トップ > 男の馬券戦略 > 重賞戦略 > TCK女王杯

TCK女王杯(G3)

【エンプレス杯・男の解の公式】
エンプレス杯を睨み瞬発力勝負になりやすい! 快速馬に注意!
モデル馬=ハルサンサン

■ 経緯

「TCK女王盃」は98年、当初から交流G3として新設。
03年まで距離2000mで施行され、以後04年から1800mに変更された。
最後の直線もたっぷりある外コース。
総じて実績上位の“本格派”が活躍している。

当初から交流GIIIとして13年の歴史を刻んできた。
ただ、ダート向きの牝馬(一流馬)とは、資源豊富なJRAでさえやはり出にくく、
おおむねリピーターが活躍、新味に乏しいレースが多かったのも事実ではある。
04〜05年を連覇したレマーズガール、その好敵手だったグラッブユアハート、さらにユキチャン…(先ごろ引退)。
どれも“名牝”と呼ぶには、インパクトがひと息足りない。

■ 傾向

年度 メモ 1着馬

2着馬

3着馬

タイム ラップ 3連単 勝負
結果
2012年 ハルサンサン 船橋 7 カラフルデイズ JRA 1 プレシャスジェムズ JRA 2 1.53.6 13.0 12.4 13.4 13.0 12.7 12.4 12.2 11.7 12.8 33950 ×
2011年 ラヴェリータ JRA 2 ミラクルレジェンド JRA 1 ブラボーデイジー JRA 5 1.52.4 12.8 12.5 13.8 12.9 11.8 12.0 12.4 11.8 12.4 3790
2010年 ユキチャン 川崎 1 ウェディングフジコ JRA 3 コスモプリズム 大井 6 1.52.9 12.5 11.9 12.6 12.5 12.4 12.4 13.0 12.8 12.8 22560
2009年 ヤマトマリオン JRA 2 ユキチャン JRA 1 パノラマビューティ 船橋 5 1.54.3 12.8 12.0 12.9 11.9 12.6 12.7 13.0 12.3 13.1 3150
2008年 ラピッドオレンジ JRA 6 デアリングハート JRA 1 ペディクラリス JRA 3 1.54.1 12.6 12.8 13.6 12.6 12.6 12.9 12.9 11.8 12.3 26610
2007年 サウンドザビーチ JRA 2 トーセンジョウオー 船橋 1 クリムゾンルージュ 船橋 7 1:52:7 12.5 12.0 13.1 12.5 12.3 12.3 12.9 12.2 12.9 19870
2006年 稍重 グラッブユアハート JRA 1 レマーズガール JRA 3 テンセイフジ 川崎 6 1:53:8 12.9 12.1 13.0 12.7 12.4 12.4 12.9 12.3 13.1 5490
2005年 レマーズガール JRA 2 オルレアン JRA 5 ジーナフォンテン 船橋 8 1:52:7 12.3 11.3 12.0 12.1 12.4 12.9 13.6 13.1 13.0 76390
2004年 レマーズガール JRA 2 グラッブユアハート JRA 1 ホウザングラマー 大井 3 1:53:1 12.4 11.8 13.3 13.0 12.5 12.7 13.0 12.0 12.4 4670

層が薄い路線で、過去にこのレースで勝った、もしくは活躍した馬の好走が目立つ。

・レマーズガール 1・1・2着
・グラッブユアハート 1・2着
・ユキチャン 1・2着


スロー向きの自在馬

自在型に分がある。
逃げ=4、先行=7、差し=8、追込み=1。
近年、スロー〜平均ペースが大半で、好位から隙のないレースができる馬にチャンスが多い。


おおむね順当

1番人気は絶対的な強さがあり、2番人気もアベレージが高い。
ただ3着はしばしば狂う(過去10年中、6年まで7番人気以下)


JRA優勢、地元大井劣勢

JRA勢がほぼ断然の数字といえる。
他は宇都宮、船橋、川崎。
地元大井の連対は2001年セクシーディナーまでさかのぼる。


重賞勝ち馬優勢、4〜6歳、特に5歳優勢

実績重視。
連対20頭中、14頭がすでに重賞を勝っていた(内11頭が交流G)。
1〜3着はすべて4〜6歳馬で、中でも5歳馬=6勝は特筆に値する。

■ ステップ

レース コース 勝負結果
1月 TCK女王盃 大井1800m ×
2月 エンプレス杯 川崎2100m 中止
4月 マリーンC 船橋1600m
6月 関東オークス3歳 川崎2100m
7月 スパーキングLC 川崎1600m
9月 レディスプレ 大井1800m
10月 JBCレディスC 大井1800m
10月 エーデルワイス賞2歳 門別1200m
12月 クイーン賞ハンデ 船橋1200m

■ 2012年回顧

馬名
1 6 6 ハルサンサン
2 3 3 カラフルデイズ
3 1 1 プレシャスジェムズ
4 5 5 ウェディングフジコ
5 7 8 パールシャドウ
6 6 7 ラインジュエル
7 2 2 プロヴィナージュ
8 7 9 ショウリダバンザイ
9 4 4 スウィングベル
10 8 10 マトリックストート

ハルサンサンが見事な瞬発力で差し切った。
プレシャスジェムズの逃げは、千通過64秒5の超スロー。
道中4〜5番手を進んだハルサンサンは上がり36秒5(推定)だから、ほぼ究極の数字といえる。

「自分が乗って4戦目。惜しいレースが続いていたし(ロジータ記念・シンデレラマイル2、2着)、
嬉しいと同時にホッとした。折り合いが少し難しいけど、最後は切れる」(今野騎手)。

レース史上(15年間)、地方馬優勝は6頭目。
ただ、南関東生え抜きとすると第3回ヤマノリアル以来12年ぶり2頭目で、その意味でも価値が大きい。

ハルサンサンはサウスヴィグラス×ワカオライデンの4歳馬。
デビュー時から末脚は定評があったが、ゲートと折り合いに課題を残し、
ここまで重賞制覇に届かなかった。
「馬も鞍上も、道中よく我慢した。直線スッと外に出せたのも今野くんの腕でしょう。
初タイトルがGIIIだからね。持ち味が100%出たと思う」(佐藤賢二調教師)。
この日467kg、少しずつ、しかし心身とも着実なパワーアップ。

