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アグネスタキオン

■ 特徴


■ 解説

 サンデーと母父ボールドルーラー系ロイヤルスキーという組み合わせだけ見ればジェニュインと同じだが、ジェニュインよりも当然母系の質は上等。
 意外とダートで能力を発揮する産駒が出てくるかどうか注目。
 2006年で種付け1200万とやたら高いが、新馬を楽勝した産駒が上のクラスで凡走を続け、熱狂は沈静化。
 母父ロイヤルスキーと聞けばニジンスキーの同牝系だから、そこはダンスインザダークと重なる。
 無敗の4戦4勝で引退というプロフィールはフジキセキと重なる。
 繁殖牝馬の質にも恵まれ、成功の可能性は高い。とりあえずサンデーとおなじイメージを浮かべつつ、あとは産駒の走りをみて調整していけばよいだろう。

 いわゆる「ハズレ」が少なく、勝ち上がり率や掲示板確保率が高い。

 逃げ・先行・差し自在で、距離については中距離を得意とする産駒が多いが比較的融通が利く部類に入り、
 マイル戦やクラシックディスタンスにも適応する柔軟性を持つ産駒も出ている。
 芝・ダートを問わない活躍が見込める反面、開催終盤の荒れた芝や重馬場など力がいる馬場はあまり得意ではない。
 ダート路線へ転向後に活躍する馬もいるが、現在のところダートよりは芝の方で良い成績を残している。
 2歳の早い時期から活躍できる仕上がりの早さも備えており、当馬が2歳リーディングで例年上位に名を連ねている要因の1つとなっている。

 クラシックトライアルでやたら活躍馬を輩出(ショウナンタレント・ノットアローン)し、他の馬より仕上がりが早い。
 単なる早熟タイプかと思いきや、晩成のアグネスアークまで登場。

 長距離でも中山では先行タイプの激走には注意。(ダイワスカーレット・キャプテントゥーレ)
 このへんはダンスインザダーク産駒と異なるところ。(ダンス産駒は中山は苦手)

 父同様体質や脚部の弱さに悩まされる産駒も多く、使い減りする傾向が見られる。
 条件クラスの馬だけでなく、重賞級の産駒も例外ではない。
 ロジック、アグネスアーク、ダイワスカーレット、アドマイヤオーラ、キャプテントゥーレなどは故障し、長期間戦線を離脱してしまった。

 ノットアローンは直線の短い小回りの渋った馬場がベストで、直線の長いコースは不向き。


アグネスタキオン編 Part1

 とうとうというか、ついにというか、今週からアグネスタキオン産駒について考えていくことにする。

 サンデーサイレンスの後継としてその地位を確固たるものとしつつあるアグネスタキオン産駒。その最大の長所は莫大な量だ。量が豊富に供給されているために、使い込まない限り古馬になってもブレの少ないパフォーマンスを出すことができる。

 量が豊富ということは、弱い相手に安定して強くなりやすい。気分良く、自分のペースで走れれば、その量を最大限に生かせるからだ。

 こういう種牡馬は人気になりやすく、そういう意味でM的には面白くない種牡馬であり、ここまでその分析を敬遠してきた理由でもあった。

 ただ、量に頼っている(量に加えて体力もあるのがより厄介なのだが)ということは、それなりのマイナス材料も内在しているのも事実である。その辺りも見ていきながら、その消し処、買い処を分析していくことにしよう。

 量が豊富すぎるとダイワスカーレットのような産駒になって、解説としてはなんの面白味もなくなるので、ここではアグネスタキオン産駒として平均的な量を与えられたカイシュウタキオンという産駒を見ていこう。

 量の供給が過剰すぎず平均的なため、一般的なアグネスタキオン産駒の傾向を考えるには、良いモデルケースになる馬だ。

 基本が量系なので速い上がりの差し競馬に強い。準OP勝ちを決めたむらさき賞(1800m)が自身の上がり33.4秒という高速上がりでの差し切り勝ち。前走が1600mで、今回は200mの距離延長だった。

