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エンプレス杯(G2)

【エンプレス杯・男の解の公式】
牝馬戦で稀有な2100mというのがキー。 最適馬を狙え!
モデル馬=コスモプリズム

■ 経緯

◆歴史と伝統の牝馬重賞

1955年からスタートしたエンプレス杯は今年で52回目を迎える歴史ある重賞レース。
第1回から37回までは、川崎競馬出身でJRAに移籍後、1951年の優駿牝馬を制したキヨフジを称しキヨフジ記念として施行されていた。
さらに、1998年から現行のダート2100mで実施されている。

交流元年となった1995年、JRAから参戦したホクトベガが2着以下に大差を付けて圧勝すると、翌96年も連勝。
その後も、97年、98年はシルクフェニックス、99年、2000年はファストフレンドが連覇を果たしている。ここ2年はプルザトリガー、ローレルアンジュと、地方勢が連勝を飾っている。

競馬場のコースの奥行きが無い構造であり、向正面や3コーナーなどの仕掛け所がスタンドから一目瞭然に見える。
その為、仕掛けやハンドリングについて騎手の巧拙がはっきりと観客の目にも判るという特徴がある。
またコーナーが極めてきつく人気馬であっても勝利させるには高い騎乗技術が必要であり、馬の能力と共に騎手の腕が問われる競馬場である。

「牝馬の川崎」という異名がある。
これは大レースに牝馬限定戦が多いことと、サブタイトルを含めてレース名に名を残す3頭(キヨフジ・ロジータ・ホクトベガ)がいずれも牝馬であることに由来する。
毎年2月下旬ごろに行われるサラブレッド系満4歳以上の女の戦い(昼間)で、「エンプレス」とは「女帝」の意。中央競馬所属馬や他地区地方競馬所属馬も参戦する。

■ ステップ

1月 TCK女王盃 大井1800m 12年ハルサンサン-カラフルデイズ-プレシャスジェムズ
2月 エンプレス杯 川崎2100m 11年ラヴェリータ-ブラボーデイジー-ミラクルレジェンド
4月 マリーンC 船橋1600m 11年中止
6月 関東オークス3歳 川崎2100m 11年カラフルデイズ-ピュアオパール-マニエリスム
7月 スパーキングLC 川崎1600m 11年ラヴェリータ-トーホウドルチェ-アイアムアクトレス
9月 レディスプレ 大井1800m 11年ミラクルレジェンド-ラヴェリータ-エーシンクールディ
10月 JBCレディスC 大井1800m 11年ミラクルレジェンド-ラヴェリータ-カラフルデイズ
10月 エーデルワイス賞2歳 門別1200m 11年シェアースマイル-シーキングブレーヴ-ロクイチスマイル
12月 クイーン賞ハンデ 船橋1200m 11年クラーベセクレタ-プレシャスジェムズ-カラフルデイズ

■ 波乱度

年度 馬場 1着 2着 3着 単勝 3連単 勝負
結果
人気 人気 人気
2011 不良 ラヴェリータ 1 ブラボーデイジー 3 ミラクルレジェンド 2 1.8 12.3
2010 ブラボーデイジー 3 ラヴェリータ 1 コスモプリズム 5 7.5 94.4
2009 不良 ニシノナースコール 3 シスターエレキング 6 ヤマトマリオン 1 8.8 1901.8
2008
2007 トーセンジョウオー フサイチパンドラ ×
2006 ローレルアンジュ レマーズガール
2005 プルザトリガー グラッブユアハート
2004 レマーズガール グラッブユアハート
2003 ジーナフォンテン ビーポジティブ
2002 オンワードセイント トミケンブライト
2001 ファストフレンド アブクマレディー
2000 ファストフレンド アブクマレディー
1999 シルクフェニックス メジロランバダ
1998 シルクフェニックス スターセレッソ
1997 ホクトベガ スピードアイリス

