■ 特徴
■ 解説
1970年、バーラム以来35年ぶりのイギリス三冠馬となったニジンスキーは、種牡馬としても歴史的な成功を収め、リファールとともに初期のノーザンダンサー系の拡大発展に大きく貢献した。三冠馬らしく万能性に富み、スピード、スタミナに優れ、また仕上がりの早さ、成長力も伝えて一世を風靡した。1980年代に入って以降、世界の長距離はスピード化が進み、優勝タイムが次々と短縮されたが、その原動力となったのもニジンスキーで、ことスタミナという点では父のノーザンダンサーよりもニジンスキーのほうが優れていた。長距離を中距離なみのスピードで走りぬき、それでいてマイルの決め手を発揮する“新種のステイヤー血統”の猛威に、従来のスタミナに富むだけのステイヤー父系は、勢力を失っていった。日本でもニジンスキー〜マルゼンスキーの血を引く馬たちから、菊花賞をレコード勝ちしたライスシャワーを筆頭に、数多くの名ステイヤーが誕生している。ニジンスキーの後継種牡馬もグリーンダンサー、カーリアンらが成功して父系を発展させた。カーリアンからはジェネラス(英ダービー、輸入種牡馬)が出ている。ただニジンスキー系の名ステイヤーは、多くが種牡馬としては不振で、それが衰退を招くことになった。今日ではサドラーズウェルズ系に主流の座を明け渡してしまっている。日本の競馬にもニジンスキー系は抜群の適性を示し、マルゼンスキーを筆頭にラッキーソブリン、ヤマニンスキー、ノーアテンション、フサイチコンコルドらの成功が相次いだ。しかし現在では、日本でもかつての勢いを失っている。
ニジンスキーラインと言えばどんな種牡馬がいるか、参考までに主な所を列挙しておきましょう。
ニジンスキーライン=マルゼンスキー、カーリアン、ジェネラス、フサイチコンコルド、テンビー、シアトルダンサー、ロイヤルアカデミー、ラムタラ、ラシアンルーブル、ネーハイシーザー、フレイズ、グリーンダンサー、ノーアンテンション、ラッキーソブリン、etc.etc.・・・・。
〔1〕瞬発力勝負に弱い
あまりにもスローで、正味上がり3Fだけの競馬になるようなレースにはとにかく弱いです。
平均的に速いペースで進んでの凌ぎ合い、あるいはスローでもラップが上がり始める地点がゴール前1000mあたりからというキツイ展開になると、逆に強さを発揮します。
典型的な持続力型血統。これらの適性から、高速決着となりやすい夏のローカル芝は得意となるのです。
〔2〕芝道悪は得意な馬が多い
前記のことと一見矛盾するようですが、芝の道悪競馬は馬力を消耗するタフなもので、
そこでニジンスキー最大の長所であるパワーが強調されてくるということでしょう。
〔3〕距離は意外と短めに振れる
ステイヤーのイメージのあるニジンスキーラインですが、意外とマイル前後から二千あたりまでをベストとします。
これも前述の通り、ある程度速い流れにならないと力を出せない馬が多いからです。
中にはそうとも言い切れないケースもありますが、概して二千以下がベストです。あのラムタラですら、ここまでの代表産駒はメイショウラムセスですからね。
勘違いしないで頂きたいのは、パワーとスタミナは別物ということです。これは人間の場合でも当てはまることで、特に違和感はないですよね。
〔4〕マルゼンスキーについて
ニジンスキーラインの中で、最も影響力というか、サンプルの多いのはマルゼンスキーの血を受けた馬だと思います。
直仔はもう目にすることも稀になりましたが、母の父としては、必ずどのレースにも1頭は送り込んでいると言ってもいいくらいですね。
母父マルゼンスキーは、底力を増強するため、基本的には配合面で見てプラスに出ることが多いと思います。
ただ、母父マルゼンスキーは持続力と言うよりも、鋭さを削ぐというマイナス面が出てしまう=勝ちきれないきらいがあり、その点は頭に入れておくべきでしょう。
特に父サンデーサイレンスと組むと、クラシックでは2着続きだったロイヤルタッチを筆頭に、未勝利脱出に8戦を要したメジロベイリー、
そして条件級でもヒシマジェスティ、ジョウノヴィーナス、ウインラディウス、さらに3歳のトップクラスではサクラプレジデントと、勝ち味に遅い馬のオンパレードとなります。
つまり、軸として過信してはいけない配合です。
なおスペシャルウィークは上記の馬たちとは体型がまるで違い、
明らかに母母父のセントクレスピンが強く出ています(セントクレスピン直仔を見ている世代の私にとっては大変懐かしい馬体です)。この馬は例外と考えるべきです。
以上のような特徴を覚えておけば、ニジンスキー一族はあまり傾向から外れる馬を出さない分扱いやすいと言えるのではないでしょうか。
「タフさ、パワー」これがキーワードだと思います。
■ 代表種牡馬