父の産駒は一見早熟にみえてそうでもない。
経験、キャリアが実になり、イメージ以上の新境地を開いていく。
自身は統一G7勝、JBCスプリント優勝。
さすが地方トップサイヤーと納得する。

前述通り典型的な上がりの競馬。

2番手からいったん抜け出したカラフルデイズは岩田J、会心の騎乗とみえた。
父クロフネらしいセンスのよさ。
まだ線の細さは残るが(430kg台)、ごく普通のダート牝馬レベル(ラヴェリータ引退、ミラクルレジェンド不在)なら、常に好勝負可能だろう。
この路線、ひとまず“基準馬”という見方をしたい。

3着プレシャスジェムズは道中こそ一人旅だが、スタートでつまずき、その挽回に力をロスした部分があった。
ただ追って味がないことは事実で、今後も展開しだいの評価になる。

4着ウェディングフジコは先行馬ペースにうまく乗った善戦で、
それなら道中モタつきながら、最後肉薄したパールシャドウに可能性を感じる。

期待したショウリダバンザイ8着。
行き脚がついた3〜4コーナー、一瞬あわやと思わせたものの、いざ追って伸びなかった。
本来これだけスローなら捲り切る力がある(昨秋Lプレリュード・上がり36秒2)。
精神面を含め、現状スランプというしかない。


【レース】
単騎逃げはほぼ確定とみられたプレシャスジェムズがスタートミス。
対照的に好スタートを決めたカラフルデイズがその気になれば逃げられそうでしたが、岩田騎手は特に拘らず。
巻き返してプレシャスジェムズがハナに。
カラフルデイズ、ウェディングフジコと続いて、直後のインにハルサンサン。
パールシャドウ、プロヴィナージュも差がなく続き、後方のショウリダバンザイまで一団。
スローペースで完全にヨーイドンの競馬。
苦心して今野騎手が折り合いに専念したハルサンサンが、直線弾けて1着ゴール。
カラフルデイズは一旦先頭に立ちながら惜しい2着。
渋太く粘ったプレシャスジェムズが3着。

【上位馬の寸評】
1着 ハルサンサン
前走のシンデレラマイルは、内を突いて一旦先頭に立ちながら、伏兵テイエムヨカドーの強襲に屈して2着。
一瞬のキレはこのメンバーでも楽に通用しますが、ベストは1400〜1600。
交流の1800で力勝負になると、ちょっと足りないかなとみていました。
この日はプラス3キロの467キロ。
最近は460キロ台に固定されてひと回りボリュームアップ。
とにかく好調期間が長い。
レースは今野騎手が意識的にヤンワリ出て折り合いに専念。
インコース4番手と絶好のポジション。
我慢に我慢を重ねた分、いつも以上に弾けて、JRA勢をまとめて差し切る大金星。
スローの瞬発力勝負にピタリとハマった感じです。
この馬がある程度長目の距離で好走するなら、緩みない流れよりもこういうパターンか。
それにしてもラヴェリータとミラクルレジェンドがいないと、JRA勢も今ひとつパンチ不足です。

2着 カラフルデイズ
3歳時に2100の関東オークスを勝っていますが、基本的には1800以下で持ち味が生きるスピードタイプ。
2走前のJBCレディスクラシックでは、ハイペースを追いかけて1800を1分51秒2。
この時計で走れば問題なく勝てるところですが、スローペースになった際の折り合いが課題でした。
この日はマイナス1キロの432キロ。
いつも言うように3歳時からの馬体の成長が今イチ。
それほどテンションは上がっていませんでしたが…。
レースは好スタートを決めましたが、岩田騎手は抑え気味で、プレシャスジェムズに行かせて2番手から。
これが当初からの作戦だったのでしょう。
苦心して折り合いをつけ、ヨーイドンの決め手勝負。
残り200で一旦は先頭に立ちましたが、ゴール寸前ハルサンサンに頭差交わされました。
負けたとはいえ、見た目以上に底力があるのは確か。
脚抜きのいい馬場の1400くらいが一番合いそう。

3着 プレシャスジェムズ
昨年のエンプレス杯では、ラヴェリータなど牝馬最強メンバーに混じり0秒1差の接戦。
クイーン賞は休み明けながらクラーベセクレタの2着と、交流実績では大威張り。
今回は初めて56キロを背負いますが、単騎逃げはミエミエなので、折り合って逃げられれば単の目も十分にあるとみていました。
この日はマイナス3キロの507キロ。
もうひと絞りという感じもしますが、活気があり好気配。
レースはスタートでトモを落として完全に出負け。
ただし他にハナに拘る馬がおらず、ゴール板を過ぎたあたりで自然にハナへ。
意外に溜めが利いてスローペースの逃げ。
ただし追ってから鋭い脚が使えるタイプではなく、結局は決め手負けという形で3着。
スタート五分に出て、徐々にピッチを上げて、少し離し気味に逃げる形に持ち込みたかった。
次は大逃げを打つ競馬を見てみたい。

4着 ウェディングフジコ
地方初参戦の一昨年の当レースではユキチャンの2着。
以降も芝ダート、距離万能のオールマイティー型として活躍。
近2戦に不満は残るものの、人気を下げて狙い目十分とみていました。
この日はマイナス4キロの465キロ。
馬体をフックラと映し適度な気合乗り。
非常にいい雰囲気。
レースは出たなりで外3番手と申し分のないポジション。
終始人気の先行馬2頭をマークして進みましたが、直線の決め手勝負で後れを取り4着。
スピード、切れ味のあるマイラータイプの馬に、折り合って速い脚を使われては分が悪かったか…。
既に8歳。今後も勝ち切るのは骨かも。

