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桜花賞(G1)

【桜花賞・男の解の公式】 ハイレベルならチューリップ組、低レベルなら別路線組を狙え!
モデル馬 ブエナビスタ

その年のレベルをみて判断する。
レベルの高い年はチューリップ賞からの組を狙い、レベルの低い年は別路線組を狙う。

レベル 年度 勝ち時計 着順 馬名 前走
ハイレベル 2007年 1.33.7 1着 ダイワスカーレット チューリップ賞2着
2着 ウォッカ チューリップ賞1着
2009年 1.34.0 1着 ブエナビスタ チューリップ賞1着
3着 ジェルミナル チューリップ賞5着
2010年 1.33.3 1着 アパパネ チューリップ賞2着
3着 エーシンリターンズ チューリップ賞3着
低レベル 2011年 1.33.9 チューリップ賞組は馬券対象にならず
2008年 1.34.4 チューリップ賞組は馬券対象にならず

■ 経緯

五大クラシックレースの第一弾として行われる桜花賞は、イギリスの1000ギニーにあたる競走で、
最もスピードのある優秀な牝馬の選定および、優良な繁殖牝馬の選定のためのチャンピオンレースである。

3歳クラシックレースの中で、桜花賞と優駿牝馬(オークス)は牝馬だけで争われる。

また、桜花賞は牝馬三冠(桜花賞・優駿牝馬・秋華賞)の第一関門でもあり、
桜の咲き誇る季節の中で幾多の名勝負、名牝を生み出してきた。

その歴史は1939年に創設された『中山4歳牝馬特別』が始まりで、
1947年に現在の『桜花賞』に改称、同時に開催場も京都競馬場に移され、距離も創設当初の1800mから1600mに短縮された。

その後、1950年に開催場が阪神競馬場に移され、現在に至っている。
2006年馬場改修により新設された芝外回りコースで争われる桜花賞となり、
スタート地点が1コーナーポケットから向正面へ移動され、最後の直線距離が476.3mに延長された。

日付 勝負結果 馬場
ラップ
RPCI 3連単 着順 馬名 種牡馬 母父馬 人気 着差 補正 走破
タイム
枠番 通過順 上り3F 前走レース名 前走着順 前走場所 前走距離
2012年 × 12.7-10.9-
11.3-12.2-12.2-
12.1-11.0-12.2
48.0 240.2 ジェンティルドンナ ディープインパクト Bertolini 2 -0.1 111 1346 5      10-10 34.3 チューリG3 阪神 芝1600
ヴィルシーナ ディープインパクト Machiavellian 4 0.1 110 1347 7      04-04 35.1 クイーンG3 東京 芝1600
アイムユアーズ ファルブラヴ エルコンドルパサー 3 0.2 109 1348 6      07-06 34.9 フィリーG2 阪神 芝1400
2011年 12.1-11.0-
11.5-12.1-11.8-
11.3-12.0-12.1
45.2 58.8 マルセリーナ ディープインパクト Marju 2 -0.1 111 1339 4      15-16 34.3 エルフィ 京都 芝1600
ホエールキャプチャ クロフネ サンデーサイレンス 1 0.1 110 1340 8      15-17 34.3 クイーンG3 東京 芝1600
トレンドハンター マンハッタンカフェ ブライアンズタイム 4 0.2 109 1341 8      17-18 34.2 フラワーG3 阪神 芝1800
2010年 × 12.6-11.2-
11.8-11.9-11.4-
11.1-11.1-12.2
51.2 385.2 アパパネ キングカメハメハ Salt Lake 1 -0.1 108 1333 5      05-04 34.1 チューリG3 阪神 芝1600
オウケンサクラ バゴ リアルシヤダイ 3 0.1 107 1334 4      01-01 34.5 フラワーG3 中山 芝1800
エーシンリターンズ キングカメハメハ キャロルハウス 11 0.1 107 1334 6      03-02 34.3 チューリG3 阪神 芝1600
2009年 × 12.4-10.8-
11.7-12.0-12.2-
11.7-11.6-11.6
49.3 56.8 ブエナビスタ スペシャルウィーク Caerleon 1 -0.1 111 1340 5      16-16 33.3 チューリG3 阪神 芝1600
レッドディザイア マンハッタンカフェ Caerleon 2 0.1 110 1341 8      12-12 33.7 エルフィ 京都 芝1600
ジェルミナル アグネスタキオン Double Bed 5 0.3 108 1343 7      14-14 33.8 チューリG3 阪神 芝1600
2008年 12.4-10.9-
11.3-11.8-12.1-
11.7-11.6-12.6
42.9 70029.2 レジネッタ フレンチデピュティ サンデーサイレンス 12 -0.1 106 1344 7      10-10 34.5 フィリーG2 阪神 芝1400
エフティマイア フジキセキ ニホンピロウイナー 15 0.1 105 1345 8      06-06 35.4 クイーンG3 東京 芝1600
ソーマジック シンボリクリスエス Fairy King 5 0.1 105 1345 7      08-08 34.8 アネモネ 中山 芝1600
2007年 × 12.4-10.9-
11.3-11.8-12.1-
11.7-11.6-12.6
56.4 126.8 ダイワスカーレット アグネスタキオン ノーザンテースト 3 -0.2 111 1337 8      03-03 33.6 チューリG3 阪神 芝1600
ウオッカ タニノギムレット ルション 1 0.2 109 1339 7      07-06 33.6 チューリG3 阪神 芝1600
カタマチボタン ダンスインザダーク Caerleon 7 0.8 103 1345 2      03-03 34.4 クイーンG3 東京 芝1600
2006年 × 12.5-10.9-
11.4-11.9-12.1
-12.1-11.5-12.2
44.2 27460 キストゥヘヴン アドマイヤベガ ノーザンテースト 6 -0.1 107 1346 7    14-16-13 34.9 フラワーG3 中山 芝1800
アドマイヤキッス サンデーサイレンス ジェイドロバリー 1 0.1 106 1347 4    12-12-10 35.3 チューリG3 阪神 芝1600
コイウタ フジキセキ ドクターデヴィアス 5 0.1 106 1347 6    07-09-05 35.5 クイーンG3 東京 芝1600

