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グレイソヴリン系

■ 特徴


■ 解説

 欧州におけるナスルーラ系をいち早く確立した支流父系で、その祖となったグレイソヴリンは、1950年代前半のイギリスで活躍したスプリンターだった。
 クラシックの実績はないが、毛色は違っても体型や頭の形はナスルーラによく似ていた。
 気性が激しく、調教やスタートで手こずった点でも共通していたが、それが純然たるスプリンターに押しとどめることになった。
 しかし種牡馬としては、半兄の英ダービー馬ニンバスをはるかにしのぐ大成功を収め、
 同じ芦毛に出た後継種牡馬のソヴリンパス、フォルティノ、ゼダーンらを通して世界的に繁栄していった。
 戦後、欧州で活躍した芦毛馬は、このグレイソヴリンから受け継いでいたものが多い。
 ただ初期におけるグレイソヴリン系は、スピードに優れていてもスタミナに乏しく、単なる芦毛の快速血統でしかなかった。
 このため欧州のクラシックや、伝統の長距離大レースは用なしで、それがグレイソヴリン系の限界といわれたこともあった。
 だが、世代を重ねてゼダーン系、フォルティノ系のようなスタミナと持久力を備えた分流が誕生。
 今日のグレイソヴリン系は2400mどころか、3000m級の大レースにも通用する万能父系に変身した血脈もある。
 日本においてもグレイソヴリン系は、初期はアローエクスプレスを中心にスピード血統として栄えたが、
 近年は凱旋門賞馬のトニービンが万能血統として成功。後継種牡馬のジャングルポケット(日本ダービー)も成功し、長距離に強いトニービン系をつくり上げている。


 ナスルーラ系は70年代から80年代初めの日本競馬で強い支配力を持っていた。
 牡馬クラシックを席巻したのがプリンスリーギフトのライン、そして当時スピードという意味で、今のミスプロ系のような革新的な位置付けを占めたのがグレイソヴリン系だった。
 グレイソヴリンの子ソヴリンパスから出たゴールデンパスが、1960年代中盤に持ち込み馬として中距離重賞で活躍。

 その直後、69年から70年にかけてアローエクスプレスが連勝街道を驀進したあたりがグレイソヴリン系のファーストインパクトであった。
 アローは種牡馬としても大成功を収め、牡の産駒はせいぜい一流半止まりでしたが、牝馬の場合は2冠馬テイタニヤを筆頭に、
 リーゼングロス(桜花賞)、ノアノハコブネ(オークス)、ジュウジアロー(毎日王冠他)と大物を出していった。
 この活躍もあり、グレイソヴリンの血は次々と導入される。
 アイルランドで成功を収めていたフォルティノが輸入され、ロングファスト(ダービー2着)がクラシック路線で活躍。
 また「白い稲妻」とあだ名されたシービークロス(毎日王冠他)が個性派として人気を博した。
 シービークロスからタマモクロスが出たのはご存知の通り。さらにフォルティノはサクラショウリ(ダービー)の母の父にもなっている。

 他には、グレイソヴリン直子からはドンがB級オープン馬を輩出し、グスタフがプレストウコウ(菊花賞)を出した。
 ちなみにこの馬は中央競馬では芦毛として初のクラシックホース。
 そう言えばこの系統のラナーク、ゼダーンも含め、このグレイソヴリン直系はとにかく白い馬の一族という印象が強く、
 一時は「芦毛を見たらグレイソヴリン」という格言?もあったほど。
 これだけ広がったグレイソヴリン系だが、ノーザンダンサー系の台頭にも押され、急速に衰退。
 先述のシービークロス-タマモクロスのラインだけが命脈をつないでいる有り様。

 しかしフォルティノが外国で遺してきたカロが競走馬、繁殖馬両方でフランスのトップに立つと、再びカロの流れが日本に入ってくる。
 クリスタルパレス(タニノギムレットの母父)産駒の持込馬プレクラスニーが繰り上がりとはいえ天皇賞・秋を勝ち、
 そしてジャパンカップを制したゴールデンフェザント(トキオエクセレント・青葉賞勝ち馬父)も日本に入り、
 また外国産馬としてコジーン(エイシンバーリン、アドマイヤコジーン、ゴッドオブチャンス父、スターオブコジーン父)の産駒も多く入ってくる。
 コジーンの子のティッカネンからはサクセスストレインがクイーンCを勝っている。
 そしてシャルード産駒の持込馬ビワハヤヒデ(菊花賞・天皇賞春・宝塚記念)が頂点に立つ。

 しかし、何と言ってもグレイソヴリン系の名を浸透させたのはトニービンだろう。
 グレイソヴリン系の大種牡馬として輸入されたものの、日本ではキョウワサンダ(エリザベス女王杯)くらいしか活躍馬を出せず、評価を落としていたゼダーン。
 そのゼダーンの子の中から、フランスに残してきたカラムーンが現地でリーディングサイアーとなる。
 そのカラムーンの子カンパラ、そしてカンパラの子がトニービン。


 「府中のトニービン」、この系統全体がそもそも東京競馬場で活躍している。とにかく東京では信頼できる系統。

 そしてどの系統も芝の道悪はメチャクチャ巧い。
 アローもフォルティノもカロもゼダーンも、グレイソヴリンの流派は全て道悪巧者の産駒ばかり。
 そしてローカルで強い。
 何も「東京&ローカル」というのは、トニービンだけに限った得意分野ではなく、グレイソヴリン全体に共通したことである。

 走りの特徴としては、良い脚を長く使えることが共通点。持続力という意味ではかなり上位の系統。
 極端な例外はトニービンだけ。トニービンは、何度も言うように強烈な瞬発力を伝える種牡馬。
 かなりタフな一族で、詰めて使っても大丈夫。ただ一度不調に陥ると長く引きずるのも憶えておくべきだ。ただ突如復調するのも厄介な特徴。

 繁殖牝馬としても優秀な子を出す傾向も強く、ブルードメアサイアー(bloodmare sire=母父)としても今後活躍が見込める。
 母の父トニービンはすでにダービー馬を出していますし、またドクターカーター、サイベリアンエクスプレス、ハイエストオナーも母父として勝ち馬を出してきた。
 カルドゥンもファビラスラフインの母父。

 トニービン以外の種牡馬の中から、個別の特徴として覚えておいた方がいいものとしては、
 タマモクロス産駒が冬場に好走傾向が強く、またコジーン産駒が初夏から秋にピークを迎える産駒が多いこと、
 またトニービン産駒から種牡馬になったサクラチトセオーは中山が苦手で、平坦の芝に強く、父に似た瞬発力を譲り受けているようだ。


■ 代表種牡馬