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アグネスデジタル

■ 特徴

■ 解説

 ★ 父はオールラウンダー

 アグネスデジタルは、芝・ダート、距離、中央・地方・海外を問わず活躍した。
 調教師の白井寿昭はこの活躍ぶりについてアグネスデジタルを「異端児」と呼んでいる。
 また、3歳〜6歳まで4年連続でGIを制覇するなど息の長い活躍を見せた。さらに安田記念、マイルチャンピオンシップをレコードタイムで制するなどのスピードも見せた。
 また、当時に国内で行われていた芝・ダート1600mの古馬のGI・統一GIを全て制覇していることになる。

 産駒は、阪神JFでは一転して追い込んだエイムアットビップをはじめ、脚質の幅と学習能力の高さを随所に見せている。
 ただし、こういった馬は、母父がSSやトニービンなど高級な種牡馬で詰めの甘い馬も少なくない。

 芝に限ると差す競馬を覚えてくると距離もこなすようになるが、ダートはこの血統本来の先行力を生かして勝ち鞍を稼いでいる。

 ダートの道悪は鬼かもしれない。


アグネスデジタル編 Part1

 アグネスデジタル産駒は、闘争心(S)が強く、集中力もそれなりにあり、体力もまずまずある。一番少ない要素は量になる。

 そのために、闘う意欲は旺盛で、強い相手にも怯むということもあまりないが、精神コントロールは比較的難しく、精神的にキレてしまうこともある。キレてしまうと量が少ないために厄介で、なかなか立ち直れないこともある。

 精神コントロールを付けるには、芝では距離短縮が一番有効で、グランプリエンゼルの函館スプリントS勝ちも1600mからの距離短縮だった。

 芝ではS質の強さから極端さを好む傾向があり、グランプリエンゼルの11番人気での橘S勝ちが重馬場、ヤマニンキングリーも重の中京記念で2着したように、芝は重、不良も得意分野だ。かといって速い上がりがないわけではなく、ヤマニンキングリーは小倉大賞典で上がり33.9秒で連対している。

 エイムアットビップが逃げてファンタジーSを2着した後、阪神JFでは追い込んで3着したように、S質のきつさを前半に爆発させるか、後半に爆発させるかということに尽きる。エイムアットビップがその後、まったくの不振だったり、ドリームシグナルもシンザン記念勝ち後は、10戦4着以下を繰り返しているように、芝の場合はキレ方も半端ではないので、キレたと思ったら、良いショックがない限り、追い掛けない方が無難だ。


アグネスデジタル編 Part2

 今週から、担当のK氏が『大穴血統辞典』から、買った馬や消した馬の評価をして欲しいということなので、少し見てみようと思う。

 神戸新聞杯の7番人気イコピコを見事狙ったりと、ボロボロになるまで愛用している血統辞典で馬券を狙う、M馬券で猛勉強中の編集者だ。まだM的には初心者でもあるので、Mの血統理論を使う際に、一般の人がどういうふうに理解しているのか、私にも興味がある。その買い方を聞くことで、私の説明に今まで足りなかったところも見えてくるのではないか?と考えたわけである。あるいは第三者の思いつきによって、逆に私がハッと気付かされることもあるだろう。

 さて、今回は毎日王冠のヤマニンキングリーを買ったという。辞典には、アグネスデジタル産駒は「速い上がりに対応出来、強い相手に怯まない」とあったので買ったということだった。

 ただ、これは良い狙いではない。アグネスデジタル産駒は辞典にあるように「強い相手に怯まないが、量が無く、キレやすい」とある。

 今回は11頭立ての少頭数で逃げ馬不在。レースは単調なものになる。そういうレースは量が大切で、またスローで精神コントロールが上手く出来ない可能性もあり、少頭数の単調な競馬では強い相手に怯まない性格もプラスには働かない。

 狙うなら、同じGIIでも前走の札幌記念の方になる。16頭立ての多頭数激戦。アグネスデジタル産駒の精神的な強さが嵌る方に賭けても良いパターンだ。人気も7番人気と人気薄だった。

 したがって私は札幌記念では3番手と高く評価したが、2番人気の今回は少頭数で精神的にキレてしまう方が怖いので、5番手に評価を落としたのである。

 なお、京都大賞典ではジャングルポケット産駒のトーセンキャプテンを狙ったという。精神的に不安定なジャングルポケット産駒が延長の先行策で激変するのを狙ったらしい。

 私はここまで手が回らなかったが、7番人気で複勝でも5.3倍付いたこともあり、馬券的にはかなりギャンブルではあったが、面白い狙いだったと言える。


アグネスデジタル編 Part3

 今回は3歳世代が走って、徐々にタイプが見え出してきているアグネスデジタル産駒を分析していこう。

 アグネスデジタルの現役時代は、フェブラリーSと安田記念を制するなど、芝とダートを横断して活躍した。闘う意欲(S質)が強く、量、体力、集中力もそれなりにあるというのが特徴だった。種牡馬になっても基本的な傾向は同じで、芝、ダート共に活躍馬を出し、ややS質の強い産駒が多い。

