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サンデーサイレンス

■ 特徴


■ 解説

■ サンデーサイレンス…激しい闘争本能の原点

 1987年にキーンランド・ジュライセールに出品されたが、馬体の見栄えが悪かったサンデーサイレンスは、
 セレクトセール(一定水準以上の血統および馬体をもつと判断された馬が出品される部門)への出品が許可されず、一般部門に出品された。
 一般部門で提示された落札希望額は1万ドルと低く、ストーンファームの経営者であったアーサー・ハンコック3世が1万7000ドルで買い戻した。
 ハンコックはその旨をティザムに報告したがティザムはハンコックからサンデーサイレンスを購入することを拒否したため、そのままハンコックが所有することとなった。
 翌1988年3月、サンデーサイレンスはカリフォルニア州で行われたトレーニングセールに出品されたが希望販売価格の5万ドルに届かず、3万2千ドルで再びハンコックに買い戻された。
 サンデーサイレンスは当歳時(1986年11月)に悪性のウイルスに感染し、数日にわたって液状の便を垂れして脱水症状になり生死の境をさまよったことがある。
 またカリフォルニア州のセリからの帰り道にトラックの運転手が心臓発作を起こし馬運車が横転する事故に遭い、
 競走能力こそ失わなかったもののしばらくまっすぐに歩けなくなるほどの重傷を負った(なお、馬運車に同乗していた他の競走馬はすべて死亡した)。

 ハンコックはサンデーサイレンスをキーンランド・ジュライセールで買い戻した後、同馬を友人のポール・サリバンと半分ずつの持ち分で共有した。
 その後サリバンはカリフォルニア州のトレーニングセールで買い戻された時期にサンデーサイレンスの調教費用と相殺する形で調教師のチャーリー・ウィッティンガムに持ち分を売却し、
 ウィッティンガムはそのうちの半分を友人の医師アーネスト・ゲイラードに売却した。
 なお、サンデーサイレンスが活躍を見せ始めるとハンコックのもとには持ち分を購入したいという申し込みが相次いだが、ハンコックは売却しなかった。
 サンデーサイレンスは同馬の所有権を4分の1所有していたチャーリー・ウィッティンガムが管理することとなった。
 1988年の10月に初めてレースに出走(結果は2着)し、翌11月に初勝利を挙げた。翌12月の一般競走で2着となった後、ウィッティンガムは余力を残した状態で休養をとらせることにした。

 サンデーサイレンスは翌1989年の3月にサンタアニタパーク競馬場で行われた一般競走でレースに復帰し、さらに同月重賞のサンフェリペハンデキャップをスタートで出遅れながら優勝した。
 この段階で主戦騎手のパット・ヴァレンズエラは「今まで乗った中でも最高の2歳馬」と評し、ウィッティンガムは「ケンタッキーダービーでも5本の指には入るだろう」と述べた。
 またサンデーサイレンスはウィッティンガム厩舎のケンタッキーダービー候補として競馬ファンに認識され始めた。
 ウィッティンガムはサンデーサイレンスのケンタッキーダービー出走について「サンタアニタダービーが終わるまでは分からない」とも述べていたが、
 サンタアニタダービーを11馬身差で大勝したことを受けてケンタッキーダービー出走を正式に表明し、4月半ばにはケンタッキーダービーに備え同レースが行われるチャーチルダウンズ競馬場へ
 サンデーサイレンスを移送した。ケンタッキーダービーはレース前大量の雨が降り、20年ぶりといわれるほど悪い馬場状態で行われた。
 サンデーサイレンスはスタートで体勢を崩し他馬と激しく接触したものの体勢を立て直し、直線では鞭に反応して左右によれる素振りを見せながらも優勝。
 レース後、ウィッティンガムは「この馬は三冠馬になる」と宣言した。