5着 パールシャドウ
前走のクイーン賞は、先行馬ペースを意識していつになく早目に動いたものの、最後は同じ脚になり4着。
重賞のメンバーに入ると勝ち味の遅さを露呈。
今回も流れとしては先行馬ペースになりそうなので、仕掛け処が微妙でした。
この日はプラス2キロの472キロ。
前2戦と同様にキリッとした好仕上がり。
レースは出たなりで進んで向流しでは外4番手。
そこから引いて6番手は、クイーン賞と同じような運び。
最後は内を突いて差を詰め、上がり3ハロンは勝ち馬ハルサンサンと同じメンバー最速の36秒5。
器用に立ち回れない分の差が表われました。
この馬の場合はもっと長目の距離のサバイバル戦が似合う。

7着 プロヴィナージュ
08年の関東オークスでユキチャンの2着。
以降は芝路線でダートは久々ですが、戦績、血統、馬格などから、決して苦にするタイプではありません。
入念に調教を積まれており、侮れない存在でした。
この日はマイナス3キロの523キロ。
均整の取れた好馬体で、巨漢馬というイメージなし。
キビキビ感があり毛ヅヤも上々。非常に良く見えました。
レースはスタートひと息。
内7番手から進み、ポジションを上げられず最後の直線へ。
終いは差を詰めるどころか突き放されてしまい7着。
久々のダートに戸惑ったのでしょうか…。

8着 ショウリダバンザイ
昨年の当レースは9着ですが、当時は休み明け。
それに対して今年は叩き二度目。
その前走は58キロに加えて外を回るコースロス。
55キロで乗り慣れた服部騎手なら反撃確実とみていました。
この日は増減なしの472キロ。
懸念していた馬体減りはなく落ち着きもあり好気配。
レースはスタートひと息で後方8番手から。
ただし、スローペースを意識した服部騎手が早目に動き、
3コーナーでは4番手に取り付きましたが、手応えというかリズムが今イチ。
最後の直線はまるで伸びる気配がなく8着。
流れが向かなかったにせよ不甲斐ない走り。
やや調子を落としているのか…。


年明け最初の牝馬によるダート重賞だが、この路線は昨年新設されたJBCレディスクラシックで一段落。
その後12月に行われたクイーン賞JpnVから、またその頂点に向けた争いが始まっている。
今回は、第1回JBCレディスクラシックを制して初代女王となったミラクルレジェンド、
クイーン賞でダートグレード初勝利を果たしたクラーベセクレタらの出走はなかったが、対抗勢力としてあらためて名乗りを挙げる牝馬たちの争い。
有力視されるJRA勢はクイーン賞の2〜5着馬が揃って出走してきたので、争いの構図としてはわかりやすい。

しかし勝ったのは、伏兵視された明け4歳馬、船橋のハルサンサンで、重賞初制覇がダートグレードのタイトルとなった。
レースは、カラフルデイズが好スタートも、タイミングが合わずダッシュがつかなかったプレシャスジェムズがすぐに先頭を奪い、ウェディングフジコが3番手と、JRA勢が先行。
ハルサンサンは4〜5番手の内を追走、地方勢で注目を集めたショウリダバンザイはペースが遅いと見てか後方から早めに押し上げてきた。

直線を向くと、前3頭のJRA勢が横一線での叩き合い。
そこに外から迫ってきたのがハルサンサンだった。
ゴール前、一旦はカラフルデイズが抜け出したが、ハルサンサンがゴール寸前で差し切り、アタマ差で勝利。
鞍上の今野忠成騎手は左手を上げガッツポーズを見せた。

ハルサンサンは、前走東京シンデレラマイルでは惜しくもテイエムヨカドーの2着。
しかし直線ラチ沿いから一旦は抜け出すという勝ちに等しい内容で、秋以降の成長ぶりを感じさせていた。
佐藤賢二調教師は「馬体が大きくなるにつれて精神的にカリカリしなくなってきたのがよかったと思います」と、勝因として馬の成長を挙げた。

注目すべきはその血統だ。
4代母のイチワカは、あのテンポイントの全妹。母の父ワカオライデンもテンポイントのおいにあたるという、母系はまさにテンポイントゆかりの血筋。
父サウスヴィグラスは引退レースとなったJBCスプリントGTを制すなど地方のダート短距離路線で活躍し、ラブミーチャンなどの活躍馬を輩出している。

1800メートルの舞台で重賞制覇となったハルサンサンは、2100メートルでも関東オークスJpnU4着、戸塚記念3着、ロジータ記念2着など善戦。
しかし一方、これまでの勝ち星は1500メートル以下で、中央芝への挑戦では1200メートルも経験(10着)するなど、適性距離についてはまだ手探りな部分もあるようだ。
次走について佐藤調教師は、「馬の状態を見て…」と明言を避けたが、牝馬路線のエンプレス杯JpnUに行くのか、それとも東京スプリング盃から始まる短距離路線に向かうのか。
いずれにしても若い明け4歳の地方馬から、楽しみな馬が現れたことだけは間違いない。

■ 2011年回顧

【予想】
◎ミラクルレジェンド
○ザッハーマイン
▲ラヴェリータ
△ブラボーデイジー
△ショウリダバンザイ
△シンメイフジ

見た目とは裏腹に、牝馬離れした勝負強さを誇るミラクルレジェンド。
5戦5勝と負け知らずの1800メートルで最有力とみました。
クイーン賞の雪辱を期すザッハーマインも絶好調。
実績上位ラヴェリータ、逃げも十分可能なブラボーデイジーなど牝馬オールスターキャスト。

【レース】
内枠から内田博シンメイフジがハナを主張。
北村宏ブラボーデイジーは無理をせず2番手キープ。
ラヴェリータ、ザッハーマインと人気処が前を固め、互いに牽制し合ったので、
前半39秒1〜52秒0〜63秒8という異例の超スローペース。
完全にヨーイドンの瞬発力勝負。
いち早く動いたザッハーマインが一旦は先頭に立つ勢いでしたが、
最後はワンテンポ仕掛けを遅らせたラヴェリータ、ミラクルレジェンドのデッドヒート。
ラヴェリータが首差競り勝ち、貫禄を示しました。