※ 2006年まで内回り 2007年以降は新コース外回り

■ 傾向

ステップレース ◎チューリップ賞 ○クイーンC ▲エルフィンS ×フィリーズレビュー

・最多はチューリップ賞で連対が目立つ。
・フィリーズレビュー組は苦戦。
・クイーンC組はやや劣勢だが、アローキャリーやシーザリオなどの例もあるので一応チェック。改修後は1着馬しか馬券対象になっていない。
・エルフィンS組は打率が良い。

スピードタイプ重視

桜花賞は、スタミナよりスピードが重要なレースとよく言われる。
そこで、初勝利が桜花賞より短い距離だった連対馬をまとめてみた。
該当する馬がワンツーを決めた年も多く、スピードがあることを誇示していた馬に注目する手はありそうだ。
昨年はキストゥヘヴンが1600m、アドマイヤキッスが1800mでの初勝利だったが、キストゥヘヴンは初戦が1200m(2着)だった。
ちなみに表中の馬のデビューレースでの成績は、フサイチエアデールを除いて、すべて2着以内に入っていた。

坂路調教馬を重視

過去3年の桜花賞1〜3着馬を調教コースで分類すると、坂路のみ、もしくは坂路とコースで調教した馬が独占している。
逆に言うと、コースでしか調教していない馬は、馬券圏内に入っていないのだ。

ただし、昨年の12月に阪神競馬場が新装されたことで、今年の桜花賞から傾向が変わる可能性もある。
そこで、検証として桜花賞と同じ距離・コースで行われた昨年の阪神JFを調教で分析すると、何と、1〜5着までを少なくとも坂路で追い切った馬が独占したのだ。

■ 桜花賞のキーレース

桜花賞が外回りコースで行われるようになって4年目となるが、それ以前から桜花賞の穴馬を狙う際に変わらないセオリーがある。
それは「阪神JF」を見直すことだ。

昨年は1人気のブエナビスタが順当に勝ち、2着も2人気のレッドディザイアだったが、
馬券のポイントになった5人気のジェルミナルは、阪神JFに出走して6着に敗れていた馬だった。

一昨年の桜花賞も12人気で勝利したレジネッタ、15人気で2着のエフティマイアはいずれも阪神JFに出走していた馬である。

3年前の桜花賞は、ダイワスカーレット、ウオッカの一騎打ちで3着はカタマチボタン。
そのカタマチボタンにハナ差4着だったのは阪神JFに出走していたローブデコルテ。
桜花賞は9人気だった。

今年の桜花賞も「阪神JFよりも上昇する要素があって人気のない馬」を狙っていくスタンスは期待値が高いのではないだろうか。

さらに、ジェルミナル、レジネッタ、ローブデコルテはオークスでも3着以内に走っている。

「オークスでも実績を残す血統」を桜花賞でも狙うアプローチも面白そうだ。

■ 旧来の桜花賞で走らない馬を買う

2012年04月06日(金)
 直線も長くコーナー2つの外回りコースで行われるようになった07年からの桜花賞は、旧来の小回りコースで行われていた桜花賞とは馬券になる馬の傾向が大きく変化しています。

 外回りコースで行われるようになった07年以降は、連対馬10頭のうち8頭は「前走で直線の長い(東京、京都、阪神)芝1600m」に出走していました。

 対照的に、旧小回りコースで行われた02年〜06年の過去5年の桜花賞は、連対馬10頭すべてが、前走は直線の短い「小回りコース」を経験していた馬です。

 もちろん、旧コースで行われていた06年以前の桜花賞は、最重要トライアルのチューリップ賞も内回りコースで行われていたのですから、小回りコース経験馬が多いのは当然かもしれません。しかし、エルフィンSやクイーンSなど、前走で広いコースを経験していなかった馬が連対していないのは注目すべき傾向です。

 また、連対馬の「前走からのレース間隔」も、旧コースと外回りコースでは真逆ともいえる傾向を示します。

 旧コースで行われた02年〜06年の桜花賞では「中5週以上」の間隔で使った馬は1頭も連対していません。連対馬10頭のうち、6頭は「中3週以内」のローテーションです。

 一方、外回りコースで行われるようになった07年以降は「中5週以上」の間隔で使った馬が4頭連対しています。「中3週以内」のローテーションで連対馬は2頭。旧コースとは真逆の傾向を示すのです。

 つまり、07年以降の桜花賞は、06年以前の旧コースで行われた桜花賞では「掟破り」(凡走確率が高い)ともいえる「前走で広いコースを経験させた馬」「ゆったりとしたローテーション」の馬を買うべきレースへと変貌したわけです。

 ただし、08年の桜花賞は、外回りで行われるようになった桜花賞では例外的なレースになりました。

 1-3着馬はすべて、テンから速い流れになる芝1200mでの勝利実績を持った馬。1、3着馬は前走で直線の短いコースを経験していた馬です。

 桜花賞に限ったことではないのですが、傾向が覆される年は、例外ともいえるタイプの人気薄が上位を独占するケースが多いのです。

 とはいえ、例外的な流れはあくまで例外的なのですから、外回りコースで行われる桜花賞は、中距離適性に優れた、ゆったりとした流れを好むタイプ、血統の馬を狙うのが基本となります。

 旧コースだったら危険なタイプである、ジョワドヴィーヴル、ヴィルシーナを中心視するのが新コースのセオリーでしょう。(08年のような例外的なパターンであれば、まとめて消すという戦術も取れますが)

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■ 2012年回顧

ディープインパクト産駒・ステップと母父
2012年04月11日(水)18時00分
注目数:12人
 ここでも何度も解説してきたが、未だにとらえどころがない部分を残すのがディープインパクト産駒だ。産駒によって様々な表情を見せるので、全体像を掴みにくい。精神的な難しさ、脆さを持ちつつ、闘う意欲もあるのが、より輪郭をはっきりさせない。今まで私が分析してきた種牡馬の中でも、1、2を争う、「よく分からなさ」だ。

 そこで今週は、直近のGIでディープインパクト産駒の人気馬が多数出走していた桜花賞を振り返りながら、現状で分かっている部分を再確認していこうと思う。

 このレースには1番人気ジョワドヴィーヴル、2番人気ジェンティルドンナ、4番人気ヴィルシーナ、7番人気パララサルーと、4頭のディープインパクト産駒が出走していた。

 この中で私が本命に選んだのはジェンティルドンナだった。前日の感じから、馬場はやや内枠不利に傾いてきていた。馬場は生き物なので日曜にどう変化するかは神のみぞ知るだが、この週は天候変化がなく、さらに1日進むのだから、普通に考えれば少なくとも急に内枠が有利になる可能性はそれほど高くない。