 二冠目のプリークネスステークスを1週間後に控えた5月13日、サンデーサイレンスの右前脚に問題が発生し(獣医師の診察結果は打撲または血腫によるハ行)、
 レースの4日前まで調教が行えなくなるアクシデントに見舞われた。
 また、サンデーサイレンスはレースまでの期間をピムリコ競馬場で過ごしたが、数百人にものぼる観光客やマスコミが殺到し、サンデーサイレンスは苛立ちを見せるようになった。
 レースは直線で宿敵イージーゴアとのマッチレースとなり、ゴールまで15秒以上にわたる競り合いの末、数センチの差で同馬に先着し優勝した。
 このマッチレースは1980年代最高のレースとも称される。

 イージーゴーアが内から抜け出そうとするたびに外から、サンデーサイレンスが馬体を寄せて顔面に噛みつかんばかりに襲いかかっていくのである。
 その激しさはまさに、アフリカの草原で猛然と獲物に襲いかかる百獣の王ライオンそのものだった。
 本気で噛みつこうとしていたとしか思えないような喧嘩レース。噛みつかないまでもぬかせてなるものかという鬼気迫る闘争本能に
 相手のイージーゴーアがおそれをなした感じで、ついにゴールではサンデーサイレンスがハナ差だけ抜け出していた。
 それは猛獣にも似た「激しい闘争本能」と、ある意味恥も外聞もない「雑草的な逞しさ」をもつサンデーサイレンスが勝利した瞬間でもあった。
 このアメリカ年度代表馬に輝いた名馬が、日本で種牡馬となって史上最大級の大成功をおさめている秘密が、その勝利に凝縮されていたといっていいだろう。
 それが優秀な産駒を送り出す強力なエネルギー源になったと考えられる。
 気性の激しさや精神的に異常な興奮はそれがうまくプラスに作用すれば運動作用を高めるエネルギーになることは証明されている。
 極度に増幅した神経の高ぶりが、一種の興奮剤となって筋肉にさらなる急激な収縮作用を引き起こし、その結果、さらなるスピードを生み出す。

 ベルモントステークスでは三冠達成の期待がかかり、サンデーサイレンスはイージーゴアと対戦したレースで初めて1番人気に支持された。
 しかしレースでは残り400mの地点でイージーゴアに交わされるとそのまま差を広げられ、8馬身の着差をつけられ2着に敗れた。

 産駒については、この気性の激しさは諸刃の剣である。新馬戦を驚異的なタイムで走るような馬はくせものだ。
 初期に大物感を漂わせながら、ある時期から成長がストップするのも、ガムシャラに走ろうとする勝ち気なカリカリした気性が災いしていることが多い。
 こうしたタイプが、つまり早熟血統ということにもなるわけである。
 その傾向は牝馬に顕著だ。サンデーサイレンスが牡馬の大物を次々と出すわりに、牝馬に大物が少ない理由もそこにある。
 デリケートな牝馬にとって、サンデーサイレンスの気性はきつすぎるという調教師もいる。
 しかしそれでいてサンデーサイレンス産駒は牡馬も牝馬も、こうした点を能力の違いで楽にクリアしていくことが多いのも事実である。
 そばに馬がいると闘争本能を剥きだしにしてガムシャラに走り、それでいて2400m前後の距離までなら平気でこなしてしまう。
 それがこの血統の尋常でない≠キごさである。

 ただ、いかに尋常でない血統といえども、こうした闘争本能をは、3000m級の長距離においては明らかにマイナスに作用する。
 気性的に勝ち気な馬はどんどん行きたがるが、長距離をぶっ飛ばしては、いかに能力の絶対値が高い馬でも、最後までスタミナがもたない。
 いかに余分な体力を使わないでレースを進めるか。これが長距離の最大のポイントだ。
 能力が高く、そして激しさを持ったサンデーサイレンス産駒が、菊花賞を回避して中距離の天皇賞やマイルCSに狙いを変えてくる傾向があるのはそのためである。
 ダンスインザダークが菊花賞を勝っているが、この馬はサンデー産駒らしくない気性で比較的おっとりしていた。
 だからこそ、距離をこなせたわけであり、むしろ母系からニジンスキーの影響を強く受けていたように思われる。
 2003年、ザッツザプレンティが制した菊花賞は鞍上アンカツの好プレーとの見方もあったが、そもそもダンスインザダーク産駒であったことも勝因のように思われるのだ。