【上位馬の寸評】
1着 ラヴェリータ
南関東での重賞3勝はすべて川崎コース。
大井は初めてになりますが、名古屋大賞典1着から右回りは不安なし。
前走のジャパンCダートは、7着とはいっても0秒6差。
男馬の一線級に混じっても好戦できる底力は、牝馬としてはピカイチ。
57キロでも当然勝ち負けとみていました。この日は増減なしの518キロ。
いつも通りにスッキリとしたシャープな体のライン。適度に気合も乗り好調キープと判断。
レースは馬なりで外3番手からと理想的な滑り出し。
勝負処で一旦ポジションを下げましたが、最後の直線は猛然と追い上げ、
残り100メートルからはミラクルレジェンドとの壮絶なデッドヒート。
首差競り勝ち、貫禄を示しました。
この馬のイメージにそぐわないスローの瞬発力勝負での勝利は価値大。
まだまだラヴェリータの時代は続きそうです。

2着 ミラクルレジェンド
ダート路線に切り替えて敗れたのはジャパンダートダービーのみ。
それもゴール前の脚勢は一番で、0秒1差の4着。
ザッハーマインを圧倒した前走のクイーン賞を含め1800メートルは5戦5勝。
ラヴェリータと2キロ差があれば、こちらに分ありとみていました。この日はマイナス1キロの428キロ。
他の人気馬に比べると見劣りますが、この馬に関しては見た目は度外視。
レースは岩田騎手が多少気合をつけて6番手から。他の有力処を前に見てジックリ待機。
スパートのタイミングはほぼラヴェリータと同じ。
2頭で抜け出しデッドヒートになりましたが、惜しくも首差競り負けました。
スローの瞬発力勝負ならこちらの土俵という気もしますが、馬体を併せての競り合いで体力負けのきらいも。
それと終始馬込みに入り、そこで多少消耗したか…。
まだラヴェリータとの勝負付けは済んでいません。

3着 ブラボーデイジー
案外ダート経験は浅いものの、1年前のエンプレス杯ではラヴェリータに競り勝つ堂々たる勝利。
ダート適性に関しては全く問題なし。
2走前のクイーン賞大敗は、出遅れが響いたためで度外視。
まともなら逃げも十分に可能で怖い一頭でした。
この日はプラス7キロの543キロ。
全く太目感はなく活気十分。
クイーン賞の時より気配アップ。
レースは好スタートを決めて行く気ならハナにも行けそうでしたが、
内枠の内田博シンメイフジが主張したので、無理せず2番手。
道中の折り合いはスムーズ。
いつでも抜け出せるポジションにいたものの、追い比べで遅れを取り離された3着。
バテたというよりも、完全に決め手負けの形。
長距離の割に強気に攻めて凌いだエンプレス杯のようなレース運びがこの馬の好走パターン。
結果論ですが、多少無理してでも先手を取り切った方が良かったかも。

4着 ザッハーマイン
前走のシンデレラマイルは58キロを背負って楽勝。
南関の牝馬では突出した存在を改めてアピール。
今回はクイーン賞で敗れたミラクルレジェンドに加えてJRAの強豪が勢揃い。
確かに試練ではありますが、斤量差を考えれば、十分に太刀打ちできるとみていました。
この日はプラス2キロの501キロ。
相変わらず馬っぷり抜群で、とにかく見映えがいい。レースはCデムーロ騎手が多少気合をつけて外4番手から。
流れに乗って4コーナーでは2番手。
最後の直線は一旦先頭に立つ勢いでしたが、残り100メートルで脚が鈍り離された4着。
完全に力負けという競馬内容。
このキャリアだけにまだ伸びシロはあるはず。
それともう少し短目の距離の方が合うのかも。
条件次第では、上位馬を逆転する可能性は残されていると思います。

5着 シンメイフジ
関東オークス以来7ヶ月半ぶりの出走。
まだ未知数の面はありますが、常識的に考えて、いきなりこのメンバーが相手では負担が大きい。
△は打ったものの、正直厳しいとみていました。
この日はプラス12キロの462キロ。
これは完全に成長分で、オークスの時と同様にやや胴長でスリムな体つき。
体重はもっとあってもいいくらい。とりあえず仕上がりは進んでいると判断。
レースは内田博騎手がかなり気合をつけてハナを主張。
幸い好位グループの人気馬が牽制し合ったので超スローの溜め逃げ。
ヨーイドンの追い比べで5着に落ちましたが、マズマズ見せ場は作りました。
使っての変わり身に期待ですが、どちらかと言うと芝の方が合うのでは。

6着 プリマビスティー
ロジータ記念3着、シンデレラマイル2着と着順上げてきましたが、南関同士の話。
JRAの一線級が相手では正直厳しいとみていました。
この日は増減なしの462キロ。
以前とは別馬のように落ち着いて、体つきもフックラというよりもややコロンと映るくらい。
状態はピークとみました。
レースは好スタートから左海騎手が気合をつけて内5番手。
終始経済コースを回り目イチの競馬で6着。
ベストを尽くしての力負けですが、0秒8差ならマズマズ。南関限定なら大威張りで主役候補。

9着 ショウリダバンザイ
大きく体を増やしたロジータ記念を圧勝。
ひと回り成長して完全に本格化の様相。距離オールマイティの自在型。
展開もつれれば3着くらいなら、とは思っていました。
この日はプラス4キロの477キロ。
太目感なく落ち着きあり好仕上がりと判断。
レースは出遅れて後方13番手から。
流れを考えるとどうみても勝負なるポジションではなく、僅かに詰めた程度の9着。
少し間隔があいた分、中身が伴っていなかったのか…。
今回に関しては基準外とみるべきでしょう。
南関同士なら即挽回が利く。


南関東では、船橋のクイーン賞JpnIIIが12月に移動した2004年以降、年明けのTCK女王盃JpnIII、そしてエンプレス杯JpnIIへという古馬牝馬による交流3戦のローテーションが確立。
ダートグレード戦線で上位を争う牝馬にとっては、照準を合わせたくなるシリーズだ。

実際、このTCK女王盃では05年以降、前年のクイーン賞を制した馬が、該当馬の出走がなかった07年と08年以外、すべて勝利をおさめている。
そのデータもあってか、同レースを完勝したミラクルレジェンドの単勝オッズは1.7倍。
1倍台前半という時間帯もあったほどで、レパードステークスから重賞3連勝を予想したファンも多かったようだ。

