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ボールドルーラー系

■ 特徴


■ 解説

 1960〜70年代のアメリカにおいて猛威をふるった父系で、今も活力を維持している。
 その祖となったボールドルーラーは米リーディングサイヤーに輝くこと8回、米2歳リーディングサイヤーに輝くこと6回。
 ナスルーラの偉大さをそのまま受け継いだ名馬にして名種牡馬だった。
 後継種牡馬のワットアプレジャー、ラジャババ、ボールドビダーらも米リーディングサイヤーに輝いたが、
 その原動力となったのはボールドルーラーが伝えた抜群の仕上がり、優れたダッシュ力とスピードだった。
 2歳戦と短中距離戦に傾倒していたアメリカにとって、これほど願いにかなった血統もなかったといえる。
 ただ、産駒は全体に早熟で距離にも限界があり、3歳になると伸び悩んだ。
 ボールドルーラーの生存中に、米三冠レースの優勝馬が1頭も出なかったことが、それを物語っている。
 この欠点がやがてノーザンダンサー系やネイティヴダンサー系に主役の座を奪われる一因にもなった。
 ボールドルーラーの死後、セクレタリアトが米三冠馬に輝いて血統イメージを覆したが、
 この晩年の傑作が種牡馬としては案外だったことも、繁栄の終わりを告げるかのようだった。
 だが、ボールドルーラー系は主流外から誕生した、無敗の米三冠馬シアトルスルーによって救われる。
 従来のボールドルーラー系と違って、スタミナと成長力も備えているのが特徴で、その血は代表産駒のエーピーインディ(ベルモントS)が引き継いでいる。


 プリンスリーギフト系と並んで、日本の競馬にスピードを植え付けたのがこのボールドルーラー系でした。

 ボールドアンドエイブル産駒が短距離で活躍し、ステューペンダス産駒のラッキールーラがダービーを勝ち、ダストコマンダー産駒アズマハンターが皐月賞を勝っています。
 日本では、プリンスリーギフト系のように続々と大物を出すまでには至りませんでしたが、後世に与える影響はむしろ大きくなっているような気がします。

 ボールドルーラー自身がアメリカ競馬史に残る名馬だったわけですが、その長所は現地で枝葉を広げたことで、
 ダートでの厳しい凌ぎ合いにかなり適した血統である事を証明していきます。
 そのしのぎ合いをくぐり抜けた血は、日本においてはダートではなく、保全状態が向上してスピード化した90年代以降の芝競馬で開花していくことになります。

 ボールドルーラー直子のラジャババからは、まずロイヤルスキーが、スキーゴーグルを出して海外で成功した後で日本に入ってきます。
 牡馬の産駒にあまり大物は出ませんでしたが、牝馬にはアグネスフローラ(桜花賞)が出ました。
 そしてロイヤルスキーは母父としてアグネスフライト、タキオンの全兄弟へとつながります。
 そしてラジャババ産駒のウェルデコレイテッドはエアシャカールの母父になっています。
 またボールドルーラー産駒のワットラックはジェニュインの母父になっている・・・という事実を見ていくと、
 サンデーサイレンスとの相性の良さは特筆ものですね。上記の馬はいずれもダービーで連対し、フライト以外は皐月賞を勝っています。

 ボールドルーラーの子で、アメリカ歴代最強馬としてマンノウォー、ネイティヴダンサーらとその候補に挙がるセクレタリアトは、
 種牡馬としてはアメリカでも失敗の部類でした(期待の割にはという意味で)。
 しかし、その産駒リズンスターは米クラシックホースとなって種牡馬入りし、日本で持ち込みの牝馬スターバレリーナが活躍。
 彼女はグランパドドゥ、現役馬ではスパルタクス、アンドゥオール、パドカトルなどを生み、屑を出さない名繁殖牝馬への道を歩んでいます。

 またセクレタリアト産駒のヒシマサルは日本で旧4歳重賞を3勝。 しかしセクレタリアトの威力は優れた繁殖牝馬を輩出したことにあります。
 直仔の牝馬からはターリングァがストームキャットの母に、ウイークエンドサプライズがエーピーインディの母に、
 そしてシックスクラウンズがチーフズクラウンの母、ベティーズシークレットがセクレトの母になっており、牝馬族として真価を発揮してきました。

 ボールドルーラー-ワットアプレジャーの系譜からは、フーリッシュプレジャーが出ており、
 またエクスバラント、フォーザモーメントも現役馬の母の父として散見することができます。
 そしてオネストプレジャーからはジャッジアンジェルーチが出て、エガオヲミセテの母父となっています。またディカードレムの子もそこそこ走りました。
 そうそう、ボールドルーラーの子レビュワーはアジュディケーティングの母父です。