 引退したサンデーサイレンスには当初、総額1000万ドル(1株25万ドル×40株)のシンジケートが組まれる予定だった。
 しかしヘイローの産駒の種牡馬成績が優れなかったことやファミリーラインに対する評価の低さから種牡馬としてのサンデーサイレンスに対する評価は低く、
 株の購入希望者はわずか3人にとどまり、種付けの申込みを行った生産者はわずか2人であった。
 一方、日本の競走馬生産者吉田善哉はサンデーサイレンスの購入に積極的な姿勢を見せ、1100万ドル(当時の為替レートで約16億5000万円)を費やしサンデーサイレンスを購入した。
 この購入は当時、「日本人のブリーダーがとても成功しそうにない母系から生まれたヘイロー産駒を買っていった」とアメリカの生産者の笑いものになった。
 吉田がサンデーサイレンスを購入したのに伴い、サンデーサイレンスは日本へ輸入され、1991年から社台スタリオンステーションで種牡馬生活を開始した。
 当初サンデーサイレンスの評価はさほど高くなかった上に種付料が1100万円と高額であったため、交配の申し込みは多くなく、
 最も多く交配したのは吉田が経営する社台ファーム千歳に繋養されていた繁殖牝馬であったが、その結果誕生した馬に対する同牧場の関係者の評価も高くはなかった。
 1994年6月にデビューした初年度産駒は約半年の間に30勝(重賞4勝)を挙げたが、この活躍は関係者にとっても予想を上回ることであった。

 サンデーサイレンスはその後も活躍馬を次々と輩出し、初年度産駒がデビューした翌年の1995年にリーディングサイアーを獲得。以後2007年まで13年連続でリーディングサイアーに君臨した。
 また、産駒は日本の中央競馬のGI級競走のほとんどを優勝した。
 サンデーサイレンスの種付け権の価格は1995年には2000万円、1998年には5000万円に上昇し、
 種付け数を増やしてほしいという生産者の要望に応える形で2000年と2001年は年間200頭を超える繁殖牝馬と交配された。
 さらに1998年に始まったセレクトセールでは毎回産駒が高額で落札される。
 産駒は海外のレースでも活躍を見せ、日本調教馬は海外でG1を3勝した。
 さらにオーストラリア生まれのサンデージョイ(Sunday Joy)がG1のオースラリアンオークスを優勝するなど、海外生産馬および海外調教馬からも複数の重賞優勝馬を輩出した。
 日本国外で活躍する産駒が出現した影響から海外の有力馬主がセレクトセールでサンデーサイレンス産駒を購買し、さらに繁殖牝馬を日本へ移送して交配させるようになった。
 2001年に行われた第4回セールではロッタレースの2001を巡ってゴドルフィンとクールモアスタッドの代理人が激しい競り合いを演じた。

 普段は気性の荒いサンデーサイレンスが、メジロマックイーンがそばにいると大人しくなることが多かったという。サンデーサイレンスとメジロマックイーンの放牧地は隣同士に設えられていた。


■ サンデーサイレンス産駒の記録

 中央競馬における通算勝利数、通算重賞勝利数、年間最多勝利数、年間最多重賞勝利数、年間最多獲得賞金、通算クラシック勝利数はいずれも最多記録を保持している。
 また、中央競馬・地方競馬をあわせた通算勝利数は3000勝を超え、世界最多記録を更新中である。

 サンデーサイレンスは日本競馬史上初めて牡(ディープインパクト・2005年)・牝(スティルインラブ・2003年)ともに三冠馬を輩出した種牡馬となった。

 初年度産駒の1992年生まれの世代以降、すべての世代でGI級競走優勝馬を輩出した。
 なお東京優駿に関しては6頭の優勝馬を輩出したが、これは戦前の大種牡馬であるトウルヌソルと並んで最多タイ記録である。
 また3年連続での優勝馬輩出もシアンモアと並んで最多タイ記録。ただしJRA賞年度代表馬は2004年にゼンノロブロイが選ばれるまで出ていなかった。