 揉まれずに、スムーズに流れに乗って、速い上がりでも差しが決まるレース。こういうのが、差し馬のアグネスタキオン産駒のもっとも得意とするパターンになる。

 その次走の福島テレビOPでは好調さと2kg減の55kgという斤量も支持されての1番人気になるも、3着。前走から一転の急流では、走るのを嫌がってこの結果も仕方ない。

 その次に3着以内に入ったのが初富士S。距離短縮だったが、前走の冬至Sが中山1800mで内枠を引いていた。内枠の小回りから、同じ中山でも外周りのマイルで外枠を引いて、気分良くレースに臨めたのが好走の要因になった。

 初富士Sの次走は石清水S(京都1600m)。京都外回りはプラス材料だが、内枠で、前半が後半より1秒速いペース。量を生かす前に、揉まれて嫌がってしまった。

 その次走は東京芝2000mのアメジストS。距離延長の東京で、今度は前半が後半より1秒も遅いペース。気持ち良く前に行く位置取りショックも駆使して2着に残った。

 また、むらさき賞がハンデ戦でトップハンデの57kg、アメジストSもハンデ戦で57.5kgを背負っていた点に着目したい。重い斤量を背負ってのものだったのだ。量に加えて体力が豊富な血統というのは、あまり斤量の影響は受けない。したがって斤量の増減を重要なファクターとして考える必要はあまりないのだ。


アグネスタキオン編 Part2

 前回はアグネスタキオン産駒として普通の量を持つ、カイシュウタキオンを代表例として考えてみた。

 アグネスタキオン産駒は活躍馬も増えているので、今回からは距離別にそのパターンを考えていこう。

 まずは芝1200m。

 最初に年齢別に連対率や回収率をチェックしてみる。すると2歳が連対率32.6%、3歳14.7%、4歳12.1%、5歳0%と年を重ねる毎に成績が落ちていっている。5歳はまだ出走数が19頭なので、これをして結論を出すのは早計だが、だんだんとパフォーマンスが落ちる傾向にあるというのは事実だろう。ただ単勝回収率を見ると、2歳45円、3歳51円、4歳41円と大きな開きはない。

 以上のことから何が見えるか?

 ひとつめには、量系でも若くて鮮度のある頃は多少揉まれても我慢するので、それなりの成績を挙げていること。

 ふたつめは、2、3歳は新馬戦や少頭数のオープンなど、弱い相手に単調なレースが多いので、量系が得意とする、力でねじ伏せる競馬ができている点。その証拠が、成績が落ちるのに、それほど単勝回収率が落ちていないということだ。

 つまり、2歳の頃は、弱い相手に圧倒的人気で連対しているケースが多いということ。また逆に古馬になれば、量系の気ままさで、揉まれずに穴を出すタイプも少しは出てくること。以上から、成績は落ちても、単勝回収率はあまり変わらないという現象が起きている。

 これは牡と牝の成績を比べてもわかる。成績のブレが少ない複勝率で調べると、牡が2歳52.6%、3歳17.2%、4歳8.3%、5歳0%と見事に下降線を描いている。牝の場合は、2歳42.1%、3歳20.4%、4歳23.8%、5歳12.5%と、徐々に下降リズムではあるが、牡馬ほどあからさまでもない。

 複勝回収率で見ればさらに鮮明だ。牡馬が2歳81円、3歳39円、4歳15円、5歳0円と綺麗に下降しているのに対し、牝馬が2歳65円、3歳94円、4歳86円、5歳56円と、際だった特徴はない。牡馬の方が1200mを苦手とするのは、量と体力で押し、揉まれ弱く、また1200mを得意距離としていない種牡馬には非常に多いケースだ。これまでも何度か触れてきたが、どの血統でも牝馬の方が牡馬よりは渋太いので、その馬にとって忙しくて揉まれたくない条件では、余計に牝馬優位の法則が反映されやすいというわけである。

 次回はその実際を見ていこう。


アグネスタキオン編 Part3

 芝1200mの1000万以上のクラスでの好走は、やはり単調さや体力で押しきれる2歳がやはり圧倒的に多い。まだデータが少ない段階なので、絶対的なものではないが、3歳上1000万下では、20頭出走して、2頭の連対に止まっている。