しかし今回はダートグレード4勝の実績を誇るラヴェリータという強敵が出走してきた。
前2走はJBCクラシックJpnIとジャパンカップダートGIで苦戦となったが、牝馬限定戦なら簡単に負けるわけにいかない存在だ。

ザッハーマインも逆転を狙ってきた。クイーン賞では逃げ切れなかったが、先行有利の馬場状態なら話は別。
さらに昨年の関東オークスJpnIIを制したシンメイフジ、巻き返しを期すブラボーデイジーもエントリー。
この5頭の単勝オッズが10倍以下と、上位拮抗の様相でレースを迎えることとなった。

レースでもその上位人気馬に、本来は追い込みタイプのプリマビスティーが加わって先頭集団を形成し、4コーナーから怒涛の追い比べが始まった。

逃げたシンメイフジと2番手を進んだブラボーデイジーが懸命に粘り、ザッハーマインも鞍上のクリスチャン・デムーロ騎手が大きなアクションで馬に推進力を与える。
その後ろから、馬群の間を抜けたミラクルレジェンドと大外を回ったラヴェリータが猛烈な競り合いを開始した。
両者は残り100メートルで先頭に立って一騎打ち。ゴール地点ではわずかの差だったが、ラヴェリータのほうに凱歌が揚がった。

ラヴェリータは、前走のジャパンカップダートを最後に引退という予定だった。
しかしその方針を転換させたのが、JBCレディスクラシックが創設されるというニュースであった。

すぐさま現役生活を1年間延長することが決定され、大山ヒルズ(鳥取県伯耆町)への移動後は、その報せを受けた牧場スタッフが大雪と闘いながら入念に調整して、このレースを目指した。
そうした経緯があっての1着に、「引退しないで正解でしたね」と、牧場関係者。
今年も牝馬戦線を引っ張る存在となりそうだ。

対して、ダートグレードレース連勝を狙ったミラクルレジェンド鞍上の岩田康誠騎手は、
「叩き合いで勝てると思ったんですが……」と悔しそうな表情。
それでも、「展開次第で逆転できますよ」と、次の勝負に向けて気を取り直した。

3着に残ったブラボーデイジーは、「今回はゲートをきちんと出たからね。ただ、こんなパサパサの砂は合わないように思うなあ」と、音無秀孝調教師。
師の口からは、次は昨年勝利したエンプレス杯に進むことが明言された。

さらには「瞬発力勝負では厳しかった」とクリスチャン・デムーロ騎手が振り返ったザッハーマイン、骨折休養明けでも見せ場を作ったシンメイフジも、3月2日川崎のエンプレス杯を見据えている。
4週間後もこのメンバーでの上位争いとなるのか、それとも新星が割り込んでくるのか。次の戦いにも引き続き注目が必要だ。

■ 2010年回顧

△1着ユキチャン 1分52秒9
△2着ウェディングフジコ クビ
△3着コスモプリズム 3/4
◎4着ツクシヒメ 1/2
○5着チャームナデシコ 1
………………
6着フサイチミライ
△8着ラインジュエル
▲9着ヤマトマリオン

単270円
馬複1450円
馬単2820円
3連複5160円
3連単22560円

ユキチャン
激戦を競り勝った。
確たる逃げ馬不在で、外からトウホクビジン、ダイナマイトボディ、東海勢2頭の先導。
1000m通過61秒9とゆったり流れ、その直後、ユキチャンは結果ベストポジションだった。
3〜4コーナー、追い上げるチャームナデシコ、ツクシヒメの仕掛けに合わせ、スムーズな反応で加速した。
直線早めに先頭。こうなると同馬のパワー、しぶとさが100%生きてくる。
並ばれてからがとにかく強い。
「位置取りはよかったけれど、最後は必死に追いました。馬の頑張りがすべてでしょう。ホッとした」(今野騎手)。
内から迫ったウェディングフジコにきわどいクビ差。
しかし、粘った、凌いだというより、ユキチャン自身ゴール前もうひと脚使っている。

結論とするなら「完全復活」でいいだろう。
1800m・1分52秒9は、今の重い馬場を思うと合格点以上がつき(昨年1着ヤマトマリオンは1分53秒3)、上がり38秒5の末脚にも胸が張れる。
JRA→川崎トレード後、今回が3戦目。
大きく体調が上向いたこと(11kg増)、ゲート難を抱えていた4歳時とは集中力が違うこと。
「環境に慣れたのでしょう。目に見えて良化している。よくカイバを食べるし元気があり余っているくらい。転厩成功? 結果が出せて嬉しいです」(山崎尋美調教師)。
記者予想的には、前走「クイーン賞」を凡戦とみたのが失敗(ピント外れ)だった。
次走「エンプレス杯、川崎・2月24日」。
左回り2100mなら、さらに条件は好転する。

ウェディングフジコ。
近況芝路線ながらフジキセキ産駒らしくダートも巧い。
何より前々走ターコイズS(OP)勝ちなど絶対能力が高かった。
ただ今日の場合、インを突いた菊沢徳Jの好判断(内が伸びる馬場)も加えておきたい。

コスモプリズム
逆に、直線大外を強襲して3着のコスモプリズムは何とも不器用。
上がり38秒3だから、今後も展開しだいの評価になる。

ツクシヒメ
4着。結果論を承知で書けば10kg増がやはり誤算か。
パドックから気合い乗りが今ひと息、いざレースでも前半理想の位置(3〜4番手)がとれなかった。

チャームナデシコ
ソツなく乗られただけにやや不満な5着だが、地方ダートにも一応のメドが立った。

ヤマトマリオン
五分のスタート、先行馬を射程内で進んだものの、ペースが上がって息切れした。
「気持ちの問題。こんな馬ではないと思う」(幸騎手)。
こちらもエンプレス杯が不動のステップ。
そこでどう変わってくるか。

