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安田記念

・マイルCS・京王杯SC好走馬は危険!香港馬はレベル差を測る。
・モデル馬=アサクサデンエン
・危険タイプ=スーパーホーネット・スズカフェニックス・オレハマッテルゼ
・直結レース=ダービー・天皇賞秋
・非直結レース=マイルCS・京王杯SC


安田記念、宝塚記念は3歳馬を買うな!典型的なヤラズの可能性が高い。
たとえダービー馬でも、軽量でも。
まず勝てないし、勝ちに来ない。
登録馬の目的は、古馬のペース配分を身体で覚えさせるための稽古がわりのレースであることが多い。


 結論から言うと、香港馬はどれも切れません。

 グッドババとその他2頭との人気に差はあるものの、日本の馬場において
 の差はそれほどあるとは思えませんので、穴という観点では、アルマダ、
 ブリッシュラックの方が面白いかもしれません。

 香港馬の強さについては、藤沢和調教師の「GTの勝ち方」という本の中
 の“金言”に「香港馬はハイレベル」というものがあります。
 非常にわかりやすく述べていますので、以下にご紹介します。

 香港馬がハイレベル化した理由として、1つにオーストラリアやニュージー
 ランドの馬が入ってくるようになったことをあげています。
 これは血統的な裏づけを言っており、オセアニアでは種馬にデインヒルの
 子どもなどもいて、とにかく短いところが強い馬が多いということです。
 だから香港馬はマイル以下でかなり強くなったと。
 このことは良く言われていることですので、私もある程度は知っていました
 が、次の理由は知りませんでした。
 
 藤沢和調教師は香港馬がハイレベル化した次の理由に、香港のジョッキー
 クラブがレベルアップのために実施した様々な取り組みをあげています。
 具体的な取り組みとしては、@馬主の所有できる馬数を制限(最大4頭=
 07年時点)、A海外からのトレードは、レーティングの高い馬のみに制限、
 B賞金の高額化等々とのことです。

 私は@とAの取り組みをやっていることはまったく知りませんでした。
 この@〜Bの取り組みをすれば、そりゃあ常にハイレベルの戦いが行わ
 れますよね。
 当然、そのハイレベルの戦いを常に経験する馬たちは強くなります。

 だから藤沢和調教師は、マスコミの評価が低くても安田記念の香港馬は
 要注意といっているわけです。

 今回参戦してきた3頭をみてみますと、まず人気のグッドババについては
 あまり触れる必要もないでしょう。
 その強さは、国際レーティングが122ポンドで世界5位タイ、マイルのカテ
 ゴリーでは1位と世界的なお墨付きは十分すぎるものです。

 前走のチャンピオンズ・マイルでは直線一気の強襲で快勝、賞金とボー
 ナスあわせて2億円を獲りに日本に乗り込んできました。
 安田記念の勝ち時計は例年1分32秒台ですが、香港の馬場差は日本と
 1秒程度と言われていますので、前走のチャンピオンズ・マイルの勝ち時
 計が1分33秒5なら、1秒引いて1分32秒5ということになり、十分勝ち負
 けです。
 もちろんそう単純ではないわけですが、一昨年ブリッシュラックが1分32
 秒6で圧勝した安田記念の前走であるチャンピオンズ・マイルで記録した
 勝ち時計は1分33秒7。
 このことからも、今年のグッドババは、一昨年のブリッシュラックと同じくら
 い強いと考えて良いでしょう。

 次にアルマダですが、こちらの前走はグッドババからコンマ2秒さの2着。
 長期休養明けを3回叩き、かなり復調してきたことはあきらかで、前走か
 ら更なる上積みがあるのは間違いありません。

 そしてブリッシュラック。言わずもがなの一昨年の覇者ですが、年齢的な
 衰えはあるかと思いますが、前走はグッドババ、アルマダに続く3着であり、
 一昨年見せた日本の馬場に対する適性等を踏まえると、逆転も有り得ます。

 といった感じで香港各馬を見てみますと、人気のグッドババだけでなく、他
 の2頭も押さえる必要がありそうです。


急流の好時計決着、タイムに価値はないが上位馬の収穫は大

 先週末の安田記念は、キャリア39戦目のショウワモダンが初のGI挑戦で見事に戴冠。ダービー2着の雪辱を果たした後藤騎手の歓喜の笑顔が印象的でした。

 好時計のレースが相次ぐ今開催ですが、NHKマイルCに続いて1分31秒台の決着となりました。時計はレースレコードでしたが、果たしてラップ的にはどのようなものだったのか、早速見てみましょう。