 ボールドルーラーの系譜は、日本ではその多くが芝馬に出ることが多いのが特徴。
 アメリカのダート血脈は日本で優れた芝血統に変貌する事は覚えておいた方がいいでしょう。
 また仕上がりは早く、スピード能力はかなり優秀です。
 よって、先ほども書きましたが、母方の長所を引き出すサンデーサイレンスを父に、ボールドルーラー系牝馬を母に持つ馬は、出世するケースが多いということになります。

 そして、かなり一本調子で、メリハリのある展開は苦手とします。
 スローよりもハイペース向き。ツボに嵌ると強いですが、そうでないと意外な脆さも見せます。

 ボールドルーラー系は、今日ご紹介した系統の他にもう1つ、シアトルスルーの大きな流れを生みます。
 この系統と、ボールドルーラーと特性が良く似たナスルーラ−ナシュアのラインがあります。

 シアトルスルーは、ボールドルーラー系の中では今最も活力のあるラインです。
 現役時代はアメリカの3冠に輝き、またアファームドとの史上初の3冠馬対決となったマールボロCを制し、
 70年代のアメリカ競馬においてセクレタリアトと双璧の存在でした。
 シアトルスルーは母の父がセントサイモン系ラウンドテーブルで、スタミナ、底力もありました。
 またナスルーラの4×4で、スピードの持続力にも優れていました。

 ボールドルーラー系の最大の特色であるスピード持続力=一定のスピードに乗った時に強さを発揮する=これを顕著に受け継いだシアトルスルーは、
 種牡馬としてもその能力を伝えて成功します。

 まず、セクレタリアトの肌との間に生まれたエーピーインディ。
 ボールドルーラーの4×3というクロスを持つこの馬は、我が国にヒシナイル、サヤカ、シンボリインディ(NHKマイルC)、トゥルーサーパス、アラタマインディを送り込みました。
 サヤカは道悪も巧かったですが、ボールドルーラーがより強調された分、スピードに寄って高速馬場に強い産駒を多く出しています。
 エーピーインディの子もすでに多く種牡馬になっており、来年以降、ステファンガットイーヴン、オールドトリエステの産駒が日本に大挙押し寄せる事になるはずです。
 また、エーピーインディとミスプロの肌との間に生まれたプルピットは、ピットファイターやハツラツといったダートの強豪を出しています。

 さて、シアトルスルーに話を戻すと、エーピーインディの他には、ダンツシアトル(宝塚記念)、タイキブリザード(安田記念)、
 ヒシナタリー、マチカネキンノホシらが外国産馬として日本に入ってきました。
 これらを見ても、ボールドルーラー系が一瞬の決め手に欠けて勝ち身に遅い代わりに、
 脚の使い方が長くて追ってバテず、速い馬場に強いということがお分かりになることでしょう。

 他のシアトルスルー産駒としては、スルーザゴールド、スルーザドラゴン(ローカルに強い)などが母の父として今も散見されますが、
 何と言ってもカポウティ-ボストンハーバーのラインがこの所目立ちますね。
 ボストンハーバーはすでにワンダフルデイズ、カフェボストニアン、ナイキアヘッドを出しています。
 極めつけのスプリンターラインで、芝の場合1400までは強い競馬をしても、マイルだと普通はパッタリ止まります。
 ボストンハーバー産駒のダイワバンディットが今年の新潟2歳Sを勝ち、芝のマイルでの中央初勝利となりましたが、これはハッキリ言って「マグレ」です。

 シアトルスルーの産駒は、ブルードメアサイアーとしても優秀です。
 日本でおなじみなのは、ボールドブライアンの母父でもあるセプティエムシエル、
 ファルブラヴの母父スルーピー、そしてシンボリクリスエスの母父ゴールドメリディアンなどがいます。
 ノーザン、ターントゥ、ミスプロ、どの系統とも和合性が高いようで、この血脈は今後も影響力を持ち続けていくと思います。
 こうしたボールドルーラー系の中でも日本にあまり入っていないラインは傍系血脈に似た効果を出すことがあり、大物輩出へ結びつく事があるようです。

 持続力の権化、ボールドルーラー系。一定のスピードをキープするという特徴を把握して、持ち味の生きる高速芝、時計のややかかるダートで狙ってみて下さい。


■ 代表種牡馬