■ 2007年回顧

【レース】
典型的な逃げ馬不在のこのレース。
ハナに行ったのは好スタートを決めた浜口クインオブクイン。
児島レイナワルツが2番手で、内田博トーセンジョウオーは無理せずイン3番手。
ペースはスローに近い平均。
道中5番手から巧く内をすくった左海クリムゾンルージュが、直線は一旦抜け出しましたが、
中を割ったトーセンジョウオー、外伸びるサウンドザビーチも加わり3頭のデッドヒート。
最後はサウンドザビーチがグイと伸び1着ゴール。
牝馬の交流路線に新風を吹き込みました。

【上位馬の寸評】

1着 サウンドザビーチ
昨年のこのレースは取消しているので、実質牝馬の交流G競走へは初参戦。
500キロを超す大型馬ですが、バランスがいいせいか、そう大きさを感じさせません。
パドックで周回する姿にも覇気があり、非常に良くみえました。
レースはスタートで腰を落とすアクシデント。
道中のポジションは外9番手。
そこから3コーナー過ぎにマクりをかけ、4コーナーは馬群の一番大外。
かなり脚を使いながら競り勝ったレースぶりは、着差以上の強さ。
6歳ながらまだ15戦のキャリア。
まだ上昇余力がありそうで、牝馬の交流路線に強力馬が一枚加わりました。

2着 トーセンジョウオー
転厩緒戦のクイーン賞では、プラス33キロで2着。
そして今回はマイナス1キロの536キロ。
それほど太目感はなく、ほとんどが身になった分。
うるさくない程度に気合が乗って、デキは上々とみました。
レースは内田博騎手が多少気合をつけて行きましたが、ハナに拘るという風ではなく、他馬の動向を窺いつつ。
落ち着いたポジションはイン3番手。
3コーナー過ぎに前2頭の中を割って進出。
上々の手応えでしたが、追ってからがジリジリという感じで切れる脚がない。
最後はサウンドザビーチに決め手負けの形。
過去のレースからも、この馬は内で溜めるよりも、多少強引にでも外を使って攻めた方がいい。
きょうの場合なら思い切って逃げた方が良かったのでは。
デキは間違いなく戻っているので、今後も牝馬交流路線をリード。

3着 クリムゾンルージュ
デビュー当初から一貫して芝志向の同馬が、前走ようやく南関初勝利。
脚抜きのいい軽い馬場の恩恵もありましたが、B級屈指の強豪を破っての好タイムV。
馬体の充実が顕著で、このメンバーでも十分に通用するとみていました。
この日はマイナス8キロ。
いくらか減ったかなという感じもしましたが、気配としてはマズマズ。
レースは好スタートを決めて15番枠から自然に内5番手の好ポジション。
前にいたトーセンジョウオーが3コーナー過ぎに動いた際に、その間隙を突くように内を突いてスルスル進出。
一瞬の脚を駆使して直線半ばでは一旦先頭の見せ場。
最後は力負けしましたが、目下の充実ぶりを物語る走りでした。
基本的にはマイラータイプ。
1600メートル以下の距離で軽い馬場の時計勝負になれば、相当な力を発揮するはず。

4着 クインオブクイン
南関ではクイーン賞2着の実績がありますが、グラッブユアハートに2秒も千切られてのもの。
ここで好走できるイメージは沸きませんでしたが、積極策が功を奏して4着に頑張りました。
発馬前に突進のアクシデントがありながら、スタートは上々。
内のトーセンジョウオーが控えたので無理なくハナへ。
また2番手に行ったのが同じ東海のレイナワルツということもあってか、道中息の入る楽な逃げ。
直線に向いて浜口騎手が一旦は後ろを振り返るシーンすら。
最後は殺到されましたが、勝ち馬から0秒2差は評価できる頑張り。
今年もタフネスぶりを発揮してそれなりの成績は残しそうです。

5着 ペディクラリス
南関初登場のサンデーサイレンス産駒。
ダートに転向して3連勝ですが、見た目はスリムで芝向きの印象を受けました。
レースはダッシュがつかず後方12番手から。
3、4コーナーからマクりをかけましたが、前の4頭からやや水を開けられた5着。
今回の場合はやや展開が向かなかったのが敗因でしょう。
交流G競走のレベルに達しているかどうかは、もう少しレースをみたい。

7着 チャームダンス
武豊騎手ということである程度は人気になりましたが、
外4番手の好ポジションを進みながらまるで伸びる気配なし。
力の差は歴然だし細身の馬で見映えしない。

8着 アウスレーゼ
いつもは後方から行く馬が、珍しく好スタートを決めて中団7番手からの競馬。
手応えも悪くなかった割に、直線に向くと持ち前の決め手が不発で見せ場なし。
ペースにかかわらずこの馬は抑えて後ろから行った方がいいのかも。
それよりデキ自体がやや低迷期に入ったとみるべきかもしれません。
外見上は特に悪い感じはしませんでしたが…。

10着 グリンセレブ
石崎駿騎手がかなり気合をつけて中団8番手を追走しましたが、
追われて渋太いこの馬らしからぬレースぶりで大敗。
見た目は特に悪いとは思いませんが、船橋の清水TMによると調教の動きが今ひとつだったとのことで、いくらか調子を落としているのかも。

■ 2006年回顧

1月18日、大井「TCK女王盃」。
断然人気グラッブユアハートの完勝だった。同馬はイン(2番枠)から好スタート。
押し出されるような逃げになり、1000m通過63.1秒のマイペース。
直線もほぼ持ったまま、後続につけいる隙を与えなかった。
「成り行きでハナを切ったけど、終始馬まかせで手応え十分。着差はともかく、負ける気がしなかった」(安藤勝己騎手)。
単勝1.2倍。パフォーマンスとすると物足りないが、反面ムダな力をいっさい使わず、スマートに勝ったということか。
明けて6歳ながら、今の充実はひとこと凄い。

TCK女王盃(サラ4歳上牝 別定 交流GIII 1800m)