◆安田記念(GI・東京8F)
2010年:33.6-22.7-35.4=1'31"7 (ショウワモダン)
2009年:33.4-24.0-36.1=1'33"5 (ウオッカ)
2008年:34.6-23.3-34.8=1'32"7 (ウオッカ)
2007年:34.1-23.4-34.8=1'32"3 (ダイワメジャー)
2006年:34.8-23.3-34.5=1'32"6 (ブリッシュラック)

※「テン3F-中盤2F-上がり3F」で表記、( )内は勝ち馬。

 今年は例年より1秒強は速い、絶好馬場でした。即ち実質時計は「34.0-23.0-35.8=1'32"8」程度だと考えられるので、決して近年と比べてずば抜けて優秀な時計ではないでしょう。特徴的なのは「テン〜中盤がかなり速いラップ」であること。連続開催の後半で極端な前残り馬場ではない現状では、明らかに差し・追い込みが嵌るラップで、実際に道中中団より後ろを進んだ馬が1〜3着を独占する結果でした。

 4角で15・14番手に溜めた2頭が2・3着したのに対し、4角8番手から堂々と差し切った勝ち馬ショウワモダンは、単純な恵まれとは言えない強い競馬でした。「マイルだと緩めの流れが得意で、東京では9Fで強い勝ち方をしている馬」なので、この流れで早めに脚を使うと失速するタイプですが、じわじわと長くいい脚を持続することに成功。「ダービーを教訓にギリギリまで追い出しを我慢した」という後藤騎手のファインプレーに加え、何よりも馬自身の地力強化のなせる業でしょう。

 2・3着(スーパーホーネット&スマイルジャック)は展開的には「恵まれ」とは言え、共に緩めの流れでの切れ味勝負が得意な馬だっただけに、急流での好走はやはり進境と言えます。特にここまで7回の「GI連対&GII勝ち」が全て「上がり34.1以内」という、瞬発力自慢のスーパーホーネットが、急流の中で「上がり34.2」でGI連対を果たしたのは大収穫。これから更なる活躍が期待できそうです。

 他ではやはり、かなり早めの仕掛けで4着に粘ったトライアンフマーチが最も強い競馬でした。ある意味器用さが災いしたようなレースで、3歳時のようにエンジンの掛かりがやや遅いようなレースをしていれば、逆に恵まれて勝ち切っていたかもしれません。今後のこの戦線を引っ張って行く存在になっていく馬でしょう。

 ちなみに私自身が本命としていたのは15番人気の◎サイトウィナー。直線で馬群の間を割ろうとして割れず、一旦控えて立て直して0.2差5着だったのは極めて惜しい内容で、スムーズだったら2着争いには加わっていたかもしれません。今回香港勢は1頭も馬券に絡めませんでしたが、やはりハイレベルなチャンピオンズマイル上位組は、今後もマークが必要です。

ブリッシュラック

馬自体は昨年と殆ど差は無いが、硬かった歩様が今年はマシ。ゲート五分。歩様が良化し、ダンスインザムードに出脚が無く、中段のインが取れた。直線、スペースを探して坂下で前が開き、そこからは左手前のままで突き抜けた。昨年にも述べた様に、ベストは右回りだろうが、今年は歩様が良くなっていた分、真っ直ぐに走れた印象。最大の勝因は位置取りだろうが、昨年とほぼ同じ時計で駆けて圧勝されただけに、日本調教馬も不甲斐無い。

アサクサデンエン

オーストラリアンブリンカー。毛ヅヤが甘いので、絶好調では無いだろうが、馬体そのものは締まっていた。この馬にしては歩様もスムーズ。出脚は有る馬だが、外を回るのを嫌って、一旦下げて内を突く策。2着だから目論見自体は悪くなかったが、直線半ば迄前が開かず、捌き切った時には既にブリッシュラックとの間には絶望的な差が開いていた。今日は枠順が全て。距離自体はこなせるので、秋の東京は勿論、代替京都へ行っても面白い存在。

ジョイフルウィナー

来日してから食いが細くなったという話が有った様だが、その通りに細く映る。トモの送りにもスムーズさが欲しい。ゲート自体は出ているが、枠順も有って最後方から。大事に乗って直線だけ外へ回し、伸びてはいるが、ラスト100mで手前が替わってしまい伸びあぐねた。以前程では無いとはいえ、外を回すと苦しい今の東京。地元香港の下馬評はブリッシュラックよりこちらだったそうだが、成る程デキと枠順が良ければ突き抜けていただろう。