 そのうちの1頭はシュガーヴァインで、18頭立ての16番枠。平均ペースで馬場は不良だった。もう1頭はグレイトフルタイムで12頭立ての2番枠の平均ペースだった。両者に共通して言えることは、揉まれにくい条件だったこと。つまり、外枠だったり、激しすぎないペースだったり、道悪である。またシュガーヴァインは格上げ初戦、グレイトフルタイムは休み明け。1200mでは鮮度の要求率も高い。

 3着馬は1頭で、北九州記念のワイキューブ。16頭立ての14番枠だった。ペースはハイペースを追い込む形。つまり、3レースとも揉まれにくい競馬だったという共通項がある。そしてやはりワイキューブも格上げ初戦だった。

 その後、ワイキューブは芝1200mで4戦すべて10着以下、グレイトフルタイムは直後のレースで多頭数の内枠に入り1番人気5着、シュガーヴァインは2走後の15頭立ての9番枠で1番人気10着。延べ6回芝1200mを走って散々な結果となった。やはり揉まれないこと、鮮度のふたつを満たしていないと、上級条件の3歳以上の芝1200mは危うさがある。


アグネスタキオン編 Part4

 2歳での連対は3頭。そのうちスーサンライダーは、ききょうS1番人気2着。10頭立ての10番枠から逃げたもので、まったく揉まれることはなかった。

 残りの2頭はフェアリーS。サンタフェソレイユは1600mからの距離短縮で16頭立ての14番枠からハイペースの中を追い込んで2着。スワンキーポーチもまったく同じ16頭立ての14番枠からハイペースを追い込んでの2着。

 フェアリーSは暮れの中山1200mの多頭数で行なわれることが多いレースのため体力が必要になる。そこで外枠から揉まれずに、距離短縮の勢い、鮮度と、体力のアドバンテージを生かすという形だった。

 もともと1200m適性より少し上の体力を要求される特殊レースでもあり、そういう意味で、フェアリーSはアグネスタキオン産駒に合っているレース質とも言えるだろう。

 芝1200mの人気薄に目を転じると、7番人気以降の人気薄で連対したアグネスタキオン産駒は2頭。そのうちリマレックスは13頭立ての11番枠で休み明け。広い阪神コースの前残りレースだった。

 もう1頭のルミナスポイントは、18頭立ての17番枠で格上げ初戦の稍重馬場。やはり穴も、揉まれないスムーズな条件と鮮度が、1200mでは重要になってくるということである。

 鮮度としては、休み明けや距離短縮、ダートから芝、位置取りショックなど。揉まれない条件の基本は外枠や少頭数で、内目の枠なら速すぎないペースを先行したり道悪で極端にバラける馬場がベストになる。


アグネスタキオン編 Part5

 9月25日(木)に白夜書房から、この連載をまとめた本「穴馬は走りたがっている〜激走馬をみつける真の血統力とは何か」が出版された。当連載の中から、種牡馬について述べた部分を抜粋した形式になっている。また、まだ分析していない種牡馬を含む、種牡馬のアイテム表を載せた。各種牡馬の「オプション」や、短縮、延長、同距離の3要素のデータ表、種牡馬タイプなどが載っているので、ぜひ参考にして頂きたい。


 さて、今週は先週の芝1200mに続いて、アグネスタキオン産駒の芝1400mを見ていこうと思う。

 1400mの方が量を生かせる分だけ、1200mより適性は高くなる。ただ、本質的にまだ忙しい距離であるということも確かなので、1200mに近い性質を持っている。

 つまり、若い方が成績が良く、歳を取るにしたがって適応能力が落ちていくということだ。データがまだそれほど多くないので、数の多い複勝率で見ると、2歳42.9%、3歳25.0%、4歳23.1%と低下傾向にあるわけだ。ただ、3歳と4歳は際だった変化でもない。また、微妙に牝馬の方が回収率は上だが、ほぼ誤差の範疇になっていて、性差も少ない。つまり、1200mほど「忙しい」という意識が1400mでは少ないというのが、この性差と年齢における差の縮小から見えてくる。

 2歳が高いのは、やはり量と体力の優位性を生かせる新馬戦で稼いでいる部分が大きく、単複ともに高い回収率になっている。1200m以上に量の優位性が出やすいのが1400mなので、自然と1400mの新馬戦での数字は高くなるのだ。