 これは皆さんご存じだろうが、外が伸びて、差しの決まる馬場での外目の枠では、ディープインパクト産駒は比較的堅実だ。それとメンバー的に、とんでもない急流というのは考えられない。恐らく平均ペースの範疇だろう。

 以前書いたが、速すぎない流れというのも、ディープインパクト産駒のツボだ。前走より急激に速くなると対応出来ない産駒が多い。以上から、外目に入ったディープインパクト産駒には絶好の条件が揃っている。

 で、外目の枠で何を選ぶかだが、最初にヴィルシーナについて考えて見よう。この馬は他のディープインパクト産駒3頭と違って、2走前が2000mである。つまり長い距離を経験している。M的には比較的プラスと捉えられるステップだ(短縮ショックの反動は気になるが、前走がそれほど激走でもなく、またレース間隔が開いているのでほとんど気になるレベルでもない)。ただ前走が前半36.6秒のスロー。2走前が2000mというのも、桜花賞の速めの流れに対しての備えとしてはやや気掛かりになる。

 ということで、ディープインパクト産駒のステップとしてはそれほどよろしくないと考えた。そこで残るのがジョワドヴィーヴルとジェンティルドンナ。ただジョワドヴィーヴルはマイルGIも走っているので厳しい流れを経験しているように思えるが、じつは前走のチューリップ賞の前半35.7秒が最速だ。同じ阪神マイルだった阪神JFの0.4秒差圧勝のパフォーマンスは素晴らしかったが、このレースの前半は35.8秒。マイルGIとしては超の付くレベルのスローだ。

 逆に考えれば、これだけのスローだったからこそ、圧倒的パフォーマンスで阪神JFを差し切ったとも言える。実際、レース後の予想着順回顧でも、スローだったのが良かったという解説をした。ハイペースだったら凡走していたかもしれないわけで、必ずしも差し馬だから速い流れが良いわけではない。

 さすがに今回はそこまでの超スローはないだろう。となると、対応に不安が残る。結局残るのは、シンザン記念でそこそこの流れを体験しているジェンティルドンナということになる。そして最後の決め手になったのが、血統面だ。

 去年、ディープインパクト産駒の解説をしたときに、母父にS要素の強いタイプを持ってきた方が安定しやすいというようなことを話したのを覚えている読者も多いだろう。リアルインパクトが母父S系で、激流の安田記念を制したという話である。

 ジェンティルドンナ、ヴィルシーナの母父は比較的S要素が強いが、ジョワドヴィーヴルの母父はL系カーリアンだ。量的安定は与えるが、闘う意欲は薄い。

 今までの緩い流ればかりのステップから、ある程度厳しい流れになる桜花賞で、それに対応するには、ディープインパクト産駒の場合、特に母父のS要素は重要と考えられる。以上のような問題意識からジェンティルドンナを本命に選んだというわけである。

 また、今週もおまけを少し。それにしても中畑監督には失望した。

 もちろん、勝てないからではない。そんなことで失望しているようでは、横浜ファンを20年以上続けるのは不可能である。あの戦力で闘うのだから、もちろん負けるのは仕方ない。

 それより、その作戦だ。盗塁に失敗するや否や、急に弱気の虫が出てきたのか、あるいはどこかから恐れていた日本的なプレッシャーがあったのか、送りバントばかりをするようになり、ベテランを重用するようになった。

 そうすれば結論は目に見えている。早速、無得点を重ね記録を作り、さらに萎縮して点を取りたくて送りバントを繰り返す。

 引きっぱなしだ。そんな引いた送りバントばかりしていたら、点を取れないのは当たり前だ。あるいは1点取っても、突き放されるのをただ待つだけである。

 流れは澱み、どんどん重苦しくなる。恐怖を感じると、人がどれほど早く守りに入ってしまうのか、それを目の当たりにして、私も気を引き締めないといけないと思いを新たにした。

 闘いは引いては終わりで、行くしかないのである。


待望の良馬場で行われた最初のクラシック。
勝ちタイムの1分34秒6(レースバランス47秒1-47秒5)は、
最近10年ではキストゥヘヴン=アドマイヤキッスの2006年と並んで、もっとも遅い勝ち時計だった。

これは良馬場とはいえ、例年より全体に時計を要する芝コンディションが影響したと思われるが、
当日の古馬1000万下の特別が1分35秒2(スローで48秒2-47秒0)だったこと、
前日の3歳500万下が1分35秒0(やっぱりスロー48秒0-47秒0)だったことと照らし合わせると、
マイルのGIとすると必ずしもレベルの高いものではなかった危険はある。

よく「桜花賞のゴール前をみていると、オークスの直線が予感できる」などといわれるが、「オークスはあの馬だ」。
そんな印象は乏しかった気がする。

ほとんどがマイラーや、マイラーにも近い中距離タイプに集中する近年、
一般に、桜花賞での力関係はそのままストレートにオークスに結びつくと考えられている。
事実、2002年から2011年までの10年間のオークス3着以内馬30頭のうち、「20頭」が桜花賞出走馬によって占められている。

しかし、もっと全体の頭数が多かった1992年から2001年までの10年間では、
オークス3着以内の30頭のうち、桜花賞組は「22頭」だったという記録がある。
近年のほうが桜花賞とオークスの関連が密接になったとする根拠は乏しい。
6週間後の2400mのオークスでは、昨2011年のエリンコート、ピュアブリーゼ。
2010年のサンテミリオン、アグネスワルツ。さらには2007年のベッラレイア、2006年のカワカミプリンセスのような、
桜花賞には顔をみせなかった別路線組の台頭もあるのではないか。そんな視点を重ねながら振り返りたい。

ジェンティルドンナ(父ディープインパクト)の勝因の第一は、
チューリップ賞前の発熱のアクシデントをむしろプラスに転じさせたのではないか、
そう思わせるほどの陣営のしたたかで、かつ巧みな仕上げの手腕だった。
反動の心配ない状態になったから当然のように路線をくずさず1600mのチューリップ賞を選んだ。
使って期待通り大きく良化した。
そのときテン乗りだった岩田康誠騎手もすごい。
活力の消耗を最小限にとどめつつ、
衆目一致の候補ジョワドヴィーヴルを目標にジェンティルドンナの能力を確認するかのような位置取り、
仕掛け、コース取りで、トライアルとすれば非の打ちどころなしの予行だった。今回は自信にあふれていた。

