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スプリンターズS


■ 傾向

レーティングから読み解く香港馬の格


 毎年、安田記念とスプリンターズSの時期になると聞かれるのが「で、香港馬はどうなんですか?」という質問だ。

 自分の知識の範囲でお答えするようにしているが、香港競馬を見たことの無い人にニュアンスまで伝えるのは正直難しいところがある。

 そこで、今回は逆に割り切って、数字で示せる「格」について書いてみることにした。

 ご存知のように競走馬にはレーティングというものがある。皆さんがよく目にするのは国際レーティングだろうが、それとは別に香港には自らのレース編成のために設定されている「香港レーティング」がある。一流馬といえど負ければ下がる(1走の負けでいきなり下がるわけではないが)ので、ピーク時との比較や最近の流れを示すことに利用できるのではないかと思ったのである。

○エイブルワン
91→91→98→103→前走出走時103
現在値122 生涯最高値122

 前走時が人気薄(単勝33倍)での逃げ切り。4走前はまだクラス2にいた馬で、良く言えば上がり馬、悪く言えば前走が恵まれた。

○グッドババ
103→103→110→117→前走出走時122
現在値122 生涯最高値122

 これも上がり馬タイプだが、エイブルワンよりは力の保証がある感じ。前走は1番人気だったが展開に殺された。

○ザデューク
122→122→125→125→前走出走時125
現在値125 生涯最高値125

 善戦マンタイプなのに昨暮の香港マイルではまさかの優勝。その後もなんだかんだで好成績を維持。昨年安田記念出走時のレートは121。ただ、年齢から見ても地力そのものがアップしているとは思えない。

○ジョイフルウィナー
122→120→120→120→前走出走時121
現在値121 生涯最高値125

 昨年安田記念時のレートは125。勢いがあって人気が無かった昨年は格好の狙い目だった。差して届かずの芸風は相変わらずだが、弱い相手なら1着まで突き抜けることも。この馬とのレース後の相対比較が日本馬のレベルを計る物差しとなる。

 個人的におすすめするならグッドババとジョイフルウィナーだが、前者は予定通りエリック・サンマルタンが乗るのだとしたらあまり購買意欲が上がらない。後者はやはり脚質がネック。

 ちなみに、昨年安田記念出走時にブリッシュラックが持っていたレートは128(安田記念を勝って130、今は下がって124)。私が「今年来たら在り金勝負しよう」と思っていたアルマダ(現在休養中)は130である。ご参考まで。


■ 回顧

テイクオーバーターゲット

シープスキンノーズバンド。+6kg。多少重目だが、迫力はこの馬とサイレントウィットネスで圧倒。歩様も前走中京戦よりスムーズさが有りながら力強い。外のサイレントウィットネスの方がゲートが速く、前走の二の舞になりそうなムードも有ったが、メイショウボーラーが引いて、4角手前ではラチを頼れた。前半3F32.8秒で行っているのに、4角引っ張りの手応え。直線は難無く突き放した。今日は完勝。日本調教馬の遠征の際に、ノウハウの話が毎回出て来るが、外国調教馬の日本遠征に対しても同じ事が言えそう。特に受け入れる側のノウハウが相当上がっている様に思える。逆に、今年の凱旋門賞も欧州馬に勝たれたが、案外受け入れる側のノウハウに問題が有るのかも。

メイショウボーラー

良い時の集中力が出て来た。トモに張りも有って、完全に戻ったと見て良い。ゲート入り梃子摺った割に好発。一瞬はこの馬がハナへ行くかと思わせたが、無理せず引いてテイクオーバーターゲットとサイレントウィットネスに行かせる形。上手く番手にハマッて、直線テイクオーバーターゲットには突き放されたが、2着争いは凌ぎ切った。デキが戻ればこんなモノだが、真っ当でも芝ではGTに届かなかった馬。テイクオーバーターゲットとの差がこの馬の限界を示している。

タガノバスティーユ

腹袋有って太く見せるのは体型。馬体に張りが出て来たのが大きい。出脚サッパリで最後方から。コーナリングも甘く、4角更に置かれて、仕方無しに最内へ。ただこの馬、中京戦の際に述べた様に脚は持っているのだが、それでもGTで器用さ無い馬が来てしまう程、今年は本当にレベルが低い。このレース、今年から国際GTに格付けされたそうだが、先達はもっとハイレベルな競馬をしていた。

サイレントウィットネス

2人曳き。迫力は感じるが、昨年はもっと凄みが有った。数字的に見て20kg分位は重い状態で迫力を欠くのだから、デキが無いと見るのが妥当。歩様が中途半端にスムーズだったのも良くない傾向。昨年は硬さを感じる位の力強さが有った。好発。ずっとテイクオーバーターゲットに併せての競馬だったが、直線伸びを欠いた。手前が替わらないのは昨年もそうで、デキが無かったという一言に尽きる。

ベンバウン

シープスキンノーズバンド。張りも有って、スプリントを走る外国調教馬にしては歩様もスムーズ。出脚で差が有って、3頭雁行でやり合うのを眺めながらの競馬。直線向いてメイショウボーラーとサイレントウィットネスとの間を割ろうという展開では有ったが、そこからがジリジリ。この馬の力は出し切っただろう。上位とは差が有る。

チアフルスマイル

今日は歩様がスムーズ。毛ヅヤがピカピカで、絶好調をアピール。外枠も有るのだが、スプリントでも意外に行けて中段から。外からそれなりに伸びているが、今日は相手が強くてここ迄。これも上位とは能力差有るし、何より大外枠で2回も勝てる程、最近の競馬は甘くない。

シーイズトウショウ

-4kg。多少硬さは有るが、まだトモに丸みも有って、昨年を思えば遥かにマシ。ジワッと好位。4角外へ出した時には手応え有る様に見えたが、坂でバッタリ。過去に、もっと酷いデキで走った事も有る馬で、牝馬の割にデキに対する許容範囲が広い馬なのだが、とにかく坂に弱い。それで無くても、サマースプリントシリーズが目標だった馬だけに、今日はあくまで余興。期待する方が無理。

ビーナスライン

2人曳き。歩様面の良化は無かったが、気配地味ながら集中力が有った。中京戦スキップが正解。今日はゲート出て中段から。メイショウボーラーのトラブルでゲート最後入れになり、この馬に追い風吹いていたのに、4角で中途半端に外へ出そうとして、そこをタガノバスティーユにスクわれた。無茶苦茶手応え良かった訳では無いにせよ、今の中山で最初から最内なら3着は有った筈。折角の最内枠を無駄にしてしまった。

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