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シンボリクリスエス

■ 特徴

■ 解説

 父を髣髴とさせる大型馬の活躍が目立つ。
 持久力とスピード持続力に優れ、淀みなく流れる展開が合う。

 本格化前はツメの甘さが目立つので、馬単より馬連タイプ。

 他のロベルト系と同じように2歳のマイル戦から走れるが、3歳以降の適距離は千8〜2400m。

 ダートも芝と変わりなく走る。

 サクセスブロッケンなど、叩き良化型。
 
 ★シンボリクリスエスのエピソード


シンボリクリスエス産駒はまとまっていて、その中でも体力が豊富で、量もまずまず備わっていて、闘争心もそれなりにある。
その中で一番少ないのは集中力的な要素になっている。
したがって、産駒は体力で単調に押す競馬を一番得意とする

芝、ダートは全く問わないが(というより、肉体的構造は芝の方がよりベター)、
中央の産駒初GI勝ちがサクセスブロッケンのフェブラリーSになったのは、
やはり単調な競馬が極限においてはダートの方により有利に働くということである。

芝では力で押すので、かなり能力が優位でない限り、最後に投げ出してしまう。
この春もサンカルロがトライアルNZT勝ち後のNHKマイルCで3番人気8着(18着降着)、
アプレザンブレーヴがトライアル青葉賞勝ち後にダービーを4番人気5着、
モンテクリスエスが日経賞3着後に天皇賞・春で3番人気12着と、主要トライアルで好走後に、本番で人気を裏切っている。
どちらかというと、芝の場合はトライアルの方が心身構造が合っていると言える。

体力で押すために疲れが残りやすいという部分もあるだろうから、本番で敢えて狙うならトライアルが不本意だった人気薄か、
あるいは裏路線から一気に駆け上がった鮮度馬ということになるだろう。もっとも、圧倒的に体力で優位な馬なら別だが。

力で押しきろうとする競馬なので、極限で勝ち切る率は低く、芝の重賞では単勝回収率41円に対し、複勝回収率72円と、単勝は狙いにくくなっている。
トライアル系のレースや非根幹距離や稍重馬場など、特殊な要因があった方が体力でねじ伏せやすくなるので有利だ。

ただ力が下の相手には安定して強く、着順を落とし始めたら、距離変更ショックや馬場が重くなるなどの前走からの変化や休養がない限り、実績から人気を続けているなら積極的に切りたい。
格下への安定感は、賞金を確実に稼いでくれる、馬主孝行な種牡馬としては重要な要素だが、
穴党にはやっかいな要素になる(ただショックへの食いつきは比較的よいので、穴の主役にもなり得る)。
距離変更、特に体力を活かせる延長ショックの食いつきは良く、思い切って大きく距離を変更してきた馬には注意したい。

では、モンテクリスエスで芝のシンボリクリスエス産駒の基本パターンを見ていこう。
新馬、未勝利は安定して2着→2着→1着でクリア。自分より弱い相手には安定感がある。
1着時がダートから芝のショックで、先行から差しの位置取りショックもあった。勝ち切るには何かしらのショックがあった方が好ましい。

続くすみれSを2着。非根幹距離2200mへの距離延長。比較的体力を出しやすい条件だし、鮮度も普通に好むので、昇級戦が障害になるということは少ない。

続く若葉Sは2番人気4着。すみれSの疲れと延長非根幹距離好走後の根幹距離への距離短縮も嫌な材料になった。
続く自己条件500万への格下相手のレースは難なく1着で突破。弱い相手には安定して強い。

その次の青葉賞も6番人気で3着に好走。トライアル系のレースでの強さ、この時期の2400mという距離の特殊性、稍重という条件もハマった。
勝ち切れないのがそれらしいが、青葉賞は翌年にアプレザンレーヴが制したように、その特殊構造から得意なトライアルと言える。

その次の本番ダービーは16着。トライアル激走後の本番では仕方ない。
続くラジオNIKKEI賞も3番人気15着。母父ラストタイクーンで、より体力が全面に出た配合。
ショックでも距離延長の方が走りやすいタイプなので仕方ない。

休み明けの重賞神戸新聞杯を惨敗後、格下1000万ではきっちり3着と結果を出す。
次走の距離延長レースでは2着。そして、さらなる距離延長非根幹距離レースのグッドラックHで勝ち上がる。

で、昇級の迎春Sでも1番人気になって2着。鮮度はあったが、同距離ということで勝ち切れない部分があったのだろう。

続くダイヤモンドSで1着。900m距離延長という極端な延長レース
こういうショックは好む。また3400mという超特殊距離の、レコードレースという、極めて特殊な環境下だったのも勝ち切れた要因になった。