好スタートから一旦は下げ、勝負どころから自身でスパートして、今回は外に出した。
メンバー中No.1の上がり34秒3。着差以上の完勝である。余力さえあった。
シンザン記念を男馬相手に1分34秒3で勝っていたから、
体調さえ整えば好走必然の力関係だったとはいえ、この桜花賞制覇、関わったスタッフにとり会心のGIだろう。

5戦すべて地元関西圏の1600m。
成績だけでなくスピード系マイラー色が濃い牝系の出身。
折り合い面の不安はなく少々の距離延長は問題ないだろうが、2400mになってプラスはないことも否定できない。
桜花賞より少し信頼性は落ちると思える。

2着ヴィルシーナ(父ディープインパクト)もまた、陣営の選択したローテーションが結果的に正解だった。
ディープインパクト産駒の最大特質のひとつは、
利発で素直なこともあって、レースに出走すると懸命に走りすぎてしまうこと。
だから、間隔を詰めての重賞挑戦は歓迎ではない気がする。
1800〜2000mのレースから出発し(ダイワスカーレットがこの手法だった)、
わざわざ東京に遠征して1600mにシフトし、クイーンCを快勝。
今回はジェンティルドンナに屈したが、すでに東京は経験している。
エリカ賞2000mを勝っている。
牝系は世界でも知られるグロリアスソングが4代母(ジャパンCのシングスピールなどがこの一族)。
桜花賞好走グループの中で、距離延長に大きな死角がないのがこの馬かもしれない。

アイムユアーズ(父ファルブラヴ)は、ずっと牝馬の主流路線を歩んで、
2つの1400m重賞を制してこれで[3-2-2-0]となった。
阪神JFで負けたジョワドヴィーヴルには見事雪辱したが、
別路線の2頭に先着を許してしまったというのが、全体の勢力図(ランキング)の中での力関係か。
だが、スキなしの正攻法で桜花賞0秒2差の3着は見事である。
ジャパンCを勝っているファルブラヴ(その父フェアリーキング)の産駒が、あまり距離をこなせないのは不思議だが、
ファルブラヴ牝馬の成功が短距離型に多いのは否定できず、
ここまでのレース内容から、同馬はオークスが目標ではないだろう。

4着サウンドオブハート(父アグネスタキオン)は、シャープで軽快なスピード能力が持ち味。
今回はこの馬らしいケレンなしのレースを展開したが、
誤算は2歳秋に460kgでもちょっと線の細く映った体が、休み明けで直前輸送の今回は448kgだったこと。
とくに細くもないが、力強く成長した体ではなかった。この馬はマイラー色が濃い。

5着メイショウスザンナ(父アグネスデジタル)は、
現時点ではあまり切れるタイプではないので、「47秒1-47秒5」の平均ペースを考えると、
これはあくまで結果論だが、もう少し前で流れに乗りたかったか。
だが、それでは一連の内容にプラスαが生じないのもたしかで、伏兵11番人気馬とすれば正解の好走だろう。
母型に配されてきた種牡馬はサンデーサイレンス、マルゼンスキー、シカンブル…。オークスでは怖い気がする。

人気のジョワドヴィーヴル(父ディープインパクト)は、ブエナビスタやアドマイヤオーラの下という観点を別にすると、
父ディープインパクト産駒の最大の長所(素晴らしいバネ)と、
激走しすぎるから、いまのところあまりタフに連続して快走できない最大の弱みを、
同時にすべて受け継いでしまった牝馬のように思えてきた。
今回は調教の動きも素晴らしかった。
でも、父は調教ではあまり真剣に走らなかった一面があるから、とぼけてふわふわ走っているよう見えて、
この小さな牝馬、いつも本人は懸命なのかもしれない。光ってはいたが、迫力に乏しかった。
成長力うんぬんではなく、目標のビッグレースに不安なしの仕上げ(当然、
負担はかかることになる)で臨んだからといって、期待通りの結果が導き出されるような分かりやすいタイプではないのだろう。
いまの時点では、オークスの2400mは合わないと思える。

パララサルー(父ディープインパクト)は、約1週前の輸送で体が減って、
当日はもう減らない方がいいと思えた前走から10kg減の434。
これはあくまで推測だが、同じグループの、同じようなオーナーの有力馬が重なっているため、
出走権のかかった路線では使い分けが生じてしまう。
この厩舎だから、アパパネと同じようにもっと早い栗東入厩で、むこうのステップレースを使いたかったのが本当ではないか。
ベテランファンのそんな推理を聞いた。鋭い。

■ 2010年回顧

強い馬の強い勝ち方、しかしそれ以上にベテランの好騎乗に拍手!

先週末は、牝馬クラシック第1弾・桜花賞が行われました。

蛯名騎手を背にした2歳女王・アパパネが1番人気に応えて快勝、
関東馬としてはキストゥヘヴン以来4年ぶり、
関東の騎手としてはなんとエルプスを駆った木藤隆行騎手以来25年ぶりというメモリアルな勝利となりました。
時計的にもレースレコードの「1'33"3」という優秀な決着でしたが、ラップ的にはどのようなレースだったのでしょうか。
早速見てみましょう。

◆桜花賞(GI・阪神8F)

2010年:35.6-23.3-34.4=1'33"3 (アパパネ)
2009年:34.9-24.2-34.9=1'34"0 (ブエナビスタ)
2008年:34.6-23.9-35.9=1'34"4 (レジネッタ)
2007年:35.7-24.1-33.9=1'33"7 (ダイワスカーレット)

※「テン3F-中盤2F-上がり3F」で表記、( )内は勝ち馬

テンはやや緩めの入りですが、過去最も中盤が速く、上がりまで続く持続力勝負となりました。
1ハロンごとのラップを見ると「12.6-11.2-11.8-11.9-11.4-11.1-11.1-12.2」で、5〜7F目に11秒台前半が並んだのが特徴的。
序盤やや息を入れて、中盤早めにペースアップするのは底力のある逃げ馬にとっては有利なレース運びで、
距離は全く異なりますが、それこそ08年有馬記念のダイワスカーレットと同じパターン。
まさに安藤勝騎手の真骨頂と言える騎乗でした。