■ ラップ

年度 馬場 1着 2着 3着 タイム ラップ
通過順 上3F 通過順 上3F 通過順 上3F
2011 不良 ラヴェリータ 5-6-6-6-6-6 36.6 ブラボーデイジー 1-1-1-1-1-1 37.2 ミラクルレジェンド 6-5-5-5-5-3 36.8 2.15.3 6.9 10.6 12.1 14.6 13.3 14.3 14.4 12.0 12.1 13.0 12.0
2010 ブラボーデイジー 3-3-3-3-1-1 40.0 ラヴェリータ 5-5-4-5-2-1 40.1 コスモプリズム 1-1-1-1-5-5 40.0 2.14.5 6.8 11.0 11.6 12.6 13.1 13.2 14.1 12.1 13.2 13.4 13.4
2009 不良 ニシノナースコール 7-8-7-7-6-5 38.1 シスターエレキング 1-1-1-1-1-1 39.2 ヤマトマリオン 5-7-8-8-5-2 38.6 2.15.3 7.1 11.3 12.5 13.2 13.2 13.5 13.9 11.8 12.6 13.2 13.0
2008
2007 トーセンジョウオー フサイチパンドラ
2006 ローレルアンジュ レマーズガール 2:15.0
2005 プルザトリガー グラッブユアハート 2:15.2
2004 レマーズガール グラッブユアハート 2:16.7
2003 ジーナフォンテン ビーポジティブ 2:16.3
2002 オンワードセイント トミケンブライト 2:15.1
2001 ファストフレンド アブクマレディー 2:15.1
2000 ファストフレンド アブクマレディー 2:14.2
1999 シルクフェニックス メジロランバダ 2:16.3
1998 シルクフェニックス スターセレッソ 2:08.8
1997 ホクトベガ スピードアイリス 2:06.7

■ 臨戦過程

年度 1着 2着 3着
前走 前走 前走
2011 ラヴェリータ TCK女王盃JpnIII 大井ダ1800m 1着 ブラボーデイジー TCK女王盃JpnIII 大井ダ1800m 3着 ミラクルレジェンド TCK女王盃JpnIII 大井ダ1800m 2着
2010 ブラボーデイジー 京都牝馬SGIII 京都芝1600m 7着 ラヴェリータ 兵庫GTJpnIII 園田ダ1400m 3着 コスモプリズム TCK女王盃JpnIII 大井ダ1800m 3着
2009 ニシノナースコール 根岸SGIII 東京ダ1400m 10着 シスターエレキング TCK女王盃JpnIII 大井ダ1800m 13着 ヤマトマリオン TCK女王盃JpnIII 大井ダ1800m 4着
2008
2007 トーセンジョウオー フサイチパンドラ
2006 ローレルアンジュ レマーズガール
2005 プルザトリガー グラッブユアハート
2004 レマーズガール グラッブユアハート
2003 ジーナフォンテン ビーポジティブ
2002 オンワードセイント トミケンブライト
2001 ファストフレンド アブクマレディー
2000 ファストフレンド アブクマレディー
1999 シルクフェニックス メジロランバダ
1998 シルクフェニックス スターセレッソ
1997 ホクトベガ スピードアイリス

■ 馬キャラ

年度 馬場 1着 2着 3着
性齢 母父 性齢 母父 性齢 母父
2011 不良 ラヴェリータ 牝5 Unbridled's Song Gone West ブラボーデイジー 牝6 クロフネ サンデーサイレンス ミラクルレジェンド 牝4 フジキセキ Awesome Again
2010 ブラボーデイジー 牝5 クロフネ サンデーサイレンス ラヴェリータ 牝4 Unbridled's Song Gone West コスモプリズム 牝4 マンハッタンカフェ Unbridled
2009 不良 ニシノナースコール 牝7 ブライアンズタイム ノーザンテースト シスターエレキング 牝4 アグネスデジタル アンバーシヤダイ ヤマトマリオン 牝6 オペラハウス アンバーシヤダイ
2008
2007 トーセンジョウオー
2006 ローレルアンジュ レマーズガール
2005 プルザトリガー グラッブユアハート
2004 レマーズガール グラッブユアハート
2003 ジーナフォンテン ビーポジティブ
2002 オンワードセイント トミケンブライト
2001 ファストフレンド アブクマレディー
2000 ファストフレンド アブクマレディー
1999 シルクフェニックス メジロランバダ
1998 シルクフェニックス スターセレッソ
1997 ホクトベガ スピードアイリス

■ 2011年回顧

馬名
1 7 9 ラヴェリータ
2 1 1 ブラボーデイジー
3 3 3 ミラクルレジェンド
4 4 4 プレシャスジェムズ
5 8 12 ネオグラティア
6 6 8 プリマビスティー
7 2 2 コスモプリズム
8 7 10 トウホクビジン
9 5 5 タッチブライト
10 5 6 アクセルファイヤー
11 6 7 コロニアルペガサス
12 8 11 リロ