 1999年7月10日にサンデーセイラが七夕賞を制し、産駒がJRA開催の全競馬場10場の重賞を勝利した。

★ サンデーサイレンスのもうひとつの特徴 − 母方の長所を引き出す −

 血統の話をしていると「なぜ種牡馬ばかりに目が行くのか」、「母の遺伝については無視しているのか」という批判を受けることがあります。
 まあそう思われるのももっともなくらい我々は、父系、母父系の話しかしませんが、もちろん牝系を無視しているわけではありません。
 ただ、牝馬が生涯に産み落とすサラブレッドはせいぜい10数頭。
 それに比べれば、売れっ子なら年間100頭以上の産駒を送り出す牡馬の方がサンプルが多く、傾向をつかみやすくなるわけです。
 牝馬をある程度無視した理論構築も可能なくらい、標本があるわけですから。
 さらに「母の父」というファクターを盛り込んで、母側の父系傾向も同時に考えていけば、さらに精度は増すわけです。
 以前、高名な獣医兼農学博士の方と長時間お話する機会があったのですが、その際興味深いことを伺いました。
 「父からは筋肉、骨格などのハード面を、母からは気性、心肺能力などのソフト面が伝わるケースが多い」・・・・。
 例えば距離適性においては筋肉の速筋と遅筋の割合や呼吸器の能力が関係しますから、父母双方を見る必要がありますし、
 道悪適性については骨格(走法を左右する)が重要ですから父に重きを置いて見る方が良いということになります。
 ちなみに蹄の形と道悪適性には、実は何の関係もないそうです。
 博士いわく「蓮田の中を走るなら蹄の形も関係あるだろうが、競馬場レベルの道悪なら関係ない」。これは僕も薄々思っていました。
 大昔(昭和50年代前半)の話で恐縮ですが、道悪の鬼と言われたステイヤー、ホッカイノーブルという馬は、平たく大きな蹄をしていたんです。話が逸れました。

 全ての馬がこの遺伝パターンに合致すれば分析も楽なのですが、これに当てはまらない型破りの種牡馬が日本競馬を席巻していきました。
 それが故サンデーサイレンスです。
 稀代の怪物血統サンデーサイレンス。しかも仕上がりも早いというのですから、手におえません。産駒最後の世代まで、おそらく2歳ランキングのトップも走ることでしょう。

 従来のパターンを破壊したからこそ、革命的な種牡馬となったのです。僕は「サンデー産駒は母方を見ろ」というのを自説にしています。
 「サンデーは気性や瞬発力以外の距離適性、骨格、走りのタイプなどは、母方の血の長所を引き出す」、極論すると「母父を見よ」ということになります。
 サンデーは、闘争心については自身の激しさを伝えますが、産駒の体型、距離適性などの競走能力に関わる遺伝の特徴としては、母方の長所を抽出する傾向があります。
 だからこそいかなる条件でも多くの勝ち鞍を挙げられたのでしょう。
 サンデーは母方を見よ。これは真理かどうかはともかく、仮説としてはかなりいい線行ってるはずなんですが・・・。

■ 「母父サンデーサイレンス」について

 サンデー産駒の母父を見た場合、3歳春のクラシックホースとしては、切れを持つ母父グレイソヴリン系からタヤスツヨシ(母父カロ)、
 アドマイヤベガ(母父トニービン)と2頭のダービー馬が出ました。
 スピードの持続力に富む母父ボールドルーラー系からはアグネスフライト、タキオンの兄弟(母父ロイヤルスキー)、
 エアシャカール(母父ウエルデコレイテッド×エルバジェ)、ジェニュイン(母父ワットラック)。
 つまり母父はグレイソヴリン系、ボールドルーラー系とは、3歳春のクラシックにおける和合性が高いと言ってよいでしょう。
 意外なのはパワーに寄ったノーザンダンサー系の母父が少ないこと。ニジンスキー系との組み合わせでスペシャルウィークが出ているくらい。
 ノーザンダンサー系母父との配合ではむしろ牝馬に春のクラシック活躍馬が集中しているのが面白いところだと思います。
 ノーザン系を母父に持つサンデー産駒の牡馬は、3歳秋以降になってからの大レース勝ちが多いのも覚えておきたいところです
 (ダンスインザダーク、バブルガムフェロー、マーベラスサンデー、ゴールドアリュールなど) 。

