう。エアシェイディも、ユキノサンロイヤルとの叩き合いで、たまたま首の上げ下げで2着となったが、中身はあまり誉められたものではなく、AJCC・2着…というほどの迫力は感じさせなかった。まだまだ…という形で、レーティングは低い。

 平安Sのヒシアトラスは、インが開いたとはいえ、少しずつ力を付けとうとう重賞に手が届いたあたり、いかにもダート巧者の叩き上げ型らしかった。中野隆良厩舎にとって久々の重賞制覇になる。期待したピットファイターは、追い切り内容に?があったあたり、体調一歩だったろう。ジンクライシスも、結果は3着とはいえ、レース内容には見るべきところがなかった。ジャパンCダート3着だが、タイムパラドックスには完敗で、あの時のアドマイヤドン(2着)は明らかに、本来のアドマイヤドンではなかったろう。

■ 2003年回顧

どうもこのレース、かなり低レベル。注目馬も、次走のレースレベルが高いとやや危険かもです。

インティライミが大逃げ、というか折り合いを欠いてヨシトミが暴走したままに行かせただけ。
そのインティライミをしっかりマークし、最後の直線では早仕掛けで捕らえて突き放したマツリダゴッホは、順調に走った結果。

順調に来ている馬が少なく、多くの馬がここをステップに春に向けて手ごたえをつかみたい一戦だった。
人気の中心インティライミは自分でレースを作れる自在の先行型。
他馬が行かなければハナを切るのはこのメンバーだけに当然の出方で、スタンド前ではすんなり先手を奪うことが出来た。
ところが、最初の1角を回ったあたりで急にムキになって、ペースダウンするどころか明らかに力んで走り始めている。
前半の1000m通過60.2秒はそう極端に速いペースでもないが、向正面でもさらにムキになってペースダウンできずに11.7-11.8-12.1秒。
1600m通過は1分35秒8の息の入らないハイペースになってしまった。
横山典弘騎手騎乗の2番人気マツリダゴッホが5馬身差で圧勝。
これは過去47回のAJCCで最大着差の勝利。そして国枝調教師はこれでJRA通算400勝、横山典弘騎手は重賞90勝目と、共に区切りの勝利を挙げた。

インティライミは直線で失速し、4着に敗退した。
柴田善臣騎手のレース後の話によれば、インティライミは1コーナーを過ぎたあたりからかかり通しで全く押さえが利かなかったという。
もともと乗り方の難しい馬だと言われていたが、今後に大きな課題を残す残念な結果となってしまった。
2着にはインテレットが、直線34.6の最速上がりを駆使して切れ込んだ。スタートで出遅れての結果だけに惜しまれるところだ。
3着には前走で1600万勝ちの上がり馬シルクネクサスが健闘し入着した。



 1番人気に推されたインティライミは4着。この敗戦については、いろいろと思うところがあります。敗因を一つに断定するのは難しい作業です。一つはペース。前半から早めに飛ばし、前半1000m通過が60秒2。ハイペースというわけではないのですが、スローに落として主導権を握ることも可能だったはずです。また、この日の中山は逃げ・先行勢が有利な馬場でしたから、非常にもったいないレースでありました。

 もう一つは脚質。今回は掛かり気味に行ってしまい、逃げさせられる形。そのせいで、最後の直線では全く余裕がありませんでした。2走前の天皇賞(秋)も逃げる形(これは意識的に主導権)となり、ちょうど同じような失速のしかたに見えました。多少速いペースで行っても、前走の中日新聞杯のように番手に控える形になればよかったのか? そのあたりの疑問は残ります。あとはコース適性。初の中山、というか坂のあるコースでの適性。平坦巧者なのかもしれません。

 勝ったマツリダゴッホはインティライミと人気を分け合い、2着のインテレットを5馬身も突き放す圧勝劇。良馬場のレースでラスト3ハロンが37秒0で、終いの1ハロンが13秒0もかかった異色の内容のレース。当然、インティライミが飛ばしたからこうなったわけで、この着差をそのまま鵜呑みにしにくいところはあります。しかし、明け4歳馬の一角として今年飛躍が期待される一頭。中山芝2200mでこれだけのパフォーマンスができるのであれば、つくづく昨年のセントライト記念での落馬が恨めしく思います。

 インテレットはスタートで出遅れ。中間のゲート試験の効果はあまりなかったようです。ただ、菊花賞の内容から能力は証明済み。昨年2着のフサイチアウステルと同じく、菊花賞からの直行で結果を残しました。
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