ポンと飛び出した吉田隼プレシャスジェムズが逃げる体勢でしたが、内枠からハナを主張したのが北村友ブラボーデイジー。
1周目ホームストレッチではスローダウンして溜め逃げの形。
中団の内に入ったのが武豊ラヴェリータ。
いつでも動ける外目に回したのがCデムーロのミラクルレジェンド。
昨年に比べるとかなり緩やかな流れ。
実質残り4ハロンの瞬発力勝負。
4コーナーでブラボーデイジーに並びかけるプレシャスジェムズ、外から差を詰めるミラクルレジェンド、内を突いたラヴェリータ。
人気のJRA勢の争いになりましたが、粘るブラボーデイジーを半馬身捕らえて、ラヴェリータが貫禄を示しました。

【上位馬の寸評】
1着 ラヴェリータ
TCK女王盃は初めての大井コースながら、上がり3ハロンでメンバー最速の脚を使い勝利を収めた同馬。
今回は57→56キロと斤量有利。得意の川崎コースなら当然首位候補とみていました。この日はマイナス3キロの515キロ。
大人しい馬で、それほど良く見せる方ではありませんが、ここ一連の状態をキープと判断。
レースは武豊騎手が気合をつけて外5番手から。
1周目ホームストレッチではポジションを内に。
2周目残り4ハロンからペースアップした際に、やや反応が鈍く置かれ気味。
黄信号がともりましたが、最後の直線は内を突いて懸命に脚を伸ばし、ゴール寸前に抜け出しました。
前走に続いてスローの瞬発力勝負に対応して女王の貫禄を誇示。
意外にこういう流れの方が合うんでしょうか。当然今年も牝馬重賞路線の主役。

2着 ブラボーデイジー
昨年のこのレースは、緩みない流れで飛ばすシスターエレキングを、向流しで早々に交わして先頭。
ラヴェリータをデッドヒートの末に首差抑え込む好内容V。
以降未勝利ですが、前走のTCK女王盃は、不得手の瞬発力勝負で差のない3着。
強気に攻めれば更に前進可能とみて、配当面なども総合して◎を打ちました。
この日はプラス1キロの544キロ。
パワフルな好馬体で活気もあり万全の状態と判断。
レースは北村友騎手がかなり気合をつけてハナを主張。
ホームストレッチでスローダウンして溜め逃げの形。
淡々と進み、最終4コーナーでプレシャスジェムズに並びかけられながらも必死に抵抗。
一旦は逃げ切り態勢でしたが、ゴール前ラヴェリータにイン強襲を食い2着に敗れました。
決してバテたわけではなく、前走に続いて瞬発力負け。
昨年の上がりが52秒1〜40秒0サバイバル戦だったのに対し、今年は49秒4〜37秒1の決め手勝負。
他に何か引っ張ってくれる馬がいれば違った結果が出たかもしれませんが…。
善戦はしても勝ちが遠い。

3着 ミラクルレジェンド
前走のTCK女王盃は、決め手負けというよりも、ラヴェリータに体力負けした感じの同馬。
今回はこちらが初コースで初距離。
実力は認めても▲の評価に留めました。
この日はマイナス2キロの426キロ。
ローテーションが詰まっている分、馬体減を懸念していましたが、一応微減。
ただし他の人気処に比べると、見てくれは冴えません。
レースはデムーロ騎手が気合をつけて1周目ホームストレッチでは外5番手。
向正面の半ばを過ぎると、内にいたラヴェリータより一歩早く動いて内4番手へ。
そして最後の直線は外に切り替え追撃態勢。
脚を伸ばしましたが、僅かに及ばず3着。
初コースを含めて諸々の条件を考えると頑張った方でしょうか。
見た目とは裏腹に実に勝負強く距離もこなす実力派。
欲を言えばあと20キロくらい体を増やしたい。

4着 プレシャスジェムズ
繰上げ出走で、これまで重賞実績もなし。
一見して逃げられそうな展開面からは怖いところもありますが、一線級のメンバーに入っては地力不足とみていました。
この日はプラス7キロの495キロ。
なかなか馬っぷりが良く、適度に気合が乗っていい雰囲気。
レースは吉田隼騎手が様子を窺いつつの先行で、ハナに拘る気配なし。
ブラボーデイジーに行かせて外2番手からの競馬。
折り合いスムーズに流れに乗り、最終4コーナーではブラボーデイジーに並びかけ交わす勢い。
最後までブラボーと馬体を併せていましたが、結局は交わせず、内外からも殺到されて4着。
ただし、差はごく僅かで、収穫の多い一戦。
この走りができれば、少し手薄な牝馬交流戦ならチャンスも。

