トップ > コース > 新潟競馬場 > 新潟芝1000m

新潟芝1000m

新潟競馬場 芝1000メートル(直線コース)

■ 特徴

■ チェックポイント

モデル種牡馬 サクラバクシンオー スウェプトオーヴァーボード マイネルラヴ スキャン ウォーニング スピニングワールド
危険種牡馬
枠有利不利 内枠不利・外枠有利
脚質有利不利
直結コース
非直結コース
モデル騎手 柴田善臣
重賞 アイビスサマーダッシュ

■ コースの特徴

 日本で唯一の一直線のコース。スタート地点はホームストレッチの一番左端。

 最大の特徴と言えば、外枠が非常に有利であること。
 特に開催が進み、内回りと外回りを共有する部分の芝に入った場合は、絶対に外の方が芝状態が良好。
 したがって、枠なりに真っすぐ走れば最短の距離でゴールすることができる外枠が有利というわけだ。
 その他の枠の馬でも、スタート後に外へ外へ進路を取るため、馬群がスタンド前のラチ沿いに押し寄せてくる。

 フルゲートはAコース時が18頭、Bコース時が16頭。古馬1000万クラスの平均ラップ(2F−3F)と勝ち時計(良馬場)は、22.0−33.0=55.0。
 基本的に最初の1Fとラスト1Fが11秒台のラップを刻み、2〜4Fは10秒台のラップで推移する。
 脚質的には逃げ、先行馬の好走が最も多いが、差し馬も十分対応可能。わずか1000mの勝負といっても、全部トップスピードでは走れないので、しっかりした末脚を持つ馬は逆に有利。
 他場の1200mとは少し趣が異なり、小回りコースが苦手なタイプの馬が浮上してくる。

 種牡馬成績はサクラバクシンオーがトップ。続くのがミスタープロスペクター系のスウェプトオーヴァーボード、マイネルラヴ、スキャン。
 同系は回収率が高く、その他の馬にも注目したい。あとはパラダイスクリーク、フレンチデピュティといった芝・ダート兼用血統が強いのも特徴。
 実際、ダートから転戦してきた逃げ、先行馬が穴をあけるケースが目立つ。

 4コーナーから引き込まれたポケット地点からスタート。
 逃げ馬、先行馬の活躍が目立つという点から“スピード”が無ければかなり苦しいコース、距離と言える。1、2着ともに逃げ・先行勢が大勢を占めている。
 差し馬の率はかなり少ない。しかし、1着に限ってみると意外にも“追い込み”が決まっている。
 これは前半からハイペースになったときに、終い一気の戦法がハマると言っていいのかもしれない。
 枠は1着に関しては各枠に差は無く、2着は内(1〜3枠)がややリード。3着は外(7・8枠)と中(4〜6枠)が内をリードといった感じ。
 ただ、総じてスタートでスピードのある馬が内枠にいても外へ出して結果を出している傾向があり、行ける馬が外を引けばもちろん有利と言っていいだろう。
 とにかく、馬場関係無く外目を走る馬が有利な距離だ。(2004年7月17日〜2004年9月5日のデータを参考)


■ 内枠不利

 新潟の名物レースといえば芝1000m。直線のみの激しい叩き合いは、他にはない光景。
 同コースの予想をする上で、大きな鍵を握るのが枠順。
 スタート直後から大半の馬が外ラチ沿いに殺到するシーンが多いことからも、「新潟芝1000mは外枠有利」という認識が競馬界の常識になっている。
 そこで、過去のデータを基に、その点を検証していきたい。

 データは、2001年以降の3歳以上500万クラス以上の全レースを参考。調査については、JRA-VAN Data Lab.とTarget frontier JVを利用した。

■表1 新潟芝1000mの枠順別成績(2001年〜2005年8月7日 ※3歳以上500万クラス以上)

1着 2着 3着 着外 合計 勝率 連対率 複勝率 単回収率 複回収率
1枠 1 4 3 101 109 0.90% 4.60% 7.30% 1% 20%
2枠 1 7 6 101 115 0.90% 7.00% 12.20% 3% 76%
3枠 3 10 10 92 115 2.60% 11.30% 20.00% 10% 62%
4枠 8 5 7 100 120 6.70% 10.80% 16.70% 76% 69%
5枠 10 12 6 97 125 8.00% 17.60% 22.40% 35% 83%
6枠 8 11 5 104 128 6.30% 14.80% 18.80% 33% 48%
7枠 15 11 11 112 149 10.10% 17.40% 24.80% 211% 114%
8枠 20 7 18 107 152 13.20% 17.80% 29.60% 125% 149%