これを好位からきっちり差し切ったアパパネは流石のパフォーマンスで、
馬自身も立派でしたが、何よりも蛯名騎手の「馬場とペースを読んできっちり前に付けた判断の確かさ」と「馬の資質の把握に基づいた確固たる自信」を携えた騎乗が賞賛されて然るべきでしょう。

結果を見れば「強い馬が強い競馬をした」だけですが、
トライアルで先行して差されていた経緯を考えると、ベテランらしい落ち着いたファインプレイと言えます。
素晴らしい勝利、本当におめでとうございます。

ステップレースを見直すと、アパパネだけでなくチューリップ賞上位組が3・4着(エーシンリターンズ・ショウリュウムーン)と揃って健闘したのが目立ちます。
このチューリップ賞、ほとんどの新聞の馬柱には「Sペース」と書かれていたと思いますが、馬場差を考えれば実は道中過去最速レベルで、
それでいて上がりが止まらない好レースでした。
まさに底力と持続力を問われたレースで上位の3頭だったことになり、オウケンサクラの絶妙な逃げがこの組の資質を引き出したとも言えそうです。

このように書くと、それを事前に分析していた私はあたかも的中したかのようですが…
チューリップ賞組の底力を認めながらも、それ以上にコスモネモシン・アプリコットフィズ・ギンザボナンザら資質の裏付けがある内枠の馬が、
早めの競馬で有利に運ぶと踏んでいたので、残念ながら全くの不的中だったのを白状しておきます。

さてこうなると、オークスでも「差しの競馬もでき、東京でレコード勝ちがあるアパパネ」は極めて有力、
02年スマイルトゥモロー以来、8年ぶりの関東馬による戴冠の期待が懸かりますが…
今回、緩い序盤でやや行きたがる素振りを見せていたことが僅かに気になるところ。
4着ショウリュウムーン以下、今回差して上位まで来た組の巻き返しもマークが必要ではないでしょうか。

■ 2007年回顧

桜花賞 35.7 36.2 33.9 ややスロー気味のアガリ勝負

レベルの高かった阪神JFのメンバーを考えると意外なアガリだけの競馬。
位置取りと瞬発力の差だけで決着した。

前の位置取りだったダイワスカーレット、カタマチボタン、アストンマーチャンは位置取りだけで残ったに過ぎない。

追い込んできたローブデコルテ、イクスキューズも末脚が溜められた分の上位。

中団にいたウオッカ、レインダンス、ハギノルチェーレ、カノヤザクラも、数字ほどの差はなく、差は瞬発力だけといった感じ。

もっとも強い競馬をしたのは差してきた2着ウォッカで、展開も向かなかったのに、
ダイワスカーレットと同じ33.6の末脚を駆使したのはこの馬の地力が桁違いだったことの証明。

アンカツのギリギリのラフプレイ(2度外側へ寄られる)によりウォッカのハミが外れた。
直線の手ごたえが怪しかったのはこの攻防のせい。
[2着ウォッカ≫1着ダイワスカーレット≫4着ローブデコルテ>6着レインダンス>3着カタマチボタン≒5着イクスキューズ>8着ハギノルチェーレ≒9着カノヤザクラ]


桜花賞(阪神8F/35.7-24.1-33.9)
12.7-11.6-11.4-12.1-12.0-11.6-10.6-11.7=1'33"7
1着ダイワスカーレット(3)、2着ウオッカ(6)、3着カタマチボタン(3)
5着イクスキューズ(16)、14着ピンクカメオ(10)

史上最もハイレベルの阪神JFを戦ったメンバーが再び仁川に集結、
どんな恐ろしいことになるかと思えばテン・中盤の緩さから時計的には0.6秒も劣る上がり勝負に。
熱発明け&出負けのイクスキューズは無理せず直線だけの競馬で5着、これはむしろ健闘か。


過渡期のこととはいえ実際はグレード外となって初の日本のクラシック。
さらに新しい阪神コースになって初の桜花賞。しかし、例年以上のハイレベルとされる「3強」が揃い、白熱の手に汗握る好レースが期待された。

まず、個々の注目馬のレース内容は別に、レースの終わった瞬間、残念なことに興奮や驚嘆は気抜けするほどに乏しかった気がする。
記者席も放送席もみんな静かだった。
素晴らしい能力を持った馬が何頭もいたはずなのに、あくまでレース全体としてのことだが、
あまりにも見どころの少ないマイル戦で、期待のクラシックとすれば平凡な内容すぎたためだろう。
迫力のせめぎあいも、力のぶつかりもなかった。

これは断然人気のウオッカが負けたからだろうか。
もちろんそれはあるが、レースは前半の半マイルが「47.8秒」という未勝利戦以下のスローペースで、1000m通過はなんと「59.8秒」。
新阪神の外回りはペースが上がらないことが多いとはいえ、
また、断然の人気馬がいる年ほどスローになるのは競馬の決まったパターンとはいえ、
近年の桜花賞ではありえない超のつくスローペースの展開。
そのまま各馬の動きはどこにもなく、オープン馬のことだから直線に向くとやおら「10.6」秒、そして最後が11.7秒。
正味、最後の300〜400mの地点から、先行のダイワスカーレットがスパートし、
一度はウオッカが並びかけようとしただけで、歓声が上がったのは、離れた3着争いが接戦になって画面に映ったときだけだった。

スローペースの展開はそれはそれで趣も見どころもあるものだが、前半の1000m通過が59秒台の後半だったのは、
極悪の不良馬場だった1983年、シャダイソフィアが1分40秒5で勝った年以来のこと。

桜花賞の古典の世界のことだ。新阪神とはいえ、
近年の桜花賞では信じ難く特殊な流れに陥った今年、各馬のレース内容と、このあとの展望はむずかしい。
こんなペースなのだから、たとえ形作りでもいいから伏兵陣はいつものように自分のレースをすべきだったろう。
せっかく桜花賞にまで駒を進め、競馬もしなかったのでは、陣営だけでなくファンとしてもあまりに残念というしかない。
レースの流れがこわれると、力を出し切れない馬が続出してしまう。