5着 ネオグラティア
昨年9月、重賞レース初挑戦のトゥインクルレディー賞は10着。
ただし、0秒9差と着順ほどは負けていないし、初コース。
今回は実績十分の川崎コース。
上位陣の一角を崩すのは難しいとしても、もつれれば入着くらいはあるかなとみていました。
この日はマイナス8キロの436キロ。
そう良く見せるタイプではないし、細目感もなく、マズマズといった状態。
レースは御神本騎手が気合をつけて外3番手からの競馬。
最終4コーナー近くまでポジションをキープしていましたが、最後の直線では余力がなくなり後退。
それでも勝ちに行っての5着なら悪くありません。
今年は牝馬重賞の常連メンバーに。

7着 コスモプリズム
1年ぶりの前走TCK女王盃は10着。
ただし、体が40キロ近く増えたのは好感。
叩けば変わってきそうな雰囲気だったので、昨年3着の実績からも注目していました。
この日はマイナス5キロの498キロ。
すっかり体つきが丸味を帯びて以前とは別馬の感。
適度に気合も乗り好気配。
レースは戸崎騎手が気合をつけて内7番手から。
向流しでは馬を外に持ち出し前を追いましたが、思うように差が縮まらず7着。
正直不満ですが、次あたりがちょうど良さそうなので、自己条件で手頃なメンバー構成なら狙ってみたい。

■ 2010年回顧

馬名
1 2 2 ブラボーデイジー
2 6 9 ラヴェリータ
3 1 1 コスモプリズム
4 3 3 ツクシヒメ
5 4 5 ウェディングフジコ
6 8 12 ヤマトマリオン
7 7 11 タカヒロチャーム
8 5 6 パリスエトランゼル
9 4 4 アクセルファイヤー
10 7 10 トウホクビジン
11 5 7 テイエムヨカドー
12 6 8 ワールドレデー
13 8 13 シスターエレキング

このところスタートが今ひとつだったラヴェリータですが、ポンと飛び出して好位追走。
逃げたのは予想通りシスターエレキング。
2,3番手にブラボーデイジーとツクシヒメ。
2周目でシスターエレキングは早くも逆噴射で、ブラボーデイジーが先頭に立ち、ラヴェリータが追いかける展開。
ツクシヒメは手ごたえがあやしくなり、ウェディングフジコが前。
直線に入っても逃げるブラボーデイジー、追うラヴェリータですが差はなかなか詰まらず、そのままゴール。
3着に追い込んできたコスモプリズム。
4着にツクシヒメ、5着ウェディングフジコ。

ここ2,3年、中央では平場王化しつつある武豊ですが、地方では強い。
岩田とどっちが元地方騎手なのか?と思わせる絶妙の手綱さばき。
ブラボーデイジー自体も血統もありますが、535kgとガチムチの馬体。
牝馬とは思えないガッチリした体。
ダートは向いていたようです。
勝利騎手インタビューで「中央でもがんばります」と答えた武豊の言葉には実感がこもっていました(笑)
2月下旬で、武豊は中央で19勝で関西リーディング(総合では2位)ですが、特別勝ちがフォゲッタブルのダイヤモンドSだけですしね。

圧倒的人気のラヴェリータでしたが、ブラボーデイジーを捕まえきれずの2着。
1,2着は騎手の差かなあと思いました。
たぶん騎手が逆ならラヴェリータが勝ったような気がします。
中央の芝で武豊の馬が脚を溜めているとイヤな予感が走りますが、地方の砂で武豊の馬が先行していると勝たれると感じます。
ちなみに3,4、5着は1,2着以上に騎手の差ですね。
やはり戸崎はうまい。
馬の能力を120%出させるという感じの騎手じゃないけれど、きっちり持てる分は発揮させます。
中央にもよく乗りに来ますし、やがては中央移籍ですかね。
しかし、今日はツクシヒメを差しきらないでほしかったよ……。