 表1は2001年以降の新潟芝1000mの枠順別の成績(3歳以上500万クラス以上)を集計したものである。
 確かに一般的に言われているように大外の8枠の成績が最も良く、勝率・連対率・複勝率すべてにおいてトップの数字をマークしている。
 しかし、連対率で見ると、2位の5枠との差はわずか0.2%。
 7枠の成績もいいが、外目の枠の成績だけが突出していいというわけではない。
 むしろ、1枠と2枠だけがガクンと成績が落ちているのが目立つ。
 よって、勝率・連対率・複勝率ベースで見た場合は、新潟芝1000mは外枠が有利と言うよりも「内枠が不利」と言った方がいいかもしれない。

 しかしながら、「外枠有利」という格言も決して間違っているとは言えない。
 それは表1の回収率ベースの成績を見ればわかる。
 7枠と8枠の単・複の回収率はともに100%オーバーと、他の枠に比べ群を抜いた数字。
 単純に外目の枠を引いた全馬の単勝・複勝を買い続けていれば儲かるという意味だ。
 それは極端な話で実際の馬券作戦としては成り立ちにくいが、それだけ7枠と8枠の穴馬が激走しやすいということ。
 新潟芝1000mの特徴を良く表わしているデータである。

■表2 新潟芝1000mの脚質別成績(2001年〜2005年8月7日 ※3歳以上500万クラス以上)

1着 2着 3着 着外 合計 勝率 連対率 複勝率
逃げ 21 19 14 74 128 16.40% 31.30% 42.20%
先行 18 24 11 133 186 9.70% 22.60% 28.50%
中団 17 20 28 339 404 4.20% 9.20% 16.10%
後方 10 4 13 266 293 3.40% 4.80% 9.20%


■表3 新潟芝1000mの枠順別脚質連対率
(2001年〜2005年8月7日 ※3歳以上500万クラス以上)

1枠 2枠 3枠 4枠 5枠 6枠 7枠 8枠
逃げ 11.80% 18.20% 36.40% 35.70% 29.40% 45.00% 43.80% 27.30%
先行 5.30% 15.40% 17.40% 25.00% 43.50% 22.20% 30.00% 19.40%
中団 5.30% 4.40% 10.00% 4.50% 6.10% 8.50% 10.20% 17.90%
後方 6.50% 0.00% 0.00% 4.30% 11.40% 3.20% 9.30% 9.40%

 次にもう一つ、新潟芝1000mの本質を探るデータをご紹介しよう。表2は新潟芝1000mの脚質別成績を集計したもの。
 そして、表3は同コースの枠順別脚質連対率を集計したものだ。

 基本的に短距離戦は、新潟芝1000mに限らず前で競馬ができる馬の方が有利。
 逃げ・先行馬が良績を収めているのが普通だ。新潟芝1000mは先手必勝で、勝率・連対率・複勝率ともに逃げ馬の成績が一番いい。
 ただし、この数字自体は特筆すべきものではない。
 逃げ馬の成績が抜群にいいわけではなく、他場のスプリント戦(1000〜1200m)にはもっと特徴的な(逃げ馬有利)のコースがある。

 そこで、注目したいのは表3のデータ。枠順別の脚質連対率を見ると面白いことがわかる。
 表1で成績が良かった8枠は、逃げ馬の連対率はそれほど高くない。
 一方で、中団からの差し馬の連対率が優秀で、表2の中団(の連対率)9.2%に比べて大きく上回っている。
 7枠、6枠は全体の平均にならった傾向。逃げ・先行馬が圧倒的に強い。
 そして、特徴的なのが5枠の成績。先行馬の連対率がトップで43.5%をマークしている。

 これはあくまでも推測だが、5枠がこのような結果になる理由は、なんとなくわかる。
 同コースのレースの特徴として、スタート直後から外ラチめがけてダッシュを利かせる馬が多いが、
 5枠あたりは枠順的にテンに行きやすい外目の枠の馬を制して強引にハナを切るよりも、外の逃げ馬を見ながら好位に位置し、
 ジワジワ内ラチ沿いにコース取りをした方が競馬はしやすいのではないだろうか。
 右隣の6、7枠は逃げ馬の連対率が高いので、自然とそのような形になる可能性が高そうだ。
 4枠、3枠は逃げ馬の連対率は平均以上。テンが速い馬ならば、それほど大きな枠順の不利は受けないようだ。
 2枠、1枠も逃げられないと厳しいが、そもそも全般的に成績が悪い。
 過去のアイビスサマーダッシュでは2回(01年1着メジロダーリング、03年3着トーセンオリオン)2枠の馬が馬券圏内に入っているが、内枠(特に多頭数)は不利であることは否めない。

