■ 特徴
■ 解説
ノーザンダンサーの偉大さは数あるが、一流馬でなくても大成功する種牡馬を出したことも、そのひとつだった。
ダンジグもアメリカで2歳時にデビューし、2つのレコード勝ちを含めて3連勝したところで骨折。そこで競走生命を絶たれた無名種牡馬だった。
だが、ノーザンダンサーの卓越したスピード、瞬発力、仕上がりの良さ、勝負根性をそのまま忠実に伝えて大成功した。
ダンジグの種牡馬としての優秀さを、最初にアピールしたのは1984年のアメリカ2歳戦で大活躍したチーフズクラウン(BCジュヴェナイル)だった。
以後、ダンジグコネクション(ベルモントS)、グリーンデザート(ジュライC)、デインヒル(スプリントC)らが次々と活躍。
さらに後継種牡馬もデインヒルを筆頭に成功が相次いで、今日の世界的な繁栄を築き上げた。
日本でもダンジグ系は抜群の適性を示し、アグネスワールド(ジュライC)を筆頭に外国産馬の活躍が相次いだ。
大物の後継種牡馬も数多く輸入され、デインヒル、アジュディケーティングらが水準級以上の成績を残したが、デインヒルはむしろ遠征馬、外国産馬を通して大きな成果を上げた。
初期のダンジグ系は仕上がり早のスピード血統として栄え、日本や北米で重宝された。
しかし今日では、力強さとスタミナも備えた万能血脈へと変貌しつつある。
デインヒルがその典型で、晩年はノースライト(英ダービー)、ディラントーマス(凱旋門賞)といった欧州で活躍が相次ぎ、2004〜05年の2年連続で英リーディングサイヤーに輝いた。
またデインヒルはオーストラリアでも大成功。種牡馬ランキング上位10傑の半数を、デインヒル系が占める大変な繁栄ぶりを見せている。
「デインヒルとダンチヒ系の台頭」
世界中で活躍馬を出しているということは、
馬場の状態や馬場形態、その国の競馬のレベル、気候などを問わない繁殖成績だったわけですから、その能力の凄さが分かるでしょう。
日本では、第1回のNHKマイルCでツクバシンフォニーが2着、ゼネラリストが3着となったのが最初のインパクトではなかったでしょうか。
その後エアスマップ、アタラクシア、エアエミネム、フサイチソニック、ブレイクタイムなどの活躍馬を輩出し、
香港から来たフェアリーキングプローンは安田記念をさらっていきました。
そして、ファインモーションでその名は血統に興味のない人にまで浸透するところとなったのです。
よく指摘されることですが、デインヒルの血統組成の特徴は、「母の母」と「父の父」が兄妹であること。つまりナタルマの3×3という強度のクロスを持つことです。
しかし、それ以外のラインには、今では非主流派となった血が散りばめられているのが特徴。これが絶妙のバランスとなっているのでしょう。
しかし、その中にもリボー系ヒズマジェスティとか、フェアトライアル系ペティションなど、気性の難しい血が入っているので、
好調期間が短かったり、ムラだったりするケースが多いです。
また故障を繰り返す子も多いように思います。この辺は超近親配合の弊害かも。
配合面についてさらに目を向けると、活躍馬の多くは、その非主流ラインとのクロスを持つように持っていったケースが多くなっています。
例えばツクバシンフォニーはデインヒルの母父母の系統であるハイペリオンをクロスされていますし、
ゼネラリスト、エアエミネムはナタルマの父であるネイティヴダンサーをさらにクロスされています。
またエアスマップはデインヒルの母父と同系のリボー系とのクロス、ファインモーションはデインヒルの父母母のフェアトライアル系のクロスとなります。
ミッドタウンにもバックパサーとネアルコのクロスが出来ていますね。
競走能力面の特徴としては、とにかく高速馬場が得意。これはよく覚えておいてください。
しかも一本調子に飛ばせるような競馬をした時が強いです。荒れ芝が苦手ということはないんですが、全能力は出せないと考えた方が良いでしょう。
距離は基本的に2000mまでなら長短を問わないように思います。
ファインモーションやツクバシンフォニーのように、ステイヤー系とのクロスで作られた馬なら、2400m前後までは何とかなりそうですが。
もう1つ覚えておきたいのは、夏場に強いことです。そして、12月から2月の厳寒期は大きく割り引きとなります(新馬除く)。
中にはゲイリーフラッシュのような例外もありますが、これは特例として処理した方が良いです。
これらの特徴の内、
「一本調子の脚質」
「高速馬場が得意」
「夏場に強い」
などは、デインヒルの属するダンチヒ系全般に当てはまるように思います。
ダンチヒ系にはアジュディケーティング(ミデオンビット)、パインブラフ(テネシーガール)、グリーンデザート(シンコウフォレスト)、
ポリッシュパトリオット(スカイアンドリュウ、トウショウラッシュ)、ディジュール(シンコウスプレンダ)、ラシアンボンド(アンブラスモア)、
直子にはビコーペガサス、アグネスワールドなどがいます。
これらのイメージ、共通したものが浮かんでくるでしょう?
中にはピルサドスキーを出したポリッシュプレジデント、チェックメイト、タカラシャーディーを出したシャーディー、
2200m以上に強いチーフベアハート(マーブルチーフ)など、これらの傾向と違う種牡馬もいますが。
いずれにせよ、最後の例外を別にすると、ダンチヒ系はざっくりとした大まかなイメージが作りやすい系統です。
ここ数年、日本の芝コースはコース設定を頻繁に変えて、時計の出易い状態を維持することが多くなっています。
デインヒルを始めとするダンチヒ系の台頭は、おそらくこの事と無関係ではないと思われます。