ヤマトマリオンは6着と、着順だけ見れば近走よりもマシですが見せ場はまったくありませんでした。
もう引退の潮時のように感じます。
タカヒロチャームはこんなものかなとも思いますが、トウホクビジンとテイエムヨカドーはガッカリでした。
ヨカドーは馬券を買っていたこともありますし、トウホクビジンもここ数戦の走りを見ていると、
中央馬と南関馬以外には負けないと思ったのですが、高知の馬に先着されてしまいました。
さすがに疲れが溜まってきたのでしょうか。
次は再来週のダイオライト記念ですが、そこでも他の他地区馬に先着されるようなら一度休ませてほしいものです。
マリーンCあたりで復帰すればいい。


「最後まで(ラヴェリータに)一度も前に出られないで頑張ってくれました」と3番人気のブラボーデイジーに騎乗したテン乗りの武豊騎手。
昨年の福島牝馬ステークスGIIIを優勝した重賞ウイナーだが、ダート戦は2年ぶりで、地方コースへは初挑戦。
砂のヒロイン・ラヴェリータが単勝1.4倍という断然の1番人気で立ちはだかっていたのだが、そのラヴェリータに一度も交わされることなく、クビ差ねじ伏せた。

「(武騎手には)ハナに行ってもいいし、好きに乗っていいと伝えました」と音無秀孝調教師。
好ダッシュを決めて2番枠からすんなりハナに立とうとしていたブラボーデイジーの外から、逃げ馬シスターエレキングが果敢に交わし切り先頭に立つと、ブラボーデイジーは2番手から追走。
「先行脚質なので逃げか2番手がいいと思っていたので理想的でしたね。1周目のスタンド前ではラヴェリータがすぐ近くにいたので、相手は気にせず自分から動こうと思っていました」(武騎手)。

2周目の2コーナー過ぎにはシスターエレキングを交わして先頭に立つと、すかさずラヴェリータも上がっていき、早くも芦毛2頭のマッチレース。
「アタマひとつ分はギリギリ出ていたので、我慢してくれと祈る思いでした」と、レース後に武騎手は安堵の表情で胸をなで下ろしていたが、
砂のヒロインをダート経験2度目の馬が、同斤量(55キロ)で打ち破ったのは大きな意味があったと思う。

勝ちタイムの2分14秒5(良馬場)は、2100メートルで施行されるようになって12回目だが、99年の覇者ファストフレンド(2分14秒2)に次ぐ2番目に速いタイムだった。
一方、ラヴェリータに騎乗した岩田康誠騎手は「外を回った分、無駄な脚を使いすぎた。5馬身くらいぶっち切って勝てるかと思ったんだけど……」。
砂のヒロインの巻き返しに期待したい。

「一度ダートを使った時より今は力をつけているし、調教の走りを見ていても、クロフネ産駒だしこなせないわけはないと思って挑戦しました。
ただ、今日は勝ち負けを考えていなかったので、この後は中山牝馬ステークスGIII(芝1800メートル)を予定していましたが、
ダートへの路線変更も踏まえて、これから馬とオーナーと相談します」(音無調教師)。

新しいスターを次々に生み出すのも中央勢の底力。
牝馬ながらも530キロ台の迫力たっぷりのボディに凄まじいくらいの勝負根性を持ち合わせたブラボーデイジー。
今後のダート牝馬戦線の展開が非常に楽しみになってきた。

(WebFurlongレースハイライト)

■ 2009年回顧

馬名
1 7 12 ニシノナースコール
2 4 5 シスターエレキング
3 6 9 ヤマトマリオン
4 1 1 ダイワオンディーヌ
5 8 13 サヨウナラ
6 5 7 ユキチャン
7 7 11 パノラマビューティ
8 4 6 クリノソーニャ
9 6 10 ミスジョーカー
10 2 2 マキノチーフ
11 8 14 ナムラウィッシュ
12 3 4 ボナンザーオペラ
13 3 3 アルファバービー
14 5 8 エイシンラビアン

「正直言って無事に帰ってきてくれればと思っていたので、勝つというよりも無欲でした」とニシノナースコールを管理する尾形充弘調教師。
牝馬ながら7歳まで長きに渡って競走生活を続けてきたが、このエンプレス杯JpnIIがラストランだった。

「レース前に引退レースと言われたので、悔いの残らないようにして結果に結びつけたいと思っていました」と吉田豊騎手。
逃げると思われていた白毛馬ユキチャンが出遅れ、スタート直後に場内から落胆の声が上がる波乱の幕開けとなった。
抜群のスタートを切った船橋のシスターエレキングが積極果敢に先手を取ると、昨年の覇者サヨウナラが2番手を追走。

