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トニービン

■ 特徴

■ 解説

 芦毛の快速血統として発展したグレイソヴリン系も、配合牝馬からスタミナが注入され、世代を重ねるうちにステイヤー血脈へと変身する支流父系が、いくつか誕生していった。
 トニービンの父系もその一つで、変身のはじまりはゼダーン(仏2000ギニー、輸入種牡馬)からだった。
 気性の激しさが前面に出てマイラーとして大成したが、母系にスタミナに富むステイヤー血脈を従えていた馬である。
 ゼダーンは産駒に気性の激しさを伝えたが、同時に母系のスタミナも伝えた。
 その代表産駒のカラムーン(仏2000ギニー)も、激しさを受け継いでマイラーだったが、種牡馬としては力強いステイヤー血脈に変身。

 名ステイヤーのカラグロウ(キング・ジョージVI&クイーンエリザベスS)を出した。
 トニービンの父カンパラ(輸入種牡馬)も、このカラムーンから誕生している。
 しかし、カンパラの競走成績はG3を勝ったのみ。種牡馬としても水準級で、この父からトニービン(凱旋門賞)が出たことじたいが驚きだった。
 もっとも、グレイソヴリン系は伝統的にこの手の話には事欠かない。
 一流半どころか中下級に終わった父から一流馬が誕生し、それらが種牡馬となって成功するという繰り返しで、父系を今日につないできた歴史がある。

 それでいくとトニービンも楽しみな存在だったが、たしかに初年度産駒からいきなり
 ウイニングチケット(日本ダービー)、ベガ(桜花賞)、サクラチトセオー(天皇賞・秋)、ノースフライト(安田記念)が活躍する好発進。
 2年目の産駒が3歳となった1994年には、早くもリーディングサイヤーに輝いた。
 以後もエアグルーヴ(年度代表馬)、ジャングルポケット(日本ダービー)、レディパステル(オークス)、オフサイドトラップ(天皇賞・秋)、テレグノシス(NHKマイルC)らの活躍が相次いで、
 サンデーサイレンス、ブライアンズタイムとともに1990年代の競馬を彩った。

 2000年に死亡して直接の影響力は失ったが、代わって後継種牡馬のジャングルポケットが急浮上。
 初年度産駒から重賞勝ち馬を相次いで出し、2年目の産駒からトールポピー(オークス)、オウケンブルースリ(菊花賞)を出す好スタートを切った。
 ここ一番に強かったトニービンらしさをよく伝えている。
 また1勝馬だったミラクルアドマイヤもカンパニー(大阪杯・毎日王冠・天皇賞秋)を出し、
 G3しか勝てなかったミスズシャルダンもサンレイジャスパー(小倉記念)を出し、トニービンの後継種牡馬は意外な側面を見せている。このあたりはいかにもグレイソヴリン系らしい。


 よく「トニービン産駒は良い脚を長く使う」と言われます。しかし私は「切れがある、瞬発力がある」というのが持論です。
 確かに、トニービンの子は良い脚を長く使う事もできますが、トニービンの特性はそちらではありません。その「良い脚」へ瞬時に達することの方が大事です。
 例えば「良い脚を長く使う」種牡馬の代表格にコマンダーインチーフがいますが、コマンダーの場合はトップギアに入るまでにやや時間がかかります。
 例えば、上がり34秒0の場合、
 【コマンダーインチーフ】11秒6-11秒4-11秒0 という感じで加速していきます。
 【トニービン】12秒0-11秒0-11秒0 という感じの脚を使うんですね。
 同じ上がり34秒0と言っても、加速の仕方が全く違う事は絶対に見落としてはいけません。

 そしてトニービンの場合素晴らしいのは、1度トップギアに入ると、その脚が続くために、2段ロケットを使っているように見えること(他馬がバテてる分)です。
 代表例はウイニングチケットのダービー、京都新聞杯。ノースフライトの安田記念。エアグルーヴのオークス。
 ジャングルポケットの札幌3歳S,ダービー、ジャパンカップなどなど。
 一瞬「風を受けた」かのように順位を挙げ、そのあともう一度伸びているように見えます。VTRを見る機会があれば、ぜひ注意してみて下さい。