まず、3強とされた中でアストンマーチャンは、レース前のパドックから激しくイレ込んで、スタート直後からかかり通し。
途中から行かせる形になったが、失速は仕方がないだろう。
3歳牝馬の春の難しさも重なった。
快勝したダイワスカーレットはこのペースだから少しかかり気味になった瞬間、
気分良く先行させ、相手にとらわれることなく自身の能力発揮だけにたちまちテーマを絞った。
楽に先行して、この馬自身の1000m通過は60.1秒。
そこからの後半3Fを、「10.6秒」のスパートの1Fを含めていともたやすく33.6秒でまとめている。
力通りというべきか、結果としてまともにスムーズに能力を発揮できたのはこの馬だけだったともいえる。

問題は、ウオッカ。
敗因はいくつも重なっている気がするが、大きな点はまず、
前でかかっているアストンマーチャンも、行きたがっている形のダイワスカーレットも見える絶好の位置。
これが落とし穴だった。
だが、直線に向くまで歩くようなペース。
スカーレットをあまりに気分良く先に行かせすぎた。
自分が楽なら、相手はもっと楽なマイペースだった。スパートして並ぼうとしたときの1Fは10.6秒。

スカーレットの方も余力は十分。
並ぶつもりがスカーレットに突き放されるような形になって、
ウオッカは「ダメだ」の素振りでよれ、もう一回伸びて差を詰めようとしたが、ゴール寸前はギブアップ。
頭を上げて自身があきらめてしまった。この負け方はこの後を考えると良くない。
また結果論ではなく、ローテーションも失敗だろう。
2月のエルフィンSなどだれも使うとは考えてなく、必ずしもそういう調教過程ではなかったフシもある。
そのへんの経緯は知る由もないが、だから、楽にみえたチューリップ賞もウオッカ自身にとってはそんなに楽なステップではなかったのだろう。

能力の差がはっきり出て、ダイワスカーレットの方が明らかに上だった、とは認めたくないところに陣営の大きな無念と後悔がある気がする。
オークスで巻き返したいが、つぎは2400m。
ウオッカは本当は1600mのほうが合っているマイラーではないか、そんな見方にも反発しなければならなくなった。


桜花賞はダンスインザダーク産駒のカタマチボタンを本命にして、3連複を的中できた。
もちろん、◎→○→▲で3連単を的中できるのが理想的だが、
高松宮のペールギュントと同様、現在の自分の予想技術では、
今年の桜花賞は、勝ち馬の単勝よりも複勝を当てる方が配当的にも、確率的にも簡単だと思ったため、このような選択となった。
現状の予想技術、理論には満足していないが、今の自分にできる選択肢のなかでは、それなりの仕事ができたと思える桜花賞でした。

桜花賞が行なわれた週の阪神芝コースは、ダンスインザダーク産駒が大爆発した。
土曜日の芝・特別レースは勝ち馬が全てダンスインザダーク産駒。
日曜日の5レースもダンスインザダーク牝馬が1、2着で馬連は4,790円。
忘れな草賞もダンスインザダーク産駒のザレマが勝利した。

ダンスインザダークはサンデーサイレンスの直仔で、SS系種牡馬の一角を担う存在だが、
産駒の特徴は、SS系種牡馬の中では、欧州的なスタミナと、持続力を武器にする産駒を出しやすい傾向にある異端ともいえる存在だ。
つまり、先週の阪神芝コースは、ダンスインザダーク産駒のセールスポイントである、
欧州的な持続力、スタミナを要求されやすい馬場だったことも、ブレイクした理由のひとつだろう。

桜花賞の前日、阪神牝馬Sも勝ったのは、ダンスインザダークのジョリーダンス。
当然この馬を公開した予想で本命にした。
そして、断然人気のSS産駒ディアデラノビアは3着に敗れた。
ディアデラノビアが過去に馬券になったレースの上がりタイムを調べてみると、すべて34秒台。
速い時には33秒を出すように、瞬発力が最大の武器である。

しかし、阪神牝馬Sでは、上がりタイムが35秒以上掛かるように、瞬発力とは反対の持続力が要求されるのだ。
レースで要求される適性がダートと芝ぐらい違うと言っても過言ではない。
いや、過言かもしれないが、それぐらいのイメージで予想したからこそ、ディアデラノビアが勝てる確率は低いとレース前に予想できたし、
対極の能力の方向性を持つジョリーダンスを本命に出来た(と、せっかく今年は、たまたま的中したので言い切ってみたい)。

そういえば…というか、その現象を今年の予想でもイメージしたのだが、前年の秋華賞で34.2秒の瞬発力でラインクラフトを差し切ったエアメサイアが、
本レースではラインクラフトに3馬身ちぎられる完敗を喫している。
これも、阪神牝馬Sの行なわれる阪神芝1400mが「持続力」を要求されたために、エアメサイアが秋華賞ほど「跳ぶ」ような瞬発力を発揮できなかったからであろう。

単純な距離適性の差もあるだろうが、1200m戦であっても、コースと馬場によっては、エアメサイアがラインクラフトに勝てる局面はあると、ボクは考えている。
不毛な想像ではあるのだが。

血統予想というのは、とかく距離適性がクローズアップされがちである。
もちろん血統によって距離適性の傾向があるからこそ、血統が馬券予想に活用できるわけだが、
実際の馬券戦略を組み立てる際には、脚の使い方の方向性や、
通常の馬場よりもちょっとしたスタミナが要求されるなどの「能力の微妙なズレ、方向性」を見ることがポイントになりやすい。

また、血統を馬券予想ツールに取り入れる最大の魅力は、
レースを見なくとも、持続力と瞬発力など、相反する能力の方向性、適性を、ある程度の精度で想像することができることだ。

たとえば、血統のちょっとした知識があれば(ボクもたいした血統の知識はない)、
桜花賞でカタマチボタンが今まで以上にスタミナ、持続力を要求される桜花賞でパフォーマンスを上げることは想像できるし、
ディアデラノビアが、仮にこれまでに阪神芝1400mを走ったことがなくとも、今回のレースに向かないことは容易に想像できる(むしろ走ったことがない方がおいしいぐらいだ)。

また、仮に阪神芝1400mが1分19秒台の高速馬場になった際には、上がりタイムは速くなるだろうが、それでも持続力が要求される場合もある。
新潟や阪神の外回りコースも、上がりは速いが、瞬発力よりも持続力が要求されるケースは多い。
そのようなコースの特徴を見抜くのも、走破タイムよりも、馬券になった馬の血統を見る方が簡単なのだ。