【結論】

 「外枠が有利」と定説化されている新潟芝1000mだが、勝率・連対率・複勝率ベースで見ると、そうとも言えない。
 外枠だけが突出していい成績を収めているわけではないからだ。
 むしろ、「内枠(1枠、2枠)が不利」と言った方がいいだろう。
 ただし、回収率ベースで見た場合は、外枠(7枠、8枠)が抜群の成績を残している。
 人気薄の馬の激走は外枠の馬であることが多い。そういう意味では、新潟芝1000mはやはり外枠が狙い目のコースと言える。

 特に8枠は中団からの差し・追い込み馬も健闘。逃げ・先行馬だけでなく、幅広い脚質の馬に好走の可能性を探る必要がある。
 6、7枠は逃げ馬の連対率が高く、5枠は逃げ馬よりも先行馬の方が連対率が高い。
 5枠は表1での成績もマズマズで注意が必要。
 真ん中目の枠からジワっと先行できる馬の好走をイメージできるようにしたい。
 4枠、3枠は先行力がある強い馬ならば、それほど割引は必要なさそう。2枠、1枠はハッキリ不利と言える。


■ 新潟芝1000mの2面性

 JRAの芝のレースコースはコーナー2つで直線が長く、1600-1800mで行われるコースがスタンダードだ。だからサンプルも多く取りやすい。

 しかし、漫然と似たようなレースを見続けるよりも、1日1レースほどしか行われない、独特のコースを年間通じて観察し続ける方が興味深い傾向を見つけることもできる。

 今週行われる天皇賞・春も、独特の距離のレースに分類されるレースではある。だが、古馬GIの3200mという条件は、年に1回しかない。傾向を見つけ難いし、仮に見つけた気になっても来年まで使えない。

 そこで、同じ独特のコースでも、今週から開幕する新潟芝1000mに注目したい。

 新潟の芝1000mはすべて直線で行われる。JRAでは最も短い距離で行われると同時に最も長い直線距離で行われる独特のコースだ。

 基本的に最後の直線の長いコースほど、マギレは起こり難い。実力馬が力を発揮しやすい傾向にある。したがって、直線が1000mの新潟芝1000mは実力馬が力を発揮しやすい。

 昨年の新潟芝1000mも1人気の勝率は33%で複勝率は63%。単勝、複勝回収率はともに88%で水準以上の好成績だ。

 ただし、新潟芝1000mは、すべて直線というシチュエーションがあまりにも独特すぎる。

 独特すぎることによって、他のコースでは能力が眠っていた人気薄の馬が、このコースで突然本来持っている実力、潜在能力を発揮するケースも多いのだ。

 昨年の当コースも8人気以下の馬は、単勝回収率が152%で複勝回収率も105%。近走凡走している、人気薄が走りやすいコースといえる。

 つまり、新潟芝1000mはスピード能力が1枚抜けている馬は確実に力を発揮しやすいコースであると同時に、近走凡走続きの2桁人気馬が突然能力を発揮しやすいコースでもある2面性を持ち合わせているのだ。

 だとすれば、1人気から流して、8人気以下の人気薄が激走するのを待つ馬券を買うのが効果的なんじゃないか…という簡単な話はそうそう、うまくいかないものだが、このコースでは案外うまくいっていた。

 昨年は1人気から8人気以下に流す馬連の馬券はレース的中率が27%で、回収率も220%を記録していた。

 同様に1人気からワイドで8人気以下に流す馬券も、レース的中率は52%、複勝回収率は148%を記録する。(しかも的中した17レース中、トリガミは2レースだけ)

 と、ここで話を終わらせてしまえば、なんとなく美味そうな話にも聞こえるが、実は08年は1人気から8人気以下に流す馬連は、レース的中率が10%で回収率は49%と大幅なマイナスとなってしまう。しかし、ワイドはレース的中率は41%で回収率も224%を記録している。

 単純に人気の組み合わせだけで、今後も同じような結果を期待できるかは定かではないが、「実績が1枚抜けた実力馬の複勝率の高さと、凡走続きの馬が突然3着以内に走る」2面性を持つ構造は今年も変わらないのではないか。

 そして、近走凡走続きの馬でも、突然激走する馬は素質があることは間違いない。その素質を見抜くには、やはり「血統」が大きなヒントになる。

 たとえば、新潟芝1000mにて、父ミスプロ系で当日8人気以下の馬は、08年、09年の2年間で単勝回収率302%、複勝回収率144%を記録していた。

 ダート指向の前向きなタイプが多いのがミスプロ系の特徴だから、ダート指向の強い前向きな血統馬が一変しやすい傾向にあるとも考えられる。


続・直線競馬1

 直線競馬の話を以前書いたが、その後、どうだったのだろう?