 オープン以上での3着以内を見てみると、ロジックが9頭立ての5番枠、フローラルカーヴが12頭立ての8番枠、ニシノマナムスメが16頭立ての6番枠、ルミナスハーバーが11頭立ての9番枠、バンガロールが6頭立ての6番枠となっている。つまり基本的に少頭数や外枠で揉まれずに量を生かす形が合う。

 16頭立ての6番枠だったニシノマナムスメは2番人気3着と人気を裏切ってのものだし、新馬からの昇級初戦で鮮度が高く、また次走は同じオープン(1600m)で2着と着順を上げた。つまり、鮮度に加えて、力も上位だったということになる。

 以上から、上級条件では少頭数や外枠、バラける道悪などの特殊馬場で揉まれないこと、鮮度が高いこと、力が上であることなど、1200mの上級条件好走と似たようなパターンで好走しやすいと言えるだろう。

 牡馬でオープンを連対したのはロジックとバンガロールの2頭だが、ロジックはその後GIのNHKマイルCを制し、バンガロールはこのオープン特別2着直後に重賞の新潟2歳Sでも3着に好走している。この牡馬2頭は力自体がかなり上だったわけで、やはり上級条件ではどちらかというと牝馬の方が良いと言える。

 1000万と準OPで連対した3頭は、その直後のレースでも、7番人気1着、10番人気3着、7番人気1着と激走した。かなり好調で、力が上だったというわけだ。そういう面でも、このクラスの1400mで好走した馬は、次走でも注意したい。

 また、このクラスでは2番人気以内の馬が10頭も出走しているのに、連対したのは1頭だけ。使い込まれて鮮度が落ちているのに人気になっている馬は、上のクラスでは危うさが同居していると言える。


アグネスタキオン編 Part6

 これまでアグネスタキオン産駒の芝1200m、1400mと見てきたが、いずれも同じような問題を抱えていることがわかった。つまり、短距離では忙しいために、揉まれて量を生かす前に嫌がってしまうケースだ。

 今週見てみる芝1600mは忙しさから一気に解放される。距離的にもそうだし、広くてコーナーの緩いコースが多くなるので、揉まれる心配が少なくなり、アグネスタキオン産駒の持つ「量」という最大の長所を発揮できるからだ。

 実際、広いうえにスローになって淡泊な競馬になりやすい新潟1600mでは単複共に90円を超え、好相性を示している。

 2歳がもっとも安定感が高いが、これは量系の基本でもあり、古馬になってもそれほどパフォーマンスは落ちない。性差も、牝馬優勢といったような1200m、1400mで見られた現象は少ない。この年齢差と性差の縮小は、その血にとって問題のない条件であることを、暗に示唆している。

 まだデータが少ないのではっきりしたことは言えないが、準オープン以上になると、2歳、3歳、4歳と、少しだけだが、次第にパフォーマンスは落ちている。1200m、1400mで見られた、若くて鮮度があるときの方が、忙しさを我慢できるという特徴は、ある程度その馬の極限である上級条件では、1600mにも引き継がれていると考えて良さそうだ。

 オープンで5番人気以降で穴を開けたのは2回。ディープスカイのアーリントンC10番人気3着と、ニシノマナムスメのマイラーズC8番人気2着だ。前者は前走500万、後者は休み明け2戦目。上級条件の穴なら、やはりマイル戦での鮮度が高い馬が面白い。逆に人気で危ないのは、マイル鮮度が落ちてきて、少し強めの相手に当たって揉まれた場合になる。

 これはマイル鮮度というより直近鮮度だが、アグネスアークはGII2戦とGI天皇賞・秋を連続連対した後のマイルCSで2番人気に支持されて4着に敗れた。強い相手に使い詰めで好走を続け、鮮度が落ちているときの距離短縮で、揉まれる競馬というのも、少し怪しさがある。ただ量が豊富なので、基本的には人気で見下ろすような相手でマイル戦の場合は、比較的安定感は高い種牡馬だ。