ゴール手前2ハロンからの驚異的タイムで桜花賞制覇

◇ダイワスカーレット操る安藤勝騎手の技量に脱帽

右回りの競馬で、大のつく本命馬が伸びそうで伸びず、2着に敗れてしまうシーンというと、すぐ思い出すのは、平成17年の有馬記念である。
単勝オッズ1・3倍という断然の1番人気になっていたディープインパクトが、
4コーナーを3番手で回って早めに先頭に立ったハーツクライをついにかわせず、2着に敗れてしまったのである。

今年の桜花賞(4月8日)におけるウオッカも、まさに同じような負け方だった。
ウオッカは単勝オッズ1・4倍という断然の1番人気になっていたのだが、
4コーナーを3番手で回って早めに先頭に立ったダイワスカーレットをついにかわせず、2着に敗れてしまったのである。

じつは、ラップタイムの面で、この両レースに共通していることがある。
ゴールまであと2ハロンという地点から、バカッ速いラップタイムが記録されていることである。
平成17年の有馬記念では、ゴールまであと2ハロンという地点から「11秒4」という中距離戦の終盤としてはあまり例のない速いラップタイムが記録されている。

そして今年の桜花賞では、ゴールまであと2ハロンという地点から「10秒6」という、とんでもなく速いラップタイムが記録されているのである。
桜花賞で、ゴールまであと2ハロンという地点から11秒0を切るラップタイムが記録されたことなど、史上初めてのことである。

その地点があまりにも速くなってしまったために、ウオッカは追いつくのに、もっと速い脚を使わされてスタミナを消耗し、
それがゴール前の伸び不足につながってしまったのではないかと思う。
平成17年の有馬記念におけるディープインパクトにしても、ゴール前の伸び不足の理由のひとつは、あの地点で速い脚を使わされたからだろう。

追い込み馬の伸びを鈍くさせる方法として、
先行馬が早めに猛烈なスパートをかけ、自分ばかりでなく後ろの追い込み馬にも脚を使わせる方法である。

これは古典的な方法で、19世紀後半に活躍した英国の天才騎手、フレッド・アーチャーもこれを得意としたのだが、
有馬記念をハーツクライで勝ったときのルメール騎手も、今回の桜花賞をダイワスカーレットで勝った安藤勝騎手も、
この古典的手法を自家薬籠中の物にしていて、大本命馬にひと泡吹かせたということなのだろう。

ちなみに今回のダイワスカーレットは、8枠18番からスタートして桜花賞を勝った。

桜花賞が阪神の芝良1600メートルで行われたケースに絞ると、今回のダイワスカーレットのように、
8枠からスタートして4コーナーを3番手以内で回った馬の成績は、昭和50年以降昨年まで、〔00115〕という惨憺たるものだった。

ダイワスカーレットをあの外枠から無理なく先行させ、二の脚を使わせた安藤勝騎手の技量は称賛に値する。

(サンデー毎日 2007年4月29日号)


1番 ショウナンタレント 13着
出負けして逃げの形に持ち込めなかった。逃げられないともろいのか、あるいはマイルの流れはこの馬にとって忙しすぎるのか。
おそらく両方だと思われるが、どんな形になっても好走できるだけの強さはまだないという結果だった。
とりあえずは、ポンとハナが好走条件か。フットワークがすこし窮屈で、やや体調下降だったかもしれない。
シャドーロール。出遅れてハナに行けなかった。道中の手応えはそれほど悪くなかったが、この形では持ち味を生かせない。

2番 アポロティアラ 16着
道中意外にいいフォームで走っているが、この馬にマイルは長すぎる感じだった。2歳で重賞を勝っているだけに今後レースを選ぶのが難しいが、1200の相手薄ならソコソコやれるかも?

3番 カタマチボタン 3着
なかなかいい瞬発力だが、上位2頭には坂上であっという間に引き離されてしまった。一瞬いい脚を使えるがあまり長く持たない感じで、府中の2400はやや長いかもしれないという印象だった。
テンションは高めだったが、レースでは好位の内目で折り合って追走。上位2頭には離されたが、ギリギリ踏ん張って3着を確保。なかなか渋太い。2人曳き。落ち着いていた上に集中力有った。トモの張りも目立つ。折り合いを気にして、出してはいなかったが、出脚良く好位のイン。人気3頭が外で競馬している中、ソツ無く回って来れた。最後は突き放された様に、性能の絶対値で劣るのだが、器用さが距離延長で武器に。

4番 クーヴェルチュール 12着
インピタリの経済コースを通ったが、直線失速。やや早熟気味の評価か。マイルもおそらく長いと思えた。

5番 レインダンス 6着
なかなかいいバランスで走れているが、末脚の持続力で他の有力馬に少し見劣りする感じだった。いいフットワークで走っているので、自己条件ならかなり上のほうと思える。

6番 ローブデコルテ 4着
抜群のフットワークバランスで走っていて、実にいいストライド。レースはこの馬のリズムで行って、なりでポジションが自然に下がっていったが「ついて行けなかった」というのではないので問題ナシ。直線ではすごい瞬発力で反応はビビッドだったし、ずいぶん長くいい脚を使った。10.6のラップのところでポジションを上げて行ってるから、なかなか強い競馬だった。トップスピードに乗ったところで前に一頭いて進路変更することになったが、よどみなくスムーズ。オークスの穴はこれと思えた。
抑えて後方から。内に入れていたので勝負どころでは動くに動けない形だったが、直線に向いてバラけてからよく伸びた。芦毛だが、毛ヅヤが良い。前走時にも述べた様に例年なら上位の馬。出脚で置かれて中段やや後方。ただ、道中外から前へ行った馬も多く、直線向いた時には最後方に置かれていた。最後来てはいるが、実質競馬が終わった後。出脚が課題に。

7番 イクスキューズ 5着
かなりいいアクションで走る馬で、キビキビとしたフットワークが好印象だった。仕掛けられてからの反応が他の有力馬に比べてワンテンポ遅い感じだったが、しかしこれはボストンハーバー産駒にしては奥がありそうで、早熟ではないという印象だった。秋に改めて期待。
リングハミ。コトコトしていた。ジワッと行かせ、すぐ内に入れて追走。4角で外に出したが、前が壁になって更に外に持ち出さざるを得なかった。そこからよく伸びたが、ちょっともったいなかった。皮膚を薄く見せる点は良いが、もう少し歩様にスムーズさが欲しい。これも出脚が甘くて後方から。道中はインに居て、直線だけ外へ出そうとした様だが、入口で捌き損ねるシーンが有ったのが痛い。これも上位3頭とは差があるが、それ以外なら。