 直線競馬は直線であるが故に、展開に左右され、馬場にもっとも左右される。だからこそ、直線を語ることは、「馬場」ということの意味を我々が考えるのに、非常によい契機を与えてくれるのだ。

 まず、大外枠が絶対的に有利でもなくなったということを以前書いたが、これはどうなったか?

 今年に入って直線競馬は14レース行なわれ(8月8日現在)、8枠で勝ったのは2頭。8枠は出走馬が多く(フルゲートなら3頭が8枠に入る)、また勝った2頭はともに2番人気と人気馬だったことを考えると、特に良くも悪くもない平凡な数字だった。

 ただ、微妙にこれまでとその内容は違った。

 というのも、以前にも増して、大外が圧倒的に伸びるということはなくなったのだ。どこの場所も伸びるように、よりフラットになる細工が馬場に施されていた。

 それなら、さらに大外は不利になるのでは?と考える人も多いだろう。

 だが答えはノーだ。これが競馬の面白いところである。

 以前は各馬が大外に殺到し、しかしその大外が特に伸びない。したがって、大外枠は前が塞がるリスクがあるという話だった。

 ところが、今年は中程がよく伸びることが騎手に認知され、外がパッカリ開くのだ。しかも、その外に出す必要はない。以前なら7枠の馬が走っていた一番伸びる場所(今はそうでもないのだが)に、直線で詰まらずにスムーズに出せるのである。

 今年8枠で勝ったカノヤザクラ、ゼットカークがともに距離短縮の差し馬だったことは決して偶然ではない。大外の差し馬が馬場を選びながら走れるからだ。逆に外の逃げ、先行馬は序盤に外に来る相手と競らなければならない。したがって、差し馬がより有利なのだ。

 これが馬場の変化と、それに対応する騎手の心理により起こる、競馬の怖さである。

 では、「内枠は牝馬」というのはどうだったか?それは来週に続けたいと思う。
続・直線競馬2

 2枠より内で3着以内に入ったのは、フラミニアンウェイ(8月3日)、アポロドルチェ(7月20日)、コスモイライザ(5月11日)、セレスブルック(5月3日)の4頭だけ。ところがそのうちの2頭は牡馬だった。フラット化の影響がここにも見えるが、アポロドルチェは混合戦の3歳馬で53キロ、セレスブルックはハンデ戦で2、3着の牝馬より軽い52キロだった。つまり牝馬と同じような斤量のアドバンテージを貰っていたのだ。ちなみに牝馬のフラミニアンウェイは3歳牝馬で52キロ、コスモイライザは減量牝馬で52キロ。内で走った4頭は、ともに他の出走馬より相対的に軽かった。フラット化でも、特殊要因で斤量の軽い馬、そして牝馬というのが、以前ほどではないが、内枠の基本線であることに変わりない。

 では、「直線競馬は飽きる」という話はどうなったのか?

 これは、馬場とはあまり関係ないので、今年もそのままの形が継承された。

 例えば8月3日の500万。このレースには2番人気でファッシオドンナという馬が出ていた。減量騎手起用で52キロ。軽量は直線競馬の鉄則だし、有利な中枠。しかも直線競馬は2度走って1着、3着と抜群の相性。競馬常識ではこの馬だろう。私もこれだけ物理的に有利なら本命にとも思ったが、直線競馬を1年で2回使っているのが気になった。

 少し飽きている。そこで敢えて不利とされる1番枠のフラミニンアウェイを本命にした。内枠で人気が落ちると判断したからだ。直線競馬も2回目でまだ鮮度がある。結果、2着に連対し、ファッシオドンナは凡走した。ただ、レース中は焦った。1番枠のフラミニンアウェイが斜めに走って大外まで持ち出したのだ。「そんなロスをしてまで行くほど外は伸びないぞ!それで中を開けたら、外の差し馬に中を突かれるぞ!」と心の中で叫びながら見ていたのだが、案の定、断然人気の降級馬で7枠を引いたシャペロンルージュが、外枠からフラミニンアウェイが斜めに走って大外に行ったために、ぽっかり開いた中を差して1着に走った。

 これが今年何度も見た、外枠の中差しである。スタート部分は外が有利だが、ラストはそれほどでもない。そのために、外枠の中差しがもっとも決まるのだ。

 また、アイビスサマーDでは、1〜4着まで直線競馬未経験馬だった。昨年3着のクーヴェルチュールは3番人気5着、直線競馬の疾風S勝ちで穴人気になったスパインは15着に惨敗している。レベルが高ければ高いほど、飽きていない馬が有利というのが競馬の基本形でもある。その疾風Sも、昨年のアイビスサマーD2着馬で、直線競馬は4戦3連対という戦績のマリンフェスタは、2番人気で6着に敗れてしまったのだった。