アドマイヤベガ編 Part1
アドマイヤベガ産駒は、なかなか表現するのが難しい種牡馬だ。
初年度に出たストーミーカフェが、暴走気味に逃げる産駒だったために、S色の強いアンバランスな産駒が多い印象を受けたが、
その後の産駒を見ると、アドマイヤフジなどは比較的真面目な走り方をしていて、暴走気味に逃げるような産駒というのは、実際のところはほとんどいない。
ただ、その本質にはストーミーカフェ的な狂気が眠っているのも、また事実なのだ。
闘う意欲(S質)の強さ、そしてそれなりの集中力を持つというのが基本パターンになる。
それに加えて、力で押そうという意欲もそれなりにある。
ただ、それに伴う体力、ないし量の供給が少ない。したがって、危うくアンバランスな産駒が増えるのだ。
ただし、母父から体力を供給されると、比較的安定して普通に走れる。
それがアドマイヤフジ(母父Be My Guestはかなりの体力を供給する)、アルナスライン(エルグランセニョールも体力の供給が非常に大きい母父)などになるのだが、その体力供給型の走りについては後述するとして、まずは基本的なアンバランスタイプを見ていこう。
もっとも特徴を表しているのがキストゥヘヴンだろう。
闘争心(S)が強く、集中力(C)もそれなりに高い。
そのため、ハイペースで激戦になった桜花賞を6番人気で制したのだった。
このときが1800mからの距離短縮ショック。短縮はS質のコントロールが効きやすいし、体力不足も補えるし、Cがあるため馬群に怯まないので、こういうタイプには極めて有効なショックとなる。
続くオークスは2番人気に支持されるも6着敗退。
ただ、これは仕方ない。
それほど量はないので極端な距離延長は向かないし、精神コントロールも難しくなるからだ。
また1回に出し切るエネルギー量も、気分が乗ると限界まで頑張ろうとするために多くなり、その反動が出やすいという性質もある。
フラワーCも6番人気と人気薄での勝利だったが、このときは距離延長ではあったものの、中山1800mの小回りでハイペース激戦だった。
その前は未勝利戦。
未勝利→GIII→GIと連勝できたのは、「強い相手に怯まない」というC的要素と、
4走前の未勝利戦がダートで、ダート→芝1600m→芝1800m→芝1600mと、環境が変わることで、その強いS質をコントロールできたからである。
アドマイヤベガ編 Part2
キストゥヘヴンは06年桜花賞に勝った後、しばらく低迷を続ける。
これは、血統に関わらず量が少なく、S要素が強い馬(加えてC要素がある)には多い現象で、気が張っていないと気持ちが空回りしてしまうし、集中力が出ないのだ。
また量系ではないので、弱い相手にぶつけたところで、それが原因で好走するという保証もない。
低迷からの脱出のきっかけは今年の京都牝馬S。重馬場だった。
その前がOP特別で1番人気に推されるも13着。そのため、やはり6番人気と人気を落としていた。
Sが強いためにバランスを欠いているタイプは、重馬場の方が余計なことを考えずに走りに集中できることが多い。
もちろん、相手関係はあまり影響しないので、OP特別から重賞というステップはマイナスにならない。
続く中山牝馬Sも3着に好走。これは16頭立ての多頭数の内枠で集中力が生きた形になる(京都牝馬Sも16頭立ての6番枠だった)。
さらに阪神牝馬Sは、短距離の1400mなのに前後半のラップ差が1秒もある緩ペース。精神コントロールが難しいし、量も生きず、また集中力も出せずに4着に凡走。
しかし、続く京王杯SCでは、またまた6番人気で2着に激走。
同じ1400mで、牝馬限定戦から牡馬混合戦へと相手強化になったのにも関わらずの激走だ。
前走よりペースが上がって、また17頭立ての6番枠で、集中力が生かせた形である。
その後の安田記念は7着に敗退。
とはいえ、14番人気なら特に凡走という部類でもないだろう。
ただ、東京での緩ペースの距離延長は、体力や量を要求されやすいので苦手なカテゴリーになるのは事実だ。
これは桜花賞からオークスの流れと同じである。それでも強豪相手に7着に走れたのは、18頭立ての2番枠で集中力を生かせたからに他ならない。
また凡走には、前走、京王杯SC激走の疲れも若干あった。
このように、「Sのアンバランスさ」、「それなりの集中力」、「量や体力の不足」、「1回で出し切るエネルギー量の多さ」などから、馬券的には人気で疑って、中穴で狙うのが面白い。
ただ、それも母父によって少し形は違ってくる。ということで、次回は他のパターンの産駒も見ていこうと思う。
アドマイヤベガ編 Part3
アドマイヤベガ産駒は、量はないが一所懸命走って、強い相手に怯まない。
一度に使うエネルギーが大きい分、激走後の疲労も大きいという話を前回は書いた。
ただ母父に体力のある種牡馬を持ってくると真面目に走りやすい。
真面目というか、普通に走る。
その代表例がアドマイヤフジだろう。
ここ10戦、札幌記念の9着を除けば、人気の如何に関わらず、6着以内と大崩れしない。
相手が強くても、それなりの真面目さに加えて、体力があるので、それほど崩れないわけだ。
ただその分、量的な淡泊さというのは逆に出てくる。
したがって、自分より強い相手との激戦をくぐり抜けて勝ち切るということも、量の少ないタイプよりはあまり多くない。
極限レベルになると、あくまで自分のペースで走っての展開待ちになる。
それでいて正攻法の産駒が多くなるので、結果として相手なりで穴にはなりにくい。
体力のある牡馬に多いパターンだが、牝馬ではがブルーメンブラットなども、比較的体力と量があるので、同じような傾向にある。
この体力系のアドマイヤベガ産駒は、パワーで目一杯走るので、量の供給がある分真面目に崩れないが、いつか硬くなってガクッとくる場合がある。
トウショウシロッコの菊花賞からの数戦の惨敗がこのパターンで、このケースでは立ち直るまで待った方が良い。
立ち直りのきっかけは少し弱い相手にぶつけて好走させる方が効果的。
その辺は、量のないアドマイヤベガ産駒の逆襲パターンとは違ってくる。
比較的体重の大きい産駒にこの傾向は強く、また2000m〜2400m前後の産駒に多い。
ブルーメンブラットは牝馬のために距離適性がそれより短く、また多少、馬体重は少ないが、牝馬としては大きい方になる。
いずれのパターンの産駒も、案外何度も復活しやすいという特徴がある。
その逆襲の仕方はパターン別に違ってはいるが、息の長い活躍をする産駒が多い点には注意したい。
■ 代表産駒