8番 ピンクカメオ 14着
先行したがずるずるポジションが下がって終了というレースぶり。残念ながら、この次にNHKマイルCを勝つようなきらめきは、このレースには感じられなかった。推測されることとしては、遠征が全くダメなのかもしれない。関東圏で買い、関西圏では消しか?そうだとすると、オークスは多少押さえておいたほうがいいことになるが、なかなか扱いが難しい馬になってきた。

9番 アマノチェリーラン 10着
軽快に逃げたが、上位馬と比べてまだしっかりと力がつききっていない印象だった。1400までは負けずにけっこう食い下がっていて、ラスト1ハロンが大歩き。現状1400ベストなのだろうと思えた。

10番 ハギノルチェーレ 8着
中団追走から直線入り口でロスなく馬群の外に出して、一瞬いい脚で追い込んできたが、前が強すぎて馬が少しあきらめたのだろうか?ギアが変わった瞬間の勢いほどには伸びていなくて、もしかするとこれも1400ベストというタイプなのかもしれない。

11番 ニシノチャーミー 18着
左目を失明して8ヶ月ぶりのレースがここではあまりに気の毒だったが、スタートしてしばらくはなかなかいいバランスで走っていたように思う。コーナーを上手く曲がれなかったり、直線では若干トモが流れるような感じがあったが、8ヶ月ぶりの実戦、ここがデビュー3戦目とあっては致し方ない。素質の高い馬なので、どれぐらい復活できるのか見守りたいが、次にいきなり馬券になる感じではなかった。

12番 カノヤザクラ 9着
道中わりといいアクションで走っていて、着順ほど印象は悪くなかった。直線でも中団から一瞬伸びかけていて、最後止まり気味だったのはやはり距離か。葵Sを勝ってそのあとのローテがかえって難しくなった感じもするが、1400までの相手薄レースなら常に好勝負ではないだろうか。

13番 フローラルカーヴ 11着
レース後、軽度の骨折が判明。レース中のものなのかどうかは分からないが、レースを見た感じだけで言うと、若干ストライドが小さくなっていて、スピード負け・体力負けという印象だった。

14番 ウオッカ 2着
この馬はやはりものすごく雄大なアクションで走る馬で、完歩の大きさ、追われてからの反応、持久力ともに一級品と思えるレース内容だった。アンカツさんのマジックにしてやられた格好だが、馬の実力は勝ち馬に引けを取らないと思えた。最後苦しくなって多少ヨレたりしてるが、じっくり立て直してくるなら、ダービーでも少し買っておかなくてはならないかもしれない。
ジワッと行かせて中団より少し前の外目。折り合いもスムーズ。直線に向いて勝ち馬に並びかけようとしたが、今日は振り切られてしまった。叩いて馬体に張り。ただ、毛ヅヤの悪さ等、昨年暮れの状態程では無い気もしないでも無いのだが、前走は論外だっただけに、ストライクゾーンには入っていた。人気2頭が外でやり合うのを眺めながら中段。並びそのものは戦前の予想通りだったが、アストンマーチャンが失敗した分、ダイワスカーレットに余裕が出来た。ただ、それにしても最後突き放されたのは意外。一本被りだった人気程の能力差が無いのか、デキが無いのか、距離が短いのか...。

15番 アストンマーチャン 7着
前走も少し思ったが、キャリアを重ねるたびに走り方が「本質スプリンター」という感じになってきた。現状では1400ベスト1200ベターという感じかもしれない。リズムのいいピッチ走法で走る馬で、短距離路線ではある程度活躍できるのではないかと思えた。
イレ込み気味。ソロッと行かせようとしたが、4角手前まで掛かり気味。直線に向いて先頭に並びかけたが、さすがにそこから伸びなかった。2人曳き。手先の軽さは有ったが、今日は何時に無くテンション高い。好発。武豊騎手独特の、馬群と離して折り合い付ける策に出たが、大外枠ダイワスカーレットがプレッシャーを掛け続け、作戦失敗に。3角では抑え切れずに2番手。直線は一瞬抵抗しただけで終わってしまった。今日は仕方が無い。これなら最初から出脚で行き切った方がという事になるのだが、それも結果論になろう。

16番 ベリーベリーナイス 17着
フットワークが小さく、やや力不足と思えた。

17番 エミーズスマイル 15着
3角手前から思い切って大外をまくって上がっていったが、そこで脚を使った分直線では失速。この馬の脚質には阪神マイルの8枠は苦しい枠で、いちおう度外視か。関東圏で牝馬同士ならばある程度上のほうと思えるので、まだ見限るのは早い気もする。
出遅れ。道中はウオッカをマークする形で追走。4角で外に出して追い出したが、サッパリ伸びなかった。

18番 ダイワスカーレット 1着
ものすごくパワーのあるスピード馬で、その両方が実にバランスよく備わった名馬。抜け出すときの反応の素早さと爆発力は、今年の牝馬の中ではウオッカとこれが全く群を抜いている。ただ、ここ2走、スピード色が前面に出るレースをしており、オークスの舞台でこれをどうなだめながら行くかが鍵だろう。アンカツさんならさほど心配はないのかもしれないが、府中の馬場を一周してきたあとにこの爆発力がまだ残されているかどうかはやってみないと分からない感じもした。

掛かり気味に先団へ。ペースが遅かったこともあるが、終始抑え切れないくらいの手応え。直線に向いて2着馬がきたのを確認してから追い出し、しっかり伸びて突き放した。2人曳き。落ち着いていた。トモの張りは血統だろうが、にも関わらず歩様に硬さが無いのが最大のセールスポイント。アストンマーチャンが折り合いの為に外へ出そうとしていたのを、1頭徹底マーク。これでアストンマーチャンが実質圏外になり、ウオッカ一頭に集中出来る様になった。直線も、ウオッカが来ただけ伸びた印象。歩様の分だと思うが、この血統の割に乗り易さも有るのだろう。東京でも有力。

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