 京都金杯で父タマモクロス、母父サンデーのマイソールサウンドが快勝。
 また今年(2004年)おそらく重賞をかつことになるであろうアイポッパーもそうですし、下半期は芝でも一流馬にのし上がったプリサイスマシーンもそうです。
 前述の「サンデーは母方を見よ」という仮説を前提にするなら、母父サンデー馬の場合は、「母にはサンデーと配合された母母馬の能力が増幅されて伝わっているはず」ということになりますね。
 ではその母母馬の形質、素質が、やはり伝わっているものなのか、具体的な例を見ながら検討してみましょう。

 母父サンデーが登場したのは97年生まれの世代が最初。
 今も現役でいるのは1000万在籍のラジョーネくらいです。(父はミスプロ系ヘクタープロテクター)。
 ダートの中距離しか走らず、詰めの甘さがある馬です。これはミスプロの2流馬によく見られる傾向です。
 98年生まれでは、1000万の芝の中長距離で安定しているジェイケイテイオー。(父ヘロド系トウカイテイオー)。
 グローブターフ-グローバルダイナと続く牝系の出身で、プリサイスマシーンの半兄にあたります。
 渋太くて安定しているという点はこの牝系の長所ですが、距離適性やレースぶり、それから平坦コースの方が得意な点などはテイオー産駒らしいところです。
 またこの世代にはダートで1000万クラスに昇ったナリタスターホープ。これはナリタブライアン産駒らしくダートのB級馬となっています。
 またローカスやピアノソナタといったトニービン産駒組は、意外と出世できず、ローカルが活躍の場になっています。

 99年生まれが一番役者が揃いました。
 まず3歳春までで打ち止めとなりましたが、逃げで重賞戦線を沸かせたサンヴァレー(父ウイニングチケット)。現在は障害馬ですね。
 それから芝のマイル前後の1000万クラスで中堅級のウエスタンメジャー(父ダンシングブレーヴ)。
 ダートの1000万クラスにいるウルヴズグレン(父ティンバーカントリー)。
 そしてダートの短距離の追込み専門のオープン馬シャドウスケイプ(父フォーティナイナー)。
 金杯を勝ったマイソールサウンド(父グレイソヴリン系タマモクロス)。
 ダートでオープン入り、芝でも中日新聞杯を勝ったプリサイスマシーン(父マヤノトップガン)。
 こう並べてみると、サンデーの入った母方よりも、父の特性が出ている子が多い事にお気づきでしょう。
 特にマイソールサウンドは、冬から春に好走が多く、京都を得意とするタマモクロス産駒の特徴を見事に受け継いでいます。

 00年生まれも同様で、サカラートはアフリート産駒らしくダートの短距離で、スズノマーチはティンバーカントリー産駒らしく芝ダート兼用で早期に完成、
 またアイポッパーは父サッカーボーイとよく似た馬体で、レースぶりは同じサッカー産駒のナリタトップロードのミニチュア版といった感じです。
 明け3歳の01年生まれ世代のブラックコンドルは、父のエルコンドルパサー同様、雪で急遽ダート変更となったレースを勝ち、
 エイシンカイフォンは03年最終日、前日に父カリズマティックの産駒が圧勝した阪神ダート1800で人気薄ながら2着、
 トウカイカムカム(父トウカイテイオー)は暮れの阪神の未勝利戦で全くの人気薄ながら、ブラックタイド新馬戦の上位馬を斥けて2着を確保しました。
 ちなみに暮れの阪神ではトウカイテイオー産駒の好走傾向が目立ちましたね。
 これらの事例を総合してみると、母父サンデー馬は、父の適性が出る傾向が強いことがわかります。
 まだ大物は出ていませんが、母父サンデーの馬は今後溢れかえることと思いますので、当面の間はこの傾向を頭に入れておくとよいでしょう。

