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クロフネ

■ 特徴

■ 特徴

 父フレンチデピュティ、母ブルーアヴェニューは共に、2001年に日本に輸入された。
 これは本馬の活躍によるところが大であった。兄弟の主な活躍馬として、全妹のBella Bellucciがアメリカで重賞を2勝している。
 また、Northern Dancerの父系からなる同馬は一般的にノーザンダンサー系と呼ばれるが、その発展・細分化に伴い、ヴァイスリージェント系と呼ばれることもある。

 本馬の半妹、ミスパスカリはマーメイドステークスで3着の実績がある。
 また全弟になる2006年2月11日に生まれた当歳の牡馬が同年7月11日に行われたセレクトセールの2日目(当歳馬初日)に上場番号215番で上場され、
 3億円でダーレー・ジャパン・レーシングに落札された。

 距離短縮が好成績、距離延長は不振。
 距離が伸びてペースが緩むよりも、短縮で息の入らない忙しい流れになったほうが走る。
 先行策から二の足を使う競馬が得意。
 ダートが強く、芝で入着級の馬ならダートですぐに通用すると思ったほうがいい。
 坂や道悪は問題なし。

 芝OP特別のクロフネは成績が良い。
 また、サンデー系牝馬に質の向上により、仕上がりが早くなっており、新馬向き。


クロフネ編 Part1

現役時代のクロフネは、芝GIではNHKマイルC勝ち、次走ダービーで5着に敗れたが、ダートGIのJCDを圧勝して引退した。

その産駒だが、芝、ダート適性は各馬によって違っている。
しかし、ダート馬の方が走りに淡泊さが薄れ、芝馬はどちらかというと淡泊な、量系、体力系の走りが目立っているという現状だ。
これはダート血統に多い傾向で、そうだからといって、芝適性が低いわけではない。

そこでまず芝の代表産駒、フサイチリシャールを見ていこう。

フサイチリシャールは4連勝で朝日杯を制覇。
その後も2連続連対を果たすが、皐月賞5着、NHKマイルC6着と凡走。
以後、凡走を繰り返した後、阪神Cで8番人気1着と激走し、また凡走を繰り返し、スワンSで再び10番人気2着と大激走。
その後また凡走を繰り返すという形になっている。
このフサイチリシャールの成績が、そのままクロフネ産駒の芝での走りを象徴していると考えて良いだろう。
つまり好調時には連続好走するが、その後、好調時の最大パフォーマンスを超えることなく、気分が乗ったときのみの激走になるという形である。
朝日杯は2歳GIで、レベル的には3歳時に最後に連対したスプリングSとさほど変わらないし、あるいはその後に連対した阪神C、あるいはスワンSもレベル的にはほぼ同じだろう。
量が豊富な血統は、高齢になっても能力は落ちずに、気分が乗ったときの激走を待つというのが基本パターンになる。

では、どういうときに気分が乗るのか?
あるいは牡馬と牝馬の違いは?
クロフネ産駒の芝は、好調期が終わると気分が乗った時にだけ走る形になりやすいと書いた。

例えば、フサイチリシャールが阪神Cを8番人気1着に激走したときは、JCDからの距離短縮だった。
同馬にとって、ダートの2100mというのはタフすぎる条件で、しかもGIだ。
厳しい思いをした後の、芝の1400mならかなり気持ち的には楽に競馬できる。
しかも1400mはMの法則で「もっとも摩擦のない距離」とされている。心身摩擦が少ない、非根幹距離の中の非根幹距離なのだ。

スワンSを10番人気で2着に激走した時は芝1200mの後だった。
同馬は自分のペースで競馬をしないと嫌がるタイプなので、多頭数1200mの激流はあまり好きではない。
そこで揉まれて嫌がった後の距離延長芝1400m。揉まれにくく、気持ち的には前走と比べてずいぶん楽に走れる。
このように前走より道中気分的に楽に走れるショックのとき激走しやすくなるわけだ。