間隔を開けて疲れを取った日経賞では3着。
続くGI天皇賞・春でも、長距離ダイヤモンドS勝ちを評価され、3番人気。
普通、天皇賞・春は鮮度が重要で、3走前まで準OPの馬には有利なGIなのだが、12着に凡走した。
能力や適性を考えればここまで負ける必要はなく、この必要以上の惨敗はトライアル好走の疲れと、
力で押す競馬がしにくいGIという環境が下した結果と言えるだろう。続く宝塚記念は9着に終わった。


シンボリクリスエス産駒は、パワーで押し切る単調な競馬を得意とするが、長距離での消耗戦を苦手とするという矛盾がある。
モンテクリスエス以外にも、この傾向はいたる所に現れている。

たとえば、アリゼオもスプリングSを緩い流れで勝った後に、延長でタフな競馬になった皐月賞を5着に敗れたが、
平均ペースの毎日王冠を勝ち、ペース的には同じような流れだったが延長で体感的にタフな競馬になった天皇賞・秋では14着に敗れた。

ミッキーチアフルもスローで流れた09年の常総Sでは2着したが、次の200m延長で流れもタフになった湾岸Sでは人気を裏切って連を外している。

つまり、中長距離で前走より体感的にタフな流れになると、走るのを嫌がる性質があるわけだ。
ただ、それ自体は種牡馬にはよくあることで、あえて取りあげるような問題ではない。

シンボリクリスエス産駒がややこしいのは、同時に「揉まれ強くないので短縮より延長を好む」という傾向があることだ。
前走より体力的にタフな競馬を嫌がるのに揉まれたくないということは、延長なのに(精神的な問題以上に)体力的に楽になる競馬を好むということになる。

つまり、芝長距離においては延長で、かつかなり体力的に楽な、緩い競馬をピンポイントに好むということだ。

このような競馬は、レース質がタフになりやすい前哨戦→本番という流れの中では発生しにくい。
結果として、芝のクラシックディスタンスにおいては、単調な流れになりやすいトライアルホースになってしまうことが多いわけだ。

アプレザンレーヴの場合も、単調な競馬だった青葉賞を勝った後、不良の消耗戦になったダービーは凡走している。

しかも、これだけではシンボリクリスエス産駒の厄介さは終わらない。
真に注意すべきは、低いながらハイラップ指数にSが付いているという点だ。
つまり短距離のハイペースを意外にも好むのである。

揉まれたくない体力タイプで中長距離向きでありながら、短距離のハイペースが合うというのは一体なんなのか?

思えば、芝のGIで活躍した産駒は、サンカルロ、ストロングリターンという、芝1600m以下のカテゴリーである。

ストロングリターンの安田記念は33.9秒という1600mとしてはかなりのハイペース。

サンカルロもハイペースの1200mGIで2度馬券に絡んだ。

シンボリクリスエス産駒が揉まれ弱い体力型で中長距離向きなのに、短距離のハイペースに強いという不可思議な現象
これは競走馬の心身構造に由来している。

10、11年の高松宮杯を4着、2着し、昨年のスプリンターズSは3着。
唯一今年のスプリンターズSだけ、7着を掲示板を外した。

では、今年のスプリンターズSと他の3回は何が違ったのか?
実は4着以内に走った3回は、すべて距離短縮だったのである。
逆に7着に崩れた今年のスプリンターズSだけは同距離だった。
今年のスプリンターズSの前、陣営が「今回は前走1200mを使ったので、1200mの流れに慣れているから今までと違う」という旨のコメントを出していた。
これを見て、私はギョッとした。今までは狙っていたわけではなく、偶然距離短縮で1200mGIを使っていたのか…。

レースでは、ご存じの通り前走1200mを使ったので慣れる以前に飽きてしまって、あっけなく7着に惨敗。
今までの1200mGIでの最低着順に沈んだのだった。

もちろん、前哨戦で同じ距離を使って連対するケースも多くある。ただ今回の場合、同距離はまずかった。

その第一の理由は、Mの基本である鮮度問題だ。

サンカルロにとって、回で古馬1200Mは生涯で4回目。
しかも今年に入って、すでに1600m以下の短距離重賞だけを5戦も使われている。
短期スパンでも、長期スパンでも、明らかに古馬短距離のトップクラス戦線に飽きている状態だ。

そういう馬に、中2週と間隔の詰まった前哨戦である同距離1200mを使うというのは、自殺行為である。飽きを助長させるだけだ。
それでもタイプによって好走することはあるが、今回はさらにふたつ目の理由があった。シンボリクリスエス産駒のタイプ問題である。