★ サンデーサイレンス産駒の母父ランキング(上位20頭)

 これだけ活躍しているサンデーサイレンスはどのような繁殖牝馬に種付けされているのだろうか?
 ちょっと気になったのでサンデーサイレンス産駒の母の父馬を集計してみた。

順位
母父名
1着数
2着数
3着数
4着数
5着数
着外数
勝率
連対率
主な産駒
1
ノーザンテースト
377
306
286
269
230
1306
13.6
24.6
デュランダル
2
Lyphard
71
44
54
34
24
219
15.9
25.8
バブルガムフェロー
3
トニービン
64
50
39
30
24
138
18.6
33.0
アドマイヤグルーヴ
4
Nijinsky
62
64
53
67
44
266
11.2
22.7
ダンスインザダーク
5
Nureyev
54
58
42
43
40
195
12.5
25.9
トゥザヴィクトリー
6
マルゼンスキー
54
57
42
35
31
197
13.0
26.7
スペシャルウィーク
7
Danzig
52
42
41
27
21
172
14.6
26.5
ビリーヴ
8
Sadler's Wells
51
61
38
34
40
210
11.8
25.8
ヘヴンリーロマンス
9
Caerleon
43
57
39
46
34
178
10.8
25.2
ピースオブワールド
10
Alydar
39
37
31
22
16
131
14.1
27.5
イシノサンデー
11
リアルシヤダイ
38
29
30
18
21
182
11.9
21.1
ペインテドブラック
12
Mr. Prospector
32
29
24
22
27
118
12.7
24.2
フサイチエアデール
13
デイクタス
28
29
36
31
17
103
11.5
23.4
ステイゴールド
14
Affirmed
23
15
13
12
4
47
20.2
33.3
スティンガー
15
トウシヨウボーイ
22
35
26
24
18
121
8.9
23.2
ビッグサンデー
16
What Luck
20
28
14
18
11
60
13.2
31.8
ジェニュイン
17
モガミ
20
23
16
13
16
77
12.1
26.1
ノブレスオブリッジ
18
ブライアンズタイム
20
15
8
15
5
44
18.7
32.7
サンライズペガサス
19
Gulch
20
13
21
10
11
88
12.3
20.2
ユキノサンロイヤル
20
ロイヤルスキー
19
10
9
5
7
51
18.8
28.7
アグネスタキオン

 ※現2歳馬を除く、中央競馬に出走したSS産駒全てが対象 
 ※主な産駒の赤字の馬はGI優勝馬


 母の父馬がノーザンテーストの産駒が頭数においても圧倒的だ。それとノーザンテーストを始め、上位にはNorthen Dancer系の馬が多いようだ。
 しかし、それ以外の系統においても優秀な成績を収めており、上位20頭のうち13頭までがGI馬を輩出している。
 ノーザンテーストはサンデーサイレンスが活躍する前まで日本競馬界を支えていた大種牡馬であり、
 この馬が全盛の頃はNorthen Dancerの血が入った馬が非常に多かった。
 そんな状況だったからこそ、Northen Dancerの血が入っていないサンデーサイレンスの今日の成功があったのかもしれない。

 サンデーサイレンス産駒で活躍しているのは牡馬だけではない。繁殖入りした牝馬にはどのような種牡馬が種付けされているのであろうか?
 サンデーサイレンス牝馬についても今後は増えてくるであろうと思われるので、サンデーサイレンスを母父馬にもつ種牡馬のシェア率も調べてみた。

 ・サンデーサイレンスを母父にもつ種牡馬シェア率(上位20頭)