同じように芝重賞で好走したシェルズレイの成績も見てみよう。

彼女の場合は、未勝利勝ち後から、好走後には必ず凡走する「交互」になっている。
どんな血統であれ、気分良く走らないとダメな馬はストレスに弱いケースが多く、好調期を過ぎれば交互の色彩は強くなりやすい。
また彼女は逃げ、先行という極端な脚質なのも影響している。
極端な脚質、特に逃げ馬は好走後のストレスを、普通の馬より受けやすいのだ。

同馬はGI阪神JFで9着後に500万1着、GIIIクイーンS10着後に1600万1着と、相手が弱くなった時に激走している。
相手弱化は当然、「前走より気分よく走る」ためには、有効な要素になる。
でも、相手弱化になるからといって、穴が取れないわけではない。
500万勝ちが6番人気。1600万勝ちが5番人気。
前走の負けっぷりが強烈なので、相手弱化でも人気にならないケースも多いわけだ。
ただ、量の豊富な産駒は凡走からでも、気分が乗れば平気で巻き返せるのが特徴になる。
したがって、前走の負けっぷりは気にする必要がない。

またローズS8番人気2着の時は、前走が初ダートの地方重賞2100m。
その後に使い慣れた芝というステップだった。これはフサイチリシャールの阪神Cとよく似ている。
ダートの猛者相手の辛い経験後の、楽に走れる自分の好きな条件だ。

1600万勝ちの時は、前走が4角6番手という揉まれる競馬で重賞を惨敗後だった。
それまでずっと先行していた馬が後方で揉まれるという厳しい経験。
そのため、次走の相手弱化の少頭数をスムーズに先行できたことが、前走から相当楽に感じたというわけである。


次にダートでの走りだが、ダートの方が芝より好調期が過ぎても連続好走しやすい。
これはダートの方が一本調子に走ることが許される流れになりやすいこと、またダートの方が心身の負担が少ないのでストレスの影響を受けにくいことが大きい。
ただ、本質的な部分での「走りの意味」が変化するわけではない。
また牡馬より牝馬の方がしぶとい産駒は出やすい。
これはほとんどの量系種牡馬にも言えることなので、この問題については後で説明することにしようと思う。

4月13日の4歳上1000万下で1番人気3着のマルブツクロスと、桜花賞で3番人気12着のオディールだ。

まずマルブツクロスだが、3月22日の中山12R・4歳上1000万下が16頭立ての15番枠でマクり切って2着。
マクる競馬で好走すると強い印象を受けるが、マクるという競馬は、精神的なストレスは少ない。
それは道中の馬体の接触、摩擦が少ないからだ。
ある程度の能力(体力)を必要とするのがマクりで、力の証明にはなるが、精神的にはかなり楽な戦術なのである。
これは体力系のグラスワンダー産駒シルクネクサスのときに説明したのと同じ構図だ。
ちなみに3走前(鎌ケ谷特別)に3着に好走したときは先行。共に馬レベルでの摩擦の少ない競馬だった。

今回は12番枠で、1番人気。
メンバー的にある程度速い競馬になりそうだ。
ということは、揉まれずに先行する競馬にはならないだろうし、
かといって、マクりに出るには枠が中よりで、しかも1番人気なので無難に中団で競馬をする可能性が高い。
そうなれば馬群に入らざるを得なくなり、馬レベルの精神摩擦がかなり大きくなる。
そう考え、私は評価を落とした。結果、1番人気3着で、馬連を当てることができた。

最後は桜花賞のオディール。
同馬は前残りのチューリップ賞を追い込んで3着。
内容としては強く、3番人気に支持された。
しかし、不安な材料もあった。
それは阪神JFで4着、チューリップ賞で3着と、今回と同じ条件で連をハズしていることだ。

当たり前のことと思われるかもしれないが、実はそうでもない。
同じ条件で凡走していようが、走る馬もいる。
しかも、前走は前残りを後方、2走前は差し競馬を先行。
流れが合わなかったわけで、内容としては優秀だった。
ただ、クロフネ産駒の場合は、相手が強くなってパフォーマンスが上がることは少ない。
距離延長での先行や、マクり、追い込みなど、前走より精神の摩擦レベルが少ない競馬をして気分良く走れればパフォーマンスは上がるが、
前走と同じ距離で、内目の枠では揉まれる係数が減るというのは考えにくいのだ
(前走の出遅れて、前残りを大外一気で3着というのは能力だけに目を向ければ極めて優秀だが、馬群に揉まれていないので精神的には楽な競馬だった)。
ということは、前走の流れが向かずに3着という着順を、精神摩擦レベルの増える今回で上回ることは、通常考えられない。