 いずれにせよ、「疲れていないか」、「揉まれないか」が、特に人気馬の場合は、危険の可能性を計る重要な指標となっている。


アグネスタキオン編 Part7

 芝1800mは複勝回収率が80円台で、それなりの安定感を示している。ただローカルコースでは取りこぼすことも多く、単勝回収率はそれほど伸びない。

 クラス別に見ると、どのクラスも万遍なく走っている。この年齢差の解消は、短い距離との相違点であり、心身の「忙しさ」からかなり解放された結果と言えるだろう。

 特に単勝回収率で見ると、下級条件はそれほど高くないが、準OP以上で高くなっている。これは短距離との決定的な違いであり、本質的なフィット感が違うという証明に他ならない。年齢的にも2〜4歳まで変化がない。ただ、データ的に少ないので信憑性には乏しいが、5歳の成績はやや落ちている。これがまだ誤差なのか、それとも短距離との類似点なのか、結論を出すには少しまだ早い。気になるのは牡馬が2歳から徐々にパフォーマンスを落としている点。年齢による性差は、あるいはまだ残っているのかもしれない。

 直近でオープン1800mで連対したのは野路菊Sのホッコータキオン。1200mから600m距離延長で、5番人気での激走だった。

 8番人気以下でオープンで連対したのはこれまで3頭。休み明けのキープユアスマイルを除けば、マイネカンナの中山牝馬S13番人気2着が1600mからの距離延長。レインボーペガサスのきさらぎ賞8番人気1着がダート1600mからの距離延長。穴の場合は、フレッシュな状態や、距離延長に特に注意が必要だ。

 それほど流れが速くなくても差しが決まる馬場での人気薄は、量が生かせるので特注になる。

 逆に先行して穴を開ける場合もあるが、そのときは揉まれないかどうかに注意してほしい。ノットアローンのラジオNIKKEI賞は雨でバラける馬場を先行したものだった。

 距離短縮で穴を狙う場合も、短縮だからといって前走よりいたずらにペースが速すぎないこと。できれば遅い流れの差し競馬が理想で、速い流れなら外枠や雨でバラける馬場など、揉まれにくいシチュエーションがほしいところ。

 逆に人気で危険性が出てくるのは、距離短縮や小回り替わり、内枠などで前走より厳しい流れになって揉まれ込んだときや、使い込まれて好走後で疲れているとき。好走続きで間隔が詰まって、タイトなレースになったときは怪しさが出てくるわけだ。

 何れにせよ、1800mは量系(L系)の基本パターンと考えていいだろう。


アグネスタキオン編 Part8

 1800mのような忙しさや揉まれる確率が減る分、芝2000mは回収率が高くなる。特に1800mでは揉まれて嫌がる場面も多かった小回りの成績が良くなっているために全体の数字を上げている。

 クラス別の成績の開きもなくなり、これまでのような牝馬優勢の傾向もなくなった。というより、牡馬の方が圧倒的に成績が良く、牝馬はかなり悪い。この距離が量と体力を生かすにはかなり合っていることを端的に表しているのが、この性差の逆転現象と言える。

 年齢的に見ても、牡馬の回収率が4歳で最大になっている(5歳は低いがまだデータが少ないのでここで結論を出すのはまだ早いだろう)。それに比べ、牝馬は2歳→3歳→4歳と次第にパフォーマンスを落としている。ただ、率に関しては、牡馬も年齢とともに急激に下降していっている。つまり、古馬では不安定になるのだが、そのぶん穴も出るようになる距離だということだ。

 オープンで7番人気以降の人気薄で馬券圏内に激走したのは3回。キャプテントゥーレの皐月賞、アグネスアークの札幌記念、天皇賞・秋である。キャプテントゥーレの皐月賞は突然逃げに出る位置取りショックがハマった。アグネスアークの2戦はともに前走1800mからの距離延長。「揉まれずに穴を出す」という流れは、これまでの距離と似通っている。前走より何かしらの理由で揉まれにくいときには、穴で注意だ。