上位人気のヤマトマリオンとユキチャンを見る形で、ニシノナースコールは中団付近からレースを進めた。
「最初の3〜4コーナーで、馬の後ろに入れるまで行きたがりましたが、あとは折り合ってくれました」(吉田騎手)。

1周目スタンド前ではユキチャンの後ろをつけていき、2周目の3コーナーではヤマトマリオンに連れて上がっていった。
「道中いい位置取りで折り合えたので、終いもいい脚を使ってくれると思っていました」(吉田騎手)。
気持ちよく先頭を走って逃げ粘るかと思われたシスターエレキングを、残り100メートル付近で一瞬にして抜き去ると、あとはその差を広げる一方。
ニシノナースコールは真骨頂でもある鋭い末脚を披露して、見事有終の美を飾った。

「小回りが向くとは思いませんが、左回りはいい馬です。
道中はいつもより前に位置取ることができて、折り合いをつけられたのが勝因だと思います」(吉田騎手)。

デビューした当初は芝を中心に走り、05年の秋華賞では豪脚を見せて3着に入ったことでも知られる。
「体の使い方はうまかったんですが、最初の頃は体質が弱くて、寒い時季はすくんで硬くなって、熊のように毛も伸びました。
6歳くらいになってから良くなってきて、晩成だったんでしょうね」(尾形調教師)。

坂路とダートコースを中心に大事に仕上げてきたという。
デビューしたころは420キロ台だった小柄な馬体は、最終的には450キロ台まで増えていた。

「無事に(牧場に)帰してやることができてホッとしています」と、安堵の表情を浮かべていた尾形調教師。
ニシノナースコールと長年苦楽を共にしてきた関係者たちにとって、何物にも代えがたい最高の瞬間であっただろう。
デビューから33戦目にして、最後の最後につかんだ悲願の重賞タイトル。そんなドラマチックな結末があるからこそ、競馬はおもしろい……。

(WebFurlongレースハイライト)

■ 2006年回顧

2月22日、川崎「エンプレス杯」。8番人気ローレルアンジュが大金星をあげた。
内からライラプス(1番枠)が先手を主張、以下ジェダイト、レイナワルツと続き、グラッブユアハート、レマーズガールは中団やや後ろという微妙な展開。
的場文・ローレルは3コーナー手前、外から一気にまくって出た。
「(有力馬と)ヨーイドンの競馬では分が悪い。いいタイミングで動けました。仕上がりもよかったし、何より思った以上に力がある」(的場文騎手)。
ローレルアンジュはJRA時ダート5勝ながら準オープンで底を打ち、しかし転じた南関東2連勝。
いずれにせよいきなり交流GII制覇だから、やはりシンデレラガールというしかない。
「牝馬戦は格より調子――」。ゴールの瞬間、古い競馬格言がそのまま浮かんだ。
言い換えれば、馬の持つ潜在能力、上昇度、それを100%引き出した、スタッフと鞍上の勝利だろう。

エンプレス杯(サラ4歳上牝 別定 交流GII 2100m 重)

 (1)ローレルアンジュ  (55・的場文) 2分15秒0
△(2)レマーズガール   (56・武豊)  1/2
△(3)レイナワルツ    (55・兒島) アタマ
◎(4)グラッブユアハート (55・安藤勝) 1.1/2
▲(5)ジーナフォンテン  (56・佐藤隆) 2
 ………………………
○(6)テンセイフジ    (54・酒井)
△(11)ジェダイト     (54・内田博)
 (12)ライラプス     (54・松永幹)

単8,310円 馬複13,240円 馬単40,680円
3連複40,120円 3連単387,660円

ローレルアンジュは、パドックで馬が少し硬くみえた。
筋肉質の馬体、ルックス自体はいいのだが、歩様がどこか窮屈で、のびやかさ、しなやかさが感じられない。
短〜マイラーのイメージ。まあしかし結果が出てしまえば、筆者の素人目というしかない。
「鞍上の判断が一番の勝因。ただ心肺機能がいい馬で、楽しみにはしていました」(新井調教師)。
実績、外見はともかく、馬の中身が変わった、そういう結果。パイオニア・川島正行厩舎だけではない。
船橋競馬スタッフは、相当の腕と情熱をもって馬にあたる。