ダイワメジャー

2人で曳いてもう1人付ける何時もの体制。パシュファイヤー。馬体充実して、歩様もこの馬なりにスムーズ。ゲート五分。出脚は悪くない馬だが、この枠は好位取ろうしてどうしても前半余裕が無くなる。昨年とは違って、一旦は先頭に立つシーンも有ったのだが、瞬発力勝負では例に依って苦しい。実績無い東京でも外枠ならとは思うのだが、毎回内枠だし、今の東京は外枠の馬が好位の外という競馬は大抵伸びあぐねるので、何れにしても厳しい印象。

ダンスインザムード

それ以外は良いが、今日は歩様がワースト級に硬い。ゲートは出ているが、歩様が硬い影響も有って、出脚が甘く後方から。終始内を回った分ここ迄来たが、マイルを差す競馬では突っ込み切れない。この後、休養かと思ったら米国遠征だそうだが、歩様が良くなるかどうかが問題。特にこの馬のマイルはそこ迄切れないだけに、前へ行く脚が欲しい。

テレグノシス

何時も通りといえばそうだが、今季所作が多少大人しかった事を思うと、チャカついていたのは気になる。とはいえ、皮膚を薄く見せデキ自体は抜群。ゲート自体は出ているが、挟まれたのか最後方から。直線外へ回したにせよ、ジョイフルウィナーがアワヤ2着に迄来ているだけに、案外の内容。左回りでも直線を左手前で走って伸びる馬が、今日はしっかり手前を替えて右手前で伸びなかった。何度も述べている様にベストは右回り。気の早い話だが、新装阪神で一発期待したい。

オレハマッテルゼ

前走とほぼ同様。腹回りがまだ甘いだけに満点はやれないが、一応は及第点。好発。出脚がそこ迄では無いし、向正面ムキになっていた上に、3角手前でザデュークが弾いた馬が間接的にこの馬と接触する不利も。ただ、この位の不利を言い訳にしている様ではダメ。たまたまスプリントで勝っただけで、マイルではあくまで二線級。

カンパニー

+8kg。馬自体は悪くないが、集中力が無く物見が激しい。ただ、歩様は前走の阪神戦より確実に良化。道中は中段。3角手前でザデュークに当てられてバランスを崩す不利。土曜日のフィールドオアシスもそうだが、この馬の場合も毎度の様に不利を食らっている印象。性能自体はGTでもと思うだけに、もうちょっと何とかならぬものか。

ハットトリック

昨秋を思うと絶好調とは言い難い。トモの送りにスムーズさが欲しい。ゲート五分。出脚自体は悪くなく、中段のインで流れに乗ったが、直線半ばで進路が無くてバランスを崩すシーンが有ったのが全て。手応えはそれ程では無かったが、これは元々。それだけに、何処迄やれていたかというのは想像し辛いのだが、今春初っ端の中山戦を思えば良化の兆しは窺える。秋に改めて。

今年の安田記念は昨年の上位入賞馬2頭で決着しました。優勝馬ブリッシュラックは昨年0.2秒差の4着、2着馬アサクサデンエンは昨年の優勝馬です。平均ペースの流れで出走各馬は持ち時計通りに走ってるので十分に出し切っていると思うので、優勝したブリッシュラックは圧勝と言って良いと思います。日本勢は昨年と同じ顔ぶれで着順がチョット入れ替わったぐらいですから、マイル路線は混戦模様がまだ続きそうな感じがします。

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2006年 安田記念  向正面

今年の安田記念は逃げ馬がメイショウボーラーの1頭のみであったので向正面までは昨年よりも緩いペースで流れました。カメラのファインダーに出走馬全頭数が収まっていたのマイルとしてはペースが遅く、直線でヨーイドンの瞬発力勝負になると思いました。

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2006年 安田記念 3角〜4角 中間地点

東京芝1600m以上のレースでは長い直線に備えて、3角〜4角の中間地点で一旦ペースが落ち着くのですが、逃げたのがスピード任せで一本調子で逃げるメイショウボーラーだったこともあり、ペースが落ちず澱みのない流れになりました。前半のペースは昨年よりも遅いのですが、澱みのない流れになったことで昨年よりも厳しいレース展開になったと思います。