 トニービンのような加速の仕方がモノを言うのは、馬力を要する馬場(芝)、展開になった場合です。
 荒れ芝、道悪、それからペースで言うとハイペース。また馬込みにも強く、不利を受けにくい。
 特に芝の道悪での強さには素晴らしいものがあります。
 ブライアンズタイムも同じく瞬発力がありますが、トニービンの方が切れは上ですね。

 トニービン産駒のもう1つの特徴、それは「東京以上にローカルに強い」ことです。
 これはローカルの方が馬場が荒れやすいこと、ハイペースになりやすいため意外と上がりのかかる競馬が多いことなどが理由と思われます。
 とにかくローカルだと場を問わず強いんですが、福島、函館、札幌、新潟の各芝ではどこも得意中の得意です。
 どんな人気薄でも一考の余地有りです。

 トニービンの子は得てして皆同じタイプに出るので、特徴をつかみやすく、実に「お金になる」種牡馬です。


■ トニービンの血は取り扱い注意

 2009年は朝日CC、セントウルSはトニービン牝馬エアトゥーレ産駒のキャプテントゥーレ、アルティマトゥーレが勝利。
 セントライト記念も母父トニービンのフォゲッタブルが7人気で3着。
 ローズSは10人気のクーデグレイスが3着。エルムSも5人気のクリールパッションが3着と秋競馬が開幕してから母父トニービンの産駒が好配当で次々と馬券になった。

 しかし、同時に京成杯AHはヒカルオオゾラが9着、エルムSもトランセンドが4着と断然人気の母父トニービンが2週連続で馬券圏外にもなっている。
 母父トニービンの産駒は強敵相手にもツボにハマれば大仕事をする代わりに、思わぬところでポカをやらかす産駒が多い。

 もちろん、どの馬だってツボにハマれば仕事はするわけだが、母父トニービンはその振幅が大きい傾向にある。
 たとえば、母父トニービンのアドマイヤモナークは、08年の有馬記念で14人気ながらも2着に激走したが、次走の日経新春杯では2人気に支持されるも5着に敗退。
 潜在能力はGI級と称されるポルトフィーノも落馬したエリザベス女王杯を除いても重賞では1人気に支持された2レースではいずれも馬券圏外となった。
 母父トニービンの産駒が(07年以降)重賞で1-2人気に支持された際の成績を調べると、
 勝率が11%、単勝回収率39%、複勝率46%、複勝回収率71%といずれも水準以下の成績となっている。
 母父サンデーサイレンスは勝率が24%で複勝率が58%だから、人気馬の信頼度がいかに低いかがわかる。

 こうしたデータを見ると、朝日CCで母父トニービンのキャプテントゥーレから買うのは勇気が必要だったともいえる(父アグネスタキオンは1人気での信頼度が抜群なのだが)
 先週のエルムSも、クリールパッションとトランセンドは父も母父も同じだが、あえて人気のないクリールパッションを本命にしたのも
 「トニービンの血を持つ馬は重賞では人気で信頼せずに、気楽な人気になった方を狙う」というセオリー通りの戦術を選択したまでだったのだ。
 また、トニービンの血を持つアドマイヤベガ、ジャングルポケットの産駒も母父トニービン産駒のような人気での傾向が見受けられる。
 アドマイヤベガの産駒は07年以降1人気に支持された8レースはすべて敗退しているし、ジャングルポケットの産駒も11レースのうち勝利したのは2レースのみ。
 いずれの産駒も複勝回収率は水準以下だ。
 トニービンの血を持った馬を重賞で選択する際にはくれぐれも取り扱いに注意したい。


■ 代表産駒

GI級競走優勝馬

重賞優勝馬

母の父としての代表産駒

GI・JpnI・JGI馬のみ記載

母父としてもリーディングBMSのランキング上位の常連となっており、非常に優秀。
特筆すべきはサンデーサイレンス系種牡馬との相性の良さであり、一種のニックス配合とする意見もある。
自身の産駒とはやや傾向が異なり中山競馬場での重賞勝利も多い。