グラッブユアハートの完敗。中団追走は流れに応じた策としても、3コーナー始動から直線さっぱり伸びなかった。
「わからない。いい脚一瞬という昔のグラッブに戻ってしまった」(安藤勝騎手)。
交流GIII連勝、その反動ということか。ただ筆者などの立場からすると、こういうコメントは、正直であり救いになる。
「馬に聞いてみたい…」が、結局は競馬の常か。
逆に彼女の凡走ゆえ、シンデレラガールも出るわけだから。
次走は4月「マリーンカップ(船橋)」になりそうだが、その評価は今から頭を抱えてしまう。

2分15秒0。極端に軽い馬場でレコードに遠く及ばない(川崎記念・アジュディミツオー2分12秒8)とすれば、それが牝馬レベルだろう。
毎回繰り返すが、レマーズガールはあくまで限定路線の強者でしかない。
今回56kgで道中特に不利もなく、実力通りの2着とみる。
むしろレイナワルツが惜しかった。勝ち馬より一歩早めに仕掛けて先頭。
しかしJBC同様、外2頭に一気にこられた。このレベルまで上がると、善戦、健闘ではなく、最終的に結果を出したい。
「これが地元(名古屋)なら勝てていたか…」(兒島騎手)。交流Gで勝機を探せば、「浦和記念」などが候補にあがる。
馬自身そこまでピークを維持できるか。総合的な能力は先着2頭に見劣らない。

テンセイフジはスローを動けず、最後差を詰めるだけの6着だった。
酒井Jが同馬をどうつかんでいるのか難しい。関東オークスはまくって圧勝(当時・石崎駿J)。
筆者としてはペースが緩んだ向正面あたりから積極的に動いてほしかった。
ジーナフォンテンは逆にスタートからカカリ気味で持ち味半減。牝馬特有の気性難を抱え、依然常識にかからない。
ライラプス、ジェダイトは、ダート疑問でいいだろう。
ライラプス・松永幹Jは、周知の通りこの3月から調教師へ転進する。
「(川崎では)もう乗れませんが、いい思い出がいっぱいあります…」。
レギュラーメンバー、カネツフルーヴで「川崎記念」を勝っている。
後者はローレルアンジュと同じ父・パラダイスクリークだから、不思議な因縁、巡り合わせがあるかもしれない。




馬名 所属 性齢 負担
重量
騎手
(所属)
調教師 馬体重 タイム 着差 上り
3F

1 7 11 ローレルアンジュ 船橋 牝 7 55.0 的場文(大井) 新井清 486 -2 2:15:0   38.4 8
2 2 2 レマーズガール JRA 牝 6 56.0 武 豊(JRA) 湯浅三 477 5 2:15:1 1/2 37.9 2
3 6 8 レイナワルツ 愛知 牝 6 55.0 兒島真(愛知) 瀬戸悟 513 -8 2:15:1 アタマ 38.5 5
4 8 12 グラッブユアハート JRA 牝 6 55.0 安藤勝(JRA) 畠山吉 471 0 2:15:4 11/2 38.2 1
5 4 4 ジーナフォンテン 船橋 牝 8 56.0 佐藤隆(船橋) 熊坂光 492 -2 2:15:8 38.9 6
6 5 7 テンセイフジ 川崎 牝 4 54.0 酒井忍(川崎) 八木雄 450 -3 2:15:9 1/2 38.6 7
7 6 9 ベルモントパティ 大井 牝 6 55.0 御神訓(大井) 高橋三 464 -5 2:15:9 クビ 38.6 13
8 7 10 ショウナンシャトー 船橋 牝 7 55.0 江川伸(船橋) 渡邊薫 460 -5 2:16:1 3/4 38.5 9
9 8 13 クインオブクイン 笠松 牝 4 54.0 濱口楠(笠松) 松原義 392 -3 2:16:2 1/2 39.2 10
10 5 6 セイエイシェーン 大井 牝 6 55.0 今野忠(川崎) 上杉昌 460 5 2:17:0 39.6 11
11 4 5 ジェダイト JRA 牝 4 54.0 内田博(大井) 池江泰 482 6 2:17:1 1/2 40.3 4
12 1 1 ライラプス JRA 牝 4 54.0 松永幹(JRA) 松田國 458 4 2:17:2 1/2 40.6 3
13 3 3 ナムラローレライ 愛知 牝 4 54.0 尾崎章(愛知) 植松則 446 -2 2:18:0 39.8 12
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