■ 解説
中長距離に適性を示すため、仕上がりが早い産駒はクラシック戦線において活躍している。
また、ダート戦での強さにも定評があり、レースを使われながらコンディションを整えていくタイプが多く、頑健で使い減りしにくい。
そのため、高齢であっても活躍が見込まれるため、古馬になって中央競馬ではピークを過ぎたと見られる馬であっても、地方競馬の厩舎から譲渡の引き合いが来る場合もある。
だが活躍馬の大多数は春のクラシック戦線以前から頭角を現しており、全体的に仕上がりが早い傾向が強い。
また、脚部不安を抱えていたために中央競馬ではなく地方競馬からデビューして実績を残した馬も少なからずおり、
東京大賞典等を制したトーホウエンペラー(岩手)や、『栃木の怪物』の異名を持つブライアンズロマンがその代表的な活躍馬である。
ブライアンズタイム自身は競走馬としてはやや小柄な部類に入る馬で、良績のある産駒は大型馬が少ない。
しかし、大きな腹袋で見た目には実際の体重より重量感のある産駒が多く、またそういう産駒の方が走ると言われている。
一方で、シルクジャスティスのように馬体がさして目立たない産駒の方が大レースを制したり、
タニノギムレットのようにスプリンター風の筋肉質の馬体ながらも距離をこなす馬など、
見たところが当てにならない産駒が出ることもままあり、馬券買い泣かせ、予想家泣かせというだけでなく、
産駒を購入する側にとっても買い手泣かせという面も持っている。
万能種牡馬の典型的な例がこのブライアンズタイム。こと成長力と長短を問わない距離の融通性においてはサンデーサイレンスよりはるかに勝っている。
デズモンド・モリスが『競馬の動物学』でこう書いている。
「現代の競走馬は、どれもみなとびきり上等な脚と筋肉を持っており、大レースを勝つために必要なスピードを出せるだけの条件を備えている。
血統のいい馬とそうでない馬との間に存在する違いは、脚や筋肉ではない。
結局の所、栄光と屈辱を分ける決定的な要因は、サラブレッド個々の循環器系の効率である。つまり、違いは外見ではわからない内臓にあるわけである。」
名馬に出世するサラブレッドもみな高性能の心臓≠持っている。ブライアンズタイムの恐るべき万能性の秘密もまた、ここにあるのだ。
レースでスタートしたサラブレッドは最初600〜800mは無酸素エネルギーで、つまり血液から酸素を供給されることなく走ると予想されている。
したがって、この距離においては心臓が高性能であるかどうかはそれほど関係ない。
差が出てくるのは、そのあとの有酸素エネルギーが加わってからである。酸素を筋肉に送り込むのは心臓と肺の力なのだ。
ブライアンズタイムはこの心肺機能に優れたモノを伝えるからこそ、すべての資質に優れた万能血統となって成功しているわけである。
ブライアンズタイムと言えば、ナリタブライアン、サニーブライアン、タニノギムレットのダービー馬3頭、
そしてマヤノトップガンにノーリーズンなど、牝馬でもチョウカイキャロルやファレノプシスなどクラシックホースを続々送り出している。
しかしブライアンズタイム産駒は勝ち鞍の大半を、ダート千7と千8で挙げていることを見逃してはいけない。
馬券的な意味での信頼度としてはこちらの方がある。
エムアイブランが強力なイメージとして残っていますが、1000万以下くらいまでは特に頼れる。
現役馬でもウインスヴェルトやパパラ、ニシノプロミネンス、イブキリムジンオー、リンデンノタカ、そしてマイネルブライアン。
リンデンノタカを別にすれば、前へ行ってしぶとく粘り込む脚質の馬が多い。
ちなみにダートでの過去5年間の勝ち鞍は、サンデーサイレンスとほぼ同じ。
出走頭数を考えれば、ダートならサンデーより上と言っても良い。
一方、芝の場合はかなり特徴がはっきりしてくる。まず瞬発力。
ナリタブライアンがダービーの残り2F地点で10秒9の史上最速ラップを刻んで勝ったことを白眉に、
トップガンの春天の上がり、サニーブライアンのスタートダッシュなど、瞬発力に非常に富んでいるが、
そこまでのクラスの馬は別にして見ると、概してトニービンやサンデーと比べるとやや瞬発力が劣るために、切れ負けするケースがある。
それを表す面白いデータがあります。
春の東京開催の芝は、なぜか馬場が全く荒れなくなりました。
野芝洋芝混生、しかもいくらか野芝の割合を増やすために、年間の芝開催の中で最も瞬発力が求められます。
さらに、直線が長いために鞍上がスローで回ってくることが多く、なおさら切れの勝負になります。
その春の東京芝・開幕週からダービー週までの集計で、昨年のブライアンズタイム産駒はダービーでのタニノギムレットの1勝だけ。連対もこの1回のみでした。
対して2003年は5月25日までの集計で30回の出走があり、8連対を記録・・・と去年より飛躍しているように見えますがなんと勝ちは相変わらず1つだけ。
トニービンが昨年の2勝・5連対から6勝・9連対へと直線が延びた恩恵を受け、サンデーが昨年、今年と共に全く同じ11勝・18連対をマークしているのとは対象的。
つまり勝ち切れていないのです。
ただ直線が延びた分、2着は増えましたが・・・。これを見ても、サンデーやトニービンには切れ負けしていることが明らかです。
良い脚が一瞬しか使えないタイプが多く、その脚の使い所が難しいのです。
しかし気性の良さや器用さでは出色のものがあるだけに、安定度はかなり高い。ダンツフレームが好例だと思います。
まとめると、今春の東京芝では典型的な連軸タイプ、あるいは馬単2着付けタイプと言えるでしょう。
逆に京都芝では、3コーナーからの下りの勢いをつけて加速を補えるために、勝ちきれるタイプが多くなると思います。
データとして表れるブライアンズタイム産駒の特性としては、これはもうよく知られていることですが、休み明けは苦戦し、使い込まれてよくなること。
一度不振に陥るとなかなか立ち直らないこと。
ダートでは道悪で信頼度が高まり、逆に芝では道悪で割り引きが必要となること。
そしてもう1つ、2歳戦では割り引き・・・と言うより、3歳になってから飛躍的に勝ち鞍を伸ばす傾向があることです。
ブライアンズタイム産駒は、サンデーと違って、大半は同じタイプに出ます。
傾向を把握しやすいので、巧く付き合うとかなりお金になる種牡馬だと思います。