種牡馬名
シェア
1着数
2着数
3着数
着外数
勝率
連対率
エリシオ
9.80%
18
14
20
182
7.70%
13.70%
エルコンドルパサー
7.70%
13
10
7
118
8.80%
15.50%
ジェイドロバリー
5.60%
18
13
11
119
11.20%
19.30%
コマンダーインチー
5.00%
12
21
21
127
6.60%
18.20%
ティンバーカントリ
3.80%
17
22
12
94
11.70%
26.90%
フレンチデピュティ
3.60%
8
8
6
33
14.50%
29.10%
ブライアンズタイム
3.60%
11
10
7
61
12.40%
23.60%
エンドスウィープ
3.60%
22
12
11
73
18.60%
28.80%
トニービン
3.00%
16
15
14
119
9.80%
18.90%
カーネギー
3.00%
7
7
6
54
9.50%
18.90%
メジロライアン
2.40%
4
5
3
36
8.30%
18.80%
タマモクロス
2.10%
11
8
6
61
12.80%
22.10%
エアジハード
2.10%
6
6
4
25
14.60%
29.30%
アフリート
2.10%
8
8
3
44
12.70%
25.40%
ホワイトマズル
1.80%
4
6
8
17
11.40%
28.60%
ブラックタイアフェ
1.80%
3
0
2
48
5.70%
5.70%
ソウルオブザマター
1.80%
14
6
2
46
20.60%
29.40%
エイシンワシントン
1.80%
8
9
5
20
19.00%
40.50%
ラムタラ
1.50%
0
5
2
33
0.00%
12.50%

 ※現2歳産駒を除く、サンデーサイレンスを母父に持つこれまでの競走馬を集計


 エリシオ、エルコンドルパサーのシェア率が高いようだ。
 また、エンドスウィープについても勝利数、連対率などが高く、今後、サンデーサイレンスの血が入っていない種牡馬として、
 あるいはサンデーサイレンス牝馬の相性の良い相手として期待できそうな予感だ。

 (エルコンドルパサー、エンドスウィープは2002年に死亡)

 しかし、今回調べていて、サンデーサイレンスの血の入った馬…サンデーサイレンス系の馬が急激な勢いで増えてきているのが非常に気になった。
 種牡馬になったサンデーサイレンスの産駒は70頭を既に超えており、あきらかに他の系統よりも頭数が多く感じる。
 また、後にはアグネスタキオン、ステイゴールド、マンハッタンカフェらが続いているし、今年上半期のGIレース勝ったアドマイヤマックス(高松宮記念)、
 ディープインパクト(ダービー、皐月賞)、スズカマンボ(天皇賞・春)、シーザリオ(オークス、米アメリカンオークス)、
 ラインクラフト(桜花賞、NHKマイルC)らも、サンデーサイレンスの血を継いでおり、これらの馬も引退後は間違いなく繁殖入りするであろう。
 このまま行くと、日本競馬生産界はサンデーサイレンス系の馬で溢れてしまい、交配する馬がいなくなってしまうのではないだろうか…。
 そうならない為にも、サンデーサイレンスの血の入っていない種牡馬の頑張りに期待したい。今年はテイエムオペラオーやクロフネらの産駒がデビューする。
 サンデーサイレンスの後継種牡馬争いも気になるところだが、個人的には彼らにまず頑張ってもらいたい。

■ 小回りだからこそ開花する才能

 08年からのサンデーサイレンス系の芝1800mにおけるコース別成績を調べると、勝率、連対率、複勝率、複勝回収率のいずれの数値も福島芝1800mが最も悪い。
 
 対照的に父ノーザンダンサー系の芝1800mにおけるコース別成績を調べると、勝率、複勝回収率が最も高いのは福島芝1800mである。

 阪神、東京、京都の主場3場の芝1800mは、直線コースが長く、コーナーも2つ。対照的に福島の芝1800mはコーナーが4つで直線は短い。このコースレイアウトの違いも、血統のバイアスに大きな変化が出る要因といえそうだ。
 
