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ノーザンダンサー系

■ 特徴


■ 解説

 第2次世界大戦後、急速に勢力を拡大したナスルーラ系は、1960年代になると全盛期を迎え、世界のサラブレッドの血統を支配するまでになった。
 しかし1970年代に入ると、同じネアルコ系でも傍流のニアークティックから出たノーザンダンサーに主流の座を奪い取られていく。
 ノーザンダンサーの2年目の産駒で、カナダ産のニジンスキーが英三冠馬に輝いたのは1970年のこと。
 伝統の名門血統を擁するイギリスにとっては衝撃的な出来事であったが、それはサラブレッド史上最大規模の血統革命のはじまりでもあった。
 ノーザンダンサー産駒は伝統の大レースが多い2400mでことのほか強かった。
 1970年代のなかばには早くも「世界最高クラスの種牡馬」との評価を得て、ニジンスキー以後も
 ザミンストレル、セクレト、エルグランセニョール、サドラーズウェルズなど一流馬を数限りなく送り出していった。
 後継種牡馬の遺伝力がこれまた素晴らしく、ニジンスキー、リファール、ヌレイエフ、ダンジグ、サドラーズウェルズらが次々と大成功を収め、
 猛スピードで世界のサラブレッドの血統を塗り替えていった。

 ノーザンダンサーの何がこれほどまで世界侵略を可能にしたのか。その最大の秘密は、遺伝力もさることながら、優れた順応性、忍耐強さにあったといえるだろう。
 生まれ育ったカナダの牧場は、冬は氷点下30度前後まで冷え込み、夏は高温多湿で蒸し暑く、神経をいらつかせるハエやアブに悩まされた。
 その解決策として夜間放牧されていたが、日中はせまい馬房のなかに閉じ込められっぱなしだった。
 忍耐強さ、頑健さ、優れた順応性がなければ、とても生き残れない環境だったのである。芝、ダート、重を問わず、どんな馬場にも適応力があった。
 これもまた劣悪な環境下で培われたものだろう。仕上がりの早さ、成長力、スピード、瞬発力、スタミナ、無類の闘争心、精神的な強さ、忍耐力、そして順応性。
 ノーザンダンサーはすべてに優れた資質を持っていた。それを子孫がさまざまなかたちで受け継ぎ、
 万能血脈、スピード血脈、ステイヤー血脈など多種多様な独自の支流父系を、世界中に築き上げていったのである。


 ナスルーラ系をひとことで表現すると「軽さ」ですが、ノーザンダンサー系は反対に「重さ」「パワー」の血脈。
 世界の競馬レベルを70年代にワンランクアップさせた、今世紀最大の種牡馬系と言える。

 たくましさ、タフさ、馬力。こうした血がボトムに入っていると、大舞台に強くなる。
 反対に、あまりにもスピードにかけて出世しないまま終わってしまうケースもたくさんあるのは事実。

 ノーザンダンサー系も、系統によってさまざまな特徴がある。


■ 小回りだからこそ開花する才能

 2008年からのサンデーサイレンス系の芝1800mにおけるコース別成績を調べると、勝率、連対率、複勝率、複勝回収率のいずれの数値も福島芝1800mが最も悪い。
 対照的に父ノーザンダンサー系の芝1800mにおけるコース別成績を調べると、勝率、複勝回収率が最も高いのは福島芝1800mである。

 阪神、東京、京都の主場3場の芝1800mは、直線コースが長く、コーナーも2つ。対照的に福島の芝1800mはコーナーが4つで直線は短い。
 このコースレイアウトの違いも、血統のバイアスに大きな変化が出る要因といえそうだ。
 
 また、今の中央競馬の芝競走では、阪神、東京、京都の主場3場の芝1800mで要求されるような能力が問われるレースが多い。
 つまり、日本では最もスタンダートなSS系が力を発揮しやすいコースとは真逆ともいえる能力が問われやすい福島芝1800mは、
 日本では主流から少しズレたノーザンダンサー系が走りやすいわけだ。

 ただし、競走である以上、弱い馬(潜在能力のない馬)は、上位に走ることはできない。
 ノーザンダンサー系のなかでも、潜在能力を秘めた可能性の高い馬を狙う方が期待値は上がる。
 父ノーザンダンサー系の中から、より潜在能力を秘めた馬を手軽に見つけるのには、母父を見る方法も効果的だ。
 2008年の4月12日から今年の7月12日までの福島芝1800mにて、父ノーザンダンサー系×母父SSの配合馬の成績は、
 32頭中10頭が馬券になり、複勝率は31%、複勝回収率も200%を超える(10倍以上の高配当は10倍にして計算しても180%を超える)。

 また、出走数は少ないものの、母父フジキセキや母父ダンスインザダークといったSS2世種牡馬が母父の馬も結果を出している。
 結局はSSの血が頼りになる話になってしまうのだが、福島芝1800mは、スタンダードコースとはちょっと違った味付けのSSを狙うコースと考えたい。
 日本の芝競馬は脚をタメて、綺麗にコーナーを回って直線でのスピードを競うレースが多い。
 だが、位置を取りに行って、直線での粘りを競う小回りの競馬もスリリングなものである。
 たしかに、小回り競馬は後方にいる馬は不利を受けやすいが、「不利を受けにくい位置に早めに動ける」ことも、大事な能力のひとつであろう。


■ 小系統