◎(1)グラッブユアハート  (56・安藤勝)   1分53秒8
△(2)レマーズガール    (58・武豊)     3/4
○(3)テンセイフジ     (54・酒井)     2.1/2
 (4)キャニオンドリーム  (53・戸崎)     3/4
▲(5)アイチャンルック   (54・真島)     3/4
 ……………………
△(6)セイエイシェーン   (53・的場文)
△(9)スターリーへヴン   (55・柴山)
△(10)コスモマーベラス   (55・柴田善)

単120円  馬複530円  馬単670円
3連複2,470円  3連単5,490円

当日のパドック。グラッブユアハートを改めてじっくり見た。
470kg台ながら、印象は相変わらず細身で華奢。
周回中の動き、気配も何やらうるさい。
記者に見る目がないのか、あるいはそう見せるタイプなのか。
それでもレースの結果を突きつけられれば、内面が変わった、そうとしか言いようがないだろう。
いざゲートが開いて、素晴らしい集中力と闘争心。ピーク時のプリエミネンスとイメージは似ている。

交流牝馬重賞3勝目。
次走は2月22日川崎「エンプレス杯」と明言され、さらに4月船橋「マリーンC」を勝てば、牝馬5冠達成ということらしい。
体調維持を前提とすると軽いハードル。
ただ、個人的にはその牝馬5冠、さして意味があるとも思えない。
例えばホクトベガの時代には、交流牝馬重賞自体エンプレス杯以外存在せず、いきおい彼女は、牡馬路線に挑戦せざるをえなかった。
結果、川崎記念、フェブラリーS、帝王賞までも制して女傑誕生。
難しい。番組がそうある以上、さまざまな意味で難しいが、グラッブ自身、そんな“挑戦”があっていいとも思う。
「牝馬路線」にこだわる姿勢(というよりこだわらせる番組か)は、ファンの感動をおそらく呼ばない。

レマーズガール
グラッブに2kg与えて3/4馬身差2着だから悪くない。
「気分屋さんの面はあるけど今日はよく走ってくれた。
大井コースが雰囲気に合うのかな…」(武豊騎手)。
ただ、前走船橋クイーン賞では上位人気に推されながら、何と13秒差のシンガリだった(上がり51.5秒)。
同馬の力量はともかく、調整とステップ。
揺れ動くファン心理も含め、けっしてほめられた使い方ではないだろう。

テンセイフジ
道中スロー、外々回って3着なら合格点がつく。
あとは成長力の問題。馬体など、小さくまとまってしまった懸念も正直ある。

キャニオンドリーム
昇り馬らしい善戦で、アイチャンルック、セイエイシェーンも展開からは精いっぱいか。

スターリーヘヴン
2番手から自然消滅。
コスモマーベラスほど極端ではないとしても、本質的に芝の方が合いそうだ。

■ 2005年回顧

1月19日、大井「TCK女王盃」。レマーズガールが危なげない勝利を収めた。
人気薄コウエイソフィアが好枠から腹をくくった逃げを打ち、1000m通過60秒1のハイペース。レマーズは中団外めで流れに乗り、4角手前から早めのスパート。
「手応えがひと息でヒヤリとしたが、逆に追い出してからの伸びはイメージ以上。芯が強い馬ですね。抜け出してからは余裕があった」(武豊騎手)。
いともあっさりという女王盃連覇。
同時にこれで交流重賞、タイトル6勝を記録した。一歩早めに動いたオルレアンが2着。ゴール前インから迫ったジーナフォンテンは及ばず3着。
期待したエンシェントヒルは当日20キロ減で、最後差を詰めたもののスタミナ切れという4着だった。
グラッブユアハート5着、プルザトリガー10着。正直レマーズ以外の人気馬、すべて期待外れの印象が強い。

TCK女王盃(4歳上牝 別定 交流G3 1800m良)

▲(1)レマーズガール   (57・武豊) 1分52秒7
△(2)オルレアン     (54・藤田) 1.1/2
△(3)ジーナフォンテン  (56・張田) 首
◎(4)エンシェントヒル  (54・福永祐) 3
○(5)グラッブユアハート (55・安藤勝) 1
…………………………………
△(7)アイチャンルック  (54・山田信)
△(10)プルザトリガー   (54・内田博)

単290円 馬複1550円 馬単2510円
3連複21980円 3連単76390円

前週の当欄で「レマーズガールは偏差値的な強さ」と書いた。
結果からは何やら恥ずかしいような屁理屈だったが、その時計1分52秒7はやはり平凡。
翌日B1下で1分53秒0(ドンバニヤン)が出ているから、少なくとも女傑というレベルには大きく遠い。
「牝馬ダート重賞」の甘さ、そこにきっちり的を絞った陣営の勝利。個人的には再び負け惜しみが言いたくなる。
出でよ新星―。しかし、南関最先着が7歳を迎えたジーナフォンテン。地方勢にとって客観情勢はきわめて厳しい。

20キロ減のエンシェントヒル。環境の変化に敏感とは聞いていたが、パドックの馬体など数字通り寂しく、仕草にも戸惑い、イラつきがはっきり見えた。
ただこの状態で4着だから能力は相当高く、乗り替わった福永Jでゲートもスムーズ。
収穫ありとはいえるだろう。オルレアンはジリ脚の先行型でイメージ通り地方向き。
経験を積めばレマーズとの差は詰まってくる。ジーナフォンテンに期待があれば、次走川崎エンプレス杯、得意の左回りに変わること。
グラッブユアハートは道中中団よりやや後ろ。レマーズをマークできないとパワーの差が如実に出る。
アイチャンルックはひと息入れて馬体にだいぶ余裕があった。プルザトリガーは結果的に勤続疲労ということか。実績からは納得できない凡走だった。

■ 2004年回顧

1月21日、大井「TCK女王盃」。レマーズガールが完璧な走りで統一G3勝目をあげた。
川崎マルダイメグが先手をとり、1000m通過63.0秒のスロー。
レマーズはその2番手をスッとキープして、武豊の手綱はピクリとも動かない。
流れるように3〜4コーナー、そして直線。
鞍上はぎりぎりまでGOサインを遅らせたようにみえる。
あと1F、軽く気合をつけると、一瞬のうちに2馬身ほど抜け出した。最後まで余裕の脚いろ。
今年このレースはネームヴァリュー引退、さらにジーナフォンテン、ラヴァリーフリッグ回避などの経緯がからみ、牝馬統一Gロード、ひとつ新女王を決める戦いだった。
1800m1分53秒1の時計も馬場状態を含め合格点。明けて4歳ながら、心身両面で実に逞しいものを持っている。