本質的にシンボリクリスエス産駒は、激しく揉まれることを嫌がる血統だ。

しかし、ハイラップ指数は低いもののSが付いているように、激しく揉まれる短距離のハイペースにある程度耐えられる肉体的な構造はある。
精神的に揉まれたくなくても、ダートや中長距離を走れる体力的タフさがあり、それで肉体的にはハイペースをしのげるのだ。

そこに精神的な「見下ろし」と「鮮度」を加えることで、短距離のハイペースを耐える下地を完成させることが出来る。

「見下ろし」とは、前走長い距離の強い相手と戦うことで、1200m専用馬を楽な相手と見て、精神的優位性を保てるという現象だ。

1400m、1600mには、マイル路線の猛者が集まっている。
現行のJRAでは、2400mまでは距離の長いレースの方が格が上だという暗黙の了解がある。
それが日本競馬のシステムそのものを作っているので、自然と短縮によって相手を見下せるというわけだ。

そもそもシンボリクリスエス産駒は体力的にはタフなので、精神的に優位に立てさえすれば、消耗戦ではかなりのパフォーマンスが出せる。
だから見下ろしは、より高い効果を期待できる。
それに加えて、ストレスを軽減できる「鮮度」も、短縮によって得るわけだ。

そのため、短縮時にはハイラップ指数にSが付いている力を存分に活かして好走し、同距離ではあえなく流れに飲まれて投げ出してしまったのである。

では、今年の安田記念でのストロングリターンはどういうことだろう。前走の京王杯スプリングCは1400mで距離延長だったのだが…?延長だったわけだが。
やはり、シンボリクリスエス産駒であるストロングリターンが今年の安田記念で2着に好走したのは、、2走前が準OPで鮮度が満タンだったことが大きい。

鮮度があれば、多少厳しい状態でも精神的に耐えられるのはいつも書いている通りだ。
しかも、同馬はマイルの重賞そのものが安田記念が初めて。生涯鮮度が極めて高い状態である。

また、前走は京王杯スプリングS。
もともと京王杯スプリングSは安田記念の前哨戦で、ここを好走するとストレスが蓄積するため、本番で凡走する馬が過去に何度も出ている
それでもストロングリターンが走れたのは、生涯鮮度の高さのおかげに他ならない。

直近ストレスが強いレースで好走した馬が本番も走る場合、ほとんどがこの生涯鮮度を満たしたケースになる。
マイルCSのエイシンアポロンも、ストレス満載の富士S勝ち馬だったが、
ストロングリターン同様に古馬のマイル重賞は今回が初めてという、極めて高い生涯鮮度があったのはもちろん偶然ではない。

それに加えて、ストロングリターンの場合は「バウンド延長」だった。
延長で前走より息の入りを楽にしながら、2走前に1800mを走ることでスタミナを身につけたステップだったのである。

このように、トップクラスのハイペースをシンボリクリスエス産駒が好走するには、何かしらの鮮度とショックがほしい。
それさえあれば、シンボリクリスエス産駒最大の問題である精神的障害を乗り越えることが出来るので、もともとあるハイラップ指数のSという、身体的なハイペースに対する優位性を発揮できるわけだ。

もちろん相手が見下ろせるレベルなら、このようなショックは必要ないことも多いが、自分と近いレベルの相手と走るには、精神的な問題のクリアは、特に非C系には重要なポイントになってくる。

ところで、これらは芝での傾向になる。
ダート戦になると、タイプそのものもある程度変わっていく点には注意したい。

つまり、ダノンカモンが生涯ストレスがある状態にもかかわらず、連続好走で、GI南部杯を2着したのも、芝ではあまり見られないパターンと言える。
ただ、ダートでも本質的な性格が大きく変わるということではない。

シンボリクリスエス産駒の場合、ダートにおいては一回り、精神的にも肉体的にもタフになる傾向があるが、
それは一回りタフになったということであって、方向性そのものが目に見えて変わったわけではないのだ。

例えば、サクセスブロッケンは初の古馬マイルGIになったフェブラリーSでは、短縮で6番人気1着になったものの、
生涯ストレスを重ねた翌年の同レースは、2番人気で3着に敗れることになったのだ(前年は3着だった前走が1着だったので、直近ストレスがきつかったこともあるが)。

このダートでの好凡走のパターンは、芝でのシンボリクリスエス産駒と、心身耐久力の容量は変わるが、構造自体に決定的と言えるほどの大きな変化はないのである。


■ 特注馬


■ 代表産駒