 人気で危ないパターンとしては、07年の紫苑Sが好例だろう。1番人気ミンティエアーが9着、3番人気ショウナンタレントが12着と、人気2頭が揃って華々しく散っている。このレースは、前半が34.5秒。牝馬限定の2000mとしては相当のハイラップだった。やはり人気馬は揉まれたときが一番危ない。また2頭は春先に実績を残した牝馬。牝馬のパフォーマンスが次第に落ちやすい距離というのも念頭に入れておきたいところだ。


アグネスタキオン編 Part9

 芝2200m以上になると、揉まれるという最大の弱点が顕在化せず、量と体力という長所を最大限に生かせるので、そのパフォーマンスはピークを迎える。特に2200m〜2500mは稼ぎ処で、高い回収率を誇っている。

 ただ2600mはそれほど良くない。2600mはローカルで行なわれる距離で、案外混戦になりやすいことがその最大の原因だ。また3000mに近づいてくると距離適性がややアグネスタキオン産駒には長すぎるのかもしれない。まだ3000m以上の出走がほとんどないので何とも言えないが、少なくとも長距離型の多くの産駒の物理的(距離的)なピークは2300m前後にある。

 クラス別でも成績に変化はなく、性差では牡馬が圧倒的に牝馬に対して優位に立っている。クラス差の解消と、性差の完全逆転が、同距離をピークとする血統構成であることを裏付けている。

 したがって、年齢的にも回収率に大差はない。ただ、年齢が上がる毎に率はかなり下がる。これは2000mでも見られた現象であり、4歳以上だと、安定感を失いつつ、穴の可能性が出てくるというのが基本的な考え方になるだろう。

 セントライト記念で穴を開けたダイワワイルドボア。彼は1000万からの格上挑戦だった。格上挑戦といっても、古馬混合から3歳限定だから極端に相手が強くなったわけでもない。ポイントは「鮮度」になる。穴は休み明けや距離延長、ダートから芝などのショックによって鮮度を得たときに、もっとも開けやすい。

 またセントライト記念は稍重。オープンを4番人気以降で3着以内に入った4頭中3頭が稍重だった。このセントライト記念は3着にもアグネスタキオン産駒のノットアローンが5番人気で3着したし、ダイワスカーレットの有馬記念も稍重だった。実際、長距離の稍重、重での回収率はかなり高い。体力を生かせるうえに、道悪でバラけてさらに揉まれるリスクが減るということで、この馬場ゾーンの人気薄には特に注意だ。

 人気馬で危ないケースは、この距離だと2600m以外はそれほど揉まれるというリスクは気にする必要がないので、「心身疲労」が最大のポイントになる。前走で激走し過ぎてないか?特に使い詰めで激走してないか?には注意したい。

 逆に言えば、人気薄に「鮮度」が重要なのも、「心身疲労」ということの裏返しであり、心身疲労がこの距離における重要なキーワードになっていることは間違いない。


アグネスタキオン検証編 Part1

 今週はホワイトマズルの続きを掲載する予定だったのだが、アグネスタキオン産駒がさっそく、検証にピッタリのレースに出てきたので、そちらを先に見ていきたい。

 今週のファンタジーSのワイドサファイアだ。初戦は牡馬相手に上がりが次位と0.7秒も差をつける豪脚で勝利。乗った福永騎手も「シーザリオに匹敵する素材だ」と大絶賛。そこでファンタジーSでは単勝1.6倍の圧倒的な支持を集めた。

 しかし、私は3番手の評価に止めた。アグネスタキオン産駒の解説を読まれた読者なら、むろん、みなさんこのことには合点がいくだろう。

 そう!アグネスタキオン産駒には微妙に1400mは忙しい。そして、揉まれ弱い量系というのがその本質だった。今回は14頭立ての4番枠。内目の枠の距離短縮だ。しかも前走は前半35.9秒−後半34.7秒の前後差1秒以上のスローペース。今回の距離短縮で忙しさが顕在化して、揉まれてスムーズに自分の競馬ができない可能性はそれなりに高い。もちろん、能力でこなしてしまう可能性もあるが、その可能性に賭けるには、単勝1.6倍はナンセンスなのである。

 レースでは案の定、道中スムーズさを欠いて、スタートが遅れたり、馬群の中でひっぱたりの大騒ぎで4着に敗れた。解説者達はこぞって「力を出せずに参考外のレースでした」と述べた。しかし、走る前から、かなりの確率で力を出せずに参考外のレースになることはわかっていたことだ。