ただ、メンバー的にペースが遅そうで、内の先行馬が物理的に有利そうな構成だった。
展開に恵まれれば力は上なので、2〜4着には来られるだろうと考えて、私は結局3番手に評価した。
が、レースはハイペース。
ハイペースになれば、今までの説明でわかるように、内目では揉まれて凡走するのは当然ということになる。
結果は12着。
彼女の能力からすれば負けすぎなのだが、これが量系の揉まれる、揉まれないということの重要性、いかに前走より気分良く走れるか? ということの重要性になるなのだ。

量系(特にL系)の場合は特に、今回、前回よりスムーズに走れるか? に主眼を置いて、結果を予測する必要がある。

クロフネ産駒の芝1400mは、淡泊なスピードを目一杯活かせる条件なので、本質的に向く。
その為、トップクラスの重賞では、フサイチリシャールが阪神C(GII)を8番人気で勝ち、オディールはファンタジーS(GIII)を4番人気で勝ったように、高い回収率を誇っている。

ただ距離短縮で芝1400mに向かうと、あまり回収率が上がらない。
トップクラスでは我慢出来る力を与えられる短縮との相性はよいが、
普通のレベルだとパワータイプも多いので軽さ負けをしたり、あるいは短縮で揉まれて嫌がったりする可能性もあるのだ。

コース別に見ても、京都外回りや東京の成績が良く、内回りの新潟は揉まれるリスクもあって、それほど成績は上がっていない。
内回りの阪神もそれほど良くない。
また、トップクラスではフサイチリシャールが走ったりしたが、全体で見ると牝馬の成績が牡馬を圧倒している点にも注意だ。
柔軟性に欠ける牡馬だと、忙しさに嫌がるケースも考慮に入れておきたい。


「クロフネは芝でこそ!」

クロフネ産駒は、ダートの1200m〜1800mでは勝ち星ランキングで1位になっているように、ダートの方が勝ち星は圧倒的に多い種牡馬です。

一方、芝の方が勝ち星も少なく、勝ち星ランキングも下がります。
しかし、クロフネ産駒はダートよりも芝の方が期待値は優れているのです。

クロフネ産駒のダート1200mは、勝ち星ランキングは1位ですが、複勝回収率は50%台です。
独自に作成している複勝回収指数(回収率の欠点である、超高配当によるブレを修正したもの)でも40%台の低い水準を示します。

対して、芝の1000m〜1300mはダートよりも回収率は優秀です。
複勝回収率も87%。複勝指数も140%という抜けて高い数値を示しています。
馬券の面では、クロフネを買い続けるならば、ダートの短距離よりも芝の短距離の方が期待値は高いのです。

クロフネ産駒がダートよりも芝の短距離の方が期待値が高いのは、クロフネ産駒は「高配当が出やすい芝の短距離馬場」に対しての適性が高いからです。
「高配当が出やすい芝の短距離馬場」とは、通常の馬場とは違った適性が問われる馬場のことです。
今までとは違う能力を発揮する確率が上がるので、高配当が出やすくなるのです。
クロフネは、ダート適性が高いように、通常の芝よりも、パワーが要求される芝短距離への適性が極めて高い種牡馬です。
「クロフネ産駒は芝でこそ」という金言は、非常に優れモノだとは思うのですが、それを知っているからと言って、必ず儲かるわけではないのが、競馬の難しいところです。

クロフネ産駒は重賞での活躍馬も、ホエールキャプチャ、スリープレスナイト、オディールなど牝馬の方が多いように、牝馬の方が金言の威力は増します。


■ 特注馬


■ 代表産駒

■ 母の父としての主な産駒