 芝での代表産駒の1頭ヤマニンキングリーもSが強く、C的要素も強い。アンドロメダSから札幌記念にわたるオープン6戦連続連対は高度な集中期だった。集中期では馬群を割れるのも特徴で、初のOP勝ちだった白百合Sは中京の1番枠、初のGII勝ちになった札幌記念も16頭立ての3番枠だった。またタフなレース質を好み、白百合Sは稍重、重の中京記念も2着し、札幌記念は札幌の重い馬場の締まったペースだった。

 弱点としては、アグネスデジタル自体は量もあって上がり勝負にも強い馬だったが、産駒にはそれほど安定した量が供給されていない点だ。その弊害として、あまり単調なヨーイドンの競馬には向かないし(それが以前、この連載で解説した、11頭立ての毎日王冠での2番人気9着凡走になる)、集中力を中心とした精神的な張りが切れると不振が長引きやすい。

 これについてはアグネスデジタル自体もそうだったのだが、疲労耐久力がそれほど高くはないのでは?という可能性も否定しきれない。

 グランプリエンゼルの成績を見ても、その辺りが見え隠れする。


アグネスデジタル編 Part4

 話が途中になっていたアグネスデジタル産駒の続きを見ていこう。

 グランプリエンゼルの話だった。

 初のオープン挑戦になった橘Sを11番人気で激走。強い相手に怯まないところを見せた。また橘Sは重馬場のハイペースでタフだった。続く初GIのNHKマイルCも13番人気で3着に激走。さらには続く初古馬戦だった函館スプリントSを1着。気持ちの張り詰めたハイテンション時には、相手の強弱は全く問わないという内容である。

 ただ、函館スプリントSの後のキーンランドCで1番人気3着(4位入線)。ここら辺りから、俄に暗雲が立ちこめ始める。

 前走の函館スプリントSが1600mからの短縮ショックで、初の古馬戦。これだけの精神的にフレッシュな支援材料があって激走した後の、「札幌1200mのGIII」という、前走と全く同じ条件。どんな競走馬でも、飽きとストレスで嫌がるシーンではあるので、負けること自体はそれほど問題ではない。ただ0.2秒千切って勝った後に、全く同じ条件で0.5秒差の4位入線。相手関係や施行条件が影響しないタイプというのを印象づけると同時に、精神的に張り詰めたものが切れたときの危うさを予感させた。

 そして次走のスプリンターズSは5番人気で13着に惨敗。その後も4戦したが全て二桁着順に惨敗。函館スプリングS勝ちの内容からしても、その後の5戦は全く力を出し切っていなかった。つまりこの惨敗は、能力云々の問題ではなく、精神的にキレてしまったのだ。これが量の安定供給がなく、精神的な張りで走るタイプの、その張りが切れてしまったときの危うさになる。


アグネスデジタル編 Part5

 キレてしまうアグネスデジタル産駒としては、ドリームシグナルもそうだ。未勝利勝ち直後の京王杯2歳Sでは12番人気で2着に激走。相手関係が影響しないことを誇示すると同時に、東京1400mにしては稍重の締まったペースでレース上がりが35.5秒と掛かったように、タフなレース質でのしぶとさも見せた。

 続くGI・朝日杯FSも厳しい中山多頭数マイルの内枠で、しぶとさを活かして8番人気で4着に好走。その次走のシンザン記念では、これも京都マイルでは珍しい超ハイペースでレース上がりがなんと37.0秒というレース。やはりタフさを活かして内枠から1着と勝ち切った。

 この内容からすれば、当然スプリングSも3番人気に支持される。しかしスローと言うこともあり6着に凡走。続く皐月賞も惨敗したあと、短縮のNHKマイルCはハイペースを利して13番人気で4着に好走。

 しかし、その後は10戦して最高が6着と惨敗を続けたのだった。

 つまり、スプリングSから数えれば13戦連続で馬券圏外だ。如何に気持ちがキレてしまうと収拾が付かなくなるかということを如実に示してしまった。

 ダートでもこのパターンは多く、ケイアイテンジンは格上げ初戦のギャラクシーSを3番人気で圧勝したが、その後の5戦は全て4着以下。しかも、その5戦のうち、4着に好走したのはGIのフェブラリーS。残り4戦は8着以下に惨敗した。このように相手が強くても踏ん張れるが、キレると相手は関係なくキレる。

 ユビキタスも初重賞のユニコーンSを1.1秒千切る大楽勝。格上げでこの内容ならと期待は膨らんだが、次走のペルセウスSは単勝1倍台で2着、その次走の武蔵野Sも1倍台で3着。その後は5戦するも、全て3番人気以内で、2着が1回あっただけ。それも休み明けだった。

 このようにキレてしまった産駒は、何かフレッシュさや活力を取り戻すショックでもないと、狙いにくい種牡馬である。

 ただ、トップクラスで華々しいパフォーマンスを見せたことのない産駒なら、S質が嵌って、激走することはよくあるので注意だ。また牝馬の方が嵌っての反撃はより怖い。


■ 代表産駒