 それでも例えば単勝5倍なら、私も能力から本命にしていたかもしれない。しかし1倍台では、能力で不利を克服して最後大外から飛び込んで来るも、2、3着止まりという可能性の方が遙かに怖い。

 競馬は能力で走っているのではない。タイプと臨戦過程のバランスで走っているのだ。それが競馬というものの本質である。


アグネスタキオン検証編 Part2

 また菊花賞ではアグネスタキオン産駒の4番人気ダイワワイルドボア、6番人気のノットアローンが出ていたが、ともに8着以下に惨敗し、私も予想では評価しなかった。これも解説で触れたアグネスタキオン産駒の距離的ピークの話である(もちろん距離的ピークは産駒によって違うので一概には言えないが、それまでの走りと、血統から今回は持たないと判断できた)。

 逆にMの血統馬券的に狙えたのは、ファンタジーSと同週に行なわれたアルゼンチン共和国杯のスクリーンヒーローだ。グラスワンダー産駒は、力で押しきる競馬が向いていると以前書いた。

 前走は東京2400mのスロー。根幹距離で東京のスローというのは、本質的に強引に押すグラスワンダー産駒には向かない。そこで2着と善戦。そして今回は格上げ戦で鮮度が高い。しかも、強引なパワーで押せる非根幹距離2500mに揉まれるリスクの少ない距離延長での出走だ。前走で後れを取ったジャガーメイルに負ける確率はかなり低いと判断できる。そこで携帯予想でも本命にし、馬単、3連複はもちろん、単勝8.9倍もゲットしたのだった。

 思えば、ここで書いたように、アルゼンチン共和国杯は昨年もアドマイヤジュピタを本命にして、単勝5.1倍をゲットしたレースだった。ともに格上挑戦。しかし、アドマイヤジュピタの父はフレンチデピュティで、スクリーンヒーローの父はグラスワンダーだ。強い相手に頑張るC系タイプではない。それでも格上挑戦の鮮度の方が上回った形だが、実はここには、もう1つの重要なキーワードが隠されていた。

 2頭とも、それ以前にオープンに出ていて、連対しているのだ。つまり経験もある。したがって、相手強化のイメージは馬に残らず、ただ鮮度だけが気持ちを高揚させているのだ。

 これはMでは理想的な精神ローテーションの1つとされているので、覚えておいて欲しい。


アグネスタキオン検証編 Part3

 今週はアグネスタキオン産駒の検証をしようと思う。

 以前、距離的なピークは「2300m前後にある」と書いた。これは成績はもとより、走る馬のセックスバイアス(性差)や年齢により、距離的ピークを考える手法により、導き出された結論だ。

 例えばそれを書いた後も、「やや長い」とした菊花賞ではダイワワイルドボアが4番人気8着、ノットアローンが6番人気18着と、人気を裏切る形に終わった。

 ディープスカイにしても、天皇賞・秋2000mの3着から、ジャパンC2400mの2着と、距離延長で着順を上げた。

 ただ、ディープスカイの場合は純粋に距離という問題だけでもない。もとより2000mと2400mの適性差は微妙だし、それ以上に、天皇賞・秋が2400mのスローを好走した後での、距離短縮で締まったペースで行なわれた点にある。逆に、ジャパンCが2000mの締まったペースから、延長になって、揉まれずに気分良く走れた点も挙げられる。

 この、競走馬の感じる「前走からの差」こそが重要なのだ。アグネスタキオン産駒は量系なので、揉まれずに気分良く行けた方がよいわけだ。この連載でも、「どの種牡馬はどの距離がよい」というようなことを便宜的に書くが、それは相対的なもの、前走との記憶の差を考えなければ何の意味もない。「絶対的」に走れる距離が、そこにただあるわけではないのだ。それが競馬であり、「Mの法則」というものである。