 また、今の中央競馬の芝競走では、阪神、東京、京都の主場3場の芝1800mで要求されるような能力が問われるレースが多い。
 
 つまり、日本では最もスタンダートなSS系が力を発揮しやすいコースとは真逆ともいえる能力が問われやすい福島芝1800mは、日本では主流から少しズレたノーザンダンサー系が走りやすいわけだ。

 ただし、競走である以上、弱い馬(潜在能力のない馬)は、上位に走ることはできない。ノーザンダンサー系のなかでも、潜在能力を秘めた可能性の高い馬を狙う方が期待値は上がる。
 
 父ノーザンダンサー系の中から、より潜在能力を秘めた馬を手軽に見つけるのには、母父を見る方法も効果的だ。
 
 昨年の4月12日から今年の7月12日までの福島芝1800mにて、父ノーザンダンサー系×母父SSの配合馬の成績は、32頭中10頭が馬券になり、複勝率は31%、複勝回収率も200%を超える(10倍以上の高配当は10倍にして計算しても180%を超える)。

 また、出走数は少ないものの、母父フジキセキや母父ダンスインザダークといったSS2世種牡馬が母父の馬も結果を出している。
 
 結局はSSの血が頼りになる話になってしまうのだが、福島芝1800mは、スタンダードコースとはちょっと違った味付けのSSを狙うコースと考えたい。

 日本の芝競馬は脚をタメて、綺麗にコーナーを回って直線でのスピードを競うレースが多い。だが、位置を取りに行って、直線での粘りを競う小回りの競馬もスリリングなものである。

 たしかに、小回り競馬は後方にいる馬は不利を受けやすいが、「不利を受けにくい位置に早めに動ける」ことも、大事な能力のひとつであろう。


■ 最も偉大な血統

 09年鳴尾記念は、アクシオンが単勝24倍で勝利。

 アクシオンはサンデーサイレンスの直仔。富士Sで2着に激走したマルカシェンクを本命にした際に、「SS直仔を重賞で本命にするのもこれが最後かもしれない」と思っていたのだが、まだまだお世話になるとは思いもよらなかった。

 これで今年の芝重賞でのSS直仔は、複勝回収率が111%。複勝率は18%。高齢の産駒ばかりでこれだけ優秀な期待値を示すのには感服するとともに、重賞は「強い血統の人気薄」を徹底して狙うことの重要性を改めて教えられた。

 そして今年、SS直仔よりも優秀な成績を示しているのが、母父SSの産駒だ。

 母父SSの今年の芝重賞での成績は複勝率が24%で、複勝回収率が119%。SS直仔よりも3倍近く馬券対象馬を出しながら、優秀なアベレージを示している。

 ちなみに、母父SSは今年の中央競馬で行われたダート重賞でも複勝率30%、複勝回収率211%を記録。SSの血自体は、ダートよりも芝の方が適性は高いはずだが、他の血に比べて、いわゆる持っているエンジンが高い馬が多い結果も影響しているからだろう。

 なお、過去5年でSS直仔がもっとも成績が良かったのは、ディープインパクトが3冠を達成した05年。複勝率は29%で複勝回収率は101%。

 特筆すべきは、のべ358頭もの産駒が出走してこれだけの成績を残していたことである。

 対して、母父SSの場合は、年々出走頭数は増えてきているが、それに伴い、複勝率が下がり、回収率も若干下がる傾向を見せている。

 やはり母父SSはSS直仔ほど影響力は強くなく、なおかつSS2世種牡馬との争いもあるので、SS直仔までの絶対的な存在になることは難しい。

 逆にいえば、誰もが絶対的に重視するわけでもないので、取捨のコツをつかめば、SS直仔以上に効果的なツールにもなりえそうだ。

 ジャパンCダートでいきなり母父SSのゴールデンチケットを無印にしたボクが言っても何の説得力もないのだが。


■ 代表産駒

★ サイアーとしての主な産駒

GI級競走優勝馬
重賞優勝馬

★ ブルードメアサイアーとしての主な産駒

GI級競走優勝馬
重賞優勝馬

■ 代表種牡馬