 TCK女王盃(サラ3歳上牝馬 別定 統一G3 1800m良)

○(1)レマーズガール   (54・武豊)   1分53秒1
◎(2)グラッブユアハート (52・内田博)  1.1/2
▲(3)ホウザングラマー  (53・的場文)  首
△(4)ブルーマドンナ   (52・左海)
△(5)シーディザーブス  (53・横山典)
………………………………………………………
 (7)ビーポジティブ   (53・安藤勝)
 (8)パッションキャリー (52・早田)
△(9)アオバコリン    (53・佐藤隆)
△(10)アートブライアン  (53・石崎隆)

単390円 馬複630円 馬単1300円
3連複930円 3連単4670円

「想像以上に強いレース。今日は馬がずっとご機嫌で走っていた」と武豊騎手。
昨夏このコンビで川崎「関東オークス」「スパーキングLC」を連覇している。
続く船橋「クイーン賞」の取りこぼし(3着)は、今思えば力走の反動があったのだろう。
相性のよさ、馬自身が天性備える勝負根性と競馬センス。
何より地方ダート、深い砂への適性が特筆できる。
どちらかといえば早熟、今後さらにパワーアップとなると微妙だが、現在の統一G牝馬ならひとまず必要十分か。
息長く活躍するイメージ。
次走は2月26日川崎「エンプレス杯」と明言された。

グラッブユアハートは、道中終始レマーズをマークする形でレースを進め、直線逆に突き離された。
コースを熟知した内田博J、それも絶好の1番枠がフォローしてぎりぎり連対だったと正直思う。
パドックで実馬を見たのは初めて。イメージとは裏腹に華奢な馬体でイレ込みもかなりきつい。
ただ、3〜4歳時のプリエミネンスも、今思えば似たような印象だった。さまざまなキャリアを経て今後どう変わってくるか。
ホウザングラマーは、例によって勝負どころで反応が鈍く、直線猛然と伸びたものの脚を余した3着だった。上がり36.8秒。
敗れて強しはもちろんだが、どこか限界をのぞかせたレースでもある。
ブルーマドンナは末一手で統一Gとなると入着ラインから先が遠い。
シーディザーブスも先行馬ペースを前々を攻めてこの結果だからまだ地力が足りないだろう。
むしろパッションキャリー。中途半端に先行したわりに終いもしぶとく、これは芝、ダート問わず能力があるとみたい。

■ 2003年回顧

2月5日、大井「TCK女王盃」。
ネームヴァリューは、まさしく脱帽という強さだった。
昨秋南関東トレード、京成盃グランドマイラーズ、ファーストレディー賞を連覇し、東京大賞典4着。
それでもわずか2か月の稼動で「02年NAR最優秀牝馬…」は、
個人的に少々“わだかまり”があったのだが、この日のレースをみせられては、むしろそんな偏見と狭量が恥ずかしくなる。
牝馬とは思えぬ逞しさ。ダート向きの基礎体力とタフな心臓、何より勝負度胸が素晴らしい。
じわりと逃げたビーポジティブは1000m通過63秒7の超スロー。どうみてもこの馬が勝つ競馬だった。
それを上がり37秒7、圧倒的な爆発力で逆転した。ゴール前の弾けるような躍動感。久々に見た「どこまでも伸びていく脚」である。

TCK女王盃(サラ4歳上牝馬、別定、交流G3、2000m良)

◎(1)ネームヴァリュー  (54・佐藤隆) 2分06秒7
○(2)ビーポジティブ   (53・武豊)  2
 (3)アオバコリン    (52・森下)  2
△(4)オンワードセイント (54・勝浦)  首
△(5)ラヴァリーフリッグ (54・石崎隆) 3
…………………………………………………………
△(8)キミモール     (53・木幡)
▲(9)ナミ        (55・見沢)

単150円 馬複360円 馬単620円
3連複3070円 3連単7650円

当日8キロ増で499キロはデビュー以来最高体重。
「食わせて鍛える」、川島正行厩舎の一貫したポリシーが結実した典型例ともいえるだろう。
ハチきれそうなトモの筋肉。ストレートな好気合。
それでいて道中少しズブいくらいの行きっぷりは、持って生まれた利口さ、慎重さと判断したい。
あれだけの決め脚を使って最後まだまだ余裕がある。
順調なら2月26日川崎「エンプレス杯」、さらに3月30日中山「マーチS」へ。
いずれにせよ今のデキがあれば“名牝”への道はきわめて明るい。
プリエミネンスの域はすでに超え、ファストフレンド、さらにホクトベガの領域に挑戦する。
JRA時ダート経験なし。統一Gの生んだ一つの申し子でもありそうだ。

ビーポジティブはレース前“暴走”を危惧されたが、好枠にも恵まれ意外なほど折り合いがついた。
4コーナー持ったきり。しかしネームヴァリューがそれ以上の脚を使った。
結果からはハイペースで飛ばし時計勝負がベター。しかしそれではこの馬自身先につなぐものがない。微妙なところ。
武豊騎手「うまく走れました。今日は相手が強かった」。
粘って2着は十分収穫ありということだろう。
ラヴァリーフリッグは距離2000mがひと息長い。道中終始かかり気味で追ってさっぱり。
スタミナうんぬんではなく、気性が短〜マイル向きというしかない。
早めに動いたオンワードセイントは好判断だが、純粋な切れ味勝負ではこんなものか。
アオバコリンは道中じっくり構え、直線これはという瞬発力みせた。
今後統一Gの流れに慣れてくれば牝馬戦で大仕事もありそうだ。
キミモールはパドックから妙にイレ込み、久々、初コースがそのまま響いたということか。
ナミは道中馬混みにもまれ、どこか中途半端なレースで終わった。
心身両面で成長ひと息。他世代にどうリベンジするか、情勢は少し厳しい。