 リトルアマポーラも内回り2000mの厳しいペースで行なわれた秋華賞を6着後に、距離延長の平均ペースで流れた2200mのエリザベス女王杯で1着に激走した。

 これら、その馬の限界点が試されるGIでの成績を見ても、アグネスタキオン産駒の距離的ピークは2300m前後にあることがわかる。ただ、それは前走との記憶の差と重要な関係を保っているのだということを忘れないように。それがわかれば、決してアグネスタキオン産駒が3000m以上を走れないわけでも、1400m以下を走れないわけでもないことが、自ずと見えてくるだろう。

 もちろん、産駒によってピークが1600mにある馬もいれば、2500mにある馬もいる。競馬というものは常に相対的なものだということを、我々は認識する必要があるのだ。

 例えばセンシュアルドレスという産駒は1400m前後に距離的ピークがある。しかし以前、アグネスタキオン産駒に芝1400mは少し忙しいと書いた。同馬はセレブレイション賞で1400mを2着するのだが、これには訳があった。その前走は同じ1400mで5着。そのレースよりテンが今回は遅くなっていた。つまり揉まれずに自分のペースで競馬がしやすい。しかも前走は18頭立ての6番枠。今回は15頭立ての9番枠。少し頭数が減り、少し外に枠が移った。1400mの忙しさを相殺する、それなりの理由がそこにはあったのである。


アグネスタキオン検証編 Part4

 今週は復習をしながら、距離適性と馬の気分ということについて考えたい。

 アグネスタキオン産駒はこの間の分析で、芝1400mは少し「忙しい」と書いた。

 先々週、その1400mに3番人気でチョウカイファイトというアグネスタキオン産駒が出てきた。近3走すべて3着以内で、前走では今回と同じ1400mでも4番人気3着と好走したので人気になったのだ。

 だが、結果は7着惨敗。前走は15頭立ての15番枠と大外枠でのハイペース。何も考えずに外を回ってきて、結果3着と好走したものだった。しかし、今回は16頭立ての13番枠と少し内に入った。そしてペースはスロー。スローの方が「忙しさ」から解放されるように思われるかも知れないが、それは主に先行馬の場合で、そうではない場合も多い。

 その1つが今回のケースだ。忙しい距離のハイペースで揉まれて嫌がる馬の場合、内枠なら投げ出してしまうが、前回は何も考えずに走れる大外枠だった。今回は遅い流れで大外枠ではない差し馬。道中、ちょっとした駆け引きが生まれる。それが、忙しい距離だと面倒くさく感じて嫌なのだ。

 そしてもう1つ、重要なポイントがここには隠されている。

「適性のそれほどない距離においては、連続好走はしにくい」という問題だ。

 適性の乏しい距離でも、1回目は鮮度という「カーニバル」の中にいる。何が何だかわからないうちにレースは終わるのだ。しかし、次走同一条件では飽きがくる。この「飽き」というものが、適性距離からずれると気分的な「間」を生んで、凡走に繋がる。したがって連続好走しにくくなるという構造だ。

 例えば気分屋のダンスインザダーク産駒。こちらは芝1200mだと忙しいタイプだ。ところがメイカという産駒は、1200mの500万を11番人気で1着と大激走した。このときは「休み明け」。気分転換され、18頭立ての18番枠と大外枠のハイペース。何も考える必要はなかった。しかも初ブリンカーまで装着。

 気分転換して、「何が何だかわからないカーニバル」の最中で走るとき、種牡馬の得意範囲と微妙にズレた距離でも激走できるという典型パターンだ(だから適性からずれた距離の場合は人気薄に妙味がある)。そのメイカの次走はもちろん8着に凡走した。カーニバルの後は、いつだって疲れだけが残る。

 ダンスインザダークの「気持ち」という話では、暮れのエーシンダードマンも面白かった。500万の身でありながら1000万への格上挑戦で1着と勝ち上がったのである。それまで、500万で1番人気5着→1番人気6着→2番人気2着と人気で勝ち切れなかったのに、だ。いかに鮮度が大事かがわかる内容だった(1番人気5着のときは、ここでも危ない人気馬の話として取りあげたので覚えている読者も多いだろう)。

 前走は稍重の2600mという特殊距離への距離延長で、走りに集中できて2番人気2着と好走。そして今回は格上挑戦でメンバーが替わってやる気になり、1着激走という、まさに「カーニバルパターン」となった。


■ 代表産駒