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安田記念 今年と昨年のラップ変化の違い

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2006年安田記念 最終コーナー


澱みのない平均ペースでは東京芝1600mで逃げ切ることは難しいです。メイショウボーラーを追いかける格好で先行したローエングリン・バランスオブゲーム・ダイワメジャーの先行勢も苦戦を強いられたと思います。優勝馬ブリッシュラックはポケットに閉じ込められた格好になっていました。トビが大きい馬なので直線外に持ち出すまで苦しかったと思います。外に持ち出してからの瞬発力は圧巻で2連連続でチャンピオンズマイルで見せた豪脚は本物でした。2着馬アサクサデンエンは写真右奥の橙帽です。不利な位置からインをついて直線坂下まで我慢して昨年見せた瞬発力を披露して2着に食い込みました。最終コーナの位置取りと着差を考えるとアサクサデンエンが一番強い競馬をしたのではないかと思います。

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2006年 安田記念 優勝馬 ブリッシュラック

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2006年 安田記念 2着馬 アサクサデンエン

パドックのアサクサデンエンは馬体のデキは申し分ないのですが休養明けの影響なのか気合不足に感じられ気配としては今ひとつでした。優勝馬ブリッシュラックはパドックで見た瞬間に「この馬には勝てない」と思いました。日本の騎手のマークが厳しくなることから楽な競馬は出来ないと消しにしたのですがアジアマイルチャレンジ2勝を狙っているだけあって馬体・気合ともに素晴らしいデキでした。ブリッシュラックと他馬を比べていると初期のジャパンカップのパドックで外国馬に感じた敗北感を思い出しました。

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2006年 ヴィクトリアマイル 最終コーナー

ヴィクトリアマイル優勝馬ダンスインザムードは、ビクトリアマイルと違って位置取りが悪くなっています。枠順がグリーンベルトを走れる内枠だったので注目していたのですが最終コーナーでアサクサデンエンの前を走っていることから位置取りはヴィクトリアマイルよりも後ろになっています。ゴチャゴチャしたインをついたのでヴィクトリアマイルのように弾けなかったのは仕方ないことだと思います。

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2006年安田記念 ダンスインザムード 


2006年安田記念 ビクトリアマイル ダンスインザムード 


 パドックでのダンスインザムードはヴィクトリアマイルと同じように落ち着いていました。ヴィクトリアマイルから安田記念まで間隔が短いことからパドックでのデキが気になっていたのですが、馬体重は減っているもののヴィクトリアマイルよりも馬体が丸みを帯びていい感じに仕上がっていたと思います。ヴィクトリアマイルで気になっていた後肢の動きは相変わらず硬さが感じられました。昨年はイレ込んでどうしようもなかったのですが、肢の運びはもう少し柔らかかったように思えます。

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2006年安田記念 直線坂下

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2006年安田記念 オレハマッテルゼ

高松宮記念・京王杯SCと連勝しているオレハマッテルゼは予想していた通りに直線入口から早目仕掛けてメイショウボーラーを追いかけました。澱みのない平均ペースでの最終コーナで大外を回っての早仕掛けですから直線長い東京芝1600mでは苦しかったと思います。

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2006年安田記念 直線坂下

澱みのない平均ペースで終始団子状態、直線坂下でもゴチャゴチャで優勝馬ブリッシュラックは馬群の中、2着馬アサクサデンエンは写真左奥のインの最後尾です。ブリッシュラックは外に持ち出せる位置にいますが、アサクサデンエンは絶望的な位置です。この絶望的な位置から前を捌きながら良く伸びてきたと思います。

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2006年安田記念 3着馬ジョイフルウィナー

3着馬ジョイフルウィナーは大外を豪快に伸びてきました。大将格のブリッシュラックのマークは厳しくなるので香港馬を狙うなら外枠でマークが手薄にになるジョイフルウィナーと思っていました。パドックで他馬と比較すると手足が他馬よりも長いです。マイラーというよりも中長距離馬のような感じで、直線が長い東京芝コースは合うと思いました。

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2006年安田記念 ダイワメジャー


注目していたダイワメジャーはパドックでは落ち着いていてデキは申し分ありませんでした。自力型の先行馬で自分から積極的に動いていかないと実力が発揮できないタイプなので内枠でメイショウボーラーに前を塞がれる格好で自分のペースに持ち込めなかったのが敗因だと思います。他馬よりも切れる末脚がないので今年の安田記念は展開が合わなかったと思います。次走はどこを使うか不明ですが状態は良いと思うので積極的なレースをすれば好走が期待できます。

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2006年安田記念 インセンティブガイ

穴馬と期待していたインセンティブガイはパドックで他馬と比べると馬体の小ささが目立ちました。スローペースで馬群が固まり肉弾戦になると厳しいと思いました。パトロールビデオをみると接触して弾き飛ばされているシーンがあったので馬体が立派な馬が揃うマイルG1では今後も厳しい戦いを強いられると思います。

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2006年安田記念 テレグノシス

武豊騎手に乗替り注目していたテレグノシスですが9着と残念な結果でした。内枠であったこともあり、予想通りにスタート直後に後方に一旦控えました。直線坂下ではアサクサデンエンと同じ位置で外側で前に馬がいない分、テレグノシスが有利だと思ったのですが思ったように弾けませんでした。デビュー当時からテレグノシスを見ているのですがパドックで状態が良いと感じたときは走らないことが多いので、今回のパドックは立派で齢の割に若々しいと感じたので走らないのではないかと思っていました。パドックで状態が良いので馬券を買うとハズれるし、見栄えが悪いと感じで買わないと勝つし、馬券の取捨選択が難しい馬です。


■ マイルCSと安田記念の性格の違い

 同じく古馬のマイルG1には東京の安田記念がありますが、この2つのレースはかなり異なる性格を持っています。
 93年-02年の良馬場で行われた両G1で、上がり3Fがテンの3Fよりも1秒5以上かかった年が、安田記念では1回しかないのに対し、マイルCSでは5回もあるのです。
 テンの速さもマイルCSの方が上で、34秒5より速くなった年がマイルCSでは6回、安田記念では3回となっています。

 これは、コースの形状に由来するところが大きいと思われます。
 東京のマイルはスタートしてからやや下ったあと、100mで2m昇る坂がすぐに現れ、そのあとは延々下りと平坦が続き、
 そして直線中ばに150mの間に2m昇る坂があり、あとは300m近く平坦となります。
 対して京都外回りマイルは、スタートして400m平坦が続いたあとに、100mの間に2m昇り、
 しかもその頂上からさらに新しい坂が始まって、300mの間に2m昇ったあと、一気に100mの間に4m下る急勾配の下りがあり、そのままゴールまで平坦になります。

 これがどういうことを意味するかというと...

 ★ 京都マイルは、テンにスピードが出やすいが、その後の急激な昇り坂で逃げた馬は大抵失速する。
   ただし、マイル戦なので後続もそうゆったりと構えているわけにはいかず、坂の頂上より手前からレースが動く。
   その分、後半に下り坂があるにもかかわらず、その下りで仕掛け気味に動くので、直線に来るとどの馬も脚は上がる。
   つまりマイルCSの方が、必然的に上がりがかかるようなコース設定になっている上、
   勝負所で加速されるように出来ていることから、本来スピードに乏しい血統でも来るチャンスが増える

 ★ マイルCSはスプリンター血統では無理。母方にスタミナの裏づけが必要。

 ★ マイルCSは安田記念以上に、下りでの加速を保たせられる持続力血統が強い。
   瞬発力血統ならば、直線だけで追い込みきれるだけのかなり高い瞬発力が必要だが、一瞬しか良い脚が使えない系統では苦しい。
   また特に内を突く場合には3、4角でかなりペースを落とす必要があるため、そこから仕掛けて突き抜けるには尚更ハンパじゃない瞬発力が必要となる。

 その表れの1つが、スピードに乏しいものの、パワーとスタミナに富むニジンスキーの血を受けた馬がこのレースで好走していることです。
 スピードの要素が求められる安田記念ではどうにもならないエイシンプレストン(父グリーンダンサー)が、ここでは2年連続連対しているのが何よりの証拠。
 それだけに、安田記念とマイルCSを両方勝っている馬は、競走馬としての絶対値が桁外れということになります。
 極論、そこまでのスケールがないと思ったら、東京のマイルG1馬は全て消しでも良いのかもしれません。

 また瞬発力血統では、トニービンリファール系のように、瞬間点火できる上に長く脚を使える系統が好成績を残しているのも、まさにこのコース形状を裏付けています。
 このように、血統によるコース適性判断は、形状を抜